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AIがCX(顧客体験)にもたらす13のメリット

著者: Iniobong Eyo, 寄稿者

更新日: 2024年6月21日

今日の多くのビジネスリーダーは、AI(人工知能)が持つ可能性をひしひしと感じています。Zendeskが日本を含む世界中の消費者やビジネスリーダーを対象に行ったCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)に関する年次調査であるCXトレンドレポート2024によると、CXリーダーの65%が、「これまでのCX業務を刷新するためにはAIが戦略上必要だ」と考えています。現在、多くの企業が高度なAIを導入しCXを改善するための取り組みを進めています。

本記事では、AIをCXに活用して迅速に一人ひとりに合わせたやり取りを顧客に提供する方法をご紹介します。

AIを活用したCXとは?

AIを活用したCXとは、機械学習チャットボット、デジタルエージェントなどのAI技術を使って、迅速かつ効率的で、一人ひとりに合った、先を見越した顧客体験を大規模に提供することです。基本的に、AIを活用したCXとは高度な技術を活用してCXを向上させることであり、CXチームの生産性を高め、企業のコスト削減に貢献することができます。

AIがCXにもたらす13のメリット

AIを活用したCXがどのように顧客満足度と組織の効率性、そして収益を向上させるのかを説明します。

1. 優れたカスタマーサポート体験を大規模に実現

カスタマーサポート向けAIを活用することで、企業は顧客満足度を維持し、顧客ロイヤルティを構築しながら、カスタマーサポートを大規模に展開することができます。

例えばAIからサポート担当者に、顧客とのあらゆるやり取りを一人ひとりに合わせるための情報を提供することができます。イギリスを代表する高級百貨店であるLiberty Londonは、Zendesk AIを利用して、問い合わせの目的、顧客の感情、言語を特定し、ラベル付けすることで、サポート担当者が各顧客のニーズをより深く理解できるようにしています。

Zendeskのサポート担当者画面の利用イメージ

さらに、企業はメール、SNS、チャット、メッセージングアプリなどにボットを導入し、チャネルをまたいでサポートを拡大することができます。また、ホリデーシーズンや製品発売時など、顧客からの問い合わせが増加する時期でも、ボットがあればカスタマーサポートチームは効率的に対応することができます。

2. 年中無休・24時間体制のカスタマーサポートを提供

顧客としては、相手が人間であれボットであれ、迅速で便利な年中無休・24時間体制のサポートを期待しています。CXトレンドレポートによると、消費者の51%が「すぐにサービスを受けたいときはボットとのやり取りが望ましい」と回答しています。対話型AIを使用することで、デジタルエージェントは週末や深夜といったサポート担当者が勤務時間外のときでも、いつでも人間のような自然な対話を提供することができます。

このようなチャットボットが、一般的な質問に迅速に対応することでカスタマーサポートの向上を支援し、サポート担当者はより複雑な問題に集中できるようになります。

ZendeskのAIチャットボットの回答イメージ

AIは顧客にサポートを常時提供するだけではなく、サポート担当者が迅速に回答できるように支援することも可能です。Zendesk AIのマクロ提案機能は、顧客からの問い合わせ内容にもとづいて、おすすめの回答テンプレートをサポート担当者に提案します。また、サポート担当者用の生成AIもあり、短い文章やわずかな単語から瞬時に回答を作成できます。このようにAIを活用することにより、初回応答時間、処理時間、待ち時間を短縮することができます。

Zendeskのマクロ提案機能のイメージ図

3. CXチームの迅速な立ち上げ・教育

新人のサポート担当者の研修もAIは支援できます。AIはバーチャルアシスタントの役割を果たし、新入社員にヒントやフィードバックをリアルタイムで与えながら、カスタマーサポート研修を実施することができます。例えば、AIは返信の口調をフレンドリーなものに変えたり、フォーマルなものに変えたりできます。また、類似のサポートチケット(問い合わせ)を表示することができるので、同様の質問に対して同僚がどのように返信したかを見ることができます。

4. 効率と生産性の向上

AIを搭載したチャットボットが問い合わせを処理し、反復的なタスクを自動化できます。AIツールはワークフローを合理化し、サポート担当者の効率と生産性を高めることができます。サポート担当者の仕事の負担を軽減すれば、付加価値の高いタスクや顧客が抱える複雑な問題に集中できるようになります。

Zendeskはインテリジェントルーティング機能とトリアージ機能を搭載しており、受信した問い合わせをAIで分析し、顧客感情、言語、目的を理解することができます。これにより問い合わせのエスカレーションを減らしつつ、ルーティングの精度を高められます。

さらにはスキルベースルーティング機能によって、専門知識の有無や会話の優先度などにもとづいてサポート担当者に問い合わせを割り当て、カスタマーサポート業務をさらに最適化します。

ZendeskのCX担当プリンシパルマネージャーであるGianna Maderisは、あらゆる規模の企業の効率を高めるうえでAIがいかに重要な存在になり得るかを熟知しており、次のように語っています。

「自動トリアージによって、どんな企業でも恩恵を受けることができると思います。手作業による問い合わせの分類をなくすことで、月220時間の節約を実現しています」

5. 高度にパーソナライズしたコミュニケーションを提供

AIが顧客一人ひとりに合わせたカスタマーサポートを提供するコンシェルジュのような役割を果たすため、サポート担当者は顧客の履歴や好みを把握し、顧客のニーズを適切に理解できるようになります。

例えば、ナチュラル志向の日用品を販売するGrove Collaborativeは、サポート担当者が一人ひとりに合わせた会話を提供できるよう、AIのインサイトを活用しています。AIは人間との会話に取って代わるものではなく、サポートツールとして機能するものであり、サポート担当者がすべての顧客に効率的でカスタマイズされたCXを提供するために必要な背景情報を伝えます。

6. 顧客のニーズと潜在的な問題を予測

AIは、注文履歴、行動、好みなどのデータを利用して、顧客のニーズを予測し、潜在的な問題を特定することができます。これにより先を見越したソリューションを生み出し、顧客維持率を向上させることができます。

例えば、ファッション小売業のMotel Rocksは、Zendesk AIを導入し、インテリジェントトリアージ機能とセンチメント分析によってカスタマーサポート業務を合理化しました。

Zendesk AIは、顧客の目的や感情のトーンにもとづいて問い合わせを自動的に分類するため、サポート担当者はすぐに状況を把握し、対応の優先順位を効率的に決定できます。さらに、AIは否定的な感情から非常に肯定的な感情まで、総合的な感情を表したシンプルな絵文字を割り当て、サポート担当者がやり取りに備えるための手がかりを視覚的に手早く提供します。

7. AIを利用した品質管理を提供

カスタマーサポートにおける従来の品質管理は、多くの場合人間による評価に依存していました。しかし、AIを利用した品質管理を行えば、顧客との会話から収集したデータにもとづいてサポート担当者のパフォーマンスを客観的に採点し、顧客感情を特定したり、リアルタイムでのコーチングが必要な領域を正確に把握することができます。

これにより、企業は問い合わせの傾向を掴んで問題に積極的に対処し、サポート担当者に一人ひとりに合わせたトレーニングを実施することで、優れたCXを一貫して提供できるようになります。

8. 顧客データを分析し、解約を予測・防止

AIを搭載したツールにより、カスタマーサポートチームは顧客感情のような構造化されていないデータを計測・分析して解約リスクの高い人物を特定し、直ちに対応することができます。AIアルゴリズムはNLP(自然言語処理)による予測分析を利用して、顧客とのやり取りから何千ものさまざまなキーワードを調べます。そして、迅速な提案を行ったり自動アラートを出したりして、顧客感情をモニタリング・分析し、エスカレーションが必要なケースや顧客離れを予測することができます。

センチメント分析によって顧客からのフィードバックを分析し、顧客がブランドでの体験についてどのように感じているかをより深く理解することもできます。これで課題がありそうな分野を特定でき、担当者は解約を防ぐために即座に行動を起こすことができます。

9. 顧客に特別オファーを提示

AIによって、関連性が高く、魅力的でタイムリーな特別オファーを顧客に提示できるようになる可能性があります。購入履歴や閲覧行動、人口統計などの顧客データを分析することで、AIは顧客が興味を持ちそうな商品やサービスを特定することができます。例えば、顧客が以前に閲覧したセール商品や、購入した商品と類似した商品をおすすめ商品として提案することができます。

AIチャットボットが顧客に商品を提案するイメージ図

また、リアルタイムのデータを使ってプロモーションを開始することも可能です。例えばカゴ落ちが発生した場合、AIを搭載したボットが商品をカートに入れたままにしている顧客に割引コードを送り、購入手続きを完了するよう促す場合があります。

10. WFM(ワークフォース マネジメント)を改善

CXトレンドレポートによると、CXリーダーの約80%が、「より優れたWFMツールを導入するために予算を増やしたい」と強く望んでいます。多くの企業がWFMにAIを活用し始めています。WFMツールがあれば、タスクを自動化し、データにもとづいたインサイトを提供し、意思決定者が前もって人員配置の計画を立てることが可能になります。

例えば、Zendesk WFMを導入すれば、AIを利用した予測機能によって過去のデータと顧客の行動にもとづいて人員配置の予測を行い、必要なサポート担当者の人数と配置先を掴むことができます。それと同時に、サポート担当者の自動スケジューリングにより貴重な時間を節約し、リアルタイムでサポート担当者のパフォーマンスをモニタリングすることによりアクティビティとスケジュール遵守の状況を可視化できます。

11. 運用コストの削減

AIをCXに統合することにより、価値の低いタスクの自動化、そしてセルフサービスによって問い合わせの抑制を実現し、さらに新たなツールやトレーニング、人員増加を抑えて、運用コストを大幅に削減できます。AIは、タスクの自動化、コンテンツの推奨、顧客ニーズの予測分析に優れています。経済的変化が起きている間にAIに投資すると、チームは支出を増やすことなく問い合わせ量の増加に対応し、一人ひとりに合ったサービスを迅速に提供できるようになります。

12. より一貫したブランド体験を創造

生成AIを使えば、企業は自社のブランドアイデンティティに合ったペルソナのチャットボットを作成することができます。すべての顧客とのやり取りにおいて一貫したトーンとパーソナリティを維持できます。また、ブランドを際立たせてブランドイメージを高め、顧客満足度を向上させられます。

ZendeskのAIチャットボットのペルソナの設定イメージ図

さらに、サポート担当者にはAIを使って顧客との会話中にトーンを調整することができます。例えば、Zendeskはトーン変更機能を提供しており、サポート担当者が状況に応じてメッセージの文言をよりフレンドリーにしたり、またはフォーマルにしたりして、即座に変えることができます。

13. ナレッジマネジメントの強化

セルフサービスは、卓越したデジタルカスタマーサポートを提供するための重要な要素です。AIを利用したナレッジマネジメントツールによって、ナレッジベースのコンテンツを最新の適切な状態に保つことができます。

例えば、ZendeskはコンテンツキューはAIを搭載しており、パフォーマンスの低い記事を特定して更新を促すことで、ヘルプセンターのコンテンツ管理を効率化しています。

結果として、チームは一般的な質問や顧客のニーズにFAQやチャットボットで効果的に対応できるため、問い合わせ数を削減することができます。生成AIによって数個の箇条書きを瞬時に長文に展開し、完全なFAQの記事にすることで、コンテンツ作成をさらに効率化できます。また、ワンクリックで、FAQ記事の文章をフレンドリーにもフォーマルにもトーンを変更することができます。

CXにおけるAIの導入例

AIによってどのようにCXを向上させられるかを解説してきましたが、AIが企業のCXを向上させた実例をいくつかご紹介します。

Unity

3D開発プラットフォームであるUnityは急成長を遂げ、それに伴い問い合わせ数が急増しました。UnityはZendeskの自動化ソリューションとボットを導入することで、人手を加えることなく大幅に多くの顧客からの問い合わせを解決できるようになりました。導入効果: Unityは約8,000件のチケットの削減に成功し、初回応答時間を83%短縮。その結果、同社のCSAT(顧客満足度)は93%に向上し、約130万ドルを節約することができました。

Esusu

フィンテックのスタートアップ企業Esusuは、CXを合理化するためにZendesk AIを採用しました。同社はマクロ提案、コンテキストパネルのインテリジェンス、トレンド分析など、ZendeskのAdvanced AIの機能を活用してカスタマイズしたサポートを顧客に提供し、カスタマーサポート業務の効率を向上させました。さらには貴重な製品フィードバックも収集しています。また、生成AIを利用した問い合わせの要約機能は新人社員にとってのゲームチェンジャーでもあり、教育や立ち上げがスムーズになったため、すぐに顧客支援業務に取り組めるようになりました。導入効果: Esusuの初回返信時間が64%低下。同社は月平均1万件のチケットの解決時間を34%短縮し、ワンタッチ解決率80%を達成しました。

Compass

Compassはテクノロジーを駆使した有名な不動産仲介会社で、70の市場で事業を展開し、26,000人以上の担当者をサポートしています。急成長を遂げていることと不動産取引の複雑さから、Compassは秀逸なCXを提供しながらコスト効率よく規模を拡大しなければならないという課題に直面していました。そこでCompassはZendesk AIを導入し、顧客からの問い合わせを専門知識を持つサポート担当者に自動的にルーティングし、CX業務を統合して全体的な効率を高めました。導入効果: AIやその他のZendeskの機能のおかげで、Compassは解決率が9%向上。ワンタッチ解決率が65%、顧客満足度スコアが98%に達しました。

Zendeskで新時代のCXを実現

CXにAIを取り入れた未来はすぐそこまできています。CXツールにAIを組み込むことで、少ない労力で多くのことができるようになります。カスタマーサポートチームが一人ひとりに合った卓越したサポートを提供するための支援から、業務効率の改善まで、Zendesk AIは対話型CXの未来を形作っています。AIの力を活用することは、現在も将来も「インテリジェント」な選択です。

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