コールセンターサービスに対する顧客からの期待に応えるために必要な十分な人員、ツール、スキルを、全て揃えている企業ばかりではありません。例えば、Zendeskカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポート2020年版によると、消費者の51%は、企業に問い合わせた際には5分以内での応答を期待していると回答しています。しかし、小規模なEC企業では、この期待に常に応えられるとは限りません。
そこで解決策となるのが、コールセンター業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)活用です。
BPOコールセンターの定義
BPOとは、企業の業務の一部を第三者ベンダーやサービスプロバイダーに外部委託することを指します。BPOコールセンターとは、代理企業を介して、その企業の顧客からの入電と架電の業務を請け負う外部のサポート組織のことです。
すべて入電と架電に適切に対応するだけの人員数を確保できない企業では、外部に業務委託を検討することが賢明かもしれません。この記事では、BPOコールセンターを活用して、質の良いサポートを提供する方法をご紹介します。
BPOコールセンターによる受電業務
コールセンターに問い合わせの受電業務を外部委託することはリスクと考える企業もあります。企業や製品についての知識レベルを比べると、外部のサポート担当者はどうしても社員にはかないません。
しかし、BPOコールセンターのサポート担当者は、すぐに即戦力を発揮できるよう教育されています。他社で導入されたプロセスやヘルプデスクツールでも、非常にうまく適応し、資料や情報を参照しながら顧客からの問い合わせに素早く対応できる担当者が揃っています。
さらに、BPO側で導入した高度なコールセンター技術を利用できるというメリットもあります。BPOサポート担当者は委託してきた企業の既存のプロセスを踏みながら、より効率的に業務を遂行できるため、ROI(投資利益率)が高まります。
BPOコールセンターを活用するメリットを、受信する電話の種類ごとにまとめました。
サポート対応
複雑な製品やプランを販売する企業の場合は、カスタマーサポートへの問い合わせ件数が平均よりも多くなる傾向があります。例えば、医療保険会社の場合、1日に何百件も顧客から保障内容について問い合わせる電話がかかってきます。
顧客数を多く抱えている大企業であれば、このような問い合わせの電話に対応するために、専任のサポート部門を設置することも珍しくありません。一方で、人件費を抑えるために、この業務を外部のコールセンターにBPOして委託するケースも多々あります。
規制が定められた商品プランやサービスを販売する大企業であれば、明確に文書化された書類が保存されたナレッジベースがほぼ必ず、完備されており、BPOコールセンターのサポート担当者との情報共有も容易に行えます。また、このような情報源が整備されていれば、BPOサポート担当者が顧客対応業務を開始するまでに、さほどの時間は要しません。受注処理業務
「注文は電話で」と考える顧客は今もいます。しかし、電話で注文を受け付けて処理をする作業は手間も時間もかかります。CRMに顧客情報を入力し、支払い方法を確認し、注文内容を担当部門に送信するなど、様々な作業が必要になります。
注文から発送までのプロセス全体をBPOコールセンターに委託すれば、マーケティングや製品開発といったレベルの高い業務に、社員がより多くの時間を割けるなります。電話での受注対応をBPOコールセンターに一任すると、通常の営業時間外にタイムゾーンの違う国から入ってくる注文も処理できるようになることも、大きなメリットです。また、一時的に注文件数が増える時期や時間帯、社員の休暇中に、受注処理しきれなくなるといったリスクの解消にもつながります。
電話での受注対応業務を外部委託すると、社員はより重要な業務に集中する時間を増やすことができ、さらに社員に時間外手当を支払うことなく、24時間年中無休で売上を得られるようになります。サービス手配業務
顧客からサービス要請の電話が入った際に対応するのが、サービス手配担当者の業務です。例えば、タクシー会社であれば、顧客から電話で配車を依頼されます。この電話に出るのがサービス手配担当者で、依頼内容に基づきタクシー運転手に連絡をしてサービスを提供できるように手配する業務を担当します。
企業によっては、このサービス手配業務を担当する社員を社内に置かずに、外部のコールセンターに業務委託して、利用した時間に応じて料金を支払う体制を敷いているところもあります。例えば、平日の午前10時から午後2時までしか配送しない宅急便会社の場合、正社員を採用して担当させるよりも、サービス手配業務を外部委託したほうが費用効果が高くなる場合もあります。
この体制にしておけば、手配要請の電話がほとんどない日があっても、社員に支払う給与の心配をする必要はありません。また、BPOコールセンターは、通常の企業が営業していない時間帯にも対応してくれるため、サービス要請の電話を逃すことはありません。
BPOコールセンターによる架電の業務
コールセンターの受電担当者の業務は、顧客から入ってくる問い合わせの電話に対応することです。一方、コールセンターの架電担当者は、顧客に電話をかける業務を担当します。コールセンターの架電業務は、時間がかかる割には効率の悪い仕事であるため、外部委託されることが少なくありません。例えば、何千人にも電話をかけなければ、市場調査の結果をまとめるのに十分な回答が得られないことも実際あります。
BPOコールセンターと提携すると、こうした時間のかかる業務を全面的に引き受けてもらえるため、社員は顧客との関係性構築や製品の改善業務に重点的に取り組めるようになります。
テレマーケティング
テレマーケティングは元来あまりイメージがよい業務ではありません。その一方で、新規の見込み客を開拓するうえで費用効果の高い有効な戦略として実行している企業も少なくありません。しかし、潜在顧客に営業電話をかけるには高いスキルが必要なため、経験の浅い担当者に任せてしまうと、ROIが下がってしまいます。
この点で、必要な経験やツール、専門知識を持っているのがBPOコールセンターです。コールセンターの担当者は、初めて電話する相手であっても心をつかんで惹きつけるスキルがあるとみなされて採用された人たちです。
消費者に共感してもらえるポイントを瞬時に捉え、電話の相手の心に響くような話し方で、企業の重要なメッセージを伝えられるように教育されています。この業務を的確に遂行できる適切なBPOコールセンター担当者の力を活用できれば、テレマーケティングのROI向上に寄与します。テレセールス
テレセールスは、主に電話で販売取引を成立させることに重点を置いた業務です。テレマーケティングとの違いは、テレセールスで電話をかける相手は、すでに有望な見込み客であると判断された人である点です。
電話販売は収益を伸ばすうえで重要な側面を担いますが、速やかに見込み客に連絡をしようと思っても、十分な人員を確保できない企業もあります。例えば、セールスパイプライン(見込み客の獲得から成約までの一連の営業プロセス)に2000人の見込み客がいても、営業担当者が12名しかいなければ、何週間もかけて潜在顧客に営業電話をすることになり、その間に適切な販売機会を逃してしまう可能性があります。
BPOコールセンターの助けを借りれば、短期間でセールスパイプラインの見込み客全員に営業電話やフォローアップの電話をかけられるため、企業の売上向上のスピードをより早めることができます。
BPOコールセンターは営業用システムを整備して大いに活用できる環境にあるために、中小企業はテレセールス業務を外部委託するケースもあります。CRMを導入したBPOに業務委託すれば、社内でシステムを導入しなくても、そのツールのメリットを享受できます。さらに、システムの管理費が不要になり、新規ツールの教育に費やす時間や人員も省けます。市場調査
顧客をより深く理解するために、企業が電話でアンケート調査を実施することはしばしばあります。市場調査で得たデータは、何が購入の決め手になっているのか、顧客が不便と感じる点など、多数の貴重な洞察を明らかにします。
電話によるアンケート調査は予め作成した台本に沿って行われることが多いため、BPOセンターに外部委託しやすい業務です。顧客への冒頭の説明と締めくくり方をBPOの担当者に指示したら、あとは質問リストを渡すだけです。
電話によるアンケート調査業務を外部委託することで、費用効果の高い方法で洞察を明らかにでき、そこで得た情報や理解を社内で今後のキャンペーンや製品開発に活用できるようになります。
質の良いカスタマーサービスを提供するためにBPOコールセンターを活用
企業が成功するには、カスタマーサービスで優れた顧客体験を作り出せるかどうかにかかっています。しかし、実際問題、企業によっては、顧客の待ち時間を減らしながら、素早く問い合わせに対応し、顧客が期待するITの専門知識を提供するための人員や設備を十分に整えていないこともあります。
社内に人員や設備がなくても信頼性の高い方法で理想的なサービスを提供できるようになるのが、カスタマーサービス業務の専門会社に外部委託するアプローチです。BPOコールセンターを使えば、製品開発やマーケティングといった、企業にとって重要な業務に社員が取り組む時間や人員を減らすことなく、顧客は高品質なサポートを受けることができます。