CX組織の形態、規模、構成はさまざまで、 あらゆる組織が課題とチャンスを抱えています。
カスタマーサービスのベストプラクティスを実践すれば、組織は本当に優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)を実現できるようになるのでしょうか?Zendeskはこの問いに答えを出すため、カスタマーサービス分野の世界の意思決定者およそ5,000人を対象に調査を行いました。
調査結果をまとめたCX成熟度調査レポート2022年版は、現状の問題点と今後のアクションに関する興味深いインサイトを提示しています。 Zendeskはさらに組織のCX成熟度を評価するためのスケールを作成し、7つの基準に基づき企業を「スターター」「エマージャー」「ライザー」「CXチャンピオン」に分類しました。
この記事ではスターター企業を取り上げます。最も基本的なKPIを達成するための基盤造りに着手したばかりのスターター企業が、将来の成長と規模拡大に向けて今すぐ着手すべき取り組みについて解説します。
理想のCXへの最短ルートとは
ゼロからCX組織を構築するのは容易なことではありません。 事実、Zendeskの調査によると、CX強化の取り組みを始めたスターター企業の多くがすでにいくつもの課題に直面し、行く手を阻まれています。
スターター企業が直面する主な課題は、次のとおりです。
サポート担当者が対応に追われすぎている
ボットと人による対応のバランスがとれていない
成果測定は行っているが、パフォーマンス指標をリアルタイムで追跡できていない
顧客データを有意義なデータとして活用するための時間とリソースがない
サービスを一人ひとりの顧客に合わせてパーソナライズできていない
サポート担当者のための研修プログラムを提供できていない、またはプログラムがあっても適切でない
営業担当者がカスタマーサービスを販売のチャンスにつなげることができていない
営業データとサポートデータが統合されておらず、目標の共有が全くできていない
確かに課題山積ですが、スターター企業は実は他のどのレベルの企業よりも早くCX成熟度を高めることができるのです。 スターター企業には、CXで先を行く企業との差を縮めて追いつき、市場シェアを奪い、カスタマーサービスを活用してよりレジリエンス(回復力)のあるビジネスを構築できる十分なチャンスがあります。
サービスでさらに上を目指す
企業規模が大きくなると、ここで取り上げたような課題に取り組むCX組織は「コストセンター」とみなされがちです。 そのような企業では、縦割り構造の中でそれぞれのチームが異なるシステムを使ってバラバラに問い合わせを追跡し、顧客データを収集しようとしています。 また多くのカスタマーサービス組織は、サービスレベルアグリーメント(SLA)の設定、ワークフローの構築と自動化、およびコアビジネスアプリケーションの統合に向けた取り組みをまだ始めたばかりです。
ここから前に進むための課題は、サポート範囲を拡大し、カスタマーサービスが収益向上に欠かせない重要な存在であることを証明することでしょう。 サービスの質を高め、サポートスタッフに投資し、オペレーションを最適化するための具体的なアクションを、以下にまとめます。
顧客のサポート:
- チャネルを合理化する: デジタルチャネルを活用して運用コストを削減し、顧客がセルフサービスで問題を自己解決できるようにしましょう。 ヘルプセンターを構築すれば、よくある質問への回答が豊富なコンテンツライブラリに早変わりします。
- 自動化を活用する: 顧客は思い立ったらすぐに疑問を解決したいと考えます。 自動化されたセルフサービスシステムを導入すれば、低コストで24時間365日対応のサービスを実現できます。 また顧客対応時に必要なデータを収集し、チケット情報をマッピングしたり事前入力したりできるほか、会話の内容に応じた関連情報をサポート担当者が自動で取得することも可能です。
- ボットを「デジタルコンシェルジュ」にする: ノーコードボット(プログラミング不要なボット)を使用すれば、チームの生産性を低下させるような単純作業や同じような質問や回答の繰り返しを減らすことができます。 ボットは「デジタルコンシェルジュ」として顧客にとって最初の窓口となり、問題解決に役立ちそうな基本情報を提供します。顧客の問題がそこで解決すればチケットを削減でき、解決しなければその会話を関連情報とともにサポート担当者に転送するため、対応を効率化できます。
エージェントのサポート:
- チームに十分な情報を与える: エージェントワークスペースを一元化すれば、担当者はどのチャネルからでも顧客プロフィールや背景情報にアクセスでき、複数のタブやアプリの面倒な切り替えなしに質の高いサービスを提供できます。 これにより生産性と初期対応解決率が高まり、企業全体の収益が向上します。
- エージェントがCXをパーソナライズできるようにする: 単純作業を自動化すれば、サポートチームはすべてのチャネルで一人ひとりの顧客に合わせてサービスを最適化するというより重要なタスクに専念できます。 また自動化は顧客データの可視化に大きく貢献するため、エージェントは顧客とより親密で長期的な関係を築くことができます。
- 将来の成長を見据えた計画を立てる: そのサポートプラットフォームは、API、Webhook、アプリケーションフレームワークなどを通じて既存システムに統合可能ですか? 既存システムに統合可能であることは、 将来の成長に備えてサポートチームの業務や機能の柔軟性を高め、リソースを分散させないための必須条件です。
オペレーションの効率化:
- 経営幹部を味方に付ける: すぐに使えてカスタマイズ可能なリアルタイムレポートがあれば、一流のCX組織を維持することの価値と収益貢献度を経営陣に示すことができます。 コアチームを設置し、カスタマーサービスの企業全体の事業目標への組み込みを目指す上級管理職を任命しましょう。 サポートチームが生み出す収益を定期的に損益計算書にまとめることで、カスタマーサービスの事業にとっての真価をわかりやすく提示できます。
- サポート担当者のスキルを高める: チームにスキルベースのトレーニングを提供して、パフォーマンスを向上させましょう。 段階的なトレーニングプランに基づいて前に進むチャンスを与えれば、サポート担当者のモチベーションを維持できます。
- パフォーマンスを可視化する: ビジネスインテリジェンス、CRMデータ、その他のバックエンドシステムをオープンAPIで取得するデータ駆動型のルーティングを構築すれば、より的確な戦略意思決定が可能になります。
早い段階で賢い決断をしておけば、誤った判断がもたらす将来的なコストを未然に排除できます。 はじめから的確なツールとプロセスを整備しておくことで、後になってシームレスに接続できないシステムの改修費用に悩まされずに済みます。 これまで見てきたとおり、提供するサポートチャネル全体で他社にはない優れたCXを提供することは重要です。ただし、その達成自体は最終目標ではありません。真の目標は、顧客の期待に応え、サポートチームの負担を軽減し、顧客のフィードバックを基に定期的な改善を行うためのループを確立することです。
CX成熟度がさらに上の企業では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。 CXエマージャー企業の記事をご覧ください。