「お客様とプロダクトの架け橋として、その間にあるギャップを埋めていきたい。ギャップがきちんと埋まったとき、“サポートの要らない世界“が現実になると考えています。」
カスタマーサクセス部 Support グループリーダー - Sansan株式会社
Sansan株式会社は、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」のサポート業務にZendesk Supportを活用し、マクロ、トリガ、自動化などの豊富な機能を組み合わせて、人の手を介した対応を限りなくゼロに近づけようとしている。そこには、最高のプロダクト、最高のカスタマーエクスペリエンスを追求する姿がある。
Zendeskソリューション導入の背景と課題
英語の“Mr.”や“Ms.”にあたる「人」を象徴する言葉“San”(~さん)。社名に人と人、つまり「出会い」を表現したSansan株式会社は、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションのもと、生きたデータとテクノロジーの組み合わせにより、出会いのきっかけまでも後押しし、そこから生まれるイノベーションを通じて世界をより良くすることにチャレンジし続けている。
Sansan株式会社 カスタマーサクセス部 Support グループリーダー 村松 寿彦氏
社内で名刺を一括管理し、名刺を価値ある企業資産へと変える法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」は、2007年の創業と同時にサービスを開始。今や業界シェアNo.1を誇るサービスへと成長した。名刺管理と言えば、俳優の松重豊さんが登場するユニークなCMシリーズが思い浮かぶほど、その認知度は高い。とはいえ、Sansanは単純に名刺を管理するにとどまるサービスではない。サービス提供開始以来、営業部門だけではなく、あらゆる企業活動を横断して活用できる機能を備え進化してきた。創業から13年目の2019年3月、新たなプロダクトコンセプト「名刺管理から、ビジネスがはじまる」が発表されたことからも、同社が名刺を起点としたビジネスプラットフォームとしてのポジションを目指し、次のステージに向かいつつあることが伺える。
法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」
ユニークなのはCMや、世界初のプロダクトを生み出すアイデアだけではない。Sansan株式会社 カスタマーサクセス部 Support グループリーダーの村松 寿彦氏は、「問い合わせ対応における当社のポリシーは、最適なリソースを割り当てること。極論を言えば、“サポートが要らなくなる世界”を叶えたいのです」として、Zendeskの豊富な機能を駆使したサポート業務の徹底的な自動化に余念がない。同社が法人向けサービスであるSansanの問い合わせ対応にZendeskを導入したのは2012年。Zendeskが日本語版の提供を開始した頃からのユーザーであり、国内企業の中でも使用歴は長い。
「メールベースでの管理はどうしても煩雑になりがちで、抜けや漏れを防ぎ切れません」と村松氏。カスタマーエクスペリエンスを重視する同社にとっては、早い段階でしかるべきツールを導入するほかなかったのだろう。2014年に入社して初めてZendeskを知ったという村松氏は、「お客様とのやりとりがすべてビューで一覧できたり、チケットのオープン・クローズが一元管理できたりなど、非常に便利なツールだなという印象でした」と振り返る。
Zendesk導入の効果
“サポートが要らない世界”を目指して力を注いできたのは、問い合わせ対応にかける工数を極限まで最小化すること。そのために、Zendesk Supportのマクロ、トリガ、自動化の機能を使い尽くしてきた。たとえば、エージェントがなるべく文章を作成せずに顧客からの問い合わせに回答できるように、日本語、英語であらゆるマクロを用意した。一時期は400ものマクロを組んでいたという。さすがに管理しきれなくなり精査したが、それでもなお300を超えるマクロが存在する。「マクロはお客様対応に限らず、新人教育にも役立ちます。要はマクロに正しい答えがあるので、まずは自力で答えを探し、お客様への回答文を作成したらマクロで答え合わせをするわけです」と村松氏は説明する。
Zendesk Support画面 | SNS「Workplace by Facebook」 |
また、マクロとトリガを組み合わせることでエスカレーションプロセスの効率化も図っている。同社では、契約に関する問い合わせは営業に、運用相談に関するものはカスタマーサクセス部にエスカレーションするルールになっているが、エージェントがエスカレーション先に応じたマクロを選択するとトリガが起動。社内のコミュニケーションツールとして使用している企業向けSNS「Workplace by Facebook」に自動的にポストされる仕組みだ。マクロを選択した時点でサポートチームの手を完全に離れることになる。
こうした自動化への取り組みの成果は、チケットの起票から問題が解決されるまでの平均解決時間のほか、MAU(マンスリーアクティブユーザー)に対する手動回答率で追跡。特に後者の数値を限りなくゼロに近づけることを目標にしているが、手応えは十分だ。村松氏が入社した当初から考えても、5年間で導入企業数は順調に増加し、1社あたりのID数も増えており、それに比例して問い合わせ件数も倍近く膨らんでいるものの、一人のエージェントが対応するチケット数に大きな変化はない。「手動回答率が限りなくゼロに近づいてきたのは、時間のかかるタスクやプロセスを自動化するZendeskがあったから」と村松氏。効率化により生み出された時間は、より複雑な問題に投入できるようになっている。
一方で、Zendesk Guideを活用したFAQページの構築も効率化に大きく寄与している。顧客からの問い合わせはWebフォームまたはチャットの2つのチャネル経由で受け取っている。顧客による自己解決を促すためチャットは自動回答を利用。FAQページへのリンク付きの回答を機械学習させ、回答精度の向上に努めている。よって約450ページに上るFAQページのさらなる充実は、常に重要なテーマだ。
ヘルプセンター画面
村松氏が、「FAQの粒度をどこまで上げるかが悩みどころ。抽象度を上げればチャットボットの回答精度は上がりますが、FAQページに飛んでから必要な情報にたどり着くまでの手間が増える可能性があり、エクスペリエンスとしては望ましくありません」と語るように、あくまでもお客様目線での試行錯誤が続く。自分たちに都合がよいだけでは、“サポートが要らなくなる世界”は叶わないのである。
今後の展望
なるべく人の手を介さないサポートが実現しつつある今、次の段階で取り組むべきは「さらなる見える化」だという。ここに期待されているのが、カスタマーエクスペリエンスをあらゆる観点から測定し改善するための分析ソフトウェアZendesk Exploreの活用である。これまで開発部門への明確な数値を基にした定期的なフィードバックはできていなかったが、見える化された情報をプロダクトに生かしていく環境を整える考えだ。すでに活用をスタートしているという村松氏は、「月次、週次の動きを正確に把握できるようになってきたので、たとえば、特定の問い合わせが増えてきたら調査してもらうなど、速やかに次のアクションにつなげられます」と語り、Zendesk Exploreによるプロダクトの改善に意欲を見せる。
「お客様とプロダクトの架け橋になること。これがサポートの役割だと認識しています。お客様にプロダクトの知識を付けてもらうためにFAQページを作り、それでも足りない部分は人が対応する。一方で独自の思想なり世界観をもとに創られるプロダクトに対しては、お客様の意見や要望をフィードバックしてギャップを埋めていく。このギャップがきちんと埋まれば、サポートは要らなくなるはずです」(村松氏)。
すべてにおいてサポートが要らなくなるようなアクションを追求し続けるSansan。その先には、誰もがストレスから解放される究極のカスタマーエクスペリエンスの実現があるのかもしれない。果てしなきチャレンジの行方に注目したい。