記事
CXとは何か、そして2021年に起こった変化とは
現在、顧客はかつてないほどCXを重視しています。ここでは、移り変わる消費者の期待に応え、高品質なCXを提供する方法をご紹介します。
更新日: 2024年2月22日
CX(カスタマーエクスペリエンス)は、これまでもずっとビジネスの成功に欠かせないものでしたが、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの発生により、その重要性は著しく高まっています。「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」では、顧客の半数が、1年前よりもCXを重視していると回答しました。
パンデミックの影響で、顧客の嗜好やカスタマーサービス戦略に変化が見られる中、CXに関し、顧客の間で突如として新たな基準が生まれ、その期待値は以前よりも高くなっています。
こうした状況が進むにつれ、課題も現れています。CXがこれまで以上に重要になっている今、企業は高まる顧客の期待を満たし、変化する顧客の好みに応じる方法を理解しなくてはなりません。
この記事では、以下について説明していきます。
CXとは
CXの定義:CXとは、カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)の略語であり、消費者と企業の間で行われるあらゆるやり取りを指します。購入時からその前後まで、カスタマージャーニーの各段階を含みます。
CXとは、顧客が受けるエクスペリエンスのことで、あらゆる側面を含みます。一見するとささいなことでも、顧客のブランドに対する印象に影響を及ぼすことは、すべてCXと見なされます。顧客が製品の広告を初めて目にしたときから、ごく最近サポート窓口に電話をかけてきたときまで、その間に発生した顧客とのやり取りは、漏れなくCXの一部です。
そうした各段階での対応が、顧客の自社に対する認識や印象を左右します。つまり、CXはビジネスの成功のカギを握っているということです。実際、顧客の満足度、ロイヤルティ、維持率に直結しています。CXマネジメントを実施することで、企業は顧客の期待に応え、満足度の高いエクスペリエンスを顧客に提供できるようになります。
CXマネジメントとは
多くの企業が、優れたCXの提供に向けて尽力していると口にしていますが、CXに関するトレンドは一定ではないため、優れたCXを提供し続けることは、口で言うほど簡単ではありません。そのため、あらゆる側面を把握、管理するために、CXM、つまりCXマネジメントを実施している企業もあります。
CXMは、対面およびオンラインにかかわらず、顧客とのあらゆるやり取りを追跡、監視するための業務システムです。CXMがあれば、一貫性のあるパーソナライズされたエクスペリエンスを創出できるため、顧客がブランドに対して愛着や親密さを感じるようになります。
これを実現するため、CXMでは、ブランド目線ではなく、顧客の目線からCXを評価します。顧客がどう感じるかという視点で、ブランドのカスタマージャーニーを分析し、顧客が特にストレスを覚えそうなプロセスや、さらに効率化できるプロセスがないかを確認します。
その際、企業側の利益と顧客側の利益が一致しないケースもあるかもしれません。たとえば、あるレベルまでサポートコストを下げようとすると、その分、CXの質が悪くなってしまうこともあり得ます。同様に、顧客対応の時間に制限を設ければ、業務は効率化できるかもしれませんが、急かされていると感じた顧客が不満に思うかもしれません。こうしたケースでも、企業は顧客の視点を踏まえつつ、目標を達成させなければなりません。
また、多くの企業はCXマップを使って、消費者が購入に至るまでの一般的なプロセスを可視化しています。包括的なCXマップがあれば、企業は取り入れるべき変化をすばやく見極め、優先的に対応することができます。
CXにおけるカスタマーサービスの役割
CXの初期段階では、マーケティングや営業チームが最も重要な役割を担います。消費者は通常、オンラインなどで広告を目にしたことをきっかけに、ブランドを認識します。そして、消費者の関心が高まったところで、営業担当者が電話やメールでコンタクトをとります。営業担当者は、セールスファネルでいうところの検討のプロセスに見込み客を誘導し、契約の締結を目指します。
しかし、いったん契約が結ばれると、顧客がマーケティングや営業チームに連絡する機会はあまりありません。購入後、何か問題があったときに連絡することが多くなるのは、サポートチームです。つまり、サポートチームはCXで大きな役割を担っているのであり、その役割は今後も拡大する一方です。サポートチームは、以下のような面でCXに大きな影響を及ぼしています。
顧客の満足度を追跡し、向上を図る
複数の指標を用いることで、サポートチームによるCXのパフォーマンスを測ることができます。顧客対応が終わったら、そのつど顧客満足度(CSAT)調査を行いましょう。CXが良かったかそうでなかったかを簡単に測定できます。平均応答時間や問題解決時間などの主要な指標も、サポートチームの効率性を測るのに有用です。
サポート担当者は、顧客と密に接しているため、顧客から貴重なフィードバックを得られる立場でもあります。担当者は、顧客からよく寄せられる質問や苦情を把握しています。そういった情報は、FAQページやヘルプセンターを充実させたり、製品を改善したりするためのヒントとなります。急増するサポートチケットに対応する
一部の企業では、以前からカスタマーサービスこそがCXの中核であると見なしてきましたが、そのような企業を除いて、サポート担当者がこれほどまでに重要視されるようになったのは、つい最近のことです。
「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」の作成にもかかわった、当社のデータジャーナリストであるMaggie Mazzettiは、次のように述べています。「昨年、多くの顧客が自宅で過ごし、オンラインで用事を済ませていたことから、サポートリクエストの件数が急激に膨れ上がりました。世界的に見ても、2020年のリクエスト数は、約20%増加しています」
サポート担当者は、事実上、各ブランドの顔になりつつあると言えます。
Mazzettiは、さらにこう話します。「その結果、興味深いことに、企業が顧客に与える印象に関して、サポート担当者の手腕がいっそう問われるようになってきています。実店舗で買い物をする顧客が少なくなったため、サポート担当者の役割が大きく増え、その存在感が一段と高まっているのです。サポート担当者は、事実上、各ブランドの顔になりつつあると言えます」
実際、パンデミックの影響で、実店舗で買い物するスタイルは、以前ほど一般的でなくなりつつあります。米国では、2020年だけで、オンラインショッピングの合計金額が8,610億ドルにものぼりましたこれは、前年比で44%の増加です。そして現在、世界中の顧客の65%が、すばやく簡単にオンラインで取引できる企業を利用したいと考えています。
このように、多くの顧客がオンラインショッピングに移行し、対面でのやり取りが電話やWebサイト経由でのやり取りに置き換わりつつある中、CXにおけるサポート担当者の役割は拡大しています。
2021年のパンデミック下におけるCXトレンド
リクエスト件数の増加以外にも、パンデミック以降に生まれた顕著なCXトレンドがいくつかあります。前述のトレンドレポートによると、サポートチャネルに関しても、多くの顧客の間で好みが変化してきています。優れた成果を挙げているブランドは、他の点も含め、こうした顧客の新たな期待に応えられるよう、既に動き始めています。
メッセージングの利用率がかつてないほどに上昇
サポートリクエストの件数が世界的に20%も急増した中、特に大きな伸びを見せたのが、メッセージング経由のチケットです。
Mazzettiは、次のように述べています。「メッセージングチャネルの活用を始める動きが加速しました。パンデミック以降、顧客の64%が新しいサポートチャネルを利用し、そのうち最も多く選ばれたチャネルがメッセージングでした」
Facebook Messenger、WeChat、WhatsAppなどのソーシャルメッセージングアプリも、企業への問い合わせ手段として消費者の間でよく利用されました。2020年、好きなサポートチャネルとしてソーシャルメッセージングアプリを挙げた顧客は、前年比で110%増え、WhatsApp経由のサポートリクエストの件数に関しては、101%の増加を見せています。
Mazzettiは、メッセージングアプリを用いた問い合わせが急増したのは、パンデミックの影響だと分析しています。「だれもが自宅にいる時間が多くなった分、企業への問い合わせが増え、おそらく電話が混み合っていたことから、顧客は別のチャネルを試したのでしょう。メッセージングは非同期型チャネルのため、各々の都合の良いときに返信できます。Zoom会議に出たり、子供の面倒を見たりと、1日中さまざまな用事に追われている人にとって便利な選択肢です」
そうした背景もあり、テキストメッセージ(75%増)、チャット(17%増)、メール(12%増)の人気も前年より高まっています。一方、好きな連絡手段として、電話を選んだ顧客の割合は6%減少しました。ここからわかるのは、おそらく電話での長い待ち時間にしびれを切らした顧客が、保留の発生しない別のチャネルを使うようになったということです。
2019年から2020年にかけて、ソーシャルメッセージングアプリ経由のサポートの人気は110%、テキストメッセージ経由のサポートの場合は75%増加しました。
パンデミックが終わって「日常が戻った」あとでも、多くの消費者がメッセージングを使い続けるであろうことは明らかです。2020年に新しいサポートチャネルを使い始めた64%の顧客のうち、73%が今後もその手段を使い続けると答えています。
昨年サポートチャネルにメッセージングを追加したブランドにとって、これは朗報と言えるでしょう。昨年新しいチャネルを追加した企業の半数以上が、メッセージングを導入しており、2020年に最も広く行き渡ったチャネルとなりました。
昨年は、その他のデジタルチャネルに関しても、サポート手段としての人気の高さが窺えました。新しいチャネルを追加した企業のうち、33%がSNSに対応し、TwitterやFacebookなどのプラットフォームを通して、顧客対応を行えるようにしました。そして、32%がビデオ会議に対応し、世間の動きにならって会話の場をZoomへと移行させました。
現代的なCXを提供したいのであれば、多くのデジタルチャネル、特にメッセージングの導入を検討すべきなのは明らかです。CXに優れた企業はオムニチャネルアプローチを採用
前述のトレンドレポートでは、顧客の好みの変化を追跡することに加え、パフォーマンスの高い企業のサポートチャネルの活用方法に関し、世界的なトレンドを特定しました。
Mazzettiは、こう説明します。「Zendeskでは、顧客満足度、問題解決時間、応答時間のいずれにも優れている企業を、CXのトップパフォーマーに位置づけました。そして、トップパフォーマーの企業は、パフォーマンスの低い企業と比較して、オムニチャネルサポートに対応している割合が高いことがわかりました」
パフォーマンスの高い企業の50%が、オムニチャネルサポートを提供している一方、パフォーマンスの低い企業の場合、その割合はわずか18%です。
「単純計算すると、トップパフォーマーは、パフォーマンスの低い企業と比べて、オムニチャネルサポートを提供している割合が2.8倍にのぼります」(Mazzetti)
パフォーマンスの高い企業の半数が、オムニチャネルサポートを採用しており、パフォーマンスの低い企業と比べると、オムニチャネルサポートを提供している割合は2.8倍にのぼります。
オムニチャネルサポート対応のソリューションでは、複数のチャネルを統合できるため、シームレスなエクスペリエンスを提供できます。電話、メール、チャットといったように、さまざまなサポートチャネルを提供している企業自体は多いもの、それぞれのチャネルが完全に分離してしまっている例は珍しくありません。
そうなると、情報のサイロ化が発生します。別のチャネルにチケットが転送されると、顧客の背景情報が失われてしまうため、新しいチャネルのサポート担当者は、顧客にまたゼロから説明を求めなければならず、関係者全員がもどかしい思いをすることになります。
しかし、オムニチャネルサポートなら、背景情報が失われることはありません。オムニチャネル対応のメッセージングプラットフォームがあれば、ソーシャルメッセージングからアプリ内メッセージへ、あるいはメールからテキストメッセージへというように、あらゆる組み合わせで簡単にチャネルを切り替えられます。顧客に関連する情報にすばやくアクセスできるため、サポート担当者は早急に問題を解決できると共に、パーソナライズされたエクスペリエンスを提供できます。
CXに長けている企業とそうでない企業の違いは、オムニチャネルアプローチの有無だけではありません。「パフォーマンスの高い企業は、自動化、マクロ、トリガといった機能を含むワークフロー管理ツールをカスタマーサービスで活用している傾向がありました。そして、カスタマーサービスソリューションを独自にカスタマイズしている傾向も高くなっています」(Mazzetti)
CXへの投資は顧客維持への投資につながる
顧客にとって、CXはどれくらい重要なものなのでしょうか。2021年に関して言えば、かなり重要と言ってよいでしょう。顧客の期待は高まっており、1回不快な対応を受けただけでも他社に乗り換えると答えた顧客の割合は、50%に及んでいます。さらに、消費者の75%が、質の高いCXを提供してくれるブランドなら支出額を増やしてもよいと考えています。
Mazzettiは、こう話しています。「CXリーダーを対象に行った別の調査によると、CX成熟度が高い企業ほど投資に積極的で、顧客維持に関する目標も上回る傾向にあります。つまり、CX成熟度の低い企業と比べて、CXへの投資額が高く、顧客維持に関する目標も達成しているということです」
Zendeskは、CXに関する究極の投資と言えるでしょう。あらゆるチャネルで一貫性のある会話形式のサービスを提供できるようになります。WhatsApp、Facebook Messenger、TwitterのDM、WeChatなどの人気のソーシャルメッセージングチャネルにも対応しています。サポート担当者は、統合型のエージェントワークスペースを使うことで、チャット、メール、電話などのさまざまなチャネルを通して顧客に対応し、質の高いCXを提供できます。
早速CXを改善し、ビジネスの成長を目指しましょう。