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シャドウAIとは?未承認AIのリスクと企業が取るべき対策

シャドウAIとは、企業の承認を得ずに従業員が独自にAIツールを使用する現象です。業務効率化の裏に潜むリスクやCXへの影響、管理と対策のベストプラクティスを解説します。

更新日: 2025年4月7日

折り鶴を手に取りながら、シャドウAIとそれが組織にもたらすリスクについて考えている人物の様子。

新しい技術が進化する中で、特に人工知能(AI)や業務をより簡単かつ効率的にする自動化ツールの分野では、人々の興味や関心が一層高まっています。しかし、たとえ革新的な技術が次々と登場しても、企業はその導入に対して慎重になることがあります。特に最初の一歩や二歩目を踏み出すことにためらいを感じる企業も多いことでしょう。

しかし、そうした変化に抵抗したとしても、従業員が秘密裏にAIを使用することを必ずしも回避できるわけではありません。これは、Microsoft Copilot、ChatGPT、Claudeなどのツールにより、技術職以外の従業員がこのテクノロジーを利用しやすくなっていることが主な理由です。これはシャドウAIと呼ばれ、さまざまな業界で拡大している現象です。

この記事では、シャドウAI、CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)やその他の業界におけるシャドウAIの拡大、そのリスクと対策について解説します。

目次

シャドウAIとは?

シャドウAIとは、会社が把握していない、またはITチームによる監視がない状態で、未承認または認可されていない外部AIツールを使用することを指します。さまざまな業界で、従業員は次のようなシャドウAIに依存しています。

  • 文章生成AIツール

  • レポート用のAI分析ツール

  • 採用候補者の選考に使用される人事用AIツール

  • 画像生成AIツール

  • AIコーディングアシスタント

  • 信用リスクまたは不正リスクを分析するためのリスク評価ツール

また、ZendeskのCXトレンドレポートによると、カスタマーサポート担当者の約50%がシャドウAIを使用しています。

  • 認可されていない生成AIツールとソフトウェア
  • 無許可のAIサービスアシスタント

  • 未承認のAIを搭載した生産性向上ツール

AIをカスタマーサービスやその他の業界に導入する意思がない、または導入できない企業では、シャドウAIの拡大がよく見られます。

シャドウAIとシャドウIT

シャドウAIとシャドウITはどちらも、組織内の未承認のテクノロジーの使用を指しますが、使用されるテクノロジーのタイプと潜在的なリスクに、最大の違いがあります。

  • シャドーAI: ITチームまたはデータガバナンスチームの承認を得ずにAIツールとAIテクノロジーを使用することを指します。
  • シャドウIT: ITソフトウェア、ハードウェア、またはインフラストラクチャの使用を指します。通常、企業ネットワーク上で使用されます。

シャドウITのリスクは、未承認のツールを使用しているチームやメンバーに限定されますが、シャドウAIのリスクは組織全体で発生する可能性があります。

シャドウAIとシャドウITの違い
シャドウAIシャドウIT
定義ITまたはデータガバナンスチームの承認を得ずにAIツールとAIテクノロジーを使用すること企業ネットワーク上で未承認のITソフトウェア、ハードウェア、またはインフラストラクチャを使用すること
普及生産性とツールの利便性を向上させたいと考える個々の従業員に間で普及ITの課題にリアルタイムで対処する必要のある従業員やチームの間で普及
ガバナンスとコンプライアンスITチームまたはデータチームによる監督と管理が欠如しているITチームまたは組織によるより大規模な監督が欠如している
リスク
  • データプライバシー

  • AIモデルのバイアス

  • コンプライアンス違反

  • 透明性の欠如

  • データ侵害

  • 法令順守の欠如

  • ネットワークセキュリティの脅威

文化的影響イノベーションが奨励される一方で、データの使用と意思決定における一貫性を損なうリスクがあるアジリティ(俊敏性)が高まる一方で、IT環境の断片化とデータの散在のリスクがある
カスタマーサポートチームが未承認のAIツールを使用して顧客感情を分析している従業員が未承認のストレージサービスを使用して、作業ファイルを保存および共有している

シャドウAIの拡大

AI技術(生成AIや対話型AIなど)の爆発的な成長により、現場レベルでの導入が広がっています。専門的な知識がほとんど、あるいはまったく不要な消費者向けのAIツールが身近になったこと、そして公式なAIガバナンスが欠如していることにより、従業員が検証されていないAIソリューションを自ら探し、利用するケースが発生しています。

ZendeskのCXトレンドレポートによると、一部の業界ではシャドウAIの使用が前年比で250%も増加しており、企業は大きなリスクにさらされています。このような状況は、データセキュリティやコンプライアンス、ビジネス倫理において深刻な影響を及ぼす可能性があります。それにもかかわらず、多くの従業員が、承認された業務用ソリューションではなくシャドウAIを選ぶ理由として、以下のような点が挙げられます。

  • 既存のツールに不満がある。

  • 個人が導入・利用可能なAIツールが手軽にアクセスして操作できる環境にある。

  • 特定の業務を迅速に遂行する必要がある。

  • 個人およびチームの生産性を高めたいと考えている。

予算、知識、あるいは社内のサポート不足といった理由でAIソリューションの開発を後回しにすれば、CXにおける伝統的な企業と先進的な企業との間のギャップは今後さらに広がっていくでしょう。しかし、多くの組織がこの新たな現実に直面する中で、CXの先進企業は、AIエージェントCXの自動化(CXA)といった承認済みのAIソリューションを活用しつつ、必要な監視とバランスを維持し続けています。

シャドウAIのリスク

シャドウAIが適切に管理されていない、または十分なリスク対策が講じられていない場合、シャドウAIは以下のような重大な組織リスクをもたらします。

  • セキュリティの脆弱性: シャドウAIは、一般的なセキュリティ対策を無視することが多く、無防備なデータアクセスやデータ漏えいを引き起こし、企業をサイバー攻撃のリスクにさらします。
  • 情報の完全性: シャドウAIは監視やセキュリティプロトコルの精査が少ないため、ビジネスデータが侵害されたり、改ざんされるリスクがあります。
  • コンプライアンスの課題: 従業員が会社の許可や把握なしに機密データをサードパーティ製AIプラットフォームと共有すると、法令や秘密保持契約(NDA)に違反する可能性が高くなります。
  • サイバーセキュリティの脅威: 未承認のツールや未検証のツールを使用すると、バグ、マルウェア、または欠陥コードが業務プロセスに侵入するリスクがあります。
  • 品質の一貫性の欠如: 分離された、相互運用できないAIソリューションのアウトプットには、一貫性や信頼性が欠如している可能性があります。こうしたソリューションの運用は、顧客関係や従業員の評判を損なうリスクにつながります。

従業員がシャドウAIを導入して効率化を実現したとしても、リソースの利用、プロジェクトのスケーリング、顧客データのプライバシーに悪影響を与える可能性があります。

シャドウAIの管理と対策

職場でのAI活用は今後も続くため、組織全体のソリューションを採用する計画を立てずにシャドウAIを排除することはほぼ不可能です。以下に、変革に向けて取り組む際に留意すべき管理と対策のベストプラクティスをご紹介します。

  • 認可済みAIツール: シャドウAIの利用を軽減するには、従業員が使用できる合理的で有用なツールを提供しましょう。多くの場合、認可済みツールには、セキュリティ強化に特化したエンタープライズライセンスがあります。
  • 明確なAI使用ガイドラインを設定する。 AI使用に関する貴社の期待事項について概説した、明確なガイドラインを作成しましょう。サービス業のブランドであれば、CXにおけるAI倫理のベストプラクティスに従うことも重要です。
  • AIガバナンスのフレームワークを開発する。 AIシステムの活用と導入を導くためのポリシーや運用ルールを策定する際には、偏見や文化的背景にも配慮しながら協働して取り組むことが重要です。
  • AIセンターオブエクセレンス(CoE)を作成する。 この公平かつ多様性のあるチームまたは部門が、企業のAI施策を管理および推進します。
  • AIの教育とトレーニングを優先する。 これらのプログラムは、AIの使用のリスクと結果、および特定のツールやソリューションの使用方法を網羅する必要があります。
  • AIを安全に使用する文化を醸成する。 ガバナンスを基盤にしながら、AIナレッジベースのようなAIツールを積極的に活用し、社内でのAI利用が正式に支援されていることをチームに伝えましょう。
  • ビジネスとITの連携を支援する。 AIツールが業務上のニーズに対応し、セキュリティやコンプライアンス、パフォーマンスの基準を満たしていることを確保することが重要です。
  • 安全に実験できる環境を提供する。 実験用に指定された環境を構築し、チームが安全で監視された空間で新しいAIアプリケーションを探索できるようにします。
  • AIの透明性を奨励する。 チームに対して、承認されたAIソリューションの責任ある導入と活用の重要性を共有し、AIツールがどのように機能し、どのようにデータを活用するのかを説明することで、オープンな姿勢を保つことが大切です。
  • 品質管理(QA)およびモニタリングツールを使用する。 チームの業務の一貫性や状態をもとに、シャドウAIの使用が行われていないかどうかを判断するために、品質モニタリングの結果を定期的に振り返り、評価することが重要です。
  • 危険信号を探す。 異常なデータパターンや説明のつかない生産性の急上昇、応答やドキュメントの不整合、標準とは異なる業務成果(良し悪しを問わず)などに目を光らせておくことが重要です。
  • 潜在的な使用を評価する。 ネットワーク監視ツールや匿名の従業員アンケート、および経費分析を使用して、使用中のツールとシャドウAIの使用の可能性に関するフィードバックを取得しましょう。
  • イノベーションを認識し、統合する。 有益なシャドウAIの活用を見極め、そうしたイノベーションを自社のシステムに統合しましょう。これにより、承認されたアプリケーション内での継続的な創造性が促されます。
  • アクセス制御を強化する。 従業員がシャドーAIを使用している場合でも、機密データへのアクセスを手動で選択して有効化し、安全に顧客データを管理します。

これからの時代は、AIの進化を受け入れていくことが重要です。ZendeskのCXトレンドレポート2025年版では、CX先進企業の93%が、「承認されたAIツールの活用は、従業員がAIやその高度な活用方法に慣れるうえで効果的であり、非公認でリスクの高い代替手段に頼らせないためにも重要である」と回答しました。

よくある質問

承認されたAIツールでビジネスを加速させましょう

組織がシャドウAIとその承認済みのAIの両面に向き合う中で、成功の鍵となるは、テクノロジーのガバナンスと従業員の主体性を重視した積極的なマネジメントです。

承認および検証済みのツールとソリューションを通じて優れた従業員サポートを提供する包括的な戦略により、企業はシャドウAIの課題をイノベーションと成長のチャンスに変えることができます。Zendesk AI CopilotのようなAIを搭載したツールやソフトウェアを認可することで、返答文の提案やリアルタイムのインサイト、パーソナライゼーションの推奨事項を上手く活用しながら従業員のパフォーマンスを支えることもできます。

最新技術を備えた安全かつ認可済みのAI搭載型従業員サービスソリューションを使用することで、適切なシャドウAI対策を講じ、チームのAI活用を成功に導きましょう。

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