ソーシャル経済メディア「NewsPicks」を運営する株式会社ニューズピックスは、ユーザーからの問い合わせを効率的に管理するため、Zendesk Supportにより顧客とのやりとりを集約。顧客満足度がサブスクリプション型ビジネスの鍵を握るとして、問い合わせの対応状況を可視化し、さらなる改善プロセスの進化を見据えている。
Zendeskソリューション導入の背景と課題
「経済を、もっとおもしろく」をコンセプトに展開する、ビジネスパーソンのためのソーシャル経済メディア「NewsPicks(ニューズピックス)」。国内外の経済ニュースを厳選してお届けするだけでなく、コメンテーターとして契約する各界の著名人や有識者がニュースを解説。そのコメントから多角的な知見と理解を得られるのが大きな特徴である。月額1,500円のプレミアムプランに加入すると、NewsPicksオリジナルコンテンツが読み放題。世界最先端に迫る特集や動画コンテンツ、書籍やイベントを通じて、ビジネスパーソンに必要な教養をアップデートできると人気上昇中だ。
現在の会員数は約358万人、うち有料会員は約8.1万人(2018年9月時点)。2013年9月のリリース以来、順調に成長を続けているが、さらなる成長を見据えて次々と新しい挑戦に取り組んでいる。株式会社ニューズピックス サービス開発 テックリードの文字拓郎氏は、「新しいものに感度が高い層には浸透しているのですが、そうではない層にいかにリーチしていくかが次のチャレンジとなっています。そのために、国内では動画ビジネスや企業向けソリューションの拡充を始めています。また、2018年7月にはNY発のクオリティ経済メディアQuartz(クオーツ)を買収し、顧客基盤をグローバルにも拡大しようとしています」と説明する。
こうしたチャレンジを下支えする上で重視されているのが、問い合わせ対応だ。「NewsPicks はユーザーコミュニティを基盤としたサブスクリプション型のビジネスモデル。売り切り型の従来のビジネスと違って、顧客との関係性を構築し、満足度を高めていく必要があります。そのためにも、事業を開始した当初から問い合わせ対応には力を注いできました」と文字氏。「プロダクトを開発している人間がもっともお客様の声を聞くべき人である」として、敢えてサポート部門を作らず、エンジニア部門が直接問い合わせに対応してきた理由もここにある。
一方で、ビジネスの拡大に比例して問い合わせ件数が顕著に増加し、その対応に多くの時間と労力が割かれるようになると、本業に集中する時間が削られていくというジレンマもある。課金プランや決済方法、アプリの使い方に関する質問から、契約内容の確認、障害や不具合などの報告、さらには具体的な要望まで、問い合わせ内容も多岐にわたるため、件数が増えるにつれ、問い合わせ対応をシンプル化したいという思いはますます強まっていったという。
Zendeskが選ばれた理由
メールでの問い合わせ対応は個別対応になってしまい、誰がどの件に対応したのか、いつどんな問い合わせがあったのか、過去のメールを探さないと把握できない。そこで、すべての問い合わせを一元的に管理できるツールとして同社が選んだのがZendesk Supportだった。前職でZendeskユーザーだったエンジニアの評価が高かったことに加え、サポート業務の外部委託先にZendeskの利用実績があるケースも多く、スムーズに業務を移行できるメリットも期待された。「Zendeskに関するノウハウを持っている人が多くサポートソフトウェアのデファクトスタンダードになっている印象がありますね」と文字氏は評価する。
株式会社ニューズピックス サービス開発 テックリード 文字 拓郎氏
株式会社ニューズピックス エンジニア 清原 康弘氏
Zendesk導入の効果
同社は、アプリ経由で受けた問い合わせのほか、メールアカウント宛に直接届く問い合わせ、Zendesk上での社内メモのやりとり、さらにはシステムで発生した決済エラー、アプリのレビュー投稿、Twitterの公式アカウントへのリプライまでをZendesk Supportでチケット化。これらを、連携するチャットツールSlackにリアルタイム通知する仕組みを実現している。「Zendeskが自動的にチケット化してくれるので、あちこちに分散していた情報を一元管理できます。お客様とのやりとりの履歴も検索しやすくなりました。おかげで速やかに必要なアクションが取れます」と、株式会社ニューズピックス エンジニアの清原康弘氏。
Google PlayやApp StoreでのフィードバックをZendeskに取り込みチケット化。Zendeskから直接返信している。 |
Twitterの公式アカウントへの全リプライをZendeskに流しているのは、NewsPicksへの質問や要望の声を拾い上げるためだが、こうしたつぶやきについても、各エンジニアが自主的にチェック。必要とあらば先回りして顧客に声をかける。こうしたプロアクティブな対応にも、最高のカスタマーエクスペリエンスを目指す同社の姿勢が伺える。
TwitterのつぶやきをZendeskで確認し、返信 | レポーティング画面 |
従来のメールでの対応と大きく違うのは、リアルタイムな可視化と対応スピードだ。Slack上に流れてくる問い合わせやアプリのレビューをチェックし、問い合わせ件数の多い機能について優先的に改善を検討したり、お客様への回答について別のエンジニアから訂正の指摘が入ったりなど、「常にZendeskの画面に張り付いていなくても状況が把握でき、必要に応じてアクションを起こせるメリットは大きい」と清原氏は語る。また、Zendesk標準の顧客満足度調査を活用してフリーコメントから不満の声をピックアップし、改善点を探す足がかりにするなど、ここでもZendeskの機能をベースとした新たな取り組みが始動しつつある。
さらに、NewsPicksの問い合わせ画面を開くと気づくのは、端末情報があらかじめ入力された状態で表示されている点だ。以前は、問い合わせ時のメールアドレスがNewsPicksのアカウントと一致せず、本人特定に多くの調査時間を費やすことも多かったが、この時間が長引けば長引くほどコストが膨らむだけでなく、顧客満足度も低下してしまう。そこで同社はZendeskの問い合わせフォームをカスタマイズし、端末情報から瞬時に問い合わせ元の会員を特定できるように改良。現在は本人特定のプロセスが大幅に簡略化されている。
今後の展望
問い合わせを一元管理することで可視化に成功した同社が次に見据えるのは、「改善の仕組み化」だという。文字氏は、「単に増え続ける問い合わせに対応するだけなら人員を増やせばいいわけですが、我々のビジネスの鍵を握るのは顧客満足度です」と強調した上で、「問い合わせ対応の品質自体も、もっと改善したいし、もっと攻めていきたい。守りの問い合わせ対応にとどまらず、より良いユーザー体験を提供出来るように、常に改善プロセスが回る状態にしていきたい。そのためには今の状態を可視化した上で、それを細分化し分析できる必要があります。現在は全体の傾向しか把握できていませんが、問い合わせ状況や顧客満足度をより細かい粒度でスコア化し、改善を回すための仕組みを構築していきたいですね」と意気込みを語る。この部分におけるZendeskへの期待も大きい。
ソーシャル経済メディアとして、人々の発見と理解の欲求に応え続けたい。Zendeskは、そんな同社の思いに寄り添うカスタマーサポートプラットフォームとして、同社の成長と共に拡張を続けながら、顧客エンゲージメントの強化に貢献していこうとしている。