カスタマーサービスは、言わば企業の生命線です。会社の業績にも評判にも大きく影響します。
かつて、サポート人材の採用活動で何より重視されていたのは予算でした。優秀な候補者と比べて経験もやる気も劣る人材が、希望する給与が低いという理由だけで採用されていたのです。しかし、より良いカスタマーエクスペリエンスを実現するためには、サポート担当者が提供する”サービスの質”が重要となってきます。
サポート担当者は、顧客と接触する機会が最も多い立場であり、ブランドの顔と言えます。そのため、できる限り有能な人材を揃えなければなりません。しかし、実際に採用担当者に話を聞くと、それは言うほど簡単なことではないようです。
そこでこの記事では、理想的なサポート担当者の条件、求人広告の内容や掲載場所、採用プロセスといった点に触れながら、優秀なサポート担当者を採用するためのヒントをご紹介します。
この記事を読めば、ブランドの顔として、満足度の高いカスタマーサービスを提供してくれる優秀な候補者を呼び込み、採用することができるはずです。優れた人材と一緒に仕事ができれば、あらゆる業務にプラスの影響があるでしょう。
以下、次の項目に沿って説明していきます。
優秀なサポート担当者の条件を考える
求人広告に力を入れる
カバーレターを評価する
優れたレジュメを見極める
電話面接を挟む
面接を実施する
実務テストを行う
最終的な判断を下す
1. 優秀なサポート担当者の条件を考える
優秀な候補者を採用することは、海で釣りをするようなものです。ただしここでは、釣りたい魚を具体的に決めておく必要があります。対象の人材を絞り込むには、最初にいくつか条件を設定しておきます。具体的な条件としては、以下が考えられます。
スキル
初歩的な業務から始めるにしても、最低限のカスタマーサービススキルは身につけている人物が良いでしょう。
経歴
カスタマーサービスにかかわる何らかの職務経験(レストランでの接客、電話対応など)がある人物が望ましいでしょう。
人柄
仕事への意欲、親しみやすさ、思いやり、我慢強さ、共感力を持ち合わせているのが理想的です。
決め手となる要素
1つに絞るのは難しいものの、チームにフィットすることや、どこか好感が持てることなども大事な要素です。
2. 求人広告に力を入れる
机に向かって求人広告を作成していると、とてつもなく重大な任務を背負っているような気になってくるかもしれません。良いチームを作れるかどうかは自分の力次第と思ってしまうと、大きなプレッシャーに襲われてしまいます。
しかし、それほど難しく考えることはありません。必ずしも毎回一から広告を作り直す必要はないからです。他の採用担当者が作ったものも含め、今までに作成した求人広告の中から、使えそうなコンテンツがあったら再利用するのです。特に、できが良かったものについては積極的に使うと良いでしょう。多少修正する部分があったとしても、最初から始めるよりはずっと簡単です。少なくとも下敷きになるものがあれば、他のメンバーにも協力を仰ぎやすくなります。また、オンラインで求人広告を探し、似たような職種を募集している同業他社の例があれば、自社の企業文化に合うようにカスタマイズするのも手です。
関係者を積極的に巻き込むのも良い方法です。募集する人材と同じ職務の担当者や、一緒に仕事をすることになる従業員からは、貴重な意見が得られるに違いありません。皆でアイデアを出し、応募者の必須条件と歓迎条件をリストアップしていきましょう。
リストが完成したら、必須条件が多すぎないか確認します。もし多すぎるようなら、歓迎条件にいくつか移動して、バランスをとりましょう。
求人広告の作成過程で、応募者に期待する業務や能力が改めてはっきりしてくるはずです。自社における役割、日々のタスク、成長の機会など、その職務についてあらゆる角度から考えることができるでしょう。また、人柄の面でも適した人材を呼び込むには、自社の企業文化の特徴を捉え、それが伝わるような広告にする必要があります。
求人広告の内容についてすべての関係者から承認を得られたら、最後に掲載場所を検討します。重要なのは、たくさんの人に応募してもらうことではなく、優秀な候補者を集めることです。自社のWebサイトの求人ページだけでなく、募集したい人材がチェックしていそうな求人掲載サイトや情報収集サイトを調べて、それも掲載しましょう。
3. カバーレターを評価する
最近では、採用担当者の間でカバーレターよりもレジュメを重視する傾向が強まっています。確かにレジュメは非常に重要な書類ではありますが、応募者の詳細な情報まで含まれていません。適切に作成されたカバーレターからは、レジュメではわからないような経歴に関する情報を得ることができます。
以下のように、カバーレターにはレジュメの情報を補足する役割があります。
レジュメでは、応募者の職歴は記載されていても、具体的な実績までは説明されていません。通常、応募者がチームあるいは単独で上げた実績についてはカバーレターで触れられています。
レジュメの役職名だけを見て判断するのは考え物です。役職名からはっきりわからなくても、カバーレターをよく読めば、応募者がチームまたはプロジェクトのリーダーを務めた経験があることがわかるかもしれません。
応募者の学歴についても、レジュメの箇条書きの情報より、たとえ数行でもカバーレターの説明の方が良い判断材料になります。
何より大事な点として、カバーレターは応募者を知るための最初の糸口であり、応募者が自社の一員としてどんな活躍を見せてくれそうか、たくさんのヒントを与えてくれます。
カバーレターを評価する際は、次のポイントを重視しましょう。
文章力:読みやすく簡潔で、誤りがないか
カバーレターの文章から、細部にまで注意を払える人物かどうか見極められます。また、チケット、メール、チャットでの顧客対応に必要な文章力も判断できます。
熱意とやる気:ぜひとも自社で働きたいのか、とりあえず職に就きたいだけなのか
何でも良いから職に就きたいという応募者を否定することはありませんが、さまざまな条件を満たしていても熱意が感じられない人物と、条件の面で少し劣っていても自社で働きたいと心から望む人物ならば、どちらを選ぶべきかは明白です。志望動機をより具体的に説明できている応募者であれば、後者のタイプと見て良いでしょう。
面倒見が良いか
たとえば、祖母にメールの送り方を教えてあげた、子供向けのボランティア活動に携わっていたことがあるなど、挙げられているエピソードから他人を助けることに喜びを感じる人物がイメージできたら、その応募者は注目株です。
協調性に優れているか
応募者は皆、十分に時間をかけてカバーレターを作成しています。したがって、カバーレターは応募者の人柄を映し出す鏡とも考えられます。この人柄というのも重要なポイントです。応募者が採用されたら、一緒に働くことになるのですから、他のチームメンバーともうまくやれるような人材を選びたいところです。
4. 優れたレジュメを見極める
優れたレジュメは、不採用になってしまうものとは以下の点で異なります。
誤字脱字がない:自分のレジュメの校正もままならない人物に、顧客と信頼を築いたり、ブランドの評判を守ったりする仕事を任せることはできません。
自社の業界への関心や必要なスキルを持っていることが読み取れる:</strongたとえばIT系の企業なら、コーディングの知識は必要ないにせよ、少なくとも自社が専門とするテクノロジーを使い慣れている人物でなければなりません。職務経歴欄か専用の記述欄に具体的なスキルが列挙されている:文章力やプログラミングの習熟度のほか、場合によっては人柄もスキルに含まれます。スキルの内容そのものだけでなく、情報がうまく整理されているかという点にも注目しましょう。
杓子定規のルールに縛られていない:たとえば、レジュメの最初に学歴が記載されていると、最後に記載されているよりも効果的だという声がある一方で、イマイチだという考え方もあります。レジュメについては、常にケースバイケースで考えるのが正解です。1つの厳密なルールで判断する必要はありません。応募者のクリエイティビティやオリジナリティの見せ所と考えましょう。ただし、次のポイントは外せません。
必要な情報が網羅されている:経歴や学歴はもちろん、職務に関係していれば趣味も必要な情報です。たとえば、趣味がスケートボードというだけなら記載する必要はありませんが、週末に無料の高齢者向けスケートボード教室を開催しているという情報であれば、良いアピールポイントになります。
5. 電話面接を挟む
たった20分ほどの電話で相手を理解するのは難しいことですが、サポート人材の採用担当者であれば、それは定期的に行わなければならないことです。その1回の電話で、応募者に適切な質問をして、適切な答えが返ってくるかを確認し、職務や会社にふさわしい人物かどうかを判断することが求められます。これは決して簡単な仕事ではありません。
サービスの品質はビジネスに大きく影響するため、サポート担当者として最適な人材を確保することは非常に重要です。電話面接では、応募者の言葉から熱意や人柄がしっかり伝わってくるかどうかに注目しましょう。自社についてよく理解しているか、募集職種へのやる気は十分か、相手の話をよく聞いて確かめます。
電話越しでのほんの短いやり取りでも、自社にふさわしい人物かどうか十分に見極められるはずです。ここでの印象が良ければ、次の段階に進んでかまいません。
こうした点を踏まえながら、電話面接では、応募者が以下の5つの要素を満たしているかチェックします。
やる気
魅力的な人柄
コミュニケーションのマナー(自分が話すタイミング、相手の話を聞くべきタイミングをわきまえているか)
質疑応答力:質問によって適切な答えの長さは異なります。重要なのは、質問に十分に答えているかということです。
情熱(人助けを使命と感じているか)
6. 面接を実施する
面接では、応募者が次の点をクリアしているか確認します。
落ち着いていて、好感が持てる人物か
自社で働きたい、募集職種に就きたいという強い気持ちが伝わってくるか
本題から逸れずに、質問に十分に答えているか
抽象的な話ばかりでなく、具体例を交えているか
礼儀正しいか(視線を合わせる、相手の話を遮らない、おじぎをするなど)
Zendesk Relateのこちらの記事では、面接での質問例をご紹介しています。
面接では、応募者と同様に、皆さんもぜひ自社の代表として良い印象を残したいものです。そのためには、的確な質問を選ぶ必要があります。面接の時間は限られているため、核心を突くような質問に絞り込みましょう。そうすれば、より有意義な時間にすることができます。
応募者にリラックスしてもらうことも大切です。こちらから簡単に自己紹介をしたり、意見を返したりすれば、一方的にジャッジしているという印象が薄れ、応募者と会話しているような感覚で面接が進められます。相手にリラックスしてもらえた方が、引き出せる情報も多くなり、相手の人柄についてもたくさんのことが見えてくるはずです。
また、仮定の質問ばかりでなく、現実のシナリオに即した質問をするのもポイントです。応募者は、頭をひねって自分なりに最適な回答を導き出すでしょう。その回答から、相手が実際の状況で適切な対応がとれるかどうか判断することができます。他にも、自社や自社製品を無料トライアルなど何らかの形で利用したことがあるか尋ねてみましょう。答えが「イエス」であれば、その応募者は積極性に優れ、自社で働きたいという意欲に満ちていることがわかります。
最後に、面接を行うメンバー選びも大切です。複数の管理職に加えて、応募者の同僚となるスタッフにも参加してもらえば、一緒に働くイメージが湧く人物かチェックできます。
7. 実務テストを行う
自社の企業文化にフィットしている、レジュメに必須のスキルや経歴が記載されているといったポイントももちろん大切ですが、応募者を見るうえで一番注目すべきなのは、実務に耐える能力があるのかということです。
それを確かめるには、何か課題を与えるのがベストです。応募者に2件のチケット(顧客からの問い合わせ)に対応してもらいましょう。わざわざ演習用に作成したものではなく、実際のチケットを2件用意します。
ただし、どんな内容のチケットでも良いわけではありません。肯定的な意見が書かれたチケットと、中立的(または若干否定的)な意見が書かれたチケットを1件ずつ選びます。名前や日付などはあらかじめ削除してから、応募者に具体的な対応方法を指示し、制限時間を指定したうえで対応に臨んでもらいましょう。対応が終わったら、こちらで対応内容をチェックし、良かった点や改善すべき点などをフィードバックします。
なぜ肯定的・中立的なチケットを与えるかというと、ジャッジが難しいからです。明らかに否定的なチケットなら、主張がはっきりしているため、これは否定的な意見だと判断しやすい傾向にあります。しかし、肯定的・中立的なチケットというのはあいまいな言い回しが多いため、じっくり考えて評価する必要があります。
応募者が2件のチケットをどのように評価するかも重要ですが、実はここで一番重要なのは、フィードバックの時間です。こちらからのフィードバックを聞いている間、応募者は不機嫌そうな様子を見せていなかったでしょうか? また、こちらもフィードバックをしていて何だか嫌な気持ちになりませんでしたか?
応募者が注意深く耳を傾け、自社の一ファンとしてこちらの意見をポジティブに受け止めてくれているようなら、有力な候補者と見て良いでしょう。一方、苛立ちや動揺を見せるだけの応募者は適任とは言えません。
8. 最終的な判断を下す
最終的な判断を下す際は、採用活動にかかわったメンバー全員で今までのプロセスを振り返り、応募者について以下の点を改めて検討します。
情熱が感じられるか
趣味や関心の幅が広いか
人を助けることに喜びを感じているか
絶対に自社で働きたいという強い思いが感じられるか
即戦力として活躍してくれそうか
自社の企業文化に馴染み、他のチームメンバーとうまくやっていけそうか
将来的に会社の顔として、サポートを提供するすべての顧客に対し、自社の価値やミッションを実践してくれることを期待できそうか
上記にすべて当てはまっていても、この人物をどうしても採用したいと強く思えなければ、その応募者は不採用にします。思い切った判断のようにも思えますが、少しでも迷いがあれば採用しない方が賢明です。一般的に、以下の4つのいずれかの最終判断を下します。
1)採用する
2)不採用にする
3)募集職種については不採用にするが、別の職種を紹介する
応募者が企業文化にはフィットしているものの、職種に適していない場合、社内で他に募集中の職種があれば、それを紹介してみるのも手です。別の職種ならスキルを活かせる可能性があります。
4)採用をいったん見送る
採用活動では、募集定員よりも有力な候補者の数が多くなってしまうということが珍しくありません。しかし、これは後々活きてきます。今回は最も優秀な人材に採用通知を出し、他の候補者については、今後のために「保留リスト」に追加しておくのです。そうすれば、また追加人員を募集することになったときに、選考プロセスを一からやり直さずに済むかもしれません。
また、大型連休や繁忙期などに、チームの人数を一時的に増やしたいこともあるでしょう。その場合も保留リストを使えば、適切な人材に声をかけることができます。
まとめ
カスタマーサービスチームは、常に進化し続けるものです。日々学び、成長して、また新たな課題に立ち向かっていく必要があります。ここでご紹介したポイントを参考に、ぜひ最適な人材を見つけ出して、会社の価値を体現できる顧客ファーストのカスタマーサービスチームを作り上げましょう。