バーチャルチームとオフィス勤務のチームとでは、その課題もメリットも異なります。定期・不定期関係なく、日々顔を合わせることがないマネージャーと社員の間には、深い信頼関係と良好なコミュニケーションが不可欠であり、大変なことのように感じられるかもしれませんが、適材、即ち、信頼でき高いコミュニケーション能力を備える社員を採用することが最初のステップとなります。最良のバーチャル社員は、いるのかいないのか分からない存在にならないような独自性の高いスキルを備えているものであり、自主的に働くことができるため、マネージャーは、バーチャルチームがただ機能するというだけではなく、成功を収められるような環境作りに専念できます。「バーチャル」とは、一般的には在宅勤務を意味しますが、チームメンバーが複数の拠点に散らばっていることから、「分散型」チームと呼ばれることもあります。いずれにせよ、リモートマネジメントのスキルを習得し、磨き上げるためには、優れたバーチャル社員の条件、チーム内のコミュニケーション活性化やリモート業務を楽しむためのアイデア、効率化と透明化を促進するツールなどについて検討する必要があります。
目次
バーチャルチームとは
「バーチャル」とは、一般的には在宅勤務を意味しますが、チームメンバーが複数の拠点に散らばっていることから、「分散型」チームと呼ばれることもあります。
バーチャルチームを活用するメリット
バーチャルチームをゼロから築くのか、既に分散しているチームを引き継ぐのか、また実際の現場のチームをバーチャルに移すのか否かに関わらず、バーチャルチームには確かなメリットがあります。
- 幅広くタイムリーな顧客サポート
例えば、最重要顧客に年中無休24時間体制のサポートを提供している場合には、その顧客と同じタイムゾーンで勤務しているメンバーがいると大変助かるでしょう。もちろんマネージャーは、早朝または深夜に世界各地のリモート社員と電話会議を行う必要があるかもしれませんが、チームメンバーは疲れずにすみ、ベストコンディシンでお客様のサポートに臨むことができるのです。 - フレキシビリティと生活の質の向上
フレキシビリティにはプラスとマイナスの面があります。リモートワークの社員は、業務時間と休み時間を柔軟に管理・設定することができるため、生活に余裕が生まれます。通勤から解放されて時間が浮くため、子どもを学校に迎えに行ったり、家族そろって夕食をとったり、スポーツジムに通ったりする時間も増えるのです。フレキシビリティと引き換えに不規則な勤務時間になったとしても、多くの人がそれを喜んで受け入れています。
バーチャルチームの課題
バーチャルチームにはメリットがある一方で、課題もあります。
- 孤独を感じる。
リモート環境で成功する社員もいれば、同僚とのおしゃべりが無くてはならない社員もいます。そして、誰しもが時に孤独を感じるものです。健全なチームのカギを握るのが、仲間意識・連帯感です。マネージャーは、ビデオ会議を開いてメンバー同士が会話したり、コミュニケーションツールに「集合」したりするよう働きかけるのも良いでしょう。人とのふれあいは、人間が生きる上で欠かせないものです。一方で、 - 集中力が途切れ、時間管理に苦労する。
従来のオフィス環境にもある課題ですが、この理由でリモートワークを選択する人もいます。ただし、食器洗いや洗濯、ゲームなどは全く別の問題です。Twitterでは、リモート社員がオフィスに勤務するような格好で働くべきか、パジャマ姿のまま働くことを認めるべきかについて、度々議論が炎上していますが、服装は個人の自由といえるでしょう。ポイントは、家事や個人的な時間と勤務時間をしっかり分けることであり、その意識を社員と共有し、実践を促すことが重要です。 - コミュニケーション不足に陥ってしまう。
ひとりの時間が多くなりすぎると、疑心暗鬼になりやすく、ネットのやりとりだけでは攻撃的にもなりがちです。経験則として、マネージャーもチームメンバーも全員が、人の善意を信じることが大切になります。仲間が自分と同じようにベストを尽くしていると信じましょう。メールや Slack で議論が過熱したら、電話会議やビデオ会議を設けましょう。何かあったときには助けを求めるよう伝えましょう。それがただのストレス発散になっても良いのです。チーム全員が常に輪の中に入るよう、やり過ぎかと思われるくらい連絡を取り合う環境を作ります。たとえ社員が少し孤独を感じた時でも、実際のバーチャルチームでは全員が一つのチームです。
日々顔を合わせることがないマネージャーと社員の間には、深い信頼関係と良好なコミュニケーションが不可欠です。コミュニケーション、積極性、自主性を奨励しましょう。これらを高めることで、マネージャーは、チームが機能するだけではなく、成功を収められるような環境作りに専念できます。
バーチャルサポートチームの採用と研修
バーチャルサポートチームの構築は、まず採用とオンボーディング研修から始まります。幸い、利用するツールの多くがクラウドベースで、必要になるものはノートパソコンやヘッドホンくらいですから、サポートスタッフの業務はリモートワーク向きです。ツール上でスタッフ同士がコラボレーションしなくてはならない場面は頻繁にあり、集中して業務にあたる時間も必要となります。特にオフィス勤務からリモート勤務に移行するスタッフには、別に研修を実施し、リモートチームの業務プロセス、ツール、ベストプラクティスなどを十分にトレーニングすると良いでしょう。詳しくは下に続きます。
採用人材に必須の資質
「社員候補を世界中から募るなんて手に負えない」と感じられるかもしれませんが、採用のプロセスは従来とほぼ変わりません。これまでと同様、優秀な人材は、人脈またはリクルート活動を通じて見つかる場合が多く、電話・ビデオ面接、さらに対面での面接を経て採用を決定します (状況によりますが)。バーチャルサポート業務の候補者をふるいにかける際は、その人物がリモートワークの環境で周りの成長に貢献できるような、以下の資質を備えているか見極めると良いでしょう。
自己管理能力が高い
文書、会話の両面でコミュニケーション能力が高い
積極的に助けを求めることができる
正直である
自主的に働くことができる
自由放任で柔軟なマネジメントスタイルのもとで十分に活躍できる
普通の職場にある人付き合いが無い環境でも苦にならない
採用候補者がこのような資質を備えているかは分かり難いときもあるため、電話やビデオ面接を活用し、バーチャルの場面で候補者がどのようにふるまうか見てみると良いでしょう。例えば、面接予定日に都合が付かない場合、その候補者は積極的に別日を提案してきましたか?また、質問の意味が分からなかったときに、回答する前に不明な点をはっきりさせようとしましたか?これらは、リモートワークに向いているか否かを見極めるためのヒントになります。疑問に思ったときに、考え過ぎないこと。自らの時間を管理し、バランスを取りながら優先順位を決めて自発的に行動できる人材は、リモートワークでもオフィス勤務でも優れた社員になる可能性が高いです。
オンボーディング研修の重要性
オンボーディング研修は、
勤務拠点に関係なく、全社員に行うべきです。リモートワークを成功させるためには、オンサイト社員と同じツールを提供する必要があるばかりか、リモート社員が歓迎され、評価されていることを感じられるよう、それ以上のサポートも必要です。次のようなデジタル化された文書のデータベースや、動画のオンボーディング研修ツールを用意できるとよいでしょう。
企業文化や業務プロセスを記した概要
社内の部署、チーム、主な関係者の紹介
会社の製品、サービス、ポジショニングの説明
担当する職務・部門の専門トレーニング
ハードウェアおよびソフトウェアのツール (使い方の研修も含む)
新入社員のオンボーディング研修は対面で行うと効果的ですが、それが現実的ではない場合もあります。研修をバーチャル環境で行う場合は、スクリーン共有できるツールを使用し、可能な限りビデオミーティングで行うようにしましょう。人と顔を合わせることは人間関係の構築につながり、オフィス勤務では日常的な「井戸端会議」が無いバーチャル環境では、とても大きな意味を持ちます。リモートワークに切り替わる社員についても同様です。チームとのつながりを感じられるよう、必要なツールや研修を提供しましょう。メンバー全員がアクセスし追加できる、一元管理のナレッジベースがあると理想的です。初めてリモート勤務をする社員には、分からないことがたくさん生じるはずです。そこで、バーチャルの「オープンドア」ポリシーを設けて、助けを求めやすい環境を作り、メール、電話、ビデオ、グループチャットツール (Slack、Microsoft Teams など) で、リモート社員がいつでも気軽に質問できるようにしましょう。コミュニケーションは、すぐに、頻繁に、そしてためらいなく行われることが大切です。複数のツールを使用している場合には、緊急で連絡を取りたいときに、まずどれを参照すべきか周知しておきましょう。
バーチャルチームを管理するコツ
メンバー全員の責任感の維持
在宅勤務の社員には、時間管理や自己管理の能力、また自発性などが求められます。これは、対面でのやり取りが多く、厳しく時間管理された環境で働くことに慣れていた人には、大きな変化になります。非同期型コミュニケーションが意思疎通の主要な手段となるため、特にマネージャーにとっては慣れるまで大変でしょう。端的に言えば、社員に即時の回答を期待してはならないということです。よって、パフォーマンスレビューの際は、実際の成果を指標にしましょう。具体的なストラテジーをいくつかご紹介します。
朝礼や終礼など決まった時間にミーティングを設けて、勤務時間に境界線を引きましょう。
ツールのメンテナンス担当を決めましょう。また、ツールが使えなくなったときに、そのツールの責任者が勤務時間外であった場合の方針も決めておきましょう。
どのようなサポートスケジュールになりそうですか?バーチャル/分散型チームには、呼び出しがあった場合に対応する待機型のシフトも必要ですか?
生産性の強化
バーチャルチームの生産性がなかなか上がらない、ということは容易に想像できます。マネージャーの目もないため、ネットサーフィンやゲームをしてしまったり、昼寝の衝動に駆られたりする社員もいることでしょう。誘惑に負けてしまう人もいる一方で、ほとんどの人が業務に集中したいと思っています。そして、マネージャーは先を見越すことで、バーチャルチームが集中して働ける環境を作ることができるのです。日常的なスクラム会議の開催:この会議はビデオ通話で短時間で行い、各社員の取り組んでいる業務や課題などを報告します。マネージャーが社員の業務内容を把握できるだけではなく、社員は次の日の会議でその日の業務が完了したか報告することになるため、会議自体が責任感を植え付けるものになります。一方で、一対一のミーティングも必ず行いましょう。各社員の業務を深く掘り下げることができ、話しにくい内容を話したり、コーチングしたりする時間としても使えます。境界を設ける:境界はとても重要です。バーチャルチームは勤務時間外でも、勤務後に入ってくるメールや電話に対応することがよくあります。これを無視すれば、ワークライフバランスが崩れ、燃え尽き症候群や生産性の低下につながります。また、リモート社員が出席する会議の数にも目を向けましょう。オンサイト社員と同様に、不要な会議は生産性を下げる原因になります。
一方で、リモート社員には、業務に集中し生産性を高める責任があるということを理解させることも重要です。自発的な仕事態度や自己管理はその人自身から生まれるものです。そして、ベストプラクティスにより集中力を阻害する要因を寄せ付けないようにできます。例えば、決まった時間に休憩を取る、テレビなどから離れた場所で仕事する、実際のオフィスに出社するような格好をする、などです。ごく最近、オフィス勤務からバーチャル勤務に移ったチームの場合は、生産性が下がったとしても慌てないでください。チームは新しい仕事環境に慣れようとしている段階のため、当たり前のことです。ただし、生産性が以前のレベルに戻るか、低下が続くかについては分析結果に目を光らせてください。
コラボレーションの促進
健全な仕事環境にコラボレーションは無くてはならないものですが、リモート環境ではメンバー同士の協力が難しくなる場合があります。チームメンバーが一度も対面しない可能性もあり、もし会ったとしても、彼らが効果的かつ円滑に協力していく保証はありません。ただ幸いなことに、協力体制を築くためマネージャーが導入できるツールやプロセスはあります。まず、チームにベストなコラボレーションの形を検討してみると良いでしょう。次について考えてみてください。
メール、電話、ビデオ会議をどのように組み合わせるのがベストですか。
チームがどのようなツールを使用すると良いでしょうか。Skype、GoToMeeting、Google Hangouts、Zoomなどを検討しましょう。
他に利用できるコラボレーションリソースにはどのようなものがありますか。専用のアプリケーションがありますか。例えば、プロジェクトの進捗確認には、チームのSlackチャンネルやTrelloボードを利用できます。
チームのコラボレーションに適したツールを選んだら、各メンバーがどのくらいの頻度で他のメンバーとコミュニケーションを取り合うべきか決め、定期的なバーチャルミーティングの日付を設定し、目標達成まで続けましょう。ミーティングでは互いの状況を確認し、プロジェクトへの協力体制を築きます。コラボレーションの目標達成のため、ミーティングは一対一でも、複数のメンバーとでも、効果的な形で実施しましょう。
ほとんどのリモート社員が異なるタイムゾーンで勤務していることを忘れてはなりません。ミーティングは通常の勤務時間内で、全参加者にとって都合の良い時間に設定します。もちろん、チームのメンバーが世界中に散らばっている場合などは特に、それができない場合もあるでしょう。そのようなときは、定期ミーティングの時間を動かし、必要に応じて朝6時に開催するなど、全員に時々少しだけ我慢してもらう、というスタイルにします。複数のタイムゾーンでミーティングを計画する際には、World Clock Meeting Planner (imeanddate.com)を使うと、とても便利です。
コミュニケーションの活発化
社員に感謝の気持ちを伝えること以外で、マネージャーができる最善のことは、健全なコミュニケーションを育むことです。マネージャーは、自分のチームに期待するように、頻繁かつ積極的にチームメンバーとコミュニケーションを図る必要があります。できる限りこまめに連絡を取り、プロジェクトの進捗を積極的に共有しましょう。定期ミーティングは怠らずに実施し、今後の参考のため必要であればミーティングの内容も記録します。
まず、マネージャーは、コミュニケーションの形態として、もっと書くことに頼るようにします。これは、アイデアを表現する手段として、私たちがトーン、ニュアンス、言語以外のシグナルを失いがちであることを意味します。したがって、誤解が生まれないよう、共感し、相手の善意を信じることが重要です。
また、社員にとってはリモート勤務が大きな変化になっていることを受け入れましょう。相手の立場になって考え、忍耐強く構えることも必要です。社員で異なるコミュニケーションのスタイルを理解できるように、共感を持てるような質問をしても良いかもしれません。彼ら自身のこと、調子はどうか、何に取り組んでいるかなど聞いてみましょう。何よりも効果的なコミュニケーションは、仲間がどんな人か知ろうとすることです。
社員のモチベーションを高め、不確実でも創造的な姿勢で打ち込ませる
モチベーションは意思決定の大きな原動力です。社員のやる気を引き出し、これまでどおり良い仕事を続けるだけではなく、不確実な状態の中でも創造的な姿勢で仕事に打ち込むよう働きかけましょう。不確実な状態とは、広義の不確実性というくくりもありますが、意思決定者は遠いところにいるという感情も不確実さにつながるかもしれません。次のアイデアを実践してみてください。
- 残業に対して代休を与える。
リモート社員は仕事量の管理に長けているかもしれませんが、勤務時間を超過したときや、長時間労働をした時などには、その労力を認めてもらいたいものなのです。 - 優れた業績のスタッフには、メールでギフトカードを送って驚かせます。
バーチャルの研修イベントへの出席を促しましょう。対面形式の学びの機会を継続的に得ることで、異なる発想を得る力や問題解決への新しいアプローチ方法を鍛えることができますが、バーチャルの研修でも同様に可能です。 - 人間関係を築く。
日常的な雑談の機会が無くなったとしても、社員と良好な人間関係を築くことはできます。ただ、意図的な行動は必要です。例えば、バーチャル環境での定期的なハッピーアワーやコーヒーブレイク、またチームとのつながりのため、新しく「井戸端会議」の時間を設けても良いでしょう。
仕事への満足度を大切にする
人間はもともと、社会的な動物です。自然と集まり、協力、コミュニケーションそして共感せずにはいられないのです。しかしリモート社員は、このような社会的欲求が満たされにくく、このことが気力や働きがいに致命的な影響を及ぼす可能性があります。これを打開するため、バーチャルチームのマネージャーには何ができるでしょうか。
最初に、一対一のコミュニケーションを考えましょう。できれば一日に一回はチームメンバーに連絡を取り、自分の手が空いていることを知らせます。とは言え、仕事の話に終始しないようにしてください。プロジェクトの進捗報告だけで終わってしまえば、感情レベルで関係を築くチャンスを逃してしまいます。オフィス勤務の社員とは異なり、バーチャル社員には気軽に声をかけ、ランチやコーヒーブレイクに誘うことはできないのです。しかし、バーチャル社員とそのようなコーヒータイムを過ごせないというわけではありません。リモート勤務を実現するテクノロジーによって、物理的な隔たりも埋められます。定期的なビデオ会議では、孤独に打ち勝ち、チームメンバーのつながりを強くするために、ベストなミーティングになるよう工夫しましょう。
同様に、Slackなどのコラボレーションツールを活用し、結束を促しましょう。例えば、リモートコラボレーション用のツールでは、別々のチームの社員をペアにして会話させることもできます。これによってバーチャル社員は会社全体とのつながりを感じられます。
しかし、テクノロジーがバーチャルチームの課題をすべて解決してくれるわけではありません。定期的な交流会や社外のイベントで、時には全員を現場に集合させることも大切です。運動会や陶芸教室など、楽しい企画を盛り込んだ学習会やレクリエーションを年に数回、計画してみてください。このような交流を通じ、バーチャルチームの満足感やモチベーションを高めることができるでしょう。
チームの判断基準を定める
どのようなチームにもあてはまりますが、離れた場所にいるマネージャーと従業員は、称賛の言葉を交わし、建設的なフィードバックを伝えあうといったオープンなコミュニケーションを通して積極的に信頼関係構築に努める必要があります。マネージャーがパフォーマンスと成果に重点を置き、コーチングの機会を捉えてトレーニングのギャップを埋めることができれば、バーチャルチームを油を差した機械のように動かすことができます。
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