問い合わせ内容を速やかに反映できるようになり、お客様が自己解決できる問題が増えてきたおかげで、コールセンターへの電話件数は去年比で毎月平均15%程度減っています。重要な顧客接点の一つであるFAQサービスをキーソリューションとして位置づけ、いかにお客様にとって便利なサービスにしていくかがこれからのテーマです。
DI本部 調査役
- 株式会社佐賀銀行
Zendeskソリューション導入の背景と課題
金融の枠を超えて地域の価値向上を実現する銀行グループ、株式会社佐賀銀行。「このまちで、あなたと・・・」という不変の想いのもと「地域密着と健全経営」に徹し、地元の金融機関として良質な金融サービスを提供すると共に、業務を通じて地域社会の発展に奉仕している。
その佐賀銀行にDI(デジタルイノベーション)本部が誕生したのは2021年のこと。ウィズコロナを前提としたニューノーマル(新しい生活様式)への対応をはじめとして、多くの企業がビジネスモデル転換を迫られるなか、デジタルイノベーションによる顧客接点の刷新と行内業務のさらなる効率化実現に向けて、同行のデジタル戦略全般を横断的に統括する部門として新設されたものだ。
「当行は、デジタルトランスフォーメーションを推し進めるにあたり、人とデジタルを融合したハイブリッド型ビジネスの早期確立を目指しています。デジタルの力を借りることで創出された時間を営業活動に充て、お客様のニーズにお応えする質の高いサービスをお届けしていこうという考えです。こうした流れを受け、問い合わせ対応のあり方についても見直すことになったのです」と、佐賀銀行 DI本部 調査役の栗林 洋輔氏は語る。
これまで、一般のお客様からの問い合わせは、コールセンターか営業店に電話で寄せられることが多かった。しかも、ホームページで検索すれば自己解決できるような質問も少なくない。それでも金融全般の幅広い知識が求められるため、コールセンターで即答が難しい場合は、いったん電話を切って調べてからかけ直すか、専門部署に問い合わせてから回答するなど、エスカレーションが頻繁に発生していたという。これでは手間がかかるだけでなく、解決時間が長引く原因にもなる。中には、間違った回答を返したり、専門部署から回答が得られずに問題解決が遅延したりするケースもあった。
一方で、問い合わせ管理のあり方にも課題を抱えていた。「全体の65%程度を占める営業店への問い合わせは口頭で対応して終わりで、記録していませんでした。コールセンターも同様で、DI本部が新設されたタイミングで記録し始めたものの、記録するだけでデータをまったく活用できていない状態でした。」(栗林氏)
Zendeskが選ばれた理由
こうした課題は以前から認識されていたものの、改善を主導する部門がなかったこともあり、直近の取り組みとしてフォーカスが当たることはなかった。行内業務の効率化を重要なタスクの一つとするDI本部の新設が、変革を後押しするきっかけとなったのだ。
そこで、顧客による自己解決を促す仕組みとして着目したのがFAQサービスの提供である。「はじめは、お客様にFAQで解決してもらうよりも、チャットで行員が直接回答するほうがラクなのではないかと考えていました」と語る栗林氏は、すでに導入されている他行をリサーチしたり情報交換したりするなかで、FAQサービスの効果を確信したという。
「他行では、チャットへのアクセスが1日20数件なのに対し、FAQサイトへのアクセスは2,500件を超えるという事例もありました。また、随時質問を追加しながらアクセス件数をどんどん伸ばせるというお話や、まずはFAQサイトを充実させてからチャットのサービスを追加したほうがお客様の効率性も上がるというご意見を伺い、最初に着手すべきはFAQサービスだという結論に至りました。」(栗林氏)
ホームページ運営を委託している企業からの紹介でZendeskを知った同行は、運用のイメージが明確化できたこと、管理画面が使いやすいこと、クラウド型で導入しやすいこと、さらにはチャットや豊富な機能が包含されていて拡張性が高いことなどを理由に導入を決定した。
左:佐賀銀行 DI本部 調査役 栗林 洋輔氏
右:佐賀銀行 DI本部 主任 田中 ゆかり氏
Zendesk導入の効果
同行はZendeskの導入にあたり、まずはホームページ上に散在していた既存のFAQをZendeskのヘルプセンター・FAQ構築機能で集約。約270件のFAQでスタートを切り、その後営業店で受けていた問い合わせやコールセンターで蓄積していた問い合わせを精査して約200件を追加、さらなる充実化を果たした。
FAQサイトを充実化、自己解決を促進する
「Zendesk導入後は、FAQサイトで自己解決を促し、解決しなかった場合はチャットで行員が対応するという仕組みで安定的に運用できています。チャットに不慣れなお客様は、従来どおり電話での問い合わせも選択できます」と佐賀銀行 DI本部 主任の田中 ゆかり氏は説明。人とデジタルが融合したハイブリッド型ビジネスを目指す、同行らしい対応の流れである。
チャットによる有人対応
メンテナンスのプロセスもかなり省力化された。顧客からの最新の問い合わせは行内のコミュニケーションツールに随時登録できるようにしており、週一回FAQに反映すべきものを精査した上で更新を行っている。Zendeskなら、従来のように新しいFAQ記事の掲載をその都度外注先に依頼する必要がない。
「これまでは、お客様が本当に知りたい情報が掲載されているかどうかさえ把握できていませんでした。実際に運用をスタートしてみて、当行が考えるFAQとお客様が本当に知りたいことが違うことに気づきました。もともとホームページに掲載していたFAQはお客様向けではなかったとの反省点から、徐々にその改善も進めています。Zendeskのヘルプセンター・FAQ構築機能により、チャットに届く問い合わせ内容を速やかに反映できるようになりましたし、お客様が自己解決できる問題が増えてきたおかげで、コールセンターへの電話件数は去年比で毎月平均15%程度減っています」(田中氏)と手応えも十分だ。FAQの末尾に表示される「役に立ったかどうか」の質問で「はい」がクリックされる率も高まりつつある。
今後の展望
この先も継続的に顧客満足度を高めていくためには、FAQサービスのさらなる利用拡大が重要なテーマとなる。2022年1月、同行はニュースリリースを配信し、ホームページ上の「よくあるご質問・困ったときに」ページをリニューアルし、顧客が知りたい情報・困りごとをすばやく検索できるFAQサービスを開始したことを発表。場所を問わずにいつでも、お手持ちのスマートフォンやパソコンからご質問への回答を手軽に見つけられるようになったことを伝えている。
今後は、顧客がWeb上で検索した際に、FAQサイトが常に検索結果の上位に表示されるようにSEO対策にも注力していく考えだ。FAQサイトがさらに充実していけば、おのずと利用頻度も高まっていくと予測される。
便利で快適なデジタルサービスの拡充により、多様化する顧客ニーズに応え、地域社会に貢献していくために、また一つ新たな一歩を踏み出した佐賀銀行。
「これからホームページのリニューアルを進めていく予定なのですが、いかにお客様にとって便利なサービスを提供していくかという観点で、今回構築したFAQサービスがキーソリューションになっていくと考えています。最新の情報を反映しているという意味でも、重要な顧客接点です」と栗林氏。着実に成果に寄与しつつあるZendeskへの期待は大きく、行内ヘルプデスク構築の可能性も探っている。