新型コロナウイルス感染症が世界中を騒がせています。カスタマーサポートの現場も例外ではありません。急増した問い合わせやキャンセルへの対応、市場の変化や不確実性への適応を余儀なくされています。しかも、毎週のように状況は変化しており、ビジネスを取り巻く環境も平常時とはまったく異なります。サポートチームの多くは当面の間在宅勤務となり、顧客への効率的な対応が難しくなりつつあります。初めて直面する事態に、手探りで進むほかない状況です。
Zendeskのベンチマークチームは、Zendeskを使ってサポート業務を行っている企業23,000社に対し、この世界的な危機の影響について調査行っています。この調査結果を通して、先行き不透明な状況下でカスタマーサポートはどうあるべきなのか、ヒントや参考情報を提供していく考えです。
- Zendeskで把握している現状や、サポート業務に使用するチャネルに関して、いかに企業が迅速な意思決定をもって対処しているかは、ZendeskのLinkedInライブイベントをご覧ください。
更新日:2020年8月12日
今日のポイント
- 高止まりが続くチケット数
- ウイルスの第一波および第二波への対応の違いで、チケット数にも異なる傾向
- 堅調な成長が続くEC業界に対し、大打撃を受けたライドシェア企業も回復傾向に
- 世界的に利用率の高いWhatsAppも、業界によっては低下傾向に
- ヘルプセンターによるセルフサービスの提供で急増するチケットに対応
- 企業の俊敏性が成功の決め手に
- Zendeskがサポート業務の効率化を支援
高止まりが続くチケット数
2020年の予測はさておき、嬉しい傾向も見られます。サポートチームに寄せられる問い合わせは、数か月間の変動を経てようやく安定してきているのです。
もちろん、パンデミック以前と比較すれば依然として16%を上回っており、平均的なチケット数は高止まりが続いています。しかし、11週間にわたり一定のペースでの増加が続いた後、先月から安定的に推移しているのは、サポートチームにとって嬉しいニュースと言えるでしょう。
ウイルスの第一波および第二波への対応の違いで、チケット数にも異なる傾向
世界的に見ると平均チケット数は横ばいですが、地域によって異なる傾向が見られます。具体的には以下のとおりです。
北米
米国内で新型コロナウイルスの感染事例は急増しているようですが、北米の企業ではチケット数が安定しつつあります。パンデミックが世界的に影響を及ぼし始めた2月下旬と比較すると、チケット数は平均16%の増加となっています。しかし、過去6週間を振り返ると2%以上の変動はありません。
中南米
南米の場合は、新型コロナウイルス感染の第一波の封じ込めに苦戦していたこともあり、顧客からの問い合わせ数が急増。7月下旬には、パンデミック以前のレベルから再び42%の増加を記録しピークを迎えています。特に増加率の急増が著しかったのが、パラグアイ(117%増)およびブラジル(53%増)に拠点を置く企業です。
ヨーロッパ地域
西ヨーロッパでは最近になって、新型コロナウイルス感染の発生数が再び急増しつつあります。この状況を受けて、新型コロナウイルス感染症発生以前と比較して平均的なチケット数が16%増加。中でもスペインの企業は2月末と比較して35%も増加しています。
アジア太平洋
新型コロナウイルスはアジア太平洋地域への感染拡大が危惧されていますが、顧客が平常時以上にサポートチームを頼りにするる傾向はあまり見られません。むしろ、企業への問い合わせは減っています。4月、5月、6月に関して言えば、平均チケット数は2月下旬を下回っているほどです。ただし例外もあります。それは、感染第二波が発生し、様々な制限下にあるオーストラリアのビクトリア州です。この影響もあってオーストラリアの平均チケット数は24%増加。7月を通して増加の一途をたどっています。
堅調な成長が続くEC業界に対し、大打撃を受けたライドシェア企業も回復傾向に
ここ数週間の間、多くの業界でチケット数の減少が見られています。しかし、EC業界に関しては、まだピークには達していないようです。今週の平均チケット数はパンデミック以前と比較して40%増加。立ち上がりは遅かったものの(実際にはじめの2、3週間はチケット数が減少)、他の業界が全体的により高い成長率を示しているように、EC業界も堅調な動きを見せています。
オンライン食料品店の平均チケット数は70%増加しているものの、4月中旬に迎えたビーク時の176%からは減少しています。その理由は明らかです。顧客が初めてサービスを利用したときに抱く疑問の大半が解決されたからです。
オンラインで商品を購入する機会が増えていることを考えると、EC関連におけるチケットの持続的な増加は納得できます。McKinsey社の最近のアンケートによると、この危機が終わった後も、これまで以上に多くの顧客がオンラインで商品を購入し続けると回答しています。サポートチームは今後も長期にわたりチケット数が高止まりすることを想定して準備しておく必要があります。
また、パンデミックが旅行業界や、とりわけギグエコノミー企業に大打撃を与える一方で、ライドシェア企業では、顧客の新たな関心を見出だしはじめています。その証拠に、世界中の多く地域がロックダウンとなった3月半ばにチケット数が急激に減少したものの、その後再び増加に転じています(4月下旬に記録した62%減に対し、現在は34%減)。
世界的に利用率の高いWhatsAppも、業界によっては低下傾向に
メッセンジャーアプリのWhatsAppは、一時の勢いは鈍化しつつあるものの、現在も多くの地域、企業、業界で利用者を拡大しています。世界的に見て、WhatsApp経由でのやり取りは2月から現在までで111%増となっており、第2位にテキスト/SMS (ただし15%増と1位とは大差)、第3位にソーシャルメディア(11%増)、さらにチャット(10%増)と続きます。
WhatsAppの利用は、企業規模に関係なく、他のどのチャネルよりも急速に広まっています。その利用率はSMBで132%、エンタープライズで122%、ミッドマーケットで88%です。また、すべての地域においてWhatsAppの利用が群を抜いているのも特徴です。
<pこうしたWhatsAppの堅調な人気に対し、他のメッセージングチャネルの利用は低調で、Facebookのメッセンジャーや Twitterのダイレクトメッセージでやり取りする人の数は減少。5月に一時的な増加がみられたものの、2月下旬から32%も減少しています。パンデミック発生以降の顕著な変化は以下のとおりです。/p>
- 航空会社とのやり取りにソーシャルメディアを利用する顧客が増加。ソーシャルメディアの利用率は105%と跳ね上がり、一方の電話およびメール経由での問い合わせはそれぞれ48%、36%に留まりました。/li>
- ECサイトを利用する顧客に人気のメッセージングアプリWhatsAppの利用率は 352%に跳ね上がり、SMS/テキストの利用率も102%パーセントに増加しました。
- ライドシェア企業においてはチャットの利用が78%と急増。それ以外のチャネルの利用率は低下しました。
- オンライン食料品店においては、ソーシャルメディアでのやり取りが949%と急増。反対にWhatsAppの利用率は40%低下しました。
- 金融サービス企業では、WhatsApp経由での問い合わせが54%、チャット経由での問い合わせは31%増加しました。一方で、FacebookのメッセンジャーやTwitterでのやり取りは74%、電話での問い合わせは11%減少しました。
- リモートワークおよび学習プラットフォームにおけるチャネルの利用状況は正反対です。テキストの利用率が高く、チャットやWhatsApp、その他のソーシャルメッセージングの利用率は低下傾向にあります。
ヘルプセンターによるセルフサービスの提供で急増するチケットに対応
平均チケット数はこのまま高止まりすることが予測されますが、多くの企業でヘルプセンターが存在感を強めています。
たとえばフィットネス業界では、2月以降のチケットの増加率がわずか6%であるのに対し、ヘルプセンターの利用率は200%を超えています。同様に、リモートワークや学習プラットフォームの分野では、チケット数の増加はわずか24%増だったのにもかかわらず、ヘルプセンターの閲覧数が149%に膨らみました。
オンデマンドの食料品店、ゲーム業界、オンラインヘルス、食品配達など、ヘルプセンターを利用しているその他の業界はどうだったのでしょうか?ヘルプセンターの利用がチケット数の減少に寄与しなかった業界は、EC業界(ヘルプセンターの閲覧率は30%増、チケット数は40%増)と小売業です。
企業の俊敏性が成功の決め手に
コロナ禍で顧客も幾分寛大になってはいるものの、待ち時間の増加は顧客の不満を増幅させかねません。実際にこのような状況が発生している業界もあります。
2月下旬から航空会社の解答時間はすべてのチャネルにおいて40%も増え、顧客満足度(CSAT)が6.5%低下しました。小売業でも同様に顧客の待ち時間が40.4%も増えたものの、なぜか顧客満足度は1%の低下に留まっています。これならエージェントが待ち時間が増えたことで顧客に八つ当たりされる可能性は低いでしょう。
また、不確実性の高い状況下でチケット数が記録的に増加しているにもかかわらず、解決時間を短く抑えている企業も存在します。その秘密はどこにあるのでしょうか?
ベンチマークデータによると、他社よりもチケットを効率よく処理している企業は新たなチャネルを追加したり、顧客のニーズに合わせて素早く既存サービスを拡大したりしています。
実際、ベンチマークデータ内の約3,600社は、安定した解決時間を維持できています。この状態を維持し、顧客により良いサービスを提供すべく、迅速にセルフサービスやライブチャネルを取り入れているのです。これらの企業では、コロナ禍でヘルプセンター(Zendesk Guide)の採用率が14%に跳ね上がっています。また、電話およびチャットの採用も増加傾向にあります(10%)。
ライブチャネルを採用した企業では、電話やチャット担当のエージェントを16%以上増員し、解決されたチケット数も32%以上増加しています。
さらに、スピード感のある企業は顧客が自分で解決策を見いだせるように、ヘルプセンターの記事を増やしたり、AIを駆使してお役立ち情報顧客に提供しています。AnswerBotの利用率も高まっており、42%の企業が少なくとも10%以上のチケットを解決に導いています。
こうした企業の61%が2月下旬以降に1記事以上追加しており、また5社に1社に近い割合でエージェントの中から専任の記事作成担当を配置しているというデータもあります。Zendeskがサポート業務の効率化を支援
コロナ禍を経験したいま、企業やサポートチームには新たな課題も見えつつあります。それは、企業が最も重視する「顧客およびサポートチームのエクスペリエンス向上」です。
Zendeskは、広範囲にわたりサービスを中断せざるを得ない状況においてもサポートチームが効率よく業務を遂行できるような、カスタマーサービスソリューションを提供しています。Zendeskのソリューションを利用してカスタマーサポートを提供できれば、顧客が必要とする対応を実現しつつ、エンゲージメントを強化することができます。たとえば、コラボレーションアドオンやSlack連携によって、エージェントはZendeskの画面を離れることなく、チャネルをまたいで他のチームとシームレスにコミュニケーションすることが可能になります。
SlackのカスタマーエクスペリエンスVPであるAli Rayl氏は、「弊社は無償のリソースを提供することで、リモートワークの導入に取り組む世界中の人々をサポートすることに力を入れています。また、新型コロナウイルスの研究や対策、緩和に取り組んでいる組織も直接サポートしています。今、これまで以上に重要なのは、Zendeskのようなパートナーとの連携を継続し、業務を円滑に進めることです。」と述べています。