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カスタマーサクセスとは?役割、業務内容からツール、事例まで幅広く解説

カスタマーサクセスは、顧客の成功を中心に据えた戦略的アプローチとしてますます重要視されています。この記事では、カスタマーサクセスの基本的な考え方から、具体的な導入ステップや効果的なツールまで、実際の事例を交えながら幅広く解説します。

更新日: 2024年11月20日

カスタマーサクセス

企業の成功は、他社の成功にかかっていると言われたら、どう思いますか? この発言は事実に基づくものです。急速に変化するビジネス環境において、顧客の成功なくして自社の成長はありません。今日の顧客中心の市場において、トップの業績を上げている企業は、競合他社よりもカスタマーサクセス(顧客の成功)を優先しています。
この記事では、カスタマーサクセスの基礎知識、類似用語との違い、導入によってもたらされるメリットについて解説します。その後、導入を成功させるためのポイント、ツールについて、最新の実例を交えながら解説します。

カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスとは、顧客が製品やサービスを通じて目指す成果を確実に達成できるよう支援する取り組みです。単なる製品サポートとは異なり、顧客の事業目標や課題を深く理解し、問題が起きる前に先回りしてサポートすることで、継続的な取引関係を築いていきます。
たとえば、会計ソフトウェアを導入した企業に対して、単に操作方法を説明するだけでなく、月次決算の効率化という目標達成に向けて、業務フローの設計から定着までを支援します。
顧客の成功に向けて積極的に関わることで、顧客満足度の向上と長期的な契約継続を実現します。

カスタマーサクセスが注目される背景

なぜカスタマーサクセスが注目を浴びるようになったのか、それにはいくつかの理由があります。

サブスクリプション型ビジネスの台頭


従来、企業は商品(製品)を一度販売することで利益を上げていましたが、近年は大きな変化が起きています。売り切り型から月額・年額の定額料金で継続的にサービスを提供するサブスクリプション型へと、ビジネスモデルが進化しているのです。
このモデルの特徴は、数百万〜数千万円の製品やサービスを、月々数千円〜数万円で利用できることです。導入の敷居が下がり契約しやすくなる一方で、気に入らなければ簡単に解約でき、競合他社のサービスへ移行することも容易です。
そのため、このモデルでは「契約」はゴールではなく、むしろスタートラインとなります。顧客との継続的な関係を築き、価値を提供し続けることが重要になるのです。カスタマーサクセスが注目される最大の理由は、まさにここにあります。

デジタル化による顧客行動の変化

デジタル化の進展により、顧客行動も大きく変化しています。オンラインでの情報収集や購入が一般化し、顧客は迅速かつパーソナライズされたサービスを求めるようになりました。SNSやレビューサイトを通じて顧客の声が企業評価に直結する現代では、顧客ニーズの的確な把握と迅速な対応が不可欠です。

データ活用の重要性

データ分析技術の発展により、企業は顧客の行動パターンやフィードバックをリアルタイムで把握できるようになりました。これにより、問題が深刻化する前に予防的なサポートを提供したり、解約リスクの高い顧客を早期に発見したりすることが可能になっています。
カスタマーサポートの受動的な対応だけでなく、データに基づいて予測される課題や不安を先回りして解決する、プロアクティブ(先取り)な接触が重要になってきています。

組織体制の変革

デジタル化とサブスクリプションモデルの普及により、企業の組織体制にも変化が求められています。従来の縦割り組織では、顧客の多様なニーズに迅速に対応することが難しくなってきました。そこで重要となるのが、部門間の明確な役割分担と効果的な連携です。カスタマーサクセスチームは顧客の成功に専念し、アカウントマネージャーはその関係性を基盤に提案活動を行います。この連携強化により、顧客価値と収益の両立が可能となります。

カスタマーサクセス戦略を必要としている企業とは?


カスタマーサクセス戦略は、特定の業種やビジネスモデルに限らず、多くの企業にとって重要な要素となっています。カスタマーサクセス戦略の導入を検討するべき企業は以下の通りです。複数の要素を持つ企業ほど、カスタマーサクセス戦略の導入効果が高くなります。

サブスクリプション型のビジネスモデルを採用している企業

代表的なのは、サブスクリプション型のビジネスモデルを採用している企業です。たとえば、月額制のソフトウェアサービスや定期購買型のECサイトなどです。顧客の継続的な利用が収益の基盤となるため、新規顧客の獲得以上に、既存顧客の継続利用を促進することが重要です。

競争が激化している市場の企業

類似サービスへの乗り換えが容易な現代では、製品やサービスの品質だけでなく、顧客との関係性が競争優位性を生み出す重要な要素となります。カスタマーサクセスを通じて強固な信頼関係が築くことができれば、価格競争に巻き込まれることを防ぐことができるでしょう。

顧客のニーズが多様化・高度化している企業

製品やサービスが高度化し、顧客からの要望が複雑化している企業では、きめ細かなサポート体制が欠かせません。カスタマーサクセスチームが顧客の声を直接吸い上げ、製品開発やサービス改善に活かすことで、市場の変化にも柔軟に対応できます。

データ活用で成長を目指す企業

顧客データを活用した経営判断を重視する企業にとって、カスタマーサクセスは重要な戦略となります。日々の顧客とのやり取りから得られる質の高いフィードバックは、製品開発やサービス改善の貴重な資源です。カスタマーサクセス活動を通じて得られるデータは、顧客ニーズの予測や最適なタイミングでの提案を可能にします。

カスタマーサービス・カスタマーエクスペリエンスとの違い


カスタマーサクセスと似た言葉に、「カスタマーサービス」や「カスタマーエクスペリエンス」があります。
いくつかの類似点や重複点はありますが、これらを扱う他のチームやグループと役割は異なります。カスタマーサクセスの役割を明確にしたうえで、その違いについて、以下で詳しく説明します。

カスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスの主な役割は、顧客が自信を持ち、知識豊富なユーザーとなり、企業の製品やサービスを利用して目標を達成できるように支援することです。顧客の目標や長期的な成長、満足度のみに焦点を当てます。
主要な役割:オンボーディング、教育、普及、価値の提供、カスタマーアドボカシー、積極的なやり取り、カスタマーサポート、顧客の維持、解約管理、クロスセル、アップセル。
不可欠な理由: 顧客がソリューションに期待する投資収益率(ROI)の目標達成を支援することで、ロイヤルティの高い顧客を増やせるようになります。

カスタマーサービスとの違い

カスタマーサービスとは、顧客による製品やサービスの発見、使用、最適化、トラブルシューティングをサポートする取り組みを指します。サポート担当者は、製品の機能に関する質問への対応や短期的な問題の解決、技術的な問題に関する情報提供を主に担います。
一方、カスタマーサクセスでは、顧客のニーズを予測し、サポートに問い合わせる前に戦略的なアドバイスを提供することを目指します。
主要な役割: カスタマーサポート、顧客の問題点への対応、顧客からの質問への回答、問い合わせの解決や円滑なエスカレーションを通じて、サポートに関する顧客との約束を守ります。
不可欠な理由: 企業が顧客を維持するうえで貢献します。
カスタマーサービスについて詳しくは下記で解説しています。

カスタマーエクスペリエンスとの違い

カスタマーエクスペリエンス(CX)は、カスタマージャーニー上のタッチポイント(接点)に焦点を当てます。問題が生じているおそれがある接点や顧客とのインタラクションを最適化する方法を判断します。
一方のカスタマーサクセスでは、カスタマージャーニーの結果に焦点をあて、望ましい結果をもたらし、クライアントの収益を増加させる取り組みに力を入れます。

  • 主要な役割: 営業、カスタマーサクセス、プロフェッショナルサービス、カスタマーサポート、マーケティングなど、顧客と接するチーム全体で、すべての主要な顧客との接点でのコミュニケーションを可能にするエンドツーエンドのカスタマーエクスペリエンスを設計します。
  • 不可欠な理由: 企業が顧客についてより深く理解し、ニーズを満たすうえで貢献します。

カスタマーエクスペリエンスについて詳しくは下記で解説しています。

カスタマーサクセス導入のメリット


カスタマーサクセスは、単なる顧客サポートを超えた戦略的な取り組みです。顧客満足度の向上を通じて、導入企業は以下のような具体的なメリットを享受できます。

顧客ロイヤルティの向上

顧客ロイヤルティとは、顧客が特定の企業やサービスに愛着や信頼を抱き、継続的に選び続けてくれる状態を指します。製品やサービスの価値を最大限に引き出せるよう支援することで、顧客との信頼関係が深まり、顧客ロイヤルティ向上が期待できます。満足度の高い顧客は、製品レビューやSNSでの好意的な投稿、口コミによる推薦を通じて企業の評価向上に貢献してくれるでしょう。

顧客ロイヤルティについては詳しくは下記で解説しています。

解約率の低下

顧客が製品やサービスから望ましい成果を得られるよう継続的な価値提供と的確なサポートを行うことで、解約リスクを大きく減らすことができます。顧客の定着率が高まり、安定した収益基盤の構築につながります。さらに、顧客のビジネスをより深く理解し、その成功に貢献し続けることは、他社サービスへの顧客の切り替えコストを高めることとなり、結果として長期的な関係維持が期待できます。

収益の拡大

既存顧客との信頼関係を基盤に、アップセルやクロスセルの機会を創出することで、顧客単価の向上が期待できます。また、満足度の高い顧客からの紹介により、新規顧客の獲得コストを抑えることも可能です。

製品・サービスの継続的な改善

カスタマーサクセスチームは、日々の顧客との深い関わりを通じて、製品やサービスに関する貴重なインサイトを得ることができます。この知見は、製品開発の方向性の決定や新機能の優先順位付け、マーケティング戦略の最適化、セールス活動の効率化など、組織全体の意思決定に活用できます。

カスタマーサクセスの主な業務

カスタマーサクセスを担うチームは、顧客の成功を実現するためにさまざまな業務を担います。

オンボーディングプロセスの管理

新規顧客が製品やサービスをスムーズに利用開始できるように、初期段階からの支援を行います。初期設定のサポートやトレーニングの提供を通じて、顧客が迅速に価値を実感できる環境を整えます。効果的なオンボーディングは、顧客の早期離脱を防ぎ、長期的な関係構築につながる重要な要素となります。

顧客のフォローアップ

顧客との定期的なコミュニケーションを通じて、製品・サービスの利用状況や満足度を継続的に把握します。対話やアンケート、利用データの分析により、潜在的な課題や改善ニーズを早期に発見し、迅速な解決を図ります。収集したこれらの情報は体系的に分析され、製品改善やサービス品質向上、必要なトレーニングの提供などの具体的なアクションにつなげていきます。

アップセル・クロスセルの機会の特定

アップセルは顧客により高機能や高価格の製品・サービスへの移行を促すこと、クロスセルは関連する別の製品・サービスの購入を勧めることを指します。顧客のニーズや利用状況を詳細に分析し、最適なタイミングでのアップセル・クロスセルにつながる追加提案を行います。既存の製品やサービスと関連する新たな価値を提案することで、顧客のビジネス成果を最大化すると同時に、企業の収益向上にも貢献します。

成果レポートの作成

カスタマーサクセスの取り組みが顧客に与える影響を定量的に測定し、定期的なレポートにまとめます。KPIの設定と評価を通じて、戦略の改善点や次のステップを明確にします。これらの成果を可視化することで、社内の関係者にカスタマーサクセスの重要性を効果的に伝えることができます。

このように、カスタマーサクセスチームは包括的なアプローチで顧客の成功を支援します。これらの業務を通じて、顧客の成長と自社の発展を同時に実現していきます。

カスタマーサクセスの代表的な6つのKPI

カスタマーサクセスの取り組みを効果的に推進するには、適切な指標で成果を測定することが重要です。ここでは、代表的な6つのKPI(重要業績評価指標)について解説します。

LTV(顧客生涯価値)

LTV(顧客生涯価値)とは、一人の顧客がサービスを利用する期間中に「どれだけの利益をもたらしたか」を累計したものです。顧客を「発注側の企業」にも置き換えられます。既存顧客の維持は新規顧客獲得よりもコストが低く、リピート購入や追加サービスの利用により、より大きな収益を生み出す可能性があります。LTVが高いほど、顧客との長期的な関係が築けていることを意味します。

LTVについて詳しくは下記で解説しています。

解約率(チャーンレート)

解約率(チャーンレート)は、一定期間内にサービスの利用をやめた顧客の割合です。期間開始時の総顧客数に対する期間内の解約数の割合として計算されます。低い解約率は、顧客が継続的に価値を感じていることを示し、カスタマーサクセスの効果として評価できるでしょう。
解約率(チャーンレート)について詳しくは下記で解説しています。

アップセル率・クロスセル率

アップセル率とクロスセル率は、これらの活動の成果を示す指標です。アップセル・クロスセルが成功した顧客が全顧客に占める割合として計算されます。高いアップセル率とクロスセル率は、顧客のニーズや課題を深く理解し、適切なタイミングで価値ある提案ができていると評価できます。

顧客維持率(リテンションレート)

顧客維持率(リテンションレート)は、一定期間中に取引を継続している顧客がどれだけいるかを示す指標です。その期間中にロイヤルティを維持している顧客に焦点をあてており、チャーンレートとは相対する関係にあります。高い顧客維持率は、顧客が長期的に価値を感じ続けていることを意味します。
顧客維持率について詳しくは下記で解説しています。

NPS®(Net Promoter Score)

NPS®(Net Promoter Score)とは、顧客ロイヤルティを数値化する指標で、高いほどカスタマーサクセスがうまくいっていると評価できます。「この企業を、親しい人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問によって測定します。高いNPS®は、顧客が自社のサービスを他者に推奨する可能性が高いことを意味します。
NPS®について詳しくは下記で解説しています。

CSAT(顧客満足度スコア)
CSAT(顧客満足度スコア)は、顧客が製品やサービスにどれだけ満足しているかを測る指標です。通常、顧客に対して簡単なアンケートを実施し、満足度を数値化します。CSATは、顧客の期待に応えられているかどうかを示す直接的な指標であり、カスタマーサクセスの改善に向けた具体的なアクションを導き出すために利用されます。
CSATについて詳しくは下記で解説しています。

カスタマーサクセス導入の6ステップ

カスタマーサクセスの導入は、段階的なアプローチで進めることが成功への鍵となります。以下の手順に沿って、自社にあった方法で導入を進めていきましょう。

ステップ1: 目的・目標の設定

カスタマーサクセス導入の目的を明確にすることから始めます。企業のビジョンや戦略に基づいて、「顧客満足度の向上」「解約率の低下」「収益の増加」など、具体的なKPIを設定します。この目標設定の過程では、経営陣を含む全社的な合意形成が重要です。明確な目標があることで、その後の取り組みの方向性が定まり、成果の測定も容易になります。

ステップ2: カスタマーサクセス戦略の立案

顧客理解から始める戦略立案は、カスタマーサクセス導入の重要なステップです。まず既存顧客を利用頻度、契約規模、業種、成長ステージなどの観点から分析し、異なるニーズを持つセグメントに分類します。この分類を基に、各セグメントの顧客がライフサイクルの各段階でどのような支援を必要としているのか、具体的な価値提供の方法を明確にしていきます。
顧客セグメンテーションについて詳しくは下記で解説しています。

ステップ3: 推進チームの編成

カスタマーサクセスを推進するためのメンバーを集め、推進チームを編成します。特に重要となるのが以下の要素です。

  • 各メンバーの役割と責任の明確化

  • 他部門との連携方法の確立

  • 意思決定プロセスの設計

  • 必要なスキルトレーニングの計画

カスタマーサクセスチームには、カスタマーサービス経験のある人材が求められます。雇用するべきスペシャリストの人数は、企業の規模や成長スピードによって異なります。

ステップ4: プロセスの設計とシステム・ツールの整備

カスタマーサクセス活動を効果的に実施するための基盤を整備します。オンボーディングから定期フォローアップまで、顧客との各接点におけるプロセスを設計し、それを支えるツールを選定します。プロセスとツールの選定では、将来の拡張性も考慮に入れることが重要です。

ステップ5: パイロット運用の実施

限定された顧客グループを対象に試験的な運用を開始します。この段階では、設計したプロセスの有効性を検証し、顧客からの反応を確認します。実際の運用を通じて見えてくる課題や改善点を丁寧に拾い上げ、本格展開に向けた調整を行います。小規模での検証により、リスクを最小限に抑えながら、効果的な導入方法を確立することができます。

ステップ6: 本格的な展開

パイロット運用で得られた知見を基に、対象顧客を段階的に拡大していきます。この過程では、成功事例の共有や社内教育の実施を通じて、カスタマーサクセスの考え方を組織全体に浸透させていきます。展開の各段階で生じる課題に丁寧に対応し、必要に応じて手順の調整を行います。全社展開では特に、各部門との連携体制の強化と、ナレッジの共有体制の確立が重要となります。

カスタマーサクセスを成功させるための6つのポイント


最高の結果を得るためのポイントを紹介します。

1. カスタマーサクセス専門チームの構築

カスタマーサクセスの取り組みは、顧客のために全力を尽くせる適切なチームを結成することから始まります。このチームは、カスタマーサービスやアカウントマネジメント、その他の類似する顧客中心の部門とは切り離す必要があります。

  • 小規模企業の場合: 特別な訓練を受けたカスタマーサポート担当者を1名のみ戦略的に雇用し、カスタマーサクセス業務を一任することができます。
  • SaaS企業、大手企業、またはサブスクリプションベースのビジネスの場合: 特定の顧客企業を専門に担当するチームメンバーを擁する、より大きなカスタマーサクセスの部署が必要です。また、チームをリードし、製品やサービスから長期的にメリットを得られるように顧客を支援する業務の責任者として、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)も必要です。

あらゆる面において、多様性のあるチームを用意することが重要です。経歴や経験の異なるメンバーをチームに迎えることで、異なるスキルセットや視点がチームにもたらされます。このような多様性のあるチームを結成すると、CSMはより斬新で、クリエイティブに顧客の支援に臨めるようになります。
カスタマーサクセスマネージャーについて詳しくは下記で解説しています。

2. 全社的なカスタマーサクセス文化の醸成

カスタマーサクセスを専門チームだけの責務だと考える人は少なくありません。しかし、カスタマーサクセスには会社が一致団結して取り組む必要があります。そのための最も効果的な方法は、経営層の支持を得ることです。顧客継続率の向上や既存顧客からの追加発注による売上貢献といった具体的な数字で経営指標との関連を示しましょう。経営層からの明確な支持があれば、全社的な取り組みへと発展させやすくなります。

各部門への展開では、カスタマーサクセスが各部門にもたらすメリットを具体的に示すことが効果的です。たとえば、営業部門であれば顧客の成功事例を活用した商談促進、製品開発部門であれば顧客フィードバックを活かした機能改善などです。顧客の成功が企業の成長につながるという認識を組織全体で醸成していきましょう。

3. データドリブンな意思決定の仕組み作り

カスタマーサクセスの効果を最大化するには、感覚や経験則だけでなく、データに基づいた意思決定が不可欠です。製品の利用ログや顧客とのやり取り、サポート履歴などのデータを一元管理する仕組みを整えるには、CRMの導入が効果的でしょう。顧客の状況をリアルタイムで把握し、チーム間で情報を共有することができます。データ分析は次のような視点で行います。

  • 問題点の特定: サポート担当者を通じて集まるクレームや不満を体系的に記録し、顧客の成功を妨げている課題を明確にします。苦情は製品やサービスと関係するものだけではありません。請求時の問題といった比較的単純でも顧客に大きな影響を与える課題を見逃さないようにしましょう。
  • 成功要因の把握: 成果を上げている顧客の成功の要因を解明しましょう。カスタマーサクセス業務を通じて顧客の得意分野に磨きをかけ、常に再現することを目指しましょう。

分析結果は必ず具体的なアクションにつなげることが重要です。たとえば、解約リスクの高い顧客には、予防的なフォローアップや製品機能の改善提案などを行います。成功している顧客から得られた知見は、新規顧客のオンボーディングやトレーニングプログラムに組み込むなど他の顧客支援に活用します。

4. 積極的なオンボーディングの実施

効果的なオンボーディングは、顧客が製品やサービスの価値を早期に実感し、スムーズな利用を開始するための重要なプロセスです。適切に設計されたオンボーディングにより、顧客は自社の課題解決に向けた具体的な活用方法を理解し、確実に実践できるようになります。

たとえば、以下のようなオンボーディングを提案できます。

  • 製品・サービス導入時の歓迎ビデオ通話

  • 無料トライアルに登録した顧客向けのアプリ内チェックリスト形式のオンボーディング

ただし、大量の情報を顧客に詰め込むのではなく、処理できる量を考慮したうえで有益な情報を提供することを心掛けましょう。

5. 顧客セグメンテーションによるパーソナライズ戦略

効果的なカスタマーサクセスを実現するには、すべての顧客に画一的なアプローチを取るのではなく、特性に応じた支援が必要です。契約規模や業種、成熟度など複数の要素に基づいて顧客を分類しましょう。分類に応じて、支援内容やメッセージを調整することで、ニーズに合わせた適切な対応ができるでしょう。
特に満足度の高い顧客に対しては、紹介プログラムへの参加を促すことで、新規顧客の獲得にもつなげられます。たとえば、紹介顧客が契約した際の特典提供や事例掲載による認知度向上などは顧客にとってもメリットを感じるオファーとなるでしょう。

6. 継続的な改善サイクルの構築

カスタマーサクセスの取り組みは、定期的な見直しと改善が欠かせません。KPIモニタリングを通じて効果測定を行い、その結果を基に戦略やプロセスの最適化を進めます。改善活動を組織文化として定着させることで、変化する顧客ニーズにも柔軟に対応できる体制を維持します。

カスタマーサクセスを成功に導くツール

カスタマーサクセスを効果的に推進するには、適切なツールの選択と活用が不可欠です。以下に、主要なツールとその特徴を解説します。複数のツールを連携させることで、より効果的なカスタマーサクセスを実現できるでしょう。

チャットボット

チャットボットとは、24時間365日稼働する自動応答システムです。顧客からのよくある質問に即座に回答し、初期対応の効率化に貢献します。AIを活用して顧客の意図を理解し、適切な回答や必要に応じて人間のオペレーターへの引き継ぎを行います。カスタマーサクセスチームは複雑な問い合わせにより多くの時間を割くことができ、サポート品質の向上につながるでしょう。

チャットボットについて詳しくは下記で解説しています。

オンボーディングツール

オンボーディングツールは新規顧客や既存顧客が製品やサービスを効果的に利用できるよう支援するツールです。ステップバイステップのガイダンスや、インタラクティブなチュートリアルを提供することで、顧客の習熟度を高め、製品の価値を最大限に引き出すことができます。これにより、顧客の初期段階でのつまずきを減らします。

CRMシステム

顧客データを一元管理するツールです。契約情報やコミュニケーション履歴、利用状況などあらゆる顧客接点のデータを管理できます。顧客の全体像を把握し、適切なタイミングでの施策実施が可能になります。

CRMについて詳しくは下記で解説しています。

カスタマーサポートツール

顧客からの問い合わせを効率的に管理するツールです。チケット管理やナレッジベース、マルチチャネル対応などの機能により、迅速で質の高いサポートを提供できます。サポート履歴は貴重な情報源となり、カスタマーサクセス活動の改善にも活用できます

カスタマーサポートツールについて詳しくは下記で解説しています。

カスタマーサクセス管理プラットフォーム

CRMと連携して顧客データを一元管理し、顧客の状況を可視化できるツールです。カスタマーサポートツールが日々の問い合わせ対応に焦点を当てているのに対し、こちらは顧客の長期的な成功を支援するためのツールです。利用状況の可視化や解約リスクの予測、KPIの管理、アップセル・クロスセルの機会を見極めなど、より戦略的な機能を備えています。顧客のライフサイクル全体にわたって計画的な支援を実現します。

これらのツール選定にあたっては、自社のニーズや予算、既存のシステムとの相性などを十分に検討することが重要です。

カスタマーサクセスの成功事例

カスタマーサクセスの取り組みが成功している事例を紹介します。両社ともカスタマーサクセスを支援するツールとして、Zendesk Supportを導入しています。

HENNGE株式会社の事例

HENNGE株式会社は、企業向けSaaS認証基盤を提供する会社です。顧客との良好な関係を維持し、低解約率を維持するため、カスタマーサクセス部門を設立しました。しかし、顧客対応が属人的で、対応のスケールに限界を感じていました。問い合わせ対応の効率化を図るため、Zendesk Supportを導入した結果、営業部門や開発部門との連携が強化され、顧客の声を適切なアクションにつなげられるようになりました。
詳細は以下のページで紹介しています。

株式会社ココナラの事例

スキルマーケットを運営する株式会社ココナラは、カスタマーサポートで大きな課題を抱えていました。「使い方」の問い合わせは発生前の段階での解決が望ましい一方、「ユーザー間トラブル」には丁寧な個別対応が必要不可欠でした。この相反するニーズに応えるため、ハイブリッド型のカスタマーサクセスを模索していました。Zendesk Support導入後は、ヘルプページの徹底的な改善と、状況に応じて使い分けられる400パターン以上の定型文(マクロ機能)を活用することで、問い合わせ削減と質の高い個別サポートを両立し、効率的な業務運営を実現しています。
詳細は以下のページで紹介しています。

カスタマーサクセスは自社の長期的な成長に不可欠

カスタマーサクセスの導入は、サブスクリプション型ビジネスが主流となった現代において、競争優位性を維持・向上させるための重要な経営戦略です。顧客の成功を長期的な視点で支援することで、継続的な取引関係が構築され、結果として自社の安定した収益基盤へと成長するでしょう。効果的な導入には、まず経営層から現場まで一貫したカスタマーサクセスの目的意識を共有し、段階的に進めることが重要です。

また、施策の展開には、顧客データの効果的な活用が不可欠です。これを実現するためのツール選定と運営体制の整備は、自社の規模や業態に考慮して慎重に行いましょう。
Zendeskはカスタマーサクセスを支援するソリューションを提供しています。14日間無料でお試しいただける無料トライアルをご用意していますので、ぜひお気軽にお試しください。

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