ビルを建てる時には必ず設計図を書くことから始めます。設計図に書かれた細かい線の一つ一つは何がどこにあるべきかを指し、部屋の位置関係や大きさを示しています。さらに、計画された建物がその通りに完成するよう、建築チームが道具や材料を効果的に使えるような指示も書かれています。
ビジネスでは、目標を達成しようとする人材やツールがあるとプランを立てずに突っ走ってしまいがちです。しかし、カスタマーサービスを提供する時には、企業の成長も考慮してユーザーとの接点となる全てを計算に入れなければ、すぐにとても対応することが困難となってしまうでしょう。しかし、サポートは可能な限り多くのチャネルで提供しなければなりませんし、その後も拡大させながら安定性を確保しなければなりません。このニーズを満たすためには複数チャネルにわたるサポートソリューションが必要です。さらに、このソリューションを実践するためにはユーザーをビジネスの中心に据え続ける戦略が必要です。以下に実現のための5つの方法を紹介します。
カスタマージャーニーを考える
ユーザーと会社との接点を見つけます。例えば、ユーザーが商品の購入前にレビューサイトを参照するか、購入前に質問があるか、などを考えます。また、購入後にユーザーが最も多く必要としそうなサポートも考えます。それぞれのポイントでどのチャネルを使えばよいでしょうか。なにか足りないものはあるでしょうか。
これを読んでいる皆さんはSNSやレビューサイトのコメントを完全にカスタマーサポートとは別のものだと捉えていますか。もしくは、あるチャネルで対応している質問は別のチャネルのほうがうまく対応できるでしょうか。購入前の疑問を電話やメールで受けてしまうことが多く見られますが、うまくライブチャットをサイトに設置すれば、より早くパーソナライズされたサポートを提供でき、無事購入にたどり着くまでカスタマージャーニーをサポートできることでしょう。
カスタマーサポートの土台を作る
基礎を押さえたら、すこし考える規模を大きくして「あれができたら…」といったことを考えましょう。サポートをどのチャンネルで提供できたら? 時間効率の悪い質問やプロセスをインテリジェントな情報ベースで自動化して解決できたら? 現時点でまだカバーしていなかったり、ボリュームが多かったり、リソースが少ないユーザーとの接点を探し、現実の最低ラインを理解しておくことも一方で大事です。さらに、理想的なサポート体制や、一年後のサポート体制も考えてみましょう。
複数チャネルに対応したソリューションを導入するメリットは、必要に応じて対応チャネルを増やしたり減らしたり、統合できるところにあります。これに対して、いきあたりばったりでチャネルやツールを増やしていくのは、ユーザーにとってはチャネルごとに分断されたCXの連続となってしまうだけでなく、企業側にとっても運営が課題なっていきます。
インフラに投資する
ユーザーがどのチャネルを使っていて、そこにどんなニーズがあるのかーそして使うチャネルごとに提供するものの種類などをもとにチャネル戦略を策定すると、マルチチャネルソリューションの導入のスタートラインに立てます。マルチチャネルに対応したソリューションは顧客が使いそうなチャネルすべてに対応し、運営側とのやりとりを記録に残し、エージェントが文脈を理解できるようにする必要があります。
そういったソリューションを選ぶとき、注意すべきポイントを下記にてご紹介します。
顧客が必要なチャネルすべてに対応しているソフトウェアか
顧客データが1つのシステムだけに保存されたり、システムを超えて分断されないように、他のツールとの統合が可能か
先に決めたサポート戦略を実現するためには、ユーザーのニーズに合わせて拡大・移動できるソリューションを選べるかどうかが大事なポイントです。新しいチャネルに対応させるのに長い時間がかかってしまうとその間にタイミングを逸してしまいます。
モバイルに対応させる
モバイルファーストになっているかも検討すべき大事な点です。モバイルがいかに広く使われているかの説明は改めて必要ないでしょうが、アメリカでは63%の人がモバイルから1ヶ月間に複数回サポートを求め、Software Adviceの調査では回答者の9割がモバイルでのサポートで苦い経験をしていると答えています。CXで他社との差別化を図りたいのであれば、顧客のモバイル・エクスペリエンスも十分練り込む必要があると言えます。
上層部の理解を得る
ユーザーに配慮し、個々人に合わせたオムニチャネル戦略を作り上げても、上層部から「それはいいけど、コストは最小限にしてくれ」と言われてしまうことは十分あり得ることです。
統合されたオムニチャネルソリューションを導入する際、1つや2つのチャネルに絞って始めるのはあまり意味がありません。それではオムニチャネルサポートの能力を持て余してしまいます。チャネルを1つのソリューションに統合することによって得られる知見は宝の山で、多大な影響を与えることができます。顧客との会話データがあればあるほど、トレンドを予測して最も効果的なフェーズにサポート体制を集中させるよう最適化が行えるようになるのです。