「自動対応率は97%。Zendeskの導入効果としてもっともインパクトが大きいのは、やはり自動化です。使い勝手を改善していくための取り組みとしてAPI連携の柔軟性、拡張性を効果的に活用し、さらなる運用の自動化を推し進めています。」
MSP部 部長
- 株式会社スカイ365
Zendeskソリューション導入の背景と課題
システムを安定的に運用していくためには、サーバーの状況変化・障害発生を早期に検知し、いち早く対応を開始することが重要となる。クラウドに特化したマネージドサービスプロバイダー(MSP)として運用支援サービスを提供する株式会社スカイ365では、2014年の創業以来、有人オペレーターによる24時間365日のサポートサービスを提供してきた。マルチクラウドを特徴とし、Amazon Web Service (以下、AWS)をはじめ、Microsoft AzureやSalesforceのようなSaaSにも対応。常に資格保有エンジニアが現場にいる万全な体制で、障害監視や障害対応、性能監視、バックアップ、問い合わせ対応などを実施している。1,000案件以上の実績を誇り、日々の監視対象はAWSだけで5,000インスタンスにも上る。
また、ITサービスマネジメントシステム(ITSMS)に関する国際規格「ISO/IEC 20000」や、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格「ISO/IEC27001」の認証を取得。高い品質とセキュリティを確保しながら、顧客のシステム運用品質の向上とコスト削減に奔走している。
そんな同社は、障害対応の一環であるアラート対応業務にZendeskを導入している。その流れはこうだ。顧客のAWS環境でなんらかのエラーやメッセージが発生すると、同社のサーバー監視システムで障害を検知し、その情報がZendesk Support上でチケット化される。チケット化されたアラートの大半はトリガ機能を使って自動処理され、人の手を介することなくクローズされている。自動対応率は97%と極めて高く、その数は月50,000件にも上るという。
監視システムを始めとする主要システムとZendeskとの連携イメージ図
Zendeskが選ばれた理由
Zendeskの活用歴はそれなりに長いものの、実をいうと、同社はZendeskの選定および導入プロセスには関わっていない。親会社である株式会社サーバーワークスがもともとのZendeskユーザーであり、2014年の会社設立と同時にスカイ365に移管された経緯がある。サーバーワークスがZendeskを選んだのは、問い合わせの受け付けからチケット管理に至るまで一貫して対処できる仕組みであることに加え、チケット管理プロセスの自動化によりルーティンワークを効率化し、その分サポート品質の向上に注力できることへの期待だったという。当初から、24時間365日のサポート基盤にふさわしい製品として採用され、サーバー監視システムとの連携の仕組みも早い段階で実現していたようだ。
Zendesk導入の効果
設立当初からZendeskありきの環境でスタートしたとはいえ、「もはやZendeskなしでの対応は想像できません。運用上欠かせないツールになっています。一番のメリットは、やはり自動化でしょう」と株式会社スカイ365 MSP部 部長の東澤 琢磨氏。自動化に大きく貢献しているのが、ZendeskのAPI連携機能とアプリ追加による機能拡張である。「ZendeskはJavaScriptで開発したアプリケーションを自由に導入できるので、オペレーターから要望の多い機能やヒューマンエラーを防ぐための機能を自社で開発し実装しています」と東澤氏が語るように、API連携とアプリ追加機能を駆使して継続的に業務改善を行い、より使い勝手のよい環境を実現してきた。
たとえば、ビジネスチャットツールのSlackとの連携機能も、共有したい情報をZendesk上で選定できるように自社で作り込んだ。これにより、対応が必要な障害・問い合わせ情報のチャット連携や委託元の外部企業への自動エスカレーションを実現している。また、Zendesk APIでビューの情報を取得して監視システムでチケットの対応状況を監視できる仕組みも独自に構築した。対応が滞っているチケットがあれば警告音を鳴らしたり、ランプを光らせたりして、オペレーターに早期の対応を促すというものだ。これにより、サポートチーム全体でSLAに設定した初回応答時間の達成を目指している。
リアルタイムで対応状況をモニタリング
新たにこの仕組みを追加した経緯について、株式会社スカイ365 MSP部 グループリーダーの澤田 美帆氏は、「お客様が増えた結果アラートが増え、複数のアラートが同時に発生した場合などには、チケットごとの対応状況が目視では確認しづらくなります。その結果、対応もれが発生してしまうという問題があり、システムで解決する方法を検討しました」と振り返る。この他にも、顧客に毎月提出する監視結果レポートにZendesk上でのチケット発生状況を含めたり、顧客への送信メールに規定の内容が含まれていない場合は送信できないようにしたり、Zendesk APIおよびアプリ連携により業務上の多様な要件にきめ細かく対応している。
誤送信防止アプリとZendeskを連携
社内に多数のエンジニアを配する同社ゆえ、こうした改善のサイクルを回す上で必要な環境に困ることはない。ただ、そのエンジニアが本業に忙しく、「Zendeskの機能をもっともっと活用していきたいという思いはあるものの、お客様が増えるにつれ対応件数が増えており、まだまだ改善にまで手が回らない状況です」と東澤氏。その目は、運用のさらなる自動化を見据えている。
今後の展望
この先に着手したいことは山のようにあるが、その一つにZendeskとAmazon Connectの連携がある。同社によるオペレーションを必要としないアラートの場合は、メールや電話での通知になるが、すでに自動化できているのは、メール連絡でよいとする顧客のみだ。電話チャネルをZendeskに統合し、トリガ機能やAPI連携機能を使って電話連絡が必要な顧客に自動架電する仕組みが実現すれば、自動対応率97%という高い数値に一段と磨きがかかるのは間違いない。
Zendeskの機能を有効活用する意味では、独自に実施してきた顧客満足度調査をZendesk Supportに組み込まれたアンケート機能に移行し、サービスに関する顧客のフィードバックをより詳細に分析していきたいとの考えもある。現在使用しているSLA違反の検知ツールも同様だ。Zendesk Supportではサービスレベル目標に達していないチケットがハイライトされる仕組みがあるため、これを活用することで、障害対応において重要なSLA遵守の強化が期待できる。また、現状はExcelに頼っているインシデント分析にもZendesk の活用を見込んでおり、今後より多くの気づきがもたらされるだろう。
さらに同社は、CRMの拡充を視野に、Zendeskがリリースしたオープンかつ柔軟なCRMプラットフォームZendesk Sunshineの活用にも関心を寄せている。これにより、異なるシステムに散在する顧客管理データを集約したい意向だ。澤田氏は、「ITサービスマネージメントの運用の中にZendeskを取り込むのはこれから」としているが、いずれもサービス品質の改善サイクルを回す上で重要な取り組みになると考えられ、国際的なITSMSを確立している同社にとってZendeskの活用は大きな意味を持つ。
「まだ利用できていない機能や、公開されている連携アプリなどを有効活用しながら、引き続き改善を進めていきたいですね」と東澤氏。優れたカスタマーエクスペリエンスを実現する豊富な機能に加え、独自に付加したい機能を柔軟かつ迅速に実装できるZendeskの自由度の高さ。これこそが、スカイ365の事業を支え、強みにもなっている。