CXとは?
CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)とは、初めての問い合わせから商品購入後のやり取りまで、企業との一連の体験を通じて顧客が受ける印象を指します。 サポートチームとの会話、Webサイトでのやり取りなど、ブランドとのすべてのタッチポイントを網羅するため、CXの質は、企業の収益と顧客ロイヤルティに大きな影響を与えます。
忘れられないCXには、すばらしいものから腹立たしいものなど、さまざまあります。 たとえば、駆け込みでスーツの寸法直しを頼んだら快く急ぎで対応してくれた仕立屋や、ひどいサービスにもかかわらず正規料金を請求したレストランスタッフなど、どちらもずっと記憶に残ります。
現代の消費者は、ポジティブかつ記憶に残る体験をこれまでになく期待しています。特にAIの台頭に伴い、企業は新たなCX戦略の必要性に迫られています。 ZendeskがまとめたCXに関する最新の年次調査レポート「CXトレンドレポート2025年版」によると、消費者の70%が「カスタマーサービスにAIを積極的に活用している企業としていない企業の間には明確な差がある」と回答していることが明らかになっています。
この記事では、CXの意味、戦略、測定、分析方法について詳しく解説するとともに、AIを活用しながらCXを向上させるためのヒントをご紹介します。
目次:
- カスタマーエクスペリエンス(CX)とカスタマーサービスの違い
- CXはなぜ重要なのか?
- CXを測定する方法
- 良いCXと悪いCXの違い
- CX向上のための10のポイント
- よくある質問
- Zendeskでワンランク上のCXを実現
カスタマーエクスペリエンス(CX)とカスタマーサービスの違い
カスタマーエクスペリエンス(CX)とカスタマーサービスは似たような概念ですが、大きな違いがいくつかあります。
CXとは、企業との一連の体験を通じて顧客が受ける印象のことです。 CXには、顧客とサポートチームの間のような対人的な関係と、消費者が広告やSNSの投稿を通じて企業を知る場合のような非対人的な関係があります。 CXは、広範で包括的な概念です。
一方カスタマーサービスはCXの派生的な概念で、疑問や懸念を抱える顧客に対し、企業がその疑問や懸念を払拭するために提供するサポートを指します。 企業は、常に質の高いカスタマーサービスを提供する必要があります。 優れたカスタマーサービスは、顧客との長期的な信頼関係につながるため、企業のCXにとって不可欠です。
CXはなぜ重要なのか?
CXが重要なのは、顧客と企業の間のあらゆるやり取りが(ほんのちょっとしたやり取りであっても)その後の関係性を大きく左右する可能性があるためです。
顧客がブランドをどう捉えているかは、収益、顧客維持、ブランドロイヤルティと直接結びついています。 優れたCXは企業の競争力を高め、業界での地位を向上させます。 Zendeskベンチマークのデータによると、消費者の60%が「サービスの良し悪しのみでブランドを決めたことがある」と回答しています。
CXを測定する方法
CXを簡単に測定できる魔法のような数字はありません。 小さな要素を1つずつ見ていく必要があるため、データが多いほど正確に測定できます。 理想のCXを実現するためのデータ収集方法には、以下のようなものがあります。
顧客満足度調査の実施
CXに関する情報を得るための最も効果的な方法の1つは、消費者に直接尋ねることです。 これによりカスタマージャーニーの特定のタッチポイントにおける顧客満足度、消費者の期待に沿っているか、企業に改善すべき点があるかどうかなどを、実際のフィードバックにもとづき判断できます。
顧客満足度調査で使用される一般的な指標には以下のようなものがあり、顧客は自らの体験を点数で評価することができます。
顧客から直接フィードバックを得ることで、顧客が何を評価し、何を改善して欲しいと感じているのかを明らかにすることができます。
測定可能なデータの分析
測定可能なデータを分析することで、効果的(または非効果的)なパターン、顧客が不満を感じるポイント、顧客と企業の間のやり取りの詳細などを把握できます。 測定可能なデータには、以下のようなものがあります。
- チャーンレート(解約率)
- LTV(顧客生涯価値)
チケットの再開率
解決時間
これらの指標により、CXの改善に必要な実用的な知見を得ることができます。
新しいCXを導入する際のA/Bテスト
販売やマーケティングの目的でA/Bテストを実施することは一般的ですが、CXでもこのアプローチは有効です。 Webサイト、メールを利用したキャンペーンなどで2つのバージョンを作成し、その反応に応じて、顧客エンゲージメントと顧客満足度の向上にどちらが効果的かを判断します。
方法としては、まず対象の顧客層にA/Bテストメールを送信します。 その結果にもとづき、新しいCX資産の成果を予測したり、本番リリース前に修正すべき点があるかなどを判断したりすることができます。
フォーカスグループとしてのコミュニティフォーラムの活用
コミュニティフォーラムは、CXを理解するための貴重な情報源です。 コミュニティフォーラムでは、顧客どうしが交流し、製品やプロセスの問題点、機能の改善点、重要なツールや有益なツールなどに関する情報を交換します。 コミュニティフォーラムは、企業が顧客の理解を深め、CXの改善に必要な情報を得ることができる、優れたリソースです。
顧客対応担当者の意見
毎日顧客とやり取りする従業員ほど顧客を理解している人はいません。 顧客対応にあたる担当者は、顧客のCXへの意見に関する貴重な情報源です。 「お客様こそ正義」。顧客のフィードバックをCXの改善のために活用することが重要です。
良いCXと悪いCXの違い
何が優れたCXかは人により異なります。 とはいえ、良いCXと悪いCXを基本的な視点から定義することは可能です。
良いCXの例
顧客が手間をかけなくても簡単に製品やサービスを目的の用途に使用できるのが良いCXです。 この分野で優れた実績を持つ企業は、シームレスで一貫性のあるCXを創造するための社内チームワークの重要性を、深く認識しています。 顧客ロイヤルティと顧客満足度で大切なのは、大きな感動を作り出すことではなく、企業がいつでも頼れる存在となり、顧客に手間をかけさせないことです。
良いCXの例として、以下のようなものが挙げられます。
- わかりやすいセルフサービスコンテンツ: FAQページやコミュニティフォーラムなどのセルフサービス型サポートに役立つコンテンツがあると、顧客はいつでも好きなときに自らの課題を自己解決できます。 ヘルプラインに電話をかけるより利用しやすい問題解決オプションを提供することで、顧客満足度が高まります。
- 既知(または未知)の問題に対するプロアクティブなサポート: 顧客のニーズを先読みし、プロアクティブなサポートを提供することは、顧客を組織の意思決定の中心に据える「顧客中心主義」の原則の1つです。 企業が主体的にアクションを起こすことで、問題が大きく発展することを未然に防ぐことができます。
- 包括的なカスタマーサポート: 効果的なサポートをいち早く提供できることは、CXを全体的に向上させるためのカギです。ロンドンの老舗百貨店Libertyは、Zendesk AIでカスタマーサポートを合理化し、初回返信時間の73%短縮とCSATの9%アップに成功しました。
- CXのパーソナライゼーション: 今日の消費者はパーソナライズされた体験を期待しています。 Webサイトのキャッチコピーが心に響くものであったり、企業が関連性の高い商品のおすすめを提案したり、パーソナライズされたメールを送信すると、消費者に「自分は理解されている」と感じてもらえます。
CXにエンドツーエンドの視点を取り入れ、あらゆるタッチポイントで消費者のニーズを満たすことは、長期的な顧客維持に不可欠です。
悪いCXの例
悪いCXとは、企業が期待に応えてくれていないと顧客が感じることです。これは、多くの顧客の不満につながる可能性があります。
悪いCXの例には、次のようなものがあります。
- セルフサービス型サポートがない、またはその信頼性が低い: セルフサービス型サポートのシステムやリソースの信頼性が低かったり、それ自体が存在しなかったりすると、顧客の不満が高まる恐れがあります。 企業は、顧客が問題を簡単に解決できるようにする必要があります。
- 待ち時間が長い: サポートを受けるまでの待ち時間が長いことは、質の低いカスタマーサービスの典型的な例です。 待ち時間が長いほど、CXの質が低いといえます。
- 顧客に寄り添う姿勢がない: 消費者がカスタマーサポートに問い合わせるときは、たいてい懸念や不満を抱えています。このような状況で担当者が顧客に寄り添う姿勢を示さないと、顧客の信頼を失う可能性があります。
- 顧客のフィードバックを軽視する: 消費者からのフィードバックは、企業がCXの改善に役立てることができる最も貴重な情報源の1つです。 顧客のフィードバックを軽視してしまうと、顧客の要望やニーズに沿ったプロセスの改善ができず、CXの低下につながります。
もちろん、あえて質の低いCXを提供しようという企業はありません。ただし、いくつかの重要な課題を克服できないままでいると、顧客の不満を招く恐れがあります。 上記の例を参考に、CXで悪い評判が立たないようにしましょう。
CX向上のための10のポイント
CXを向上させることは可能であり、そのためにはまず顧客を中心に置く必要があります。 以下の10のポイントに従って、CX戦略の強化に取り組みましょう。
1. 顧客の理解
新しいCXプロセスの導入や新たなテクノロジーへの投資を検討する前に、まずは顧客を理解する必要があります。 顧客の視点に立ったCX戦略を作成し、顧客中心の姿勢で取り組みましょう。
たとえば、顧客の要望が「もっと簡単に買い物ができるようにして欲しい」というだけであれば、完璧なセルフサービス型サポートシステムに投資したとしても顧客の期待に応えることはできず、単に時間と予算を無駄にしたことになります。 顧客を深く理解したうえで、その知識をCX戦略の立案と取り組みに活かしてください。
2. フィードバックループの構築
「フィードバックループ」とは、企業が顧客から得たフィードバックにもとづき製品やプロセスを改善することを指します。 これにより、順調な点と改善が必要な点が明らかになります。 フィードバックを収集すると、顧客の期待を理解し、その期待に応える方法に関する貴重な知見を得ることができます。 顧客のフィードバックにもとづいて製品やサービスを調整すれば、顧客の意見を尊重する姿勢をアピールできます。
フィードバックループは社内の従業員にも有効で、各担当者がフィードバックを包括的に理解したり、共有したりするのに役立ちます。またこの過程で、カスタマーサービスを改善するための課題が明らかになることもあります。 たとえば、顧客のニーズに合わないポリシーやプロセスの存在、問題解決の妨げとなる部門間の壁などを特定できます。
3. オムニチャネル対応のカスタマーサービスの構築
顧客は、何度も同じ説明をしたくありません。 しかし、部門ごとに顧客の対応方法が異なるため、部門間で効果的にコミュニケーションを引き継ぐことは難しく、このよくある問題を解決することが企業の課題となっています。 解決のカギは一貫したやり取りを提供するオムニチャネルな体験を構築することです。
顧客が頻繁に利用するチャネルに対応し、チャネルを変えても、会話履歴や背景情報を常に確認できる状態にしておきます。 オムニチャネルルーティング機能を備えたカスタマーサービスソフトウェアなら、サポート担当者の空き状況、対応能力、チケットの優先度にもとづいて、各チャネルのチケットを適切な担当者に振り分けることができます。
4. AIを活用した顧客支援
AIは、消費者の購買行動や企業の販売方法に大きな変化をもたらしています。 実際、「CXトレンドレポート2025年版」によると、「AIは現代のカスタマーサービスに欠かせない」と回答した消費者の割合は81%にものぼります。 業務効率化と優れたCXの実現には、AIをはじめとする最新テクノロジーへの投資が不可欠です。
AIを利用した効果的な顧客支援の方法の1つが、AIエージェントです。 AIエージェントのような高度なボットは、24時間365日のサポートで顧客からの複雑な問い合わせを自動解決します。 またバックエンドシステムと連携させることで、返金処理や注文処理状況の確認、関連するヘルプセンター記事の提示などが可能になります。 AIエージェントの対応力を超えるさらに複雑な質問の場合、AIエージェントはそれまでのやり取りの全文とともに、チケットを自動で人間の担当者にルーティングします。
5. CXに特化したソフトウェアの活用
AIを利用して顧客とのポジティブな関係性を築くためのもう1つの方法は、CX専用のソフトウェアを導入することです。 CXソフトウェアは、より良い顧客関係の構築をはじめ、以下のような取り組みを支援します。
- 顧客データ管理:消費者の行動を理解し、解約リスクの低減やクレームの防止に役立てます
- パーソナライゼーション:顧客一人ひとりに合わせた商品や情報を提供します
- オムニチャネルのサポート:顧客が好みのチャネルでサポートを受けられるようにします
- AIによる自動化:繰り返しの多い作業を合理化し、問題解決までの時間を短縮します
Zendeskのような使いやすく、拡張可能で、包括的なAI機能を備えたCXソフトウェアを選択するようにしましょう。
6. セルフサービス型サポートの提供
FAQページ、コミュニティフォーラム、役立つ記事などのデータにもとづくコンテンツがあれば、顧客は自分で問題を解決でき、問い合わせの時間と手間を省くことができます。 また、AIエージェントを利用してその場で簡単な回答を提供するか、顧客に適切なコンテンツを案内する方法もあります。 重要なのは、コンテンツを最新かつ正確に保つことです。役に立たない記事は、不満につながりかねません。
7. サポート研修の実施
社内プロセスを変更した際や、AIやCXテクノロジーを導入したら、担当者ができるだけ早く適応できるよう、研修の機会を設けます。 チームが新しいツールや環境に慣れる時間が短いほど、より短期間で優れたCXを実現でき、体制変更のメリットも早い段階で享受できます。
8. パーソナライゼーションの実現
パーソナライゼーションは、優れたCXに欠かせない重要な要素です。 厳選された商品の提案、誕生日だけの特典、顧客の好みのチャネルを通じたサポートなどを提供できるようにし、一人ひとりに合わせたCXを実現します。 AIエージェントのようなAIツールや、CXソフトウェアなども必ず活用してください。 「CXトレンドレポート2025年版」によると、AIを積極的に導入している「CX先進企業」の91%が「AIは顧客体験を効果的にパーソナライズしてくれると思う」と回答しています。
顧客の好み、性格、購入パターンといった背景情報を収集しておけば、担当者は適切にサポートをカスタマイズして迅速に問題を解決できます。 パーソナライゼーションを推進する方法として、社内のサポート対応に関するユーザーエクスペリエンス(UX)調査を実施するのも有用です。
9. 先を見越した対応
トップレベルのCXを提供する企業は、顧客のニーズを予測して、問題が大きくなる前、あるいは発生する前に対応します。 先を見越した対応は、顧客が大事に扱われているという印象を与えるほか、信頼や顧客ロイヤルティの構築にもつながります。
たとえば、オンライン販売を行う企業であれば、購入手続き用のページにAIエージェントを設置して、顧客が購入を断念しないように疑問点を解決できるようにします。また、インターネットプロバイダーなら、サービス停止期間をメールで事前に顧客に案内します。 将来起こりうる顧客の問題を予測して事前に対処することは、より良いCXの実現に向けた戦略に欠かせません。
10. データやアナリティクスの活用
データから読み取るストーリーには、サポート部門の効率性、企業とのやり取りにおける顧客の総合的な満足度、顧客行動のトレンドなど、さまざまなヒントが隠れています。
顧客を念頭に置いて製品やプロセスを改善するには、まずはデータから顧客やサポート担当者のことを読み取って理解する必要があります。こうした情報は、課題、ニーズ、目標を理解する際にも役立ちます。 収集したデータはすべて、CXを向上させる力となります。
よくある質問
Zendeskでワンランク上のCXを実現
企業の評判は、企業の成長と生き残りを左右します。企業の成功は、ロイヤルティの高い顧客を獲得し維持できるかどうかにかかっています。 CXを優先する組織が市場で際立っている理由は、そこにあります。
CXのエキスパートとしての実績を誇るZendeskは、あらゆる規模の組織が顧客に世界トップクラスのCXを提供できるよう支援します。またCXに特化したZendeskのAI機能があれば、さらにワンランク上のCXを目指すことが可能です。 顧客との長期的な関係を構築するためのパートナーをお探しでしたら、Zendeskがお手伝いします。
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