問い合わせ対応の多チャネル化が求められる中、サポート担当者の業務も複雑化しています。この記事では、問い合わせ対応を効率化するための課題や解決方法、そのソリューションとなるZendeskのシステムについて紹介します。
問い合わせ業務の課題を整理する
問い合わせ対応を効率化すれば、顧客を待たせることなく的確に対応できるようになるため、顧客満足度やロイヤルティの向上を狙えます。ロイヤルティとは、「顧客の企業に対する信頼度や愛着」のことです。このロイヤルティが高い顧客は、企業の商品をリピート購入してくれる上に、他者にも積極的に商品やサービスを薦めてくれます。このように、企業が成長する上で、ロイヤルティの高い顧客は非常に重要な存在です。
企業は「いかに顧客へ多様な問い合わせ経路を用意できるか」を意識する必要があります。以前までは顧客の企業に対する問い合わせ手段と言えば、電話が中心でした。しかし昨今では電話のほか、メール・チャット・SNS・Webサイトなど、さまざまなデジタルチャネルが考えられます。
そうした環境のなかで現在の顧客は、問い合わせで使えるデジタルチャネルの種類が限られている企業に好意的ではありません。Zendeskのカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2022年版によると、61%の消費者は「たった一度でも不愉快な経験があれば他社に乗り換える」と回答しています。さらに不愉快な経験が2回重なると、その割合は76%まで上昇します。
一方でデジタルチャネルの種類が多いほど、問い合わせ対応も複雑化します。デジタルチャネルを増やすほど、企業の問い合わせ対応は非効率になりやすいと言えるでしょう。複雑化した状態を改善しなければ、「顧客を待たせてしまう」「同じ質問を同一の顧客に投げかけてしまう」ということも常態化し、顧客の不満を招く結果となります。
では、対応の効率化を目指す企業は何をすればよいのでしょうか。まずは「自社の環境において、どのような課題が生じているのか」を把握するところから始め、課題を整理するところから始めましょう。
例えば、問い合わせ対応に関わる業務の工程や個々人の役割分担、顧客からの要望、アウトプットの品質など、さまざまな面から現状における課題を抽出し整理します。その上で、それらの課題解決が可能なソリューションを導入するのが有効です。
それでは以降から、代表的な問い合わせ対応に関する企業の課題をみていきしょう。
多様なチャネルでの応答
コミュニケーション手段が多様化している昨今、顧客は電話やメールに限らず、SNSやチャット、Webサイト上のフォームなど、さまざまなチャネルの中から使い慣れたチャネルを利用して問い合わせを行いたいと感じています。そのため、企業側でも複数の問い合わせチャネルを用意してくことは、顧客満足度の維持や向上策として重要です。
しかし複数のチャネルで問い合わせを受け付ける場合、当然ながら顧客によって利用するチャネルが異なります。また、同一顧客が複数のチャネルにまたがって問い合わせしてくることも少なくありません。こうした状況では、以下に挙げるような課題が生じる可能性があります。
チャネルごとに利用システムの切り替えが必要となり、対応が非効率化する
各チャネルで別々のシステムを利用する場合、サポート担当者はチャネルごとにシステムを切り替えて対応しなくてはなりません。異なる複数のシステムで顧客情報や問い合わせ履歴を確認しなければならない場合、その分だけ無駄な時間が発生してしまい非効率で、間違いも起こりやすくなります。
顧客の問い合わせ状況が把握しにくい
同じ顧客が複数のチャネルを使って問い合わせをした場合、サポート担当者はどのチャネルでどんな対応が行われたかが把握しにくくなります。そのため対応業務が煩雑化してしまい、時間がかかってしまうため、顧客の不満を招くことになります。
サポート担当者間で情報共有がしにくい
「どのサポート担当者がどのチャネルで、どの問い合わせにどう返答したか」といった情報の共有がしにくく、その結果、同じ顧客に重複して回答したり、齟齬のある回答をしてしまったりするでしょう。それが顧客の不信や不満を招くことになるのはいうまでもありません。
レポーティングやデータ分析が複雑化する
チャネル数が増えるほど各チャネルのデータ取得やレポーティング作業は複雑化します。データ分析の担当者は一人の顧客が複数のチャネルにまたがって問い合わせをした際も、話の流れが可視化された状態で全体像をつかまなくてはなりません。
このため分析担当者は、異なるチャネルを通した顧客とのやり取りを一元化し、「サポート担当者がどのような対応をしたのか」を把握し分析する必要があります。さらにタイムラグなく各チャネルのデータを抽出し、チャネルごとでの比較・検討も求められます。もしデータ連携がきちんとなされていなければ、その分だけ担当者の負担も大きくなってしまうでしょう。
専門的な問い合わせへの対応
顧客からの問い合わせがすべて簡単なものだけだったら、大きな問題は起こらないかもしれません。サポート担当者はすべて自己解決でき、顧客対応も迅速に完了します。しかし実際には、個々のサポート担当者の知識や権限では対応できない問い合わせが多数発生し、上長へのエスカレーションを行う必要が頻繁に発生します。
エスカレーション時には、電話をいったん保留して上長へ質問・相談をしたり、電話を転送して応対を引き継いだりします。これら一つひとつの対応が長引けば、それだけ顧客対応に時間がかかることになります。同じような内容のエスカレーションが増えてしまえば、特定の担当者に対応が集中し、応対時間が長くなってしまう状況が発生することも否定できません。
また、新人スタッフにとって、「エスカレーションすべきか否か」の判断も簡単ではありません。その間は顧客を待たせてしまいサービスの品質が下がります。しかしもし「顧客を待たせまい」として、サポート担当者が自己判断で誤った対応を取れば、より大きな問題へと発展してしまう恐れも生じます。
さらに、問い合わせ対応にあたっては、自社のエンジニア部門・経理部門などへの確認が必要なケースも多くあります。対象部門の担当者が多忙で確認が遅れれば、やはり顧客対応に時間がかかってしまいます。
もちろん対応チャネルが多くなるほど、上記のような問題はさらに複雑化してしまいます。サポート担当者の負担が増えると同時に、顧客対応の効率もさらに低下すると考えられるでしょう。
スムーズに他部署と連携することが迅速な問い合わせ対応の鍵(Zendeskのサイドカンバセーション)
サポート担当者の回答スキルに差があり、人数も足りない
業務量が膨大化しやすい上に、クレーム対応でストレスが溜まりやすいサポート業務は、一般に高い離職率を保っていると言われています。例えば2019年度版「コールセンター実態調査」では、回答企業の2割以上は「入社1年以内のスタッフの71%以上が離職した」と報告しています。
参照元:https://callcenter-japan.com/magazine/3838.html
また離職率が高い現場ほど、経験が少ないスタッフの占める割合が高くなります。十分な研修を行えないまま、新人スタッフが現場で応対しなければならなくなる例も少なくありません。その結果、スタッフごとの対応品質に大きな差が生じてしまうこともあります。対応品質のムラが大きければ、顧客に満足してもらいづらく、かえって不満を招く結果になるかもしれません。
さらに人材不足に悩む現場では、チャネル間における担当者同士の連携もスムーズに行うのが難しくなります。その結果、回答漏れや同じ質問を繰り返すなど無駄が頻発することになり、顧客満足度が大きく低下してしまいクレームも増えてしまうかもしれません。
こうした状況では「各スタッフのモチベーションも低下し、離職率がさらに高くなる」という負のスパイラルに陥る恐れもあります。
離職率が高いということは、採用や教育にかかるコストがかさむことにもつながります。必要なサポート担当者数を確保し続けるためには、採用活動や教育も継続しなくてはなりません。そうしたなかでコストをかけて採用・教育した新人も、定着せずにすぐに離職してしまうようであれば、そのコストが無駄になります。それでも、採用・教育を続けなくてはならないことから、コスト面でも悪循環に陥ってしまいます。
「繁忙期にだけサポート担当者を増やす」という対応を取ると、現場がかえって混乱してしまうケースも少なくありません。何らかの施策で人材不足の問題を解消しない限り、これらの悪循環は続き、問い合わせ対応の品質を高めることも難しいでしょう。
Zendesk活用で課題を解決する
このような問題を解決するには、Zendeskのソリューションが役立ちます。ここでは、すべてのチャネルでの問い合わせ情報を一元化し、効率運用ができるZendeskのシステムや機能を紹介します。
各チャンネルの問い合わせを1画面で管理
Zendeskなら様々なチャネルからの問い合わせを1つの画面で管理・対応可能(Zendeskの問い合わせ管理機能)
Zendeskを使えば、異なるチャネルに横断する問い合わせ履歴を単一画面で管理・参照できます。例えば、以下にあげるような情報が1つの管理画面ですぐに確認できるようになります。
・どのチャネルでどのサポート担当者がどんな対応をしているか
・それぞれのチャネルで、顧客からどんな情報を受け取っているか
・その問い合わせがどのようなステータス(未対応・対応者割り当て済・保留など)か
など。
結果、サポート担当者は顧客対応に必要な履歴と情報を一目で把握できるようになります。そのため、対応漏れや重複対応といった顧客の不満を招くミスも予防できます。
また、チャネルごとに異なるシステムを利用していたときと比べ、サポート担当者の作業効率が上がるのは言うまでもありません。サポート担当者は「各チャネルの履歴をチェックするたびに、タブや画面を切り替える」といった操作を行う必要がなくなり、迅速・正確にチャネルごとの問い合わせ状況を把握できるようになります。その結果、顧客への対応スピードを速められ、長く待たせるといったこともありません。これらの効果として、サポート担当者の業務負担は大幅に軽減されるでしょう。
顧客の観点から見れば、問い合わせのチャネルを変えるたびに、同じことを聞かれてしまうストレスも軽減でき、長く待たされることもなくなります。したがって、顧客満足度向上につながるでしょう。
加えてスタッフ間の引き継ぎ対応もスムーズに行われるようになる点も大きなメリットです。担当者が不在でも、それまでのやり取りの記録を確認できるため、顧客を待たせず適切な対応をすぐに取りやすくなります。
現場管理者などは管理画面を参照しながら、「この問い合わせにはどの専門スタッフへの確認・取り次ぎが必要か」を簡単に確認可能です。さらに次項で紹介するシームレスなSlackとの連携なども活用し、確認・取次業務をマニュアル化しやすくなります。
外部ツールとの連携機能
Zendeskの「サイドカンバセーション」という機能を使えば、システムをメールやSlackと連携可能です。サポート担当者はシステム管理画面から、直接メールやSlackで社内外のスタッフに連絡できるようになるため、メーラーなどの別アプリを立ち上げる必要もありません。これまでのように常に複数のツールを起動して作業するといった必要はなく、1つのシステムで対応を完結できます。
Zendeskのシステムでは、どのチャネルからでも、1つの問い合わせにつき1チケットを作成します。例えば、複数のチャンネルをまたいでやり取りを重ねる必要のある問い合わせも、各チャンネルでの対応履歴をチケットに残しながら、各担当者へ引き継いでいけるようになります。もちろん、メール・Slackなども、同じチケット内で操作できるようになります。
このように、問い合わせ状況が集約・可視化されることでサポート担当者の作業効率が向上するため、顧客対応もスムーズになります。別の担当者から対応を引き継ぐ際も、管理画面を見ればすぐに回答状況を把握できます。そのため、引き継ぎのたびに状況説明を受ける必要もありません。
顧客目線でのFAQ整備
ZendeskならヘルプセンターやFAQを簡単に作成(Zendeskのヘルプセンター・FAQ作成機能)
顧客自身で自己解決が可能なFAQがあれば問い合わせ数を減らせ、サポート担当者の負荷を軽減できます。わざわざ問い合わせをしなくてもよくなり、顧客のストレスも減って顧客満足度も向上します。
その点、Zendeskのシステムなら、顧客目線にこだわった使いやすいFAQを簡単に作成できます。ZendeskのシステムでFAQを作成する場合、ブランドやニーズにあわせてデザインなどをカスタマイズ可能です。さらに、顧客・地域・ブランドごとにヘルプセンターを作成し、40以上の言語にローカライズできます。うまく利用すれば、最新情報を一つのコンテンツとして記事化・多言語化し、顧客へ積極的に提供していけるため、顧客の自己解決力促進へつながるでしょう。
加えてサポート担当者も、問い合わせ対応時に、簡単にFAQを引用して顧客へ返答することも可能となります(ナレッジキャプチャー機能)。また、顧客にFAQを見てもらいながら補足的に口頭説明を加えることで、よりスムーズに内容を理解してもらえるでしょう。こうすることで、サポート担当者はFAQに掲載されていない問い合わせ内容に集中力を使え、より適切な対応を実行できる環境を作れます。
Zendeskでは、FAQに関して以下のような機能も提供しています。
・作成したFAQをWeb Widget(ブラウザの右下などで表示されるポップアップ)で表示させ、FAQへの導線をわかりややすくする
・検索ヒット数や解決率などが調査でき、データ分析に基づいたPDCAを回せる
・ユーザビリティを高めるために記事をカテゴリやセクションで整理でき、ラベル付けも可能
・複数の記事やヘルプセンターで利用できる共通コンテンツを作成する
サポート担当者の負担を減らすさまざまな機能
これまでに紹介した機能に加え、以下で紹介する機能によって、Zendeskのシステムはスタッフを強力に支援します。また業務負荷が軽減されれば、新人スタッフでもスムーズに問い合わせ対応を行いやすくなります。結果、全体的な対応品質が向上し顧客満足度を向上できるのに加え、従業員満足度も改善されるでしょう。
マクロ
よくある問い合わせなどに行う回答(定型文)をあらかじめ用意しておき、サポート担当者が任意で利用できるようにする機能です。同じような質問を持つ顧客へ、繰り返し同じ回答を作成し返答する必要がなくなることから、サポート担当者の負担を軽減できます。テンプレート化した定型文に、自動で顧客の会社名などを埋め込み利用することも可能です。頻繁に同じような問い合わせが発生する現場では、このマクロが特に活躍するでしょう。
よくある問い合わせへの回答をテンプレート化すれば業務効率化が進み、誰もが同じ品質で対応できる(Zendeskのマクロ機能)
トリガ
あらかじめ条件を指定しておき、それが満たされたときに、特定のアクションを自動実行させる機能です。例えば問い合わせ内容に指定したキーワードが含まれていた場合に、一次回答として自動返信できます。これによってスピーディーな回答につながり、顧客自身による問題解決を促すことも可能です。さらに、フォームで入力された条件を基に担当者を割り振ったり重要度を設定したりすることもできます。
自動化
役割そのものはトリガと似ており、ある条件に合致する問い合わせに、自動でアクションを実行する機能です。トリガと異なるのは、実行条件として時間が設定される点です。例えば、担当者がチケットに回答してから48時間(2日)経過してもお客様から返事がない場合に、事前設定しておいたフォローアップのメールを自動的に送信したり、解決済みになって96時間(4日)経ったチケットがあれば、そのステータスを終了にするなどの作業を自動的に行うことが可能です。
上記のような機能に加えZendeskでは、Answer BotというAIが搭載されたボットも利用できます。このAI搭載型ボットは、チャットボックスやメールで機能し、例えば「よくある問い合わせ内容」に合致する質問が寄せられた際などには自動で返答します。そしてAI搭載型ボットが対応できない複雑な問題は、スムーズにサポート担当者へ引き継ぎます。訪問者の情報を収集し適切な担当者を割り振ることも可能です。
ZendeskのAI搭載型ボットAnswerbotとは?
まとめ
企業間の競争率がますます激化している昨今、問い合わせ対応の多チャネル化は、企業にとってさらなる課題を増やすことになりかねません。多チャネル化してもスムーズな運営実現に向けて、解決すべき自社課題を整理し対策することが重要です。
その点、Zendeskのシステムならさまざまなチャネルでの問い合わせを1つの管理画面へ集約し、サポート担当者が簡単に状況把握できます。複数のチャネルで問い合わせ対応が展開されていても、効率的な対応を実現可能です。自社の課題解決には、Zendesk導入をぜひ検討してみましょう。