2000年代初頭の時点では、企業が顧客とインスタントメッセージングでコミュニケーションをとるなど、あり得ないと考えられていました。しかし、2021年、それは常識となっています。
「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」によると、WhatsAppやFacebookなどのメッセージングチャネルを好む消費者が増えており、顧客の3分の1近くが、2020年に初めて企業への問い合わせにコミュニケーションアプリを利用したと回答しています。このトレンドは今後も続く見通しです。実際、顧客の74%が、今後も企業とのやり取りにメッセージングを利用するつもりだと回答しています。
ただし、あまりにも選択肢が多いため、顧客との連絡手段としてどのコミュニケーションアプリが最適なのかを判断することは困難です。そこで今回は、顧客が使い慣れたチャネルでコミュニケーションを深め、パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを提供するうえで最適な10種類のアプリをご紹介します。
カスタマーサービスの提供に
お勧めのコミュニケーションアプリ
1. LINE
「(LINEの)ユーザーネットワークは非常に強力です。(中略)こうした市場では、熱心なユーザーが多い傾向にあります。友人も家族も、身近な人の多くがLINEを利用しているからです」—TechCrunch、ライター、Jon Russell氏
LINEは、日本で8,400万人以上が利用しているモバイルメッセージングプラットフォームです。LINEは企業向けに公式アカウントを用意しており、顧客はLINEのエコシステム上で企業による投稿を閲覧し、友人とやり取りするときと同じように企業に連絡を取ることができます。
LINEでは、次のようなことが可能になり、BtoC企業が顧客とのやり取りを強化するうえで役立ちます。
- カスタマーコネクト機能を使用して、パーソナライズされた印象深いエクスペリエンスを顧客に提供する
顧客が企業名で検索して、企業のアカウントを見つけられるようにする(プレミアムアカウントや認証済みアカウントだと検索対象になります)
LINE Payを使用することで、顧客がアプリ内で製品の購入から決済まで行えるようにする
- 顧客が予約のリマインダーや注文の確認などの通知を受け取れるようにする(カスタマーサービスソフトウェアと統合されている場合).<li公式アカウントを利用して、LINEのタイムライン上で情報を発信し、ユーザーの関心を引く
LINE広告サービスを利用して、プロモーションや製品リリースに関するキャンペーンを実施する(広告のターゲットを絞り込めるため、有望なリードにリーチできます)
料金:無料サービスでは、月1,000件までメッセージを送信できます。月15,000件以上のメッセージを送信したい場合は、有料プラン(5,000円~)にアップグレードする必要があります。
2. Facebook Messenger
顧客と手軽にすばやく会話できるメッセージングアプリをお探しの場合、一番のお勧めはFacebook Messengerです。このインスタントメッセージングアプリは、月間のアクティブユーザー数が27億人を超え、サポートチャネルとしての人気も高まっています。2020年には、サポートチケットの件数が58%増加しました。
ただし、膨大なユーザー数を誇る一方で、Facebook Messengerの機能は限定的で、利用できない地域もあります。
Facebook Messengerでは、次のようなことが可能になります。
- 顧客がMessenger誘導広告をクリックした場合に、そのままMessengerのスレッドで会話を開始できるようにして、リードの増加につなげる<liFacebook Messengerの支払い機能を使用して、サードパーティ製のアプリを経由することなく顧客が支払い処理を行えるようにする.
レポート機能を使用してパフォーマンスを測定する(このレポート機能の対象は、ボットによるメッセージに限定されていて、人間の担当者によるメッセージには対応していません。メッセージの送受信数や、ボットから人間の担当者に対応が引き継がれた顧客の人数といった指標を確認できます)
- チャットボットを利用して、最初の挨拶や、担当者が不在の際に営業時間を知らせるメッセージを自動送信する
料金: Facebookビジネスアカウントの設定は無料ですが、広告やチャットボットを利用する場合は料金が発生します。
3. Instagram Direct Messenger
「(Instagramは)企業のさまざまな魅力をアピールし、顧客のライフスタイルに沿うことができる便利なツールです。新規顧客の獲得、エンゲージメントの強化、コンバージョン率の向上を目指すなら、Instagramは非常に効果的です」—Jelly Skateboards、創業者兼CEO、Sven Alwerud氏
ユーザーの90%が企業アカウントをフォローしていることから、Instagramは企業にとって、顧客にリーチし、ロイヤルティを高め、売上を拡大するうえで最適なプラットフォームの1つとなっています。
Instagramを利用している企業は、単に自社製品の魅力的な写真を投稿するだけでなく、このプラットフォームを有効活用し、メッセージング経由でカスタマーサービスを提供したり、顧客からの質問に回答したりしています。
Instagram Direct Messengerでは、次のようなことが可能になります。
Instagramアプリから直接、Facebookのメッセージを送受信する
テキストだけでなく、ボイスメッセージ機能を利用することで、複雑な問題をわかりやすく説明する
料金: Instagramビジネスアカウントの設定は無料です。WhatsAppやFacebook Messengerと同様に、Messenger APIをカスタマーサービスソフトウェアと統合すると、大勢の顧客に対応できます。
4. Twitterのダイレクトメッセージ(DM)
「当社のような少人数のチームが成功を収めるには、一度に大勢のお客様とやり取りし、好印象を持ってもらうための機能が不可欠です。お客様が望んでいることが、製品トライアルへの申し込みでも、製品の購入でも、よくある質問への回答でも、Twitter DMに組み込まれたAIによって、お客様はいつでも都合の良いときに、すばやく効率的に担当者とつながることができます」—Hill City、事業成長責任者、Kayla Glanville氏
TwitterとSprinklrの調査によると、顧客の3人に2人がカスタマーサービスに利用したいSNSとしてTwitterを挙げています。
Twitterでは、次のようなことが可能になります。
Twitterフィード上の会話を、プライバシーが保護された受信トレイにワンクリックで移行する
ヘルプデスクツールを利用して、ツイートをチケットに変換する
- 動画広告や画像広告に追加できるカンバセーションボタンを利用して、顧客からブランドへのコンタクトを促す
カスタマーフィードバックカードを利用して、顧客にカスタマーサービスに関するフィードバックを依頼する
- チャットボットを設定し、顧客からの質問に回答したり、最初に挨拶のメッセージを送信したりする
料金:Twitterのダイレクトメッセージの送信や、Twitterのダイレクトメッセージ向けAPIの利用は無料です。このチャネルがあらかじめ統合されているカスタマーエンゲージメントプラットフォームを利用するのも手です。
5. Slack
「Slackの導入により、まさに理想どおりのエクスペリエンスを提供できるようになりました。顧客満足度は常に高い状態を維持できるようになり、問題解決時間も全体的に短縮しました」—Zendesk、プレミアサポート担当シニアマネージャー、Jon Brummel
Slackの1日のアクティブユーザー数は、1,000万人を超えています。Slackは、職場での従業員どうしのコミュニケーションに利用されることが多いものの、サポートチャネルとしても大きな可能性を秘めています。
Slackでは、次のようなことが可能になります。
- 顧客向けのコミュニティを立ち上げ、顧客の質問にサポート担当者や他の顧客が回答できるようにする(Slackはナレッジベース代わりにも利用できます。会話の履歴にすぐアクセスできるため、顧客はそこから必要な情報を検索できます)
優先度の高い顧客向けの専用チャネルを作成する/li>
割り当てられたサポートチケットやタスクに関する通知を設定し、応答時間の短縮、ひいては顧客満足度の向上につなげる
料金: Slackには無料プランと有料プランがあります。
6. WhatsApp Business
「(当社はWhatsApp Businessを利用しているため、)24時間年中無休で対応できるのが最大のメリットで、お客様からも好評を得ています。お問い合わせに迅速に対応できるうえ、お客様が望む方法とタイミングでやり取りでき、信頼をお寄せいただいています」—LightSpeed Mobility、共同創業者、Rushad Rupawala氏&Rahil Rupawala氏
20億人以上のユーザー数を誇り、シンプルなインターフェイスが特徴のWhatsApp Businessは、顧客が使い慣れたプラットフォームでつながるうえで特にお勧めのメッセージングアプリです。Zendeskの調査によると、WhatsAppをサポートチャネルとして利用する顧客は増加しており、2020年には、WhatsApp経由のサポートチケットの件数が101%も増加しました。
WhatsAppには、WhatsApp BusinessアプリとWhatsApp Business APIという2種類の企業向けオプションがあります。
WhatsApp Businessアプリは、個人アカウントと見た目はほぼ同じですが、小規模企業の経営者にとって非常に有用な機能が追加されています。
WhatsApp Businessアプリでは、次のようなことが可能になります。
- <li企業名を含むプロフィール、製品・サービスのカタログ、連絡先情報を作成し、顧客が必要な情報をすぐに入手できるようにするブロードキャスト機能を利用して、最大256人の顧客にオファー、プロモーション、重要なお知らせを一斉送信する
顧客をセグメント化し、それぞれの顧客への回答やオファーをパーソナライズする
色分けされたラベルで進行中のチャットを分類し、わかりやすく整理する
ただし、WhatsApp Businessアプリは単一のユーザーしか利用できません。顧客対応でCRM、コンタクトセンター、その他のカスタマーサービスソフトウェアを利用している中~大規模企業には、WhatsApp Business APIの方が適しています。
WhatsApp Business APIを利用すると、通常なら課される制限を気にすることなく、顧客が使い慣れたチャネルでコミュニケーションを取れます。念のため説明しておくと、APIはアプリケーションプログラミングインターフェイスの略称で、サイト間をつなぎ、開発者が既存のソフトウェアの特定の情報や機能にアクセスできるようにします。このサービスを自力で使いこなす必要はありません。開発者の力を借りたり、WhatsApp Businessのソリューションパートナーに頼ったりできます。
先に述べたようなWhatsApp Businessアプリの機能に加え、テンプレートメッセージ機能を使うと、配送情報、予約のリマインダー、支払い状況などをチャットボット経由で通知することができます。
料金: WhatsApp Businessには、無料プランと有料プランがあります。WhatsApp Businessアプリのアカウント作成は無料ですが、WhatsApp Business APIは有料サービスです。多くの場合、WhatsApp Business APIの料金は、ビジネスソリューションプロバイダーの使用料に含まれています。
7. Apple Business Chat
「当社は、お客様にシンプルで魅力的なエクスペリエンスを提供したいと考えています。それを手助けしてくれているのがAppleのテクノロジーです」—AXA France、CIO、David Guillot de Suduiraut氏
Apple Business Chatを利用すれば、Appleデバイスを使用する16億5,000人のユーザーと簡単につながることができます。ユーザーは、Appleのマップ、Safari、検索、Siriなどのアプリから企業を見つけて、そのまま会話を開始できます。
Apple Business Chatでは、次のようなことが可能になります。
Apple Pay経由で顧客が支払い処理を行えるようにする
キーボードのショートカットを利用して、(顧客の許可を得たうえで)顧客データをすばやく収集する
製品のカタログやイベントの日程といった重要な資料や情報を送信し、顧客が予約を行えるようにする
リアルタイムの追跡機能によって、顧客が随時、現在の注文状況を確認できるようにする
料金: Apple Business Chatの料金は、利用中のメッセージングサービスプロバイダーや企業の規模によって変わります。
8. Googleマイビジネスメッセージ
「Googleマイビジネスのレビューは、当社にとってビジネスの成功に不可欠です。ブランドの認知度を高められ、購入を検討されているお客様に信頼感を与えられます」—Stephen Einhorn、マーケティングディレクター、Kelly Montague氏
オンラインでのプレゼンスを高めて顧客の数を増やしたいなら、Googleマイビジネスのメッセージ機能がお勧めです。顧客は、さまざまなGoogleプラットフォーム(マップや検索など)から直接会話を開始できます。
Googleマイビジネスメッセージでは、次のようなことが可能になります。
顧客からの製品やサービスに関する問い合わせに回答する
Google Pay経由で安全に決済を行う
返金や注文に関する最新情報を顧客に送信する
フィードバックやCSAT評価に基づいて顧客満足度を測定する
料金: Googleマイビジネスメッセージは、設定も利用も無料です。
9. KakaoTalk
「韓国では、KakaoTalkを避けては通れません。調査会社のEMarketerによると、韓国のスマートフォン普及率は73%で、そのうち93%がモバイルメッセージングアプリのKakaoTalkを利用しています」—Bloomberg、ライター、Sarah Frier氏
ユーザー数4,600万人のKakaoTalkアプリは、韓国の大手メッセージングプラットフォームです。ユーザーは、トークチャネルでブランドをフォローしたり、担当者とやり取りしたりできます。
ベーシックなトークチャネルは、小~中規模企業が顧客へのサポートをスムーズに提供できるように設計されています。具体的には、次のようなことが可能になります。
ユーザーのニュースフィード上に、投稿、メッセージ、プロモーション用のクーポンを表示させる
自社のチャネルをお勧めするポップアップ通知をユーザーに送信する(Biz Messageというプッシュ通知を送信して、顧客のエンゲージメントを促進することもできます)
QRコード、チャットへのリンク、Webサイトへの誘導ボタン、広告機能などを利用して、ブランドへのコンタクトを顧客に促す
料金: KakaoTalkでは、1対1のメッセージは無料ですが、多数のユーザーに向けたメッセージやよりターゲットを絞ったメッセージを送信する場合は、料金が発生します。多数のユーザーに向けたメッセージは1通あたり0.012ドルで、ターゲットを絞ったメッセージはもう少し高く、0.016ドルかかります。
10. 自社のWebサイトやモバイルアプリ(チャット)
「あらゆるタイプのお客様にリソースを提供できる点が魅力的です。電話が苦手なお客様もいれば、質問にはすぐに回答してほしいのでメールは嫌だというお客様も大勢います。こうした場合に最適なのがチャットです」—The Groomsman Suit、共同創業者、Jeanne Foley氏
自社のWebサイトやモバイルアプリにメッセージング機能を組み込めば、別のアプリケーションに切り替えなくても、その場ですぐ顧客にサポートを提供できます。Zendeskなどのツールを利用すれば、さまざまなチャネルのメッセージを簡単に統合できます。
Zendeskでは、次のようなことが可能になります。
顧客との会話履歴をくまなく確認し、顧客に何度も同じ説明を繰り返してもらうことなく、迅速に回答する
顧客データにアクセスして、対応をパーソナライズすると共に、その顧客独自のニーズを把握する
単一の作業画面で顧客とのあらゆるやり取りを管理できるようにして、メッセージングの会話を別のチャネルにシームレスに引き継げるようにする
- セルフサービス用のチャネルとしてAnswer Botを活用し、顧客が人間の担当者の介入なしで基本的な質問を解決できるようにする
便利なサードパーティ製のインテグレーション(ライブロケーションマップなど)を追加して、顧客が必要とする情報を提供する
料金: Zendeskには3種類のプラン(55ドル~)があります。
顧客と途切れずにやり取りを
適切なビジネスコミュニケーションアプリを選んだら、アプリのスピーディさとシンプルさを活かして、顧客に迅速なサポートを提供しましょう。メッセージングアプリをカスタマーエクスペリエンスプラットフォームに接続すれば、顧客データに基づいて最適な回答を送信できます。