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IVR(自動音声応答)とは?コールセンターの効率化と顧客満足度向上へのカギ
IVR機能は、より良いコールセンター構築の鍵を握っているかもしれません。 IVRシステムの本質に迫りながら、電話サポートをどのように強化してくれるのか解説します。
著者: Cristina Maza, 寄稿
更新日: 2024年6月22日
カスタマーサポートに電話をかけたことがある方なら、 「お支払いに関するお問い合わせは1番、営業時間は2番、口座残高は3番、パスワードの再設定は4番…」といった、IVR(Interactive Voice Response、自動音声応答)システムによる音声ガイダンスを聞いた経験があるかもしれません。
IVRとは、コールセンターや電話サポートで広く利用される技術で、高い効率性と顧客体験の向上を実現するための手段です。
本記事では、IVRとは何か、その仕組み、コールセンターでのIVRの活用方法を解説します。
IVRとは?
IVRとは、電話での問い合わせに対して自動化された応答を行うシステムのことを指します。これにより、顧客からの電話を適切な担当者や部署にルーティングしたり、よくある質問にあらかじめ録音された回答を提供したり、サポート対応を電話からテキストメッセージに切り替えることで電話対応の件数を削減したりすることができます。
特に、コールセンター用語としてよく耳にするIVRは、顧客対応の自動化に大いに役立ちます。さらに進んだIVRシステムでは、音声認識技術と自然言語処理機能を備えており、この場合、発信者はキー操作の代わりに言葉で選択したりニーズを伝えることが可能です。
IVRは、一般的な問い合わせに即座に回答を提供し、より多くの担当者が緊急で複雑性の高い問題に対応できるため、顧客満足度を高めることができます。それだけではなく、顧客の時間を節約することもできます。IVRは、折り返しの電話設定なども可能なため、顧客は電話口で長時間待つ必要がありません。
IVRの活用例
IVRはコールセンターの運用効率を向上させるために多岐にわたって活用されます。以下に、IVRの主な活用例をご紹介します:
- 簡単な質問やリクエストに対応: サポート担当者が複雑な問題に集中できるようにする。
- 運用コストの低減: 有人対応に振り分けられる電話件数を減らすことで達成します。
- 問い合わせの適切な部署へのルーティング: 初回解決率を高めるために重要です。
- コールバックの設定: 電話口での待機時間をなくすことができます。
- 電話の対応数を削減: 発信者が電話サポートからテキストメッセージに切り替えられるようにする。
- 挨拶メッセージで顧客に対応: 重要な顧客情報を事前に収集することが可能です。
IVRシステムは、企業とサポートを必要とする顧客の最初の接点となります。
IVRの仕組みとは
IVRは、発信者に挨拶し、メニューオプションを提示することで、インバウンドの電話を削減します。発信者は電話のキーパッドを使ってオプションを選択できます。そして、選択内容に応じて、IVRシステムは発信者に口座番号やPINなどの追加情報の入力を促すこともできます。以下に、標準的なIVRプロセスをまとめました:
顧客がカスタマーサポートチームに電話をかける。
IVRシステムは、挨拶メッセージと共に問い合わせ希望部署などの選択肢を提示する。
顧客は該当するオプションを選択する。
IVRは、簡単な質問に対する回答を提供したり、適切な担当者にルーティングしたり、コールバックの予約をしたり他チャネルに転送する。
また、IVRには以下のような高度な機能も備わっています:
時間外の電話転送
オーバーフロー
通話録音
ミュートと保留
コール中転送
挨拶メッセージのカスタマイズ
電話会議
一般的なIVRメニューオプション
IVRメニューは、企業のニーズに応じてシンプルにも充実した内容にも設定することができます。以下にいくつかの便利なメニューオプションをご紹介します:
- サービスのタイプ: 決済、配送、サポート関連のサービスが必要な場合に便利。
- テキストバック: 通話をテキスト送信に切り替えることが可能。
- 言語: ユーザーは好きな言語を選択可能。
- セールス: 製品購入に興味のある電話を、速やかにセールス担当者に転送。
カスタマーサポートにIVRシステムを活用する6つのメリット
顧客がカスタマーサポートに期待する水準は高まるばかりです。ZendeskのCXトレンドレポートによると、消費者の65%は、カスタマーサービスが5年前よりも迅速になることを期待していることが明らかになっています。コールセンターはIVR電話システムを有効活用することで、消費者の変わりゆくニーズと期待に応えることができます。
IVRは、顧客からいつ問い合わせがあろうとも迅速に問題を解決し、初回対応時に適切な部署に転送します。さらに、電話の優先順位付けをしたり、サポートプロセスの効率化が図れます。
1. 問題の解決時間を短縮
多くの消費者が、迅速な問題解決を優れたカスタマーサービスの最も重要な要素として挙げています。そしてIVRは、それを実現できるツールです。IVRは顧客の時間を節約するだけでなく、スタッフの時間も節約してくれます。簡単な質問に回答を提供して担当者に転送される件数を削減することで、チームは複雑な問題や緊急の問題に時間を掛けることができます。コール量が特に多い場合は、IVRシステムを以下のように設定できます:
着信を異なるグループやカテゴリーに分ける
各グループにサポート担当者を割り当てる
よくある質問にあらかじめ録音した回答を用意する
サポート担当者が不在の場合や空きがない場合、コールバック予約を設定する
高度なルーティングを使用して、チケットに優先順位を付ける
これらを設定することで、待機時間を短縮し、問題解決のスピードを迅速化することができます。結果、顧客とサポートチームの双方にとって有益です。
2. 初回解決率を向上
顧客は企業に迅速でスムーズな問題解決を望んでいます。顧客の68%が、部署間で電話が転送されることにイライラすると回答していることからも、それは明らかです。IVRは、電話をすぐに適切な担当者にルーティングしてチームをサポートします。同時に、サポート担当者が一度のやり取りで解決できた顧客からの問い合わせの割合を示す指標である初回解決率(FCR)の向上にもつながります。ヒント: ニーズに応じた適切なIRVメニューオプションを設定し、問題解決に必要なトレーニング、知識、ツールを持つ部門に顧客がルーティングされるようにしましょう。
3. 24時間365日のサポートを提供
優れたカスタマーサービス体験の提供に、24時間体制のサポートは欠かせません。しかし、すべての企業が24時間365日体制でサポートを提供できるわけではありません。そこで、IVRシステムの出番です。IVRを使用すれば、サポート担当者の手を借りたり、スタッフ数を増やすことなく、事前に録音した回答を使ってよくある質問に答えることができます。以下のようなやスケジュールや状況に役立ちます:
休日
緊急事態
ピーク時
製品発表
24時間体制のサポートを提供することで、顧客に情報や回答を確実に提供でき、有人対応が不可能な場合でも顧客の不満を抑えることができます。
ヒント: 問い合わせが予測される休業日や営業時間などに関する質問について、事前にIVRスクリプトを作成しましょう。そうすることで、すぐに実用できます。
4. トリアージコール
着信電話に優先順位を付ける方法は沢山ありますが、どのコールを最優先すべきかは各ビジネスルールに従う必要があります。ZendeskのCX Trendsレポートによると、消費者の61%が、カスタマーサービスで一度でも不快な思いをすれば、もうその企業からは買い物をしないという結果が出ています。要するに、重要顧客を電話口で長時間待たせておくことはできないということです。以下にIVRの主な利点を挙げてみましょう:
VIPからの電話を優先する
市外局番に基づき、電話を特定のグループに振り分ける
キューで待機中の発信者のチケットを確認する
着信時間ではなく、優先順位に基づいて電話をルーティングする
キューで待機中のコールに、トリガを実行して優先順位や待機グループを変更する
キューの待ち時間が最大待機時間になるまで、対応可能な担当者に順次割り当てる
以下に具体的なシナリオを考えてみましょう。顧客から同時にサポート番号に電話が2件あったとします:
ケース1:
データ分析アプリの統合に関してサポートが必要なため順番を待っています。
レベルの一番低いサブスクリプション(月額2,000円)に2~3週間前に加入しました。
特に急ぎである様子はなく、落ち着いています。
ケース2:
経営者で、サブスクリプションを解約すると言って脅すような態度を見せています。
ソフトウェアがクラッシュし、システムにアクセスできません。その間毎時数十万円の損害が発生するため、非常に苛立っています。
8年前に契約して以来の顧客で、毎月約60万円の売り上げがあります。
どちらの顧客を優先的にサポートしますか? ケース2の顧客になるでしょう。なぜなら、ニーズ、購入履歴、行動が、緊急性を測るポイントにより類似しているからです。
カスタマーサービス担当者は、問題が発生した時に、重要な顧客が大切にされていると感じられるように、可能性まで含めた影響を基にして優先順位を付けられるシステムが必要です。IVRシステムを使用して、不満を抱える顧客の心を掴むこともできます:
VIP顧客としてタグ付けし、速やかにキューの先頭に配置し、最も有能な担当者に割り当てる。
通話履歴を使用して、担当者にいつ転送すべきかを定める。
可能な限り自動応答で対応し、不便な待ち時間を回避できるようにする。
5. 顧客情報を確認し、担当者の手間を省く
カスタマーサポートに自動化機能を導入しているコンタクトセンターは、一般的に応答時間が短く、顧客満足度も高い傾向にあります。例えば、顧客がオンライン注文に関してサポートチームに電話した場合、IVR電話システムは自動的に顧客の詳細情報とコンタクト理由を確認することができます。
担当者は、対応する顧客に関する情報を事前に取得することができるため、顧客に何度も同じことを繰り返させずに、速やかな問題解決が見込めます。
ヒント: 顧客がIVRソフトウェアを使用してテキストバックをリクエストした場合は、背景情報を基に、回答となる関連性のあるナレッジベース記事を送信することもできます。
6. 効果的なIVRメニューで着信件数を低減
IVRメニューオプション
IVRメニューをカスタマイズして、着信件数を減らし、担当者の負担を軽減することができます。
ボイスメールまたはコールバック: 待機時間が長くなる場合、メッセージを残したり、コールバックが受けられるオプションを提示します。
番号または部署: 専門的な知識が必要な場合は、特定の電話番号にコールを転送します。
IVR補助メニュー: 録音メッセージを使って、情報が掲載されたWebサイトに誘導したり、さらなるオプションを提示します。
テキストバック: 電話をテキストメッセージに切り替えて、着信件数を減らし、オンライン上のリソースを提供します。
FAQの回答: よくある質問には、自動的にあらかじめ録音された回答を提供します。
サポート担当者は、より良いサポートを提供するために、高度な通話文字起こし機能や品質保証機能を使用することができます。さらにコールセンターソフトウェアは、リアルタイムで顧客との会話を追跡するだけでなく、社内のコールセンタープロセスを改善するための重要なインサイトを収集することも可能です。
例えば、Zendeskで収集したレポートを使用して、担当者の生産性や一般的な効率をモニタリングすることができます。これらのデータは、カスタマーサービスや全体的な顧客体験の向上に有効です。IVRを活用してモニターできる主な指標をいくつかご紹介します:
- 品質スコア: チームのパフォーマンスを測定します。
- 顧客満足度: 顧客からの高い満足度を常に維持できるようにします。
- ナレッジベース: どの記事がよく読まれているのか確認し、その情報を電話件数を削減するために役立てます。
IVRソフトウェアアプリの統合
マルチレベルIVRシステムを使用すると、自動の挨拶メッセージで発信者を迎え、事前に情報を収集し、IVRメニューでオプションを提示し、その入力内容に基づき電話をルーティングできます。
そのため、カスタマーサービスソフトウェアと統合できるIVRソリューションを選択することが重要です。そうすれば、他のサポートチャネルと一緒に電話での会話を追跡そして管理できます。
また、アプリや統合機能をインストールすることで、IVRは単純なユースケースにとどまらず、決済や配送追跡などの機能も備えることができます。
最後にZendeskのコールセンターシステムを拡張するための様々なアプリがダウンロードできるZendeskマーケットプレイスから、おすすめのインテグレーションアプリをいくつかご紹介します。
- Dialpad: Zendeskから電話をかけたり、メッセージを送信できます。
- Quickie PLUS: 担当者が素早くチケットにアクセスできるように、チケットの整理やブックマークができます。
- Harvestr: 顧客のニーズを理解し、新製品の開発に役立てるために、顧客からのフィードバックループを作成できます。
- FlowEQ: 担当者がより迅速にチケットを解決できるよう、ディシジョンツリーと自動化を設定できます。
- CloudAgent: インバウンドとアウトバウンドのコールセンター業務を効率化するために、必要なツールへのアクセスを有効化します。
IVRの活用により、コールセンターが提供するサービスの品質と効率性を向上させることができます。IVRは、カスタマーサービスの最前線であるコールセンターにおける貴重なツールであり、顧客体験の向上に大いに貢献します。