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顧客接点の具体例と見つけ方
顧客接点とは、ブランドに対する印象を左右する要素の一つです。 だからこそ、顧客接点戦略を立案することは企業にとっても顧客にとっても非常に重要です。
著者: Susan Lahey, 寄稿者
更新日: 2024年2月15日
顧客接点には、新しい人間関係の構築と非常によく似た部分があります。ある2人がデートをするとしましょう。初めて会ったとき、そしてその後の会話やデートのたびに、関係が深まったり、何かが新しく始まったりするでしょう。最近知り合った2人が遊びに出掛け、経験を共有するたびに、次の段階に進むかどうかの決め手が見えてくるはずです。顧客接点も同じです。企業としては、顧客が「また利用したい」と思うような素晴らしい体験を提供したいと考えているに違いありません。
顧客接点とは?
顧客接点とは、消費者が従業員、ウェブサイト、広告、アプリなどを通じてブランドと接するあらゆる機会を指します。そして、顧客接点から得られた体験が、消費者からの企業に対する見方を形成します。
顧客接点とは、消費者が従業員、ウェブサイト、広告、アプリなどを通じてブランドと接するあらゆる機会を指します。
例えば、ある顧客がSNSで環境に優しい商品の広告を見たとします。これがその企業における初めての顧客接点になります。顧客は商品を購入するために広告をクリックし、ブランドのeコマースサイトにたどり着くと、興味が湧いた商品をたくさん見て回ります。これが2回目の接点です。そして顧客は元々買うと決めていた製品と、新たに欲しくなった製品を購入します(3回目の接点)。その後ブランドがお礼のメールを送り(4回目の接点)、毎週配信するメールマガジンへの登録をお願いする(5回目の接点)などの顧客接点が発生します。
すべての顧客接点は、優れたカスタマーエクスペリエンスによって顧客にブランドの魅力をアピールできる機会であり、潜在顧客から得意顧客へと徐々に変化させることができます。
顧客接点とは、優れたカスタマーエクスペリエンスで顧客にブランドの魅力を伝えるチャンスです。
顧客接点の例
顧客接点とは、カスタマーサービスだけを指すものではありません。また、具体的な顧客接点は企業ごとに異なります。例えば小売業であれば、広告、ウェブサイトへの訪問、実店舗への訪問などの接点があると考えられます。SaaS製品を販売する場合、広告、マーケティングチーム、営業担当者、オンボーディングチーム、テクニカルサポートチームが接点になると考えられます。どんな企業であれ、顧客接点マップ(顧客接点の視覚化)にはカスタマーサポートとカスタマーフィードバックを含めるべきです。
顧客接点マップには、カスタマーサポートとカスタマーフィードバックが欠かせません。
創造的であること、そして消費者接点によって達成したいことを明確にすることが重要です。これで顧客との関係性を育めるようになり、顧客に手当たり次第連絡する必要がなくなります。前述のデートの例に例えると、こまめに連絡することは大切ではあるものの、多すぎると鬱陶しいと思われてしまいます。
顧客接点の具体例を下記でご紹介します。
購入前 | 購入時 | 購入後 |
企業のブログ | ウェブサイトの支払いフロー | 導入支援 |
カスタマーレビュー | 営業チームまたはサポートチームとの会話 | CSAT(顧客満足度)調査 |
SNS | メールマーケティング | カスタマーサービスチャネル |
デジタル広告 | ダイレクトメール | 企業のナレッジベースまたはコミュニティフォーラム | 友人や家族 | リターゲティング広告 | ニュースレター |
顧客接点を発見するには
カスタマージャーニーは、一連の顧客接点をまとめただけのものではありません。実際ある企業は、複数の接点の顧客満足度が90%以上なのにもかかわらず、顧客がブランドから離れていることに気付きました。問題は顧客接点マップが作成されていなかったことであり、そこに根本的な原因が隠れていました。
接点を可視化してみると、顧客に対するテクノロジーの導入支援がうまくいっておらず、そのせいで顧客の業務量が増加していたことが分かりました。営業は営業成績を上げることだけに集中し、テクニカルサポートは顧客から相談された問題を解決することに力を注いでいました。
顧客にとって最適な機能、価格、インテグレーションを見出すことに誰も注力していませんでした。同社はカスタマーエクスペリエンス全体を可視化していませんでした。
ブランドは明らかな接点だけに頼るのではなく、顧客エンゲージメントを可視化し、あらゆる接点を特定する必要があります。このプロセスによって、その接点は本当に有益なのか、それとも顧客離れにつながるようなただの無駄なコミュニケーションなのかが明確になります。
ブランドはここで分かったことを活用し、消費者の立場からカスタマージャーニーの可視化に取り組むことで、消費者が本当に喜ぶような製品やサービスを生み出すことができます。
顧客接点マップの作り方と始め方
カスタマージャーニーの可視化につながるきっかけを下記でご紹介します。
既存顧客に資料やニュースレターの購読を依頼する
既存顧客に連絡し、定期購入者や一定回数購入した顧客に割引プログラムを提供する
割引を提供し、顧客が興味を持ちそうな他の製品やサービスに関するカスタマーフィードバックを得たり、アンケートへの協力依頼をする
例えば、ある顧客に販売したばかりの調理器具で作れるレシピを提供したり、モバイルサービスの顧客に夏の旅行プランを提供したりするといったやり方があります。
では上記の内容を踏まえて、スキンケア用品のオンライン定期購入サービスのカスタマージャーニーを、カスタマーペルソナのShawnaと一緒に可視化してみましょう。
デジタル接点を活用したカスタマージャーニーの改善
アプリやウェブサイトの利用は、すべてデジタル接点です。このような接点は、利用しやすく魅力的であることが極めて重要です。デジタル接点によって、単純なコミュニケーションよりもはるかに多くのチャンスを得られます。デジタルトランスフォーメーションは、「ファミリーセダン」級のカスタマーエクスペリエンスを「フェラーリ」級に格上げしてくれます。
適切な顧客接点を持ち、堅牢なシステムによってデータの収集、共有ができれば、顧客の全体像を把握できます。デジタルトランスフォーメーションの主な目標の一つは、顧客自身と顧客とのコミュニケーションに関する多くのデータを収集することで、顧客を深く理解し、ニーズを予測できるようになることです。再びデートの例えに戻りますが、もし一緒に出掛けても相手のことをよく理解できなければ、おそらく相手もその機会を有効活用できたとは感じないでしょう。
接点を利用すると、顧客の全体像を把握できます。
例えば銀行の場合、顧客がお金を振り込むためにインターネットバンキングを利用し、その後住宅ローンを計算したり自動車ローン金利をチェックしたとします。このときに得られたデータは、住宅ローンや自動車ローン関連の接点を含むカスタマージャーニーを描くために活用するべきです。必ずしも強引な営業をする必要はありませんが、自動車ローンに関するメールや、ディーラーで新車を最安値で買う方法に関する記事へのリンクなどを送ることもできます。
このような接点を利用して、顧客の心の中にある自社の存在感を高めたいと誰もが考えるはずです。しかし、顧客に迷惑をかけたり、必死さが伝わるような事態は避けたいでしょう。重要なのは、自社が顧客のための存在であると示すことです。
十分かつちょうど良い頻度の接点を提供するためには、簡単な顧客満足度調査を実施し、顧客がどのような連絡方法やオファーに興味があるのか質問すると良いでしょう。顧客の迷惑になるようなメールの送付は法的に禁止されています。それだけでなく、顧客に対する敬意を示し、顧客が自らの体験を自分でコントロールできるようにするためにも顧客に迷惑をかけてはいけません。顧客満足度調査は、初回購入時にメールで感謝の気持ちを伝え、カスタマーフィードバックを依頼するときに実施すると良いでしょう。この機会に、自社と顧客との関係性のイニシアチブを握っているのは顧客だと伝えることができます。
明確かつ慎重な方法であらゆる顧客接点を発見し、厳選することで、全見込み顧客と有意義な関係性を築き、顧客ロイヤルティを獲得することができます。