エスカレーションとは、上司に対応を任せたり、指示を仰いだりすることを指します。一般的な業務報告とは少し意味合いが異なります。今回は、「エスカレーションと報告は何が違うのか?」、また「エスカレーションはどのように行われるのか?」について紹介します。
エスカレーションとは?
まずは、「エスカレーション」と「普段の報告」は何が違うのか、また、どのような場合に行う報告が「エスカレーション」と呼ばれるのか、について説明します。
エスカレーションとは何か
「普段の報告」は、日報や月報のように定期的に行われる、もしくはプロジェクトの終了時など、業務上必要なタイミングで行われます。その目的は「現在の状況」を上長に報告することであり、上長の指示や対応は不要な場合が多いといえます。
一方、「エスカレーション」は、「何らかのインシデントが起きたとき」に上長に指示を仰ぐことを指します。もともと「エスカレーション」(escalation)は「上昇」や「拡大」という意味を示す単語で、ビジネス用語としては次のような場合に行われる行動のことを指します。
何らかのインシデントが発生したとき
自分の知識、能力、権限では対応しきれないとき
上長の指示や回答、上長自身での対応をお願いしたいとき
ちなみに、エスカレーションの対義語は「デスカレーション」(段階的に縮小すること)となりますが、上長から部下への指示をデスカレーションと呼ぶことはありません。
エスカレーションはどんなときに必要か
エスカレーションが必要になるのは、緊急のインシデントが発生し、上長の指示や対応が必要になった場合です。例えば、次のような場合にエスカレーションが行われます。
クレームで責任者の対応を求められた場合
値引き交渉など、権限のある責任者の対応が必要な場合
トラブルが発生し、より知識のある専門家または管理者権限のある上長の対応が必要な場合
エスカレーションが行われた時点で、インシデントへの対応や責任は上長に引き継がれます。
エスカレーションを仰ぐためのルール
エスカレーションが行われるのは「何らかのインシデントが発生したとき」であり、ある意味、緊急事態ともいえます。このため、不要な混乱を避けるためにも、あらかじめルールを決めておく必要があります。
エスカレーションフローを作成する
インシデントが発生してからエスカレーションを行うまでの流れや、それをシステム化したものを「エスカレーションフロー」(escalation flow)といいます。エスカレーションフローは、インシデントが発生する前に作成しておくのが基本です。あらかじめエスカレーションフローを決めておくことで、実際にエスカレーションが必要になった場合でも、迅速かつ確実に行動することが可能となります。
通報者の責任を問わない
エスカレーションを行った当事者に、インシデント発生の責任を問わないことを明確に規定しておくことも大切です。エスカレーションはトラブルやクレームの報告となるため、「上司から叱られたり、責任を取らされたりするのでは?」と不安になるのが普通です。その結果、インシデントが発生しているにもかかわらず、エスカレーションが行われないケースも考えられます。逆に、「不要なエスカレーションを行った」と指摘され、それ以降、萎縮してエスカレーションを行いにくくなる可能性もあります。このような事態を防ぎ、より迅速にエスカレーションを行えるようにするために、「当事者の責任を問わない」という規定が必要になります。
基準を明確にする
これらのルールは、部署ごとではなく、会社全体に適用される規定です。常に客観的な基準として参照できるように、明確なドキュメントにして社内に周知しなければなりません。また、作成したドキュメントは、いつでも参照できる場所に保管しておきます。もちろん、ドキュメントは「一度作成したら終了」ではありません。内容が古くならないように定期的に見直しを行い、更新していく必要があります。
エスカレーションフローとは?
エスカレーションフローとは、「エスカレーションをどのような流れで行うか?」を示したものです。エスカレーションをシステムにしたもので、「何が起こったら、どのようにエスカレーションを行うか」を規定します。緊急時にスムーズに行動するには、トラブルの種類やレベル別にエスカレーションフローをあらかじめ規定しておく必要があります。
エスカレーションが必要なインシデントの規定
最初に、「エスカレーションが必要なインシデントは何か?」を規定します。インシデントを的確に判定するには、「このラインを超えたらインシデントである」という規定と「これはインシデントではない」という規定の両方が必要になります。
どのような事態が起こるとエスカレーションが必要なのか
どのような事態までならエスカレーションは不要で、現場で対応可能なのか
インシデントのレベル分け
次に、緊急度や重要度に応じてインシデントを何段階かにレベル分けします。重大なインシデント、または緊急度の高いインシデントは、より高い役職にまで報告が必要になります。
どのような基準でインシデントをレベル分けするのか
各レベルのインシデントは、どの役職までエスカレーションが必要か
エスカレーションのルート作成
実際にエスカレーションを行う際に、「誰が誰に連絡するのか」、「どのような手段で何分以内に連絡するのか」などを規定します。この規定に従うことで、素早く適切な行動をとれるようになります。そのためには、エスカレーション先の電話番号やメールアドレスなどを分かりやすくまとめておく必要があります。また、担当者が不在の場合も想定しておき、その場合のルートを作成しておく必要もあります。
どういうルートでエスカレーションを行うか
どのような報告手段(電話、メール、メッセージなど)でエスカレーションを行うのか
それぞれの行動は何分以内に行うのか
各ルートの担当者が不在の場合は、代わりに誰に連絡すればよいか
ナレッジ共有(データベース化)のルール決め
問題が解決したら、次に同様の問題が発生したときのために対応内容を社内のナレッジベースに記載しておきます。解決後のデータベース化(ナレッジベースへの記載)はおろそかになりがちですが、エスカレーションのプロセスに組み込んでおけば確実に情報を蓄積していくことができます。
エスカレーションがうまくいかない理由
インシデントは、対応が遅れると時間の経過とともに問題がどんどん大きくなっていくため、適切なタイミングでエスカレーションを行い早期に解決することが望まれます。もしも何らかの理由でエスカレーションが遅れてしまったり、うまく機能しなかったりする場合は、その原因を調べて解決する必要があります。エスカレーションがうまくいかない理由として、たとえば次のようなことが挙げられます。
エスカレーションを行うかどうか迷った
他部署との連携がうまくいかなかった
関係者間での情報共有に手間取った
これらの課題を解決するために、Zendesk Supportのようなカスタマーサービスツールを利用するというのも一つの方法です。Zendesk Supportでは、電話、メール、チャットなどの内容が一元管理されており、その1つ1つに対して担当者を設定できるようになっているので、エスカレーションを行う場合は、対応を依頼したい相手(上長など)を担当者として設定することができます。もちろん、社内への確認・情報共有に「社内メモ」機能でコミュニケーションをとったり、関係者をCCに入れたりフォロワーとして追加したりすることもできます。
また、これまでの経緯や履歴が全てシステム内に保管されているため、情報共有や社外や他部署との連携もスムーズに行えるほか、インシデントへの対応が適切に行われていない場合や遅延している場合でも、上長がチェックしてフォローすることができます。さらに、ヘルプセンター構築システムのZendesk Guideを活用すれば、問い合わせ応対時または解決時に、情報共有のためのナレッジベースを簡単に作成することができます。
まとめ:普段からエスカレーションのルールやフローを
明確にしておくことが重要
エスカレーションの手順は、マニュアル化し、ルールを明確にしておくことが大切です。エスカレーションが必要な緊急事態が発生したときでも、スムーズかつ適切に行動できるように、あらかじめエスカレーションフローを作成し、社内で共有しておくことが重要です。また、Zendesk Supportなどの専用ツールを使うと担当者間の連携がさらにスムーズになり、情報も一元管理できるようになります。
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