「働き方改革」や「一億総活躍社会」などの言葉をよく耳にしますが、その一方で人手不足は続いています。労働力を確保するには、多様な働き方を実現するスマートワークを導入し、優秀な人材を手放さないようにする対策が不可欠です。今回は「多様な働き方」について紹介します。
「多様な働き方」とはどんな働き方?
働き方改革により、社員全員が「同じ時間、同じ場所に出勤して働く」というワークスタイルの見直しが求められています。従来の働き方だけでなく、「多様な働き方」を採り入れる企業も増えてきました。
まずは、「多様な働き方」として挙げられるワークスタイルをいくつか紹介しておきましょう。基本的には、勤務地や勤務時間を限定しないものが多いと言えます。
時短勤務
- 時短勤務は、通常よりも労働時間を短くした働き方。育児や介護で忙しい人、すでに退職している人など、フルタイムでは働けない人を活用することで人手不足の解消に役立つ、と導入する企業が増えています。
テレワーク
- リモートワーク(テレワーク)とは、働く場所をオフィスに限らない働き方の総称。狭義ではテレワークとリモートワークは違うものですが、基本的にはどちらも働く場所や時間を限定しないで、ICTの活用によりオフィスとつながる、柔軟な働き方のことです。正社員に限らず、自営の場合もテレワークと呼ばれるケースがあります。自宅で働く「在宅勤務」、働く場所を限定しない「モバイル勤務」、少人数の勤務地をオフィスとつないだ「サテライトオフィス」などがあります。
クラウドソーシング
- クラウドソーシングはネット上で不特定多数に業務委託する新しい雇用形態です。委託先や企業が「不特定多数の集まり(クラウド)」となる仕組みのため、このように呼ばれています。これもフルタイムで働けない人に適した働き方でしょう。業務は仲介サイトを通じて、インターネットから受注するのが一般的です。
フレックスタイム
- 業務の状況に応じて、その日の勤務時間を決めることができる制度です。必ず在籍しなければいけない時間(コアタイム)がある場合と、ない場合があります。
スマートワークとは?
スマートワークは、ICTを活用した、働く場所や時間を限定しない柔軟な働き方のことを指します。テレワークとほぼ同じ意味で使われています。
なぜ、いまスマートワークなのか?
少子高齢化が進み、さまざまな業界で人手不足が叫ばれています。また、若い世代を中心に、これまでの働き方に対する批判や不満も高まっています。こういった状況の下、人材を確保していくには、これまでとは違う働き方を提示する必要があるでしょう。そうすることで、従来の労働市場では働きにくかった人々を取り込むことが可能となります。これがICTを活用した「スマートワーク」に注目が集まっている最大の理由です。
スマートワークが実現されない理由
スマートワークが大きな注目を集める一方で、実際に導入している企業はまだ多いとは言えません。スマートワークはこれまでの働き方と大きく異なるため、管理者側の意識改革が求められます。スマートワークの導入がなかなか進まない理由としては、以下のような不安に原因があると考えられています。
情報漏えいのリスクがあるのでは?
社外で仕事をすると、「業務機密が漏えいするリスクが高まるのでは?」と心配する管理者が多いようです。しかし、ICT技術の発展により、社外でも安全に業務を進められる体制は整えられています。例えば、以下のような対策をとることで、機密を守りながらスマートワークを実現することが可能です。
シン・クライアント端末によりデータを端末に保存せずに作業する
リモートワイプにより、遠隔地からデータを消去できるようにして端末の盗難や紛失時にもデータが流出しないようにする
二段階認証や生体認証など、より安全性の高い認証技術を利用する
勤怠管理が難しいのでは?
スマートワークは、社員がオフィスに出勤せずに作業するため、「勤怠管理が難しくなるのでは?」と心配する管理者も多いようです。この問題もICT技術により解決できます。プロジェクト管理ツールを使って進捗情報を共有したり、ログ管理システムにより勤怠状況を把握したりするなど、オフィスの外であっても適切な勤怠管理を行うことが可能。チャットやメッセージサービスといったツールも数多く提供されており、コミュニケーション面における不安も特に見当たりません。
スマートワークの導入にコストがかかるのでは?
スマートワークを実現するには、「システムや端末の導入に費用がかかるのでは?」と心配する管理者もいます。確かに多少の導入費用は必要となりますが、その反面、オフィススペースや社員の交通費を削減できる、ペーパーレス化が進む、などのメリットもあり、総合的に見るとコストダウンにつながるケースもあります。
多様な働き方は企業にとってもメリットがある
多様な働き方は、働く側(労働者)にばかりメリットがあると思っている経営者も多いようですが、企業にとっても大きなメリットがあります。
人材不足の解消
今後、ますます少子高齢化が進むと、「人材の確保」や「人材の定着」が企業にとって大きな課題となります。多様な働き方の導入は、優秀な人材を確保し、定着させるのに効果的な手段となるでしょう。
従業員のモチベーションアップ
スマートワークの導入により、ライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。これは各個人のキャリアや生き方を見直すきっかけにもなります。仕事とプライベートをバランスよく両立させることで満足度が上がり、仕事への意欲も高まります。その結果、企業と社員が良好な関係を築くことができれば、従業員のモチベーションが上がり、離職率の低下につながるでしょう。
労働生産性の向上
スマートワークの導入により就業形態が多様化することで、従来の働き方では難しかった従業員のワーク・ライフ・バランスを実現できるようになります。家族や友人と余暇を楽しむ、自己啓発に取り組むなど、従業員が仕事とプライベートの調和を図ることが可能です。発想やアイデアが湧きやすくなり、勤務時間外にインプットされたヒントが仕事のクオリティーを上げてくれるかもしれません。ワーク・ライフ・バランスの実現が、労働における生産性向上につながる可能性もあるのです。
まとめ:スマートワークを生かした多様な働き方が不可欠
人手不足を解消するには、「現在の勤務体系では働けない人」も労働力として取り込まなければいけません。そのためには多様な働き方の導入が不可欠。経営者、管理者がスマートワークを理解し、積極的に採り入れることで、優秀な人材をより多く確保できるようになるでしょう。今後、企業の競争力を維持していくためにも、スマートワークの導入は不可欠といえます。