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暗黙知と形式知を理解してナレッジ共有を推進し経営に活用する方法

更新日: 2023年1月27日

業務効率化や顧客満足度の向上を効果的に実現するには、社員が業務を通じて得た知識、ノウハウなどのナレッジを共有して、全社員が活用できるようにすることが必要です。ナレッジには、共有が簡単にできない暗黙知と共有が容易な形式知の2種類があります。

ナレッジを最大限に活用するには2種類のナレッジを理解し、共有が難しい暗黙知も形式知にして共有しなければなりません。暗黙知を形式知に変える方法、およびナレッジを有効に活用できるようにするためのポイントについて解説します。

ナレッジマネジメントにおける暗黙知と形式知とは?

ナレッジには暗黙知と形式知がありますが、この分類は哲学の認識論における分け方です。

  • 暗黙知とは


    暗黙知とは、言語化・数値化や図による表示ができにくいナレッジのことです。例としては、「優秀な営業マンの話法」「感性の豊かな社員が作るデザインセンス」「長年の経験から身についた卓越した木工や金属加工などの技」などがあります。暗黙知はノウハウ、コツ、勘などと呼ばれます。
    暗黙知は形式知に対して、「主観的・個人的」「経験的・身体的」「アナログ的」な特徴があるナレッジです。このような特徴から、暗黙知は学ぶという意識がなくても経験することで自然に身につくナレッジと言えます。また、言語化・数値化や図による表示ができにくいことから、意識しないと組織内に埋没したままになります。企業は意識して暗黙知を組織内で共有できるようにしなければ、いつまでも共有できず活用されない可能性があります。
  • 形式知とは


    形式知とは、言語化・数値化・図での表示が容易なナレッジのことです。マニュアルを作成したり、データにしてデータベースに蓄積したりすれば、共有して誰もが簡単に活用できます。例としては、「製品の操作方法」「営業や製品開発の成功・失敗事例」「実務に必要な法律や業界知識」などがあります。
    形式知は暗黙知に対して、「客観的・組織的」「理知的・精神的」「デジタル的」な特徴があるナレッジです。このような特徴から、形式知は経験からも身につきますが、かと言って経験からしか身につかないナレッジではありません。教える側は教えやすく、学ぶ側は意欲があれば自主的に多くの形式知を吸収できます。そのため企業は、集合研修やテキスト、マニュアルなどを配布して容易にナレッジを社内で共有・活用できます。暗黙知も形式知に変換して、組織内で共有して有効に活用できるようにしなければなりません。

暗黙知を形式知に変えるべき重要な理由

暗黙知を形式知に変えなければならない理由について紹介します。

暗黙知が企業内で活用されにくい理由

暗黙知は、意識的に学ばなくても業務を経験することで自然に身につくナレッジです。そのため企業は暗黙知を積極的に教育することはあまりしていません。業務を効率的に行うための暗黙知の習得は、社員の自主性に任せています。その結果多くの暗黙知は、非常に有益であっても社員に固有のナレッジとして共有されない状態のままになっています。このことをナレッジの属人化と呼びます。

暗黙知を活用すべき重要な理由

例えば長年カスタマーサポート対応しているスタッフが顧客と話す際に気をつけているポイント、顧客の怒りを鎮める方法、および幅広い知識など優秀なサポートスタッフの話法や知識を共有できれば、スタッフ全員の能力アップが期待できます。スタッフの持つ卓越した暗黙知は、企業も研修会などで意識して共有できるように努力します。

しかし、コストや手間がかかることから継続して行われることは少なく、サポートスッタフが入れ替われば、その都度、全員への周知は困難です。加えて、研修は受ける側が受け身になるため、一過性の研修だと一部のスタッフにしか身につきません。ほかの暗黙知も同様で、暗黙知の周知は多くの企業であまり行われず、実施されていてもその効果は非常に限定的です。

また、経験を重ねることで業務を効率的に処理できるノウハウを身につける社員は多数います。これらの暗黙知の一つひとつは、企業に与える影響が小さいことから企業内で放置されたままです。しかし、このちょっとした暗黙知であっても、ほかの社員が気づいていなければ貴重なナレッジです。共有することで、同じ業務を担当する社員全員が現在のやり方よりも効率的に処理ができるようになるため、生産性が向上します。これらの暗黙知を積み重ねれば、業務効率化やコスト削減などに大きな効果が期待できます。

その他に、暗黙知の放置は経営上の弊害を多数もたらす可能性があります。例えば、不正の温床の原因となることや、重要な暗黙知を持った社員の突然の離職による混乱、ベテラン社員の離職による貴重な暗黙知の社外流出などが考えられます。特に現代は働き方や雇用の多様化で人材の流動性が高いため、暗黙知の放置は企業に大きなダメージを与えかねません。また、暗黙知を形式知にして全社員が共有できると、新しいナレッジや既存のナレッジよりもレベルが高く、優れたナレッジの創造につなげられます。

これらの理由から暗黙知を形式知に変換して、社員が必要なときに、誰でも、いつでも、どこからでも、利用できるようにすることは企業にとって極めて重要です。

暗黙知を形式知に変える方法「SECI(セキ)モデル」とは?

暗黙知はそのままでは共有・活用ができません。暗黙知を形式知に変えなければなりませんが、その方法にSECI(セキ)モデルがあります。SECIモデルは経営学者の野中郁次郎氏によって提唱され、世界中に知られている有名な方法です。暗黙知を形式知に変換して利用するだけでなく、新たなナレッジも生み出せます。

SECIモデルの定義

SECIモデルとは、個々の社員が持つ暗黙知を形式知に変えて組織全体で管理・共有を行い、さらに既知の形式知から新しい知識や新たな発見を創造するプロセスのことです。組織全体でナレッジを適切に管理し活用するためのフレームワークとして、ナレッジマネジメントで利用します。

暗黙知を形式知に変えるSECIモデルの4つのプロセス

SECIモデルには「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(または結合化)(Combination)」「内面化(Internalization)」の4つのプロセスがあります。それぞれの頭文字を取りSECIモデルと呼ばれます。

SECIモデルでは、この4つのプロセスを循環させます。循環によって、暗黙知が形式知に変換され、新たな暗黙知が生まれ、それがまた新たな形式知の創造へとスパイラル的に発展していきます。

  1. 共同化プロセス

    最初のプロセスの共同化とは、まだ形式知になっていない暗黙知に対して、五感を活用した共通の体験を通じて理解を深めて共有するプロセスです。例えば、新人社員がベテラン社員の作業や業務を一緒に体験して、仕事のコツやノウハウを学ぶプロセスがこれに該当します。

  2. 表出化プロセス

    次の表出化のプロセスとは、共同化で体験し、理解できた「暗黙知」を言語化したり、図で表現したりして「形式知」にするプロセスです。暗黙知を経験で習得した社員を中心に議論を重ねることで、「言葉・文章」「図表」で示せるようにしていきます。この結果、体で覚えた暗黙知を「このような感じ」や「これくらいの力」などの主観的な言葉を避けて、客観的・論理的に表現できる形式知に変換できます。

  3. 連結化(または結合化)プロセス

    暗黙知を形式知にするだけなら表出化プロセスで完了します。しかし「三人寄れば文殊の知恵」のことわざのとおり、複数の暗黙知や形式知を組み合わせることで、新たな発見・創造が生まれます。

    例えば、成功事例を組み合わせた横展開や縦展開、あるいは2つ以上のナレッジを組み合わせた1つの新しいナレッジの創造などです。場合によっては、経営に大きなインパクトを与える革新的なイノベーションの創造につながる可能性もあります。暗黙知のままでは組み合わせることが困難ですが、形式知にすることで、より多くのナレッジの組み合わせを、より多くの社員で検討できます。

  4. 内面化プロセス

    内面化プロセスとは、上記3つのプロセスを経て暗黙知から形式知になったナレッジを反復して実践し、その経験を通じて新たな固有の暗黙知が生まれるプロセスのことです。合理的と思われるナレッジでも、知識の量、性格、過去の経験、運動能力、環境などの差で、異なるナレッジがより有効と考えられる場合があります。例えば車の運転でも、一般道路、高速道路、山岳道路、雪道などの道路の違い、車種の違い、運転経験の違いなどでナレッジが変わります。

SECIモデルの4つのプロセスを組織内で循環させると、埋没しかねない暗黙知を活用でき、さらに新たなナレッジ創造やナレッジの高度化ができて、経営に貢献することができます。

暗黙知や形式知のナレッジを収集、整理、共有、活用するうえで重要なナレッジマネジメント、およびナレッジマネジメントのフレームワークとなるSECIモデルについては以下の記事を参照してください。

暗黙知と形式知を管理して活用するポイント

企業が置かれている現在の環境では、人材の流動性や働き方の多様化などが進展し、社員の企業への帰属意識も低下しています。加えて、経営環境はますます厳しさを増しており、すべての企業にとって業務効率化の推進や顧客満足度の向上による他社競争力の確保は重要な課題になっています。

このような状況下では、企業は社員の持つ暗黙知や形式知といったナレッジをできるだけ広く収集し、暗黙知は形式知にして蓄積・一元管理・共有して、全社員が利用できるようにしなければなりません。これにより、業務の効率化・生産性の向上、社員の能力アップ・社員教育コストの削減、顧客満足度の向上、革新的なイノベーションの創造などによって他社競争力を向上させられます。

しかし、一方でナレッジマネジメントを成功させることは簡単ではない現実があります。ナレッジを効率よく効果的に活用するには、優れたナレッジマネジメントツールの導入が成功の重要なポイントです。自社組織や活用の目的に合ったナレッジマネジメントツールを選択し、そのうえで推進担当者を設置し、全社を挙げて取り組むことでナレッジマネジメントを成功させることができます。

暗黙知と形式知を管理、活用には選択肢としてナレッジマネジメントツールの導入が効果的です。ナレッジマネジメントツールについて以下を参照してください。

ナレッジマネジメントツールを活用して暗黙知を可視化し全社で共有し経営に生かす

企業内のナレッジには、言語や図で表現がしにくい暗黙知が多く含まれています。暗黙知は、そのままでは共有して組織全体で活用することは困難です。放置すると、社員の離職などで貴重な暗黙知が社内から失われてしまう可能性があります。

そこで、SECIモデルを活用したナレッジマネジメントを推進し、全社員が活用できる環境を整えることが重要です。ナレッジマネジメントの効果的な推進には、ナレッジマネジメントツールの利用が有効です。

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