「やっぱりオーダーメイドって難しいんですよね。生地の選び方にしてもデザインのカスタマイズにしても、既成の洋服しか着たことがない方にとっては、どうしてもわかりにくい部分が出てきてしまいますから。でも、私たちはそういう方たちにこそ利用していただきたいし、オーダーするプロセスをお客様任せにしたくありません。むしろ本当の店舗にいるように、何の心配もなく安心して注文いただけるレベルまで持っていきたいんです。そういう意味でZendeskはすごくありがたいですね。私たちにとって欠かせないツールとなっています」
カスタマーサクセスチーム マネージャー
- 株式会社FABRIC TOKYO
Zendesk ソリューション導入の背景と課題
「CUSTOM WEAR FOR ALL(カスタムウェアの民主化を通じて、服を、人生を、この世界をもっと楽しく)」。この意欲的なビジョンのもと、株式会社FABRIC TOKYO(以下、FABRIC TOKYO)は、従来なかなか手の届かなかったオーダーメイドのビジネスウェアを、オンラインで手軽に注文・購入できるサービスを提供。大きな話題と注目、根強い支持を集め続けてきた。
同社は、アパレル業界の構造改革を追求してきたことでも知られる。「マスカスタマイゼーション(大量生産から低コストの『特注量産』へ)」、「オムニチャネル(自社ECサイトだけでなくリアル店舗を展開。採寸という“体験”を提供しながら運営コストを抑える)」、そして「Direct to Consumer(中間マージンを大幅に省き、従来よりも高品質な製品を、従来と同額もしくはそれ以下の価格で直接消費者に届ける)」といった事業構造は、ともすれば過剰な在庫を抱えたり、素材メーカーにまで利益が還元されにくいなどの問題を解消する試みとして、高く評価されている。
そんな同社は2017年、Zendesk Supportを導入。目指したのはフリーメールのアカウントで顧客の問い合わせに対応する状況に終止符を打ち、カスタマーサポートの品質向上と業務効率化、顧客データの蓄積や活用を合理的に行うことだった。代表取締役社長の森 雄一郎氏は、当時のインタビューで次のように述べている。
「お客様が10年、20年とサービスを使い続けてくださるとするなら、我々はそのライフスタイルや人生に伴走していかなければなりません。ですから、タッチポイントの強化は極めて重要なテーマです。当社のお客様が購入されるのは、“商品”と“ユーザー体験”。カスタマーサクセスチームは、お客様の本音を知っているという意味で、ユーザー体験の鍵を握る部署だと言えます」。
コメントからうかがえるのは、カスタマーサポートに対するこだわりに他ならない。同社がカスタムメイドしているのは、実際のビジネスウェアであると同時に顧客の笑顔や喜びであると言ってもいいだろう。
Zendeskが選ばれた理由
2023年、同社のZendesk活用はさらに拡大。FAQによる自己解決を促すために、顧客との会話フローを作成して自動化できるフロービルダーを、業務に取り入れ始めたのである。きっかけになったのは、佐々木智子氏がカスタマーサクセスチームのマネージャーに就任したことだった。
「私が入社した当時から、社内ではカスタマーサポートの担当部署をカスタマーサクセスチームと呼んでいました。単にお客様をサポートするだけでなく、お客様の声を踏まえて、より良い体験をしていただけるように改善していくことを主眼に置いてきたんです。その点でZendeskの導入は、多くの成果を上げてきました。問い合わせ対応が一元管理できるようになっただけでなく、お客様への一次返信やリマインドが自動化されたことによって、対応の品質が一気に上がりましたから。でも会社が成長フェーズに入って売上がどんどん増えてくると、問い合わせ対応に追われ、大きな改善や効率化ができていない感覚がありました。そこでカスタマーサクセスチームのマネージャーになったときに、Zendeskの機能を改めて調べてみたところ、フロービルダーがあることに気がついたんです。」
株式会社 FABRIC TOKYO カスタマーサクセスチーム マネージャー 佐々木 智子氏
以前、同社のECサイトでは、「FAQ」と「お問い合わせ」を併載。顧客はまずFAQを確認し、そこでも解決できない場合に問い合わせを行う流れを想定していた。だが実際にはFAQを参照せずにいきなり問い合わせをするケースが後を絶たず、必要以上にチケットが生成されることも多かったという。
「もちろん、お問い合わせにはきちんと回答しますが、実はFAQを見ていただいた方が、お客様にとってもわかりやすいんですね。ですからある時期は、問い合わせのフォームを目立たないようにして、FAQだけを表示するような改善案さえ社内で出ました。でもフロービルダーを使えば、メニューから選択肢を分岐させながら自然にFAQに誘導し、それでも解決できないものは、問い合わせやチャットに誘導する流れが簡単に作れる。フロービルダーは、よりお客様に即した対応を展開する、つまり問題を自己解決できる方にはFAQを見ていただき、自己解決できない方には、スタッフが直接きめ細かな対応をさせていただく体制を作るうえで、非常に効果的でした。」
Zendesk 導入の効果
佐々木氏はその延長線上で、Zendeskに搭載されているプロアクティブメッセージも活用するようになった 。
「たとえばお客様にECサイト上のここを読んでほしい、この商品説明を理解してほしいと思っていても、コントロールできない部分は必ず出てきます。かといってページ構成や表示方法を変えようとすると、コストや時間がかかってしまう。でもプロアクティブメッセージを使えば、現在のページ構成を維持したまま、自分たちが最も伝えたい説明や文章をワンクリックで追加できます。しかも、もともとZendeskに搭載されている機能なのでコストはかかりませんし、メッセージが適切でなければ、簡単に修正や削除ができる。お客様が必要としている情報をピンポイントでわかりやすく提供できるのは、本当に便利だと思います。」
プロアクティブメッセージやチャットを活用し、顧客をきめ細かくサポート
佐々木氏がプロアクティブメッセージの活用例として挙げたのは、フォーマルスーツだった。慶弔用のスーツは色が黒になるため、画面上では生地の質感やデザインのディテールがわかりにくくなってしまいがちだ。しかしプロアクティブメッセージで説明を行えば、顧客はまさに望んだ通りのスーツをオーダーできるようになる。
このような方策が顧客満足度の向上をもたらすだけでなく、業務効率化につながることは指摘するまでもない。たとえば営業時間内に受け取った問い合わせへの初回返信時間は、3時間以上から2時間以内に収まり60分以上も短縮されている。繁閑期によって波はあるものの、問い合わせ1件あたりの処理時間も、40分以上から30分程度へと約25%の短縮に成功。さらに注目すべきは自己解決率の向上だ。かつてはFAQを参照せずに問い合わせが行われ、チケットが生成される件数の割合が問い合わせ全体の31%ほどを占めていたが、これも20%にまで低下している(昨年内、ならびに昨年から今年にかけてのデータに準拠)。
-60分
初回回答までの所要時間
-25%
問い合わせの処理時間
-10%
FAQを参照しない問い合わせ
今後の展望
カスタマーサポートの基盤としての導入、そしてカスタマーサクセスを実現するためのフロービルダーやプロアクティブメッセージの採用。FABRIC TOKYOはZendeskを活用しながら、「CUSTOM WEAR FOR ALL」というビジョンを追求し続けてきた。佐々木氏は、これら一連の取り組みが必然だったと振り返る。
「やっぱりオーダーメイドって難しいんですよね。生地の選び方にしてもデザインのカスタマイズにしても、既成の洋服しか着たことがない方にとっては、どうしてもわかりにくい部分が出てきてしまいますから。でも、私たちはそういう方たちにこそ利用していただきたいし、オーダーするプロセスをお客様任せにしたくありません。オンラインであっても、むしろ本当の店舗にいるように、何の心配もなく安心して注文いただけるレベルまで持っていきたいんです。そこで重要になるのは一歩進んだサービスを展開することーー解決策がすでに提示されていたり、お客様が悩まれる前にこちらから声をかけにいくような仕組みを作っていくことだと考えています。そういう意味でZendeskはすごくありがたいですね。私たちにとって欠かせないツールとなっています。」
ECサイトを通じて、最高のビジネスウェアとCXを提供していく。たゆまぬ努力を支えるのはスタッフ自らの喜びである。最後に佐々木氏は、今後に向けた抱負をこう述べた。
「カスタマーサクセスを実現していくことは、私たち自身のモチベーションでもあるんです。私はもともと、他社の店舗でフィッティングを担当していました。現場でお客様の声やご要望をお聞きしながら、イメージにも身体にもしっかりフィットする商品を選んでさしあげると、お客様が笑顔になり、表情がぱっと輝くんです。あの瞬間の感動は今でも忘れられません。Zendesk を活用しながら、これからも笑顔をたくさん作り出していきたいですね。お客様に喜んでいただくのは、社員全員にとって何物にも代えがたい喜びですから。」