顧客が求めているのは回答――それも、迅速な回答です。
「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2020」からもそのことは明らかです。多くの消費者が、優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)に最も欠かせない要素は「問題のすばやい解決」だと考えています。「すばやい」とは具体的にどの程度を指すのでしょうか? 同レポートでは、消費者の半数以上が、電話での問い合わせでは5分以内の回答を期待すると答え、チャットについても28%の消費者が同様に回答しています。
これほどのスピードで対応するには、担当者の業務環境の改善が欠かせません。担当者と顧客の両方にとってスピーディなエクスペリエンスを可能にするさまざまなツールを利用して、カスタマーサービスチームを強化しましょう。
コミュニケーションチャネル
コミュニケーションチャネルは、カスタマーサービスチームが顧客とつながるために不可欠なツールです。各チャネルの使用目的はそれぞれに異なり、重視すべきチャネルは、ビジネスの性質や顧客の好みによって決まります。
メール
多くの場合、メールは企業が最初に導入するコミュニケーションチャネルでもあります。手軽で万能なチャネルだからです。
Zendeskの製品マーケティング担当ディレクター、Abhiroop Basuは次のように話します。「メールは広く普及している連絡手段です。たいていの顧客はメールアドレスを持っていますから、手始めにメールを導入するのは自然な流れと言えるでしょう」
顧客へのメールでは、最初に今後のサポートの流れを記載することが大切です。たとえば、顧客からのメールに通常4時間以内で返信している場合は、自動返信メールを設定して、メールを受信した旨と4時間以内に返信できる旨をまずは知らせるようにしましょう。顧客側もだいたいの時間がわかっていれば、返信を待っている間もイライラしません。
電話
電話はメールの人気を唯一上回るチャネルです。調査では、消費者の66%が、通常は企業に電話して問題を解決していると回答しました。
昔からあるチャネルの方が、馴染み深く選ばれやすいのは当然のことです。多くの顧客が、電話を通して人間の担当者から直接リアルタイムで回答を得られることを求めています。自社で提供する製品やサービスが非常に専門的で、顧客に丁寧なサポートが必要な場合、この傾向はさらに強まります。
スピードも重要な要素です。電話などのリアルタイムで対応できるチャネルを介した問い合わせは、メールに比べて約13倍の速さで解決されます。スピーディなカスタマーサービスを売りにしたいのであれば(ぜひそうすべきです)、自社のコールセンターに投資しましょう。
チャット
企業への問い合わせに主にチャットを使用する顧客は、現状24%にとどまっていますが、チャットは近年非常に人気の高まっているチャネルです。
現にZendesk導入企業において、過去5年間で最も成長の速かったチャネルはチャットでした。2015年と2020年を比較すると、チャットを利用する顧客は4倍以上増加しています。
特にeコマース企業では、Webサイトへのチャットの埋め込みが不可欠です。これは、顧客からの質問にいつでも答えてくれる、実店舗の店員のような役割を果たします。
企業が成長すると、チャットでの問い合わせ件数が膨れ上がり、一部の対応を人工知能(AI)に任せたいと考えるようになるかもしれません。チャットボットツールを使えば、よくある質問への対応を自動化し、顧客から情報を収集して、複雑な問題の場合は人間の担当者にシームレスに引き継ぐことができます。
ソーシャルメッセージング
メッセージングは、チャットと異なり、顧客がWebサイトやチャットウィジェット内で回答をじっと待っている必要がありません。会話をリアルタイムに進める必要がないので、顧客とサポート担当者の双方にとって都合の良い手段です。
比較的新しく、電話やメールに比べて一般的とは言えないチャネルですが、Zendeskの調査によると、メッセージアプリはあらゆるコミュニケーションチャネルの中で最も高い顧客満足度(CSAT)を獲得しています。
顧客ベースを分析して、自社に最も適したソーシャルメッセージングプラットフォームを選びましょう。Zendeskの調査では、特に中央アメリカと南アメリカの企業でメッセージングの人気が高まっていることがわかっています。この地域ではWhatsAppなどのメッセージアプリが普及しており、それが企業のサポートチャネルとしても取り入れられた形です。
「ブラジルなどでは、多くの人が一般的な連絡手段としてメッセージアプリ、中でもWhatsAppを使っています」とBasuは話します。「そのため、ブラジルのほぼすべての企業がカスタマーサービス用にWhatsAppの番号を発行しているのも、不思議な話ではありません」
インフォメーションチャネル
サポート担当者とやり取りできることも重要ですが、顧客は自分で問題を解決できる手段も求めています。
ナレッジベース
ナレッジベースは、多くの顧客が好むセルフサービスを提供できるチャネルです。
よくある質問、製品の詳細、各種ポリシーなど、顧客に役立つ情報が1か所に集約されており、簡単にアクセスできます。顧客は求める回答を得られ、担当者はサポートの参考情報として利用できます。実際、担当者がナレッジベースを参照するだけで対応が完結するケースも多いのです。
「『Let me Google that for you(代わりにGoogleでお調べします)』は一種のジョークコンテンツですが、担当者はこれと同じようなことを行っているわけです」とBasuは話します。
とは言え、多くの顧客はナレッジベースから自力で情報を調べるため、カスタマーサービスチームが不要な対応に割く時間が削減されます。音楽機材のオンラインマーケットプレイスを運営するReverbでは、Zendeskのサポートツールを使ってヘルプデスクを立ち上げたところ、チケット(問い合わせ)が削減され、顧客から1日に届く問い合わせメールが350件から150件にまで減りました。
役に立つ記事を豊富に揃えておけば、他社との競合でも優位に立てます。事実、CXチームに関するZendeskの調査によると、ナレッジベースを提供している企業は28%にとどまっています。
コミュニティフォーラム
コミュニティフォーラムも、ナレッジベースと同様に顧客が自分で解決策を見つけられ、カスタマーサービスチームの負担を減らせるチャネルです。さらに、コンテンツ作成に全面的にかかわる必要がないため、担当者の作業時間が大幅に節約されます。
Basuは次のように話します。「企業側がすべてのコンテンツを用意するのではなく、熱心なユーザーに記事を書いてもらい、有意義な情報を共有してもらうのです。フォーラムなら、顧客どうしで問題を解決し合うこともできます」
Zendeskのフォーラムでは、内部運営者として管理にかかわっている従業員はごく少数で、Zendeskの製品を知り尽くした有志のモデレーターが、積極的に他の顧客の疑問に回答してくださっています。そうしたユーザーを公式モデレーターとして認定し、感謝のしるしに報酬を贈ったこともあります。
Zendeskをはじめとしたコミュニティツールを使えば、フォーラムを構築して、顧客の手を借りながらコンテンツを拡充していくことができます。
分析ツール
カスタマーサービスでうまくいっている点や改善が必要な点を把握するには、チームの成果測定が欠かせません。
CSATアンケート
Zendeskを使えば、サポート対応の24時間後に自動で顧客満足度アンケートを送ることができます。「良かった」か「悪かった」かの2択から選べるシンプルなアンケートで、細かなニュアンスまでは読み取れませんが、手間を取らないため、回答率は非常に高まります。
CSATスコアを属性別に分類すると、さまざまなことが見えてきます。たとえば、最も顧客満足度の高いコミュニケーションチャネルはどれか、顧客が不満を感じているチャネルはどれか、顧客に評判の良い担当者はだれか、追加のトレーニングが必要な担当者はだれかといったことです。
顧客ベースを拡大しているさなかの新興企業にとって、CSATスコアは特に重要です。
Basuは次のように話します。「名の知れた大手企業と競わなければならないスタートアップは、顧客満足度に気を配る必要があるでしょう。顧客満足度を測定し、スコアを高く保つことが重要です」
パフォーマンスレポート
企業が成長するにつれて、顧客満足度よりも重視するようになるのが効率性です。カスタマーサービスチームのパフォーマンスレポートがあれば、うまくいっている点や改善すべき点を把握できます。
カスタマーサービスに関する指標を測定して、サポート担当者の業務効率をチェックしましょう。たとえば、担当者の平均応答時間、チケット解決件数のほか、チケット件数の増減などを確認します。
また、個々の担当者のパフォーマンスと、チーム全体の生産性の両方を測定することが大切です。こうすれば、問題を抱えている担当者を見つけると同時に、全体的に改善が必要な点を特定することができます。
サポートツール
多くの企業が求めているのが、カスタマーサービスに欠かせない重要なツールがまとまった包括的なツールです。サポートソリューションを選ぶ際には、絶対に外せない重要な機能が含まれているか確かめましょう。
最低でも、サポート担当者がすべてのコミュニケーションチャネル、顧客情報、他の従業員に簡単にアクセスできるようなツールでなければなりません。
統合型ワークスペース
サポート担当者が必要としているのは、顧客とのあらゆるやり取りがすぐに参照できる便利な統合型ワークスペースです。顧客と連絡を取る手段は、電話、メール、チャットなど多岐にわたり、時には複数のチャネルを行き来することもあります。どのチャネルが使われる場合でも、担当者があらゆるやり取りに簡単にアクセスできる必要があります。
「さまざまなチャネルを導入しているばかりに、担当者が顧客対応の際にツールやダッシュボードを逐一切り替えなければならないようでは問題です」とBasuは話します。「効率性を維持するには、統合型ワークスペースを導入して、担当者がチャネルをまたいでも顧客と会話を継続できるようにしなければなりません」
カスタマイズ可能なツールを使ってワークスペースを構築すれば、たとえば、対応中のチケットの解決に役立つツールを自動で表示させるといったことが可能になります。
Zendesk Supportのコンテキストワークスペース機能なら、チケットの種類に応じて条件を設定できます。たとえば、返品リクエストのチケットであれば、それに適したフォーム、マクロ、アプリをすばやく表示させることができます。
顧客の背景情報
顧客対応で主に必要となるのは、対応している顧客がだれなのか、自社とどのような関係を築いてきたかといった情報であり、こうした情報がツールで表示されるようにする必要があります。
担当者がチケットの対応にあたるときは、顧客の基本的な情報をくまなく迅速に把握できなければなりません。Zendeskを使って顧客の背景情報を確認すれば、やり取りの最中に顧客の電話番号、メールアドレス、住所を確認できます。
さらに、購入からWebサイトの訪問まで、顧客の行動履歴の一覧も確認できます。
「これにより、商品の注文、ヘルプセンター記事の閲覧、前回の問い合わせといったアクションが行われた日時を知ることができます」(Basu)
このような情報を把握しているかどうかが、シームレスなサポート提供のカギとなります。顧客は、複数の担当者をたらい回しにされたり、何度も同じ説明を繰り返したりすることを好みません。だからこそ、顧客のあらゆる背景情報を知ることのできるツールが不可欠なのです。
コラボレーションツール
企業に対して社内の連携強化を求める顧客の割合は、70%以上に達します。担当者はチームメンバーと連携しながら、顧客の問題をできるだけすばやく効率的に解決する必要があります。
「顧客に返金対応を行う場合、財務チームの承認が必要になりますよね。このプロセスを効率化するには、複数のプラットフォームやアプリを使い分けることなく、部門を横断したコラボレーションが可能になるツールが必要です」(Basu)
Zendeskのコラボレーションアドオンなら、1つのワークスペース上で、メールやSlackを通じて他のチームと効率的にコミュニケーションをとることができます。
さらに、サイドカンバセーション機能を使えば、顧客対応中にスムーズにZendeskの管理画面からメールやSlackで、他の従業員と並行してやり取りすることもできます。
こうすれば、顧客を他の担当者に引き継いだり、待たせたりすることなく、適切な回答をすぐに提供できます。