コールセンターを通じた電話によるサポートや販売が今すぐなくなることはありえません。Zendeskのカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポート2020年版によると、回答者の66%がサポートに電話を利用しています。全ての年齢層で最も多く利用されているチャネル、それが電話です。
この事実は、今もなおコールセンターが優れたカスタマーエクスペリエンスに欠かせない重要な役割を担っていることを物語っています。消費者は依然として、コールセンターのオペレーターが親切で、忍耐強く、事情に精通していて頼りになる電話応対をしてくれると期待しています。顧客との関係を育むため、コールセンターは常に高いレベルのカスタマーサービスを維持する必要があります。
一方、自社によるコールセンターの構築は綿密な計画を必要とする一大プロジェクトのため、途中で挫折してしまうこともあるかもしれません。
そこで、企業のニーズに応じた最適なコールセンターを構築するための確実なステップをご紹介します。
コールセンターの目標を決める
コールセンターの運営を本格的に始める前に、まずは「なぜコールセンターが必要なのか」を考えてみましょう。
コールセンターの主な目標を明確に定義してから、コールセンター業務を成功させるために何が必要かを検討します。
主な目標は企業のニーズによりさまざまです。
中小企業やスタートアップ企業であれば、リード数を増やし、新規顧客を獲得すること、あるいは決済や注文処理の効率化が目標となるでしょう。
- 大企業であれば、顧客満足度を高め、より良いサポートを提供することが目標かもしれません。
主な目標を設定したら、コールセンターとコールセンター運営の成功具合を測定する重要業績評価指標として機能する、コールセンターのKPIを使用します。
一般的なコールセンターのKPI
- 放棄呼数:担当者との会話を待っている間に電話を切ってしまった顧客の数の合計。
- 平均処理時間(AHT):通話1回あたりにかかった平均対応時間。
- 平均通話時間:担当者が電話に応答してから電話を切るまでの分数と秒数。
- 平均応答速度(ASA):顧客が適切な部門に転送され、待機状態からサポート担当者につながるまでにかかる時間。
- 拒否された通話:サポート担当者から拒否した未応答の通話。
- 不在着信:サポート担当者が時間内に応答しなかった未応答の通話。
- 転送率:エージェントが他のチームメンバーまたは部門に転送する着信コールの割合。
また「コールセンターの目標」は「コンタクトセンターの目標」とは異なることが多いので、それも念頭に置いてください。
コンタクトセンターは、メール、ソーシャルメディア、チャットなど複数のチャネルを使用
コールセンターは、従来の電話回線を使った電話対応に特化
コールセンターはより効率的に機能する必要があります。なぜなら業務がリアルタイムで進行しているため、回答を検討する時間が常にあるとは限らないからです。そしてこれが、他のチャネルよりも電話サポートへの期待が高い理由につながります。電話では、顧客の約50%が5分以内の回答を期待しています。
コールセンターに必要な予算を固める
自社に合ったコールセンターを選ぶ前に、まずは立ち上げや運営に必要な予算を固めましょう。
コールセンターを開設するために、実際いくら使えるのかを考えます。予算を固めると、次に挙げるような項目に基づいてコールセンターの具体的な運営方法を決めることができます。
従業員の数
施設の規模と場所
技術やツールの種類
コールセンターの予算を決定する際は、まず月々の収入源、固定費、変動費を集計し、どの程度の予算を割り当てられるかを具体的に把握する必要があります。
結果としてオンサイトのコールセンターは経済的に実現不可能と判断されるかもしれません。その場合は、リモートワーク方式の選択肢が有力になります。
コールセンターの種類を決定する
コールセンターの主な目標が決まると、自社のビジネスプランに最適なコールセンターの種類を決定しやすくなります。
コールセンターにはいくつかの種類があり、それぞれ独自の利点があります。
着信型? それとも発信型?
コールセンターの主な運営目的は、潜在顧客への電話営業でしょうか。それとも、既存顧客の問題解決でしょうか。
これらの質問の答えが、コールセンターの種類を決めるのに役立ちます。つまり着信型(インバウンド)にするか、発信型(アウトバウンド)にするかということです。
着信型のコールセンターは着信コールの受信をメインとし、カスタマーサポートチームによって運営されることが一般的です。製品やサービスに関して顧客が抱える問題を解決し、カスタマーをサポートするのがこれらのチームの役割です。
一般的に着信型のコールセンターが適しているのは、以下のような場合です。
製品サポート・技術サポート
支払・注文処理
アップグレードや更新の問い合わせ対応
発信型のコールセンターは、電話をかけることが目的です。製品やサービスを販売したり、企業の主な方針にしたがって市場データを収集したりする目的で利用され、営業チームが運営するのが一般的です。
一般的に発信型のコールセンターが適しているのは、以下のような場合です。
商談予約
リードを獲得
テレマーケティング
電話営業
市場調査
着信型と発信型を兼ね備えた「ハイブリッドコールセンター」という選択肢もあります。1つのコールセンターで一貫したカスタマーエクスペリエンスを提供できるため、ハイブリッドモデルを好む企業もあります。
オンサイト型? バーチャル型?
大きなオフィススペースで社内スタッフが対応するコールセンターをお考えですか?それともリモートで費用対効果の高いソリューションをお探しですか?
ビジネスオーナーにはどちらの選択肢も可能な時代。どちらのコールセンターにもそれぞれ利点があります。
オンサイト型のコールセンターとは、従業員が物理的なオフィスに出社して顧客への電話対応を行うタイプのコールセンターを指します。チーム全体と全ての機器が1か所に集まります。
オンサイト型コールセンターには、以下のようなメリットがあります。
- 従業員とマネージャーが対面で素早くコミュニケーションできます。関係者全員が同じ建物内にいるため、相談や連絡を取り合うことが簡単です。これにより従業員やカスタマー関連の問題が解決しやすくなります。
- 技術的なアップデートやトレーニングをリアルタイムで行うことが容易です。さまざまな技術に関する微妙なニュアンスを、直接相手に説明しやすくなります。
- インターネット接続に関係なく、電話をかけることができます。インターネットの接続状況が不安定なため通話が切断されるかもしれない、という心配がありません。
バーチャル型のコールセンターは、物理的なオフィスを持たないクラウドベースのコールセンターを指します。安定したインターネット環境さえあれば、チームメンバーは世界中どこにいてもリモートで作業できます。
バーチャル型コールセンターのメリットは、以下のとおりです。
- 世界中から優秀な人材を集めることができます。自社にとって最高の人材は必ずしも国内にいるとは限りません。国境を超えて探せば、より経験豊富な人材に出会えるかもしれません。
- 異なるタイムゾーンに社員を配置することで、コールセンターの対応時間を拡大できます。サポートの営業時間が広がれば、平日の昼休みに慌てて電話するといった心配もなく、顧客はいつでも都合の良い時に必要な電話をかけることができます。
- 設備投資を削減し、代わりにコールセンターのソフトウェアや従業員の給与に投資できます。オフィスやオフィス用品を最小限に抑え、会社のノートパソコンやより魅力的な報酬に還元できれば、チームはきっと満足してくれるでしょう。
またここでも、オンサイト型とバーチャル型の両方の要素を備えた「ハイブリッドコールセンター」の選択肢があります。従業員の希望に合わせ、オフィススペースだけでなくリモートでも仕事ができるようにするには、この方法が適しています。
コールセンターのチームを構築する
構築するコールセンターの種類がわかったら、次はコールセンターを成功に導くチームを構築しましょう。
コールセンターに最適な人材を採用する
コールセンターで働く優秀な人材を見つけると言っても、そう簡単ではありません。まずは、企業にとってのニーズを明らかにすることから始めましょう。
まずは、理想のサポート担当者の特徴をリストアップしましょう。例えば、下記が挙げられます。
働く時間帯の融通がきくか。
どの程度の仕事経験が必要か。
世間話がうまい人か、ビジネストークがうまい人か。
企業にとってどういう人材が欲しいかを明らかにしておくと、面接に呼びたい応募者のタイプをより具体的に把握できます。
また、選考前に応募者の履歴書に「なくてはならない条件」と「あるといい条件」を明確にしておきましょう。採用担当者が経験することの一つに、必須条件を増やしすぎて採用者が決まらない、というパターンがあります。「あったほうが好ましい」程度の条件の場合は「あるといい条件」リストに加え、必要に応じて採用後にトレーニングを行いましょう。
従業員のトレーニング
コールセンターの開設と運営に欠かせないのがトレーニング。従業員がそれぞれの役割を十分に果たせるよう、スタッフトレーニングを行ってください。
このトレーニングは必ずしも現場で行う必要はありません。すでに稼働している別のコールセンターやその他の場所、オンラインでも可能です。
使用するヘッドセットや電話システムについて説明し、サポート担当者がそれらを問題なく使用できるようにしましょう。バーチャル型コールセンターの場合は、実際に作業を行う遠隔ワークスペースを設定するためのサポートを提供し、必要なツールやソフトウェアを全てすぐに使用できるようにしておく必要があります。コールセンターでのトレーニングに役立つ知識があれば、ぜひ社内で共有するようにしましょう。
業務にあたり担当者が適切なコールセンターエチケットを身に付けていることも重要です。また新入社員をサポートし、ブランドメッセージの一貫性を保つため、コールセンタースクリプトを作成することをおすすめします。
BPOコールセンターソリューションの検討
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは、社内業務の一部を外部ベンダーまたはサービスプロバイダーに委託することです。コールセンター業務におけるBPOとは、着信と発信の電話応対を、企業の従業員ではない外部の業者に委託することを指します。
これはマンパワーに限りがあり、すぐにサポート機能を稼働させたい企業に最適なソリューションです。コール量がスタッフの対応能力を超えている場合は、BPOコールセンターソリューションを検討するのも一つの方法と言えます。新しい従業員の採用活動やトレーニングを必要とせずに、大量の電話対応を管理できるようになります。
着信型BPOコールセンターのサービスには以下のようなものがあります。
サポートや質問への対応
注文処理
出荷処理
発信型BPOコールセンターのサービスには以下のようなものがあります。
テレマーケティング
電話営業
市場調査
BPOコールセンターソリューションは、人員不足だったり、採用活動や新入社員トレーニングができない場合に適しています。通常、業界での経験と優れたカスタマーサービススキルを持つコールセンター会社がサービスを提供します。
コールセンターで役に立つテクノロジー
社内およびバーチャルコールセンターに最低限必要なのは、高速インターネットです。コールセンターに必要なツールやソフトウェアは他にもあります。
ここでは、費用を抑えてコールセンターの運営を推進できるテクノロジーをご紹介します。
VoIP
VoIP(ボイスオーバーインターネットプロトコル)は、アナログ電話回線ではなくデータネットワーク経由で通話するためのテクノロジーです。
VoIPソフトウェアを使用するメリットは、電話回線を利用するコストを削減できることです。コールセンターの設備投資の削減にもつながります。ZendeskのようなVoIPソフトウェアを使用すると、チームはいつでもどこでも必要なときに電話を受けることができます。インターネット接続が安定していれば、経費は利用時間分しか課金されません。
ナレッジベース(ヘルプセンター、FAQページ)
顧客と従業員の共通点、それは「質問がある」ということです。顧客も従業員も、自分が直面する問題やテーマの詳しい情報を手に入れ、それらを完全に理解したいと願っています。
ナレッジベースは、カスタマーと従業員のための情報ライブラリとして機能します。顧客が問題を自己解決できるように設計されているため、サポートチームはより複雑な内容のチケットに専念できます。
ナレッジベースのリソースには以下のようなものがあります。
教育資料、アカデミー、トレーニングプログラム
ヘルプセンター、FAQコンテンツ
フォーラム
手順書、チュートリアル
オンラインセミナー
Zendeskは、顧客や従業員がこれらのリソースを簡単に構築できるナレッジベースソフトウェアを提供しています。
Slackのナレッジベース
社内へルプデスク
社内ヘルプデスクは、従業員が業務を進める上で必要な全てのサポートを受けることができる、デジタルハブです。社内ヘルプデスクのサポートチームは主に従業員の業務をサポートします。
ヘルプデスクソフトウェアを使用すると、以下のような場合の社内のコミュニケーションを円滑にすることができます。
質問への回答
問題への対応
サービスのリクエスト
Zendeskの社内ヘルプデスクツールを使用すると、従業員が困った時に必要なサポートを、1か所で全て提供できます。
支え合い、励まし合うコールセンター文化の維持
コールセンターが成功し、順調に運営されていると、1日に大量の電話がかかってくるため、関係者が疲弊してしまうことがあります。
コールセンター運営にとって強力なリーダーシップとマネジメント能力が非常に大切なのは、まさにこのためです。
チームが安心して働けるよう、以下の点を心がけてください。
従業員の問題に対処する際、冷静な態度を保つこと
定期的に連絡を取り、何か困ったことがないか確認すること
これらの気配りにより、コールセンターの担当者は大量の電話で忙しい毎日であってもきちんとサポートされているという安心感を持つことができます。
コールセンターの運営に必要なものがそろったら、コールセンターを働きやすい環境にすることが大切です。こうして優秀な従業員を維持できれば、将来的にはさらなる成功を導く新しい従業員を迎え入れることができるようになるでしょう。