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社内問い合わせ対応の効率化とナレッジの有効活用。Zendeskで脱メール化と新たな社内コミュニケーションによるEXを確立

日本最大手の電気通信事業者であり、クラウドの普及と活用でも先進的な役割を担ってきたNTTドコモ。躍進を支えるエンジニア集団のCCoEは、メールを軸とした旧来型のサポート方法から脱却すべく、Zendeskをプラットフォームに採用。問い合わせの一元管理によるエクスペリエンス向上、定型業務の自動化、ナレッジの蓄積による自己解決の促進を実現し、クラウド時代に相応しいワークフローと、新たな社内コミュニケーション文化の構築に成功しつつある。

株式会社NTTドコモ
「もちろんZendeskを導入したからといって、旧来型のコミュニケーション文化をすぐに一掃できるわけでありません。とはいえ、社内の意識は確実に変わりつつある。事実、最近ではZendeskについて教えてほしいと、他の部署から依頼されるケースがどんどん増えてきています。クラウドが普及していったように、Zendeskを使うことが業界全体のスタンダードになっていくように感じています。」

森谷 優貴氏

サービスイノベーション部 クラウドソリューション担当 担当部長
- 株式会社NTTドコモ

Zendeskソリューション導入の背景と課題

株式会社NTTドコモ(以下、NTTドコモ)は携帯電話サービスをはじめとする通信事業、コンテンツ配信や生活関連サービスなどのスマートライフ事業、システム開発等を含めた関連事業を幅広く展開。クラウドテクノロジーの分野でも、他社に先駆けて研究開発や実用化に着手し、「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」というビジョンの実現に向けて邁進している。

そんな同社のクラウド活用を支えてきたのが、2014年にR&D部門が中心となって創設されたCCoE(Cloud Center of Excellence)と呼ばれる、エキスパートチームである。CCoEは、社内でクラウドを利用するためのガイドライン等の整備に加え、社内事業部や子会社に対する技術支援やコンサルティング、要望の取りまとめなどを行っている。また、自社で作成・利用しているクラウドガイドライン等を、300社以上の企業にドコモ・クラウドパッケージ(https://nttdocomo.cloud)として提供してきた。

しかしクラウドの活用が進むにつれて、CCoEのサポート業務は課題に直面するようになる。その根因はメールを中心とした旧来型のコミュニケーションにあった。同社では問い合わせ管理ツールは導入されておらず、各部署の担当者がイントラネット上のリンクを介してCCoEのメーリングリストに問い合わせを実施。CCoEのスタッフがその都度、個別に返信する体制になっていた。CCoEのメンバーである中村 拓哉氏は、メール文化の弊害を次のように解説する。

「メールや電話でやり取りしていると、問い合わせの進捗管理やステータスの把握ができず、対応漏れや抜けが発生しやすいのです。また案件に対して担当者をアサインして管理できないため、担当の変更や内容の引き継ぎがしにくいという問題も起きていました。情報の蓄積と活用が進まないことも懸案でしたね。メールは基本的に直接関係する部署やスタッフ間だけのコミュニケーションで完結してしまうので、別の部署で似たような問題が浮上した時は、同じ問い合わせ対応を一からやり直す必要があったのです。」

メールでのやり取りを中心としたマニュアル的な対応は、スケールメリットをもたらさないだけでなく、飛躍的に利用者が増加するクラウドサービスの実情にもそぐわなくなっていた。現在、同社が利用しているAWSのアカウントは1,500以上、「クラウド共通基盤」と呼ばれるプラットフォームの利用者はツールによっては5万人にも上る。これに対して、CCoEは20名前後の少数精鋭体制を維持してきた。2018年頃には10名ほどのスタッフが連日100件以上の問い合わせを処理していたため、午前中の業務がメールの返信だけで潰れてしまうことも珍しくなかった。

(写真左から)CCoE 中村 拓哉氏<br />CCoE 奥田 絢香氏<br />サービスイノベーション部 クラウドソリューション担当 担当部長 森谷 優貴氏

(写真左から)CCoE 中村 拓哉氏
CCoE 奥田 絢香氏
サービスイノベーション部 クラウドソリューション担当 担当部長 森谷 優貴氏

ドコモクラウド共通基盤ユーザーガイドページ

ドコモクラウド共通基盤ユーザーガイドページ

Zendeskが選ばれた理由

このような状況を改善すべく、CCoEは2019年9月から新たな管理ツールの導入を検討、そこで中村氏が着目したのがZendeskだった。
「様々なサービスを使っているうちに、多くの企業で導入されていることに気がついたのです。他社のツールとも比較しましたが、Zendeskはとにかく使いやすいし、グローバルスタンダードの製品を採用するという、チームの方針にも合致している。Zendeskを知れば知るほど、新たなコミュニケーションを普及させるためのソリューションとして導入してみたいと思うようになりました。」

導入の際に要件として定められたのは、問い合わせの窓口を一本化してチケット管理できること、リモートアクセスに対応しつつセキュリティを担保できること、ナレッジをFAQとして共有するまでの作業を統合して自己解決率を高められることだった。Zendeskは各要件を満たしていることに加え、総合的な導入コストを抑えられる点も高く評価された。いかに機能や利便性が優れていても、数万人単位でライセンスを購入しようとすれば導入費用は膨大になる。Zendeskなら回答を行うエージェントの人数分だけ契約を結べば運用でき、オンボーディングが容易だという利点もあった。ZendeskはUIがわかりやすく、直感的に操作できるため、1時間程度レクチャーする時間を設けることで誰もが操作方法を習得することが可能。協力社員の数が多く、人員の入れ替わりも激しい同社にとって、これもメリットが大きかった。また、新規着任者であっても過去のチケットのやり取りを全て検索でき、それを参考にできるため自走し始めるまでの時間が短くできるという効果もあった。

通常、新たなプラットフォームを導入する際には、社内の意見調整や予算確保がネックになることが多い。だがCCoEのリーダーを務めている森谷 優貴氏によれば、そのような苦労は皆無だったという。
「CCoEでは、スペックや仕様を比較してクラウドサービスを選定し、全社に対して導入を働きかけていくようなトップダウン方式は採っていません。むしろスタッフが新たなツールを常にテストし、真に役立つものを積極的に採用するボトムアップ方式、現場主義を貫いています。この点はクラウド導入の際もそうでしたが、Zendeskの採用プロセスでも全く同じでした。しかもZendeskは目的を絞り込んでスモールスタートで実装できますし、契約期間が1年単位ですから、必要であれば元の方式に戻したり変更したりすることも簡単にできる。Zendeskという製品自体がクラウド的な発想を先取りしているので、私たちのサポート業務とも非常に親和性が高いのです。」

Zendeskを活用しチケットを一括管理

Zendeskを活用しチケットを一括管理

Zendesk導入の効果

CCoEは2019年8月にZendeskの導入を完了。社内の各種手続きには3か月ほどを要したが、テクニカルな検証作業は1ヶ月、構築・実装作業は数日で終えたという。これを境にCCoEのワークフローは大きく改善される。クラウド共通基盤やクラウドサービスに関する問い合わせや業務依頼がチケットで一元管理されるようになった結果、回答の漏れや抜けは激減。導入からの2年間で、チケット処理された問い合わせ件数は3万件を数え、回答までの平均所要時間も1営業日以内までに短縮された。中村氏は「チケット数は当初の3倍に増えましたが、Zendeskを導入していたおかげで、スタッフ数を増やすことなく対応をスケールさせることができました。私の肌感覚で言えばCCoEの作業負荷は7割程度削減され、重要な案件に対してより集中することができるようになったと思います」と証言する。

Zendeskの導入は、他にも様々な効果を及ぼしている。その1つ目はコロナ禍を乗り切る基盤となったことだ。同じくCCoEのメンバーに名を連ねている奥田 絢香氏は、こう振り返る。
「コロナ禍でリモートワークが推進された結果、クラウド活用は一気に進みました。この変化に対応するには、社内外でシームレスに情報を共有することが不可欠ですが、メールやイントラネットを基盤にしたオンプレミスの環境はIP制限が障害になることもありますし、セキュリティ認証でも問題が出てきてしまう。そこで役に立ったのがプラットフォームに縛られずにコミュニケーションを取り、情報も参照できるZendeskでした。コロナ禍の時は、Zendeskを導入しておいて本当に良かったと改めて実感しました」

2つ目の効果は定型業務の自動化が進んだことだ。クラウド共通基盤のGoogle WorkspaceやBacklogなどはZendeskのAPIを活用し、ユーザー申請の受付から登録作業、申込者への通知までを自動化することに成功。ルーティーン的な作業から解放された結果、CCoEのスタッフは真に重要な案件に注力できるようになった。

3つ目はナレッジの蓄積と活用が本格化したことだ。問い合わせ対応の速度と品質、エクスペリエンスを高める上では、FAQサイトを充実させ、自己解決率を上げることが鍵を握る。Zendeskの導入は、問い合わせや回答、コンサルティングの内容をまとめ、誰でも参照できるアーカイブとしての公開を可能にした。同社では既に2,500ものコミュニティ投稿が作成されており、自己解決を促すために、過去に発行されたチケットの公開も行われている。

ZendeskのAPIでBacklogの処理作業を自動化

ZendeskのAPIでBacklogの処理作業を自動化

Google Workspace の利用申請も効率的に管理

Google Workspace の利用申請も効率的に管理

今後の展望

ただし、これらの効果にも増して意義深いのは、脱メール化の流れが本格化したことだろう。最後に森谷氏は、継続的に取り組んでいかなければならない課題を挙げつつ、Zendeskはさらに新たなインパクトをもたらすはずだと大きな期待を寄せた。

「もちろんZendeskを導入したからといって、旧来型のコミュニケーション文化をすぐに一掃できるわけではありません。私たちCCoE内でもZendeskを使用する方針を徹底しつつ、メールや電話で問い合わせを受ける度に、Zendeskの利用を粘り強く促していく必要があります。とはいえ、社内の意識は確実に変わりつつある。事実、最近ではZendeskについて教えてほしいと、他の部署から依頼されるケースがどんどん増えてきています。クラウドが普及していったように、Zendeskを使うことが業界全体のスタンダードになっていくように感じています。」

クラウドの普及に対応した業務の効率化とコスト削減、ナレッジの蓄積による自己解決率の向上、そして新たなコミュニケーション文化の構築へ。NTTドコモのCCoEはZendeskを活用しながら、社内サポート業務の分野においても、新たな時代の潮流を牽引し続けている。