顧客ニーズを把握するために戦略的なマーケティング活動が重要な時代です。例えば、これまでクレーム処理対応とみなされていたヘルプデスクやコールセンターは、新たなマーケティングの視点から見ると、「顧客ニーズ把握のための最重要拠点」ともいえます。では、単にコールセンターを増員して、顧客からの問い合わせを“待ち受ける”体制を整えればよいのでしょうか?ここで必要になるのが、顧客による「自己解決」という考え方です。
顧客は自己解決を求めている
コールセンターに問い合わせをする顧客の多くは、実は「自分で調べて問題を解決したい」と思っている、ということをご存じでしょうか。
これはアメリカで行われたアンケート調査の結果ですが、75%の人が「セルフサービスはとても便利」と考えており、67%の人が「電話での問い合わせよりもセルフサービスを好む」と回答しています(Nuance Enterpriseの調査)。また、40%の人が「まずはセルフサービスで自分が求めている情報を探し、その後、コールセンターに問い合わせる」と答えました(Coleman Parks for Amdocsの調査)。
多くの人は窓口に問い合わせるより先に、まずは商品やサービスについてネットで調べていることが多いでしょう。商品に対して何らかの疑問が生じた場合、まずは検索エンジンでキーワード検索し、その流れで企業のWebサイトを訪れ、FAQページなどで解決策を探します。あるいは、ネットの口コミ情報などで解決策を発見できる場合もあるでしょう。
それにもかかわらず、顧客はなぜ、コールセンターに問い合わせる羽目になってしまうのでしょうか? それは、顧客が望む情報がWebに掲載されていない、あるいはそれを見つけにくいからです。
FAQは誠実な企業の基本
現在、企業のWebサイトの8割以上にFAQが設けられている、といわれています(『コールセンター白書2005』より)。それなのにコールセンターへの問い合わせが多い理由は、端的に言うと「FAQの機能や記載内容が顧客にとって有用ではない」ということになるでしょう。
顧客の視点で見ると、コールセンターにアクセスしている時点で、本来は自己解決したかったのに「問い合わせをさせられた」という企業に対して“不満を持った状態”であることを意味します。端からけんか腰で電話してくるクレーマー気質の方からの問い合わせも、その不満の表れである可能性があります。
顧客がすべての疑問をFAQだけで自己解決するのは難しいですが、基本的な最低限の情報を与えることは可能なはずです。その努力すら怠っている企業は、「顧客に対する誠実さが足りない」と思われてしまうのです。
では、顧客にとって有用なFAQを用意するために、企業はどうすればよいのでしょうか。
機能的なFAQを作るために、「FAQ専属の人員を配備せよ」ということではありません。顧客のどんな疑問にも回答できる人員やチームは一朝一夕にはできませんし、もし仮に存在する場合、それほど優秀な人材を問い合わせ対応のみに専属させるのは、企業として明らかに生産性を欠いているといえるでしょう。
結論から言うと、専門家をアサインするのでなく、全社的な対応が必要になります。といっても、全社を挙げてFAQページを作りましょう、ということではありません。全社的な関与の下、FAQページの礎となる「ナレッジベースを構築していこう」という合意形成が前提になります。
ナレッジベースとは、知識をコンピュータ上にデータベース化し知識の検索を可能にしたものです。商品情報やマニュアル、白書、周辺分野情報など、さまざまな情報が“知識”の源となります。とりわけ、顧客からの問い合わせとその回答という一連の流れをナレッジベースに追加していくことで、企業としての“知識”は強化されていきます。
“知識”をデータとして残すためには、顧客からの問い合わせ履歴などを有効に管理していく必要があります。コールセンターに寄せられた問い合わせを録音するのは当然として、ほかの経路、例えば、営業部に直接問い合わされた顧客の声、SNSを通じた問い合わせ履歴なども管理していかなければなりません。
つまり、ナレッジベースを構築するために、横断的に誰もがアクセスでき、顧客が疑問を持ちそうなポイントを随時アップデートできる体制づくりが必要なのです。ナレッジベースの構築を、ヘルプデスクやサポートセンターを製造や営業といった主要業務の周辺に位置付けるのではなく、ここを“中心”とみなすような戦略的な取り組みが必要になるでしょう。
重要なのは戦略的なシステム化
そのうえで、ナレッジベースのシステム化が重要になります。例えば、コールセンターのスタッフにのみ顧客対応を担わせるのではなく、「FAQチャット」を設けて各部門に担当者を配備し、問い合わせ履歴をサポートセンター部門(=全社)に自動集約する。そして、それをナレッジベースにする、といったシステムです。
有用なナレッジベースを構築できれば、そのデータを活用して“よくある質問”をシミュレートできるようになります。さらに、AIを活用して「過去の質問」「回答の傾向性」「顧客属性」などを解析し、顧客からの問い合わせを「チャットボット」で自動的に回答させる、といったシステムを作り上げることも可能となります。
そういった取り組みで顧客を自己解決に導くことができれば、サポートスタッフの負荷は大幅に減り、会社として大幅な人件費の削減が見込めるようになるでしょう。つまり、本来の顧客ニーズでもある「自己解決」の達成に向けて、企業として真摯に取り組み、顧客に余計なストレスを与えないように努力することで、企業としても目標である収益アップを到達できるようになるでしょう。
まとめ:
顧客の自己解決のために経験豊富なパートナーを!
このように、顧客の「自己解決」を促すことは非常に重要です。そのためにはFAQの充実、そしてその裏側にあるナレッジベースの構築が必要です。また、AIチャットボットなどのシステム化も有効です。ですが、こういった提案を多面的かつ総合的に行える企業は、さほど多くはないでしょう。
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