「学生支援のオンライン化への取り組みを全学的に支える大きな基盤が完成しました。将来的にはバーチャルの世界でのワンストップの学生支援を実現し、学生とのコミュニケーションの質を高め、一人ひとりの学生の学びや成長を包括的に支援するための基盤に育てていきたいですね。」
情報システム部 部長
- 立命館大学
Zendeskソリューション導入の背景と課題
関西を代表する私立大学の一つである立命館大学は、大学を取り巻く環境が目まぐるしく変化するなかで、2030年に向けた新たなビジョン「学園ビジョンR2030」を策定、「挑戦をもっと自由に」を掲げている。これは、学部生約33,000名、大学院生約3,000名、教職員約2,500名の多様な存在が互いに刺激を与え、切磋琢磨し、互いの要素を最大限に活かして高め合う環境の実現を目指すものだ。
さまざまなバックグラウンドや個性を持つ学生達が主体的に学び成長していくことを、全学一体となって「教職協働」により支援している立命館大学は、大学改革に積極的な大学としても高い評価を受けている。そんな同学の新たな変革を奇しくも迫る形になったのが、2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大だった。
「対面支援を基本としていた大学において、入学式が中止となり、キャンパスの入構制限、授業の開始延期、Webでの授業実施など異例ずくめの学生生活をどう支援していくかという大きな課題に直面しました。そこで2020年4月に全学横断的なタスクフォースを立ち上げ、学生支援のオンライン化に着手することになったのです」と情報システム部 部長の石坂 和幸氏は振り返る。
左から順に:立命館大学
情報システム課 課長 岡 潤也氏 /情報システム課 課員 濵野 舞子氏 /情報システム部 部長 石坂 和幸氏 /
情報基盤課 課長補佐 谷村 昇氏 /情報基盤課 課員 兵頭 惣介氏
急を要するコロナ禍での学生対応が大きな引き金になったとはいえ、以前から課題を認識していた部課も少なくない。たとえば、奨学金やサークル活動など、学生生活のさまざまな支援を行う学生部では、各種申請手続きがデジタル化されておらず、学生にとってはキャンパスに来ないと手続きができない不便さがあった。
留学生の受け入れと海外留学の支援を行う国際部では、「入学前から入学後まで、それぞれのタイミングで必要な情報が散在しており、プラットフォームによって情報の掲載の仕方も違うので、職員の負担が大きく、以前から情報を集約しようという動きがありました。また、学生とのやりとりにはメールを利用していましたが、メールアカウントだけでも10個ほどあり、使い分けるのも履歴をたどるのも煩雑で、学生対応にもインナーコミュニケーションにも時間がかかっていました」と国際部 衣笠国際課 課長補佐 村上 陽一郎氏。さらに日本政府による入国制限で留学生が日本に来られなくなったことで、こうした学生達とのコミュニケーションのあり方が改めて問われることになった。
左:立命館大学 国際部 衣笠国際課 課長補佐 村上 陽一郎氏
中央:立命館大学 グローバル教養学部事務室 事務長補佐/アカデミック・アドバイジング・ディレクター 島田 敬久氏
右:立命館大学 グローバル教養学部事務室 課員/アカデミック・アドバイザー 河合 涼介氏
グローバル教養学部も同様に、コロナ禍が起点ではないものの、もともとあった課題解決への動きが加速した格好だ。グローバル教養学部事務室 事務長補佐/アカデミック・アドバイジング・ディレクター 島田 敬久氏は、「当学部が学修支援、履修計画の立案支援を行うアカデミックアドバイジングという制度を実施していく上で、学生とのやりとりの履歴を共有するプラットフォームがないことに問題意識を持っていました。メールで履歴を残す対応では担当者間で引き継ぎがうまくいかず、コロナ禍を契機とした全学横断的な動きとは別に、一元管理できるツールの導入検討を進めていたのです」と説明する。
情報システム部でも、Webサイト上での教員・学生・職員向けの情報の切り分けや認証コンテンツの検索が難しいこと、複数ツールをまたいだ問い合わせ管理の煩雑化によりコミュニケーションコストが増大していたことなどから、一足早く新しいツールの導入気運が高まっていたという。
Zendeskが選ばれた理由
「オンライン上でのアカデミックアドバイジングに用いるツールを求めていたグローバル教養学部、学生との物理的・心理的な距離をより縮めたい国際部、利用者支援の質向上という文脈でツールを探していた情報システム部といったように、それぞれの異なるニーズを満たすために、CMS的な機能を持ち合わせながら一対一のやりとりを履歴化してくれるようなツールを探していました。そこへ新型コロナ感染症拡大に伴う緊急事態宣言が発出され、更に速やかに対応せざるを得ない状況になったというわけです。FAQページを外注するとなると、見積をもらい発注して・・・というだけで1~2ヵ月はすぐに経ってしまいますから、最も理想に近いZendeskを導入することにしました」と情報システム部 情報システム課 課長の岡 潤也氏は説明する。
また、石坂氏も、「本学においては、各部課で独自の支援策を展開できることが重要になります。Zendeskなら、システム基盤としては1つでありながら、インスタンスを部課ごとに分けることで多様なニーズに応えられます。しかも短期間で導入でき、特に専門的な知識も必要ありません。さらにZendeskのチケット管理機能で問い合わせ管理まで行える点や、多言語対応が可能な点も導入の大きな理由でした」と付け加える。
こうしてコロナ禍での学生支援に向けて、教学部、学生部、国際部、キャリアセンターがFAQサイトの構築に着手。ひとまず必要な情報を入れ込み、2020年5月、1か月弱という短期間で公開に至った。その後2021年1月には、国際部、グローバル教養学部、情報システム部がZendeskのチケット管理機能の利用を開始している。
グローバル教養学部のチケット画面
Zendesk導入の効果
手始めにZendeskのヘルプセンター・FAQサイト構築機能でFAQサイトを構築してから2年が経ち、各部課で順調に活用が進んでいる。ヘルプセンター・FAQサイト構築機能のみ利用中の学生部では、「FAQサイトには、奨学金、課外自主活動、学生生活の3つのカテゴリーで普遍的な内容を掲載しています。更新頻度はそれほど高くないのですが、問い合わせは減りつつある印象です」と立命館大学 学生部 衣笠学生オフィス 課員 西田 祐太郎氏。「奨学金の場合は、学生本人だけではなく保護者の方々からのお問い合わせも多く、読めばわかるような情報はチャットボット等に委ねつつ、込み入った相談により注力できるようにするなど、Zendeskの更なる活用のあり方を検討する余地もありそうです」と同部 衣笠学生オフィス 課員 中山 博文氏は補足する。
学生部のFAQサイト TOPページ
国際部の村上氏はZendeskのヘルプセンター・FAQサイト構築機能のメンテナンス性の高さに言及。「これまでは半年に一回か年に一回、いったん公開した後はほとんど更新する必要がないような情報を中心に発信していましたが、コロナ禍で先が見えないなか、日々変動する情報を柔軟かつリアルタイムに発信できるようになりました」と語る。記事を作成する際も、学生たちが具体的な行動につなげられるかどうかという視点で、言葉づかいや単語の選び方、語尾の使い方などを気にするようになったという。
多言語対応に加え、編集作業も容易でタイムリーに情報提供ができるように
また、チケット管理機能に関しては、「過去にどんな文面でやりとりしていたか、自分で調べてから問い合わせをしてきたのか、どの記事を見てからきたのかなどが、メールの履歴を深掘りしたり、過去に対応したことがありそうな他の職員に確認しなくても一目瞭然となりました。問い合わせの背景にある状況を理解した上で対応できるので、一人ひとりの学生に合った適切な対応が、自然と行えるようになっています。まさに、様々な国・地域から来る留学生に対して、パーソナライズ化された学生対応ができる土台が整ったと感じています。現在も、日々のチケット対応履歴から頻度が高いものをFAQに反映するサイクルを続けることで、FAQによる学生の自己解決を促しつつ、FAQでは解決できないものは個別チケットで個に寄り添った対応もできるよう取り組みを続けています。」(村上氏)として、大きな効果の一つに学生対応の量と質の向上を挙げる。
留学生の興味関心や困りごとを把握するのに分析機能が役立っている
チケット管理機能の活用がメインというグローバル教養学部では、複数チャネルからの問い合わせをZendeskで一元化。「学生目線では、アクセシビリティが高まり、非常にシンプルな運用を実現できています。一方の職員目線では、相談に来る学生の情報を複数の担当者間で容易に共有できるようになり、今後の学生対応において非常に有意義なことだと感じています」と河合氏。さらに島田氏はこう続ける。
「メールだと気を付けていてもモレが生じる懸念がありますが、Zendeskは自分にアサインされたチケットだけを表示できるのでその心配がありません。また、チケットのCCの追加機能を使えば、キャリアやライティングなどアカデミックアドバイジング以外の領域で支援を行う職員もリアルタイムで学生の状況を把握できるほか、休暇を取得する担当者に代わって容易に対応を引き継ぐこともできるので、学生の包括的な支援体制の構築に大いに役立っています。」
Zendeskのヘルプセンター・FAQサイト構築機能とチケット管理機能の両方を活用している情報システム部は、同部のWebサイトをZendeskだけで構築した。
「学生はこのWebサイトさえ見ていれば学内のITサービスについて必要な情報を入手できますし、Zendeskにサインインしていれば認証コンテンツを検索することも可能です。また、Webサイトの利用状況や問い合わせ内容を分析し、不足している情報を記事化するといったように、改善サイクルの観点でもZendeskは非常に使いやすいツールです。問い合わせ状況のレポートについても、これまで多くの時間をかけてExcelで作成していましたが、Zendeskの分析機能の画面を見せながら会議で報告するようになり、労力を減らすことができました。」(兵頭氏)
Zendeskでデザインをカスタマイズし構築したWebサイト
今後の展望
学生支援のオンライン化への取り組みを支える大きな基盤が完成した今、Zendeskの自由度の高さを活かして、それぞれの部課でさらなる活用が進み出している。その方向性は大きく3つあると石坂氏は語る。1つは、対象業務の拡大や利用部門の拡大である。2つ目は学部や部署間の連携である。これには、システム的な連携のみならず、施策間の連携も欠かせない。3つ目は、学生とのコミュニケーションの質を高め、Zendeskを、学生の学びや学生生活にプラスになるようなことにコミットできる基盤にしていくことである。
その先に目指すのは、バーチャルの世界でもワンストップの学生支援を実現すること。それが、学生一人ひとりに寄り添い、大学として真に包括的な支援を提供することにつながっていくと考えられる。そのためにZendeskに何ができるのか、どこまで進化させられるのか。立命館大学のチャレンジはまだまだ続きそうだ。