商品の品質のみならず、顧客の体験が製品全体の評価を左右する昨今、顧客との良好な関係を構築して、その結果として売上や企業価値を高めるという営業手法、カスタマーリレーションマネジメント(CRM)に注力している企業は少なくありません。理由は商品の品質のみならず、顧客の体験が製品全体の評価を左右と、多くの企業は考えているからです。その最前線であるカスタマーセンターでのサポート品質がいま、問われています。今回は、「良いカスタマーサポートとは何か」と「サポート品質を改善するヒント」について見ていきましょう。
CRMはカスタマーエクスペリエンスの最前線
マーケティング戦略を立てる専門的な知識と論理を持つ担当者(マーケッター)の間で注目されている用語に、「カスタマーエクスペリエンス」(顧客体験、顧客体験価値、CX)というものがあります。
例えば、1杯のコーヒーを購入するときに、どうやって購入先を決めるでしょうか。「コーヒーが飲みたい」という欲求を満たすだけなら、自販機やファストフード、コンビニのセルフコーヒーなど、さまざまな選択肢が考えられます。これらの選択肢の中から購入先を決定する際に、「お店のスタッフの気配り」や「店内の雰囲気」といった要素も少なからず影響しているはずです。
顧客は、コーヒーそのものだけに価値を見出しているわけではありません。マーケットの競合が激しくなるなか、消費者は商品そのものの品質だけでなく、「経験」という目には見えない指標も加味して、購入を決定しているのです。顧客は、「コーヒーを買う」という行為そのものに対して対価を支払っているといえます。
顧客と直接やりとりするカスタマーセンターはCRMの最前線です。顧客の生の声が集まるコールセンター・コンタクトセンターは、マーケティングや商品開発のヒントの宝庫であるとともに、顧客評価に密接につながるポジションであるといえます。
「悪事千里を走る」ということわざがあります。SNSが普及した昨今では、良いサービスよりも悪いサービスのほうが拡散力は強く、時には批判を集めて「炎上」につながってしまうこともあります。ブランド力を構築するには長年の努力が要求されますが、ブランドの毀損は一瞬で起こり得るということを肝に銘じておかなければならないでしょう。
「エーススタッフ」の育成=良いサポートか?
では、良いカスタマーサポートとはどういった取り組みを指すのでしょうか。どこの職場でも、長年にわたる経験と知識、卓越したホスピタリティをもとに職場を切り盛りする「エース」スタッフがいるでしょう。カスタマーサポートの最前線では、こうした人が孤軍奮闘してサービス品質を支えている、という事例が多々みられます。
ただ、「エース」に頼りきりでは危険。カスタマーサポート業務に限らず、あらゆる職場にいえることではありますが、サービス品質が属人的になると、万一その人が抜けた場合にサービスの質が低下する恐れがあります。
特に、労働集約型で非正規スタッフの多いコールセンターは、こうした問題について特に注意を払わなければいけません。ただし、エースの貢献を認めなかったがために、彼ら(彼女ら)がやる気や職場へのロイヤルティを失い、最終的に離職を招いてしまっては元も子もないでしょう。エースの貢献は認めつつも、スタッフ全体のボトムアップを図ることを心がける必要があります。
AI活用で注目されるチャットボット
一方で、AIを活用したコールセンターサービスの品質向上も進んでいます。その一つに、チャットボットによるサポートの導入推進があります。
チャットボットを利用すれば、あまり複雑でない質問なら即時回答が可能になります。24時間365日対応のチャットボットなら、カスタマーサポート対応時間の拡大も可能です。「カスタマーサポートに電話をしてもなかなかつながらない」という不満についても、チャットボットと有人オペレーターの2段対応にすることで、待ち時間の短縮を実現できるでしょう。
このほかにも、AIをカスタマーサポートに生かす例として以下のようなものがあります。
AIがお問い合わせ内容を集約し、過去の質問やデータベースから適切な答えを選んでオペレーターに示す取り組み
AIが顧客とオペレーターの「相性」をチェックして、相性のよい人同士を対応させることでクロージング率を向上させる
サポート品質を向上させるためのツールとして、AI(チャットボット)が幅広い分野で活用されています。
まとめ:カスタマーサポートの質が商品の評価につながる
カスタマーサポートは、顧客体験の最前線となります。顧客にとってはカスタマーサポートこそがその会社の代表です。その質がダイレクトに商品やサービスの評価につながります。このことを念頭におき、「スタッフのサービス品質向上」と「先端テクノロジーの導入」により、サポート品質の底上げを図っていかなければなりません。