サポートチケット、チャーン分析やNet Promoter Score℠(ネットプロモータースコア、NPS)調査、その他の情報源から顧客のフィードバックを収集すれば、間違いなく、カスタマーサービスや自社製品の問題点を把握する材料となるでしょう。しかし、ただ単にフィードバックを集めればよいわけではありません。十分な情報に基づいて的確な意思決定を行うには、顧客フィードバックを社内で適切に共有する必要があります。
縦割りの組織体制(サイロ)を解消する
チーム間の連携が進んでいない企業では、各チームが部分的にしか情報を入手できず、特に顧客と直接やり取りしないチームは視野が狭くなりがちです。そこで、フィードバックを社内で広く共有することが最優先事項となります。たとえば、カスタマーサクセスチームは、営業、マーケティング、アカウント管理の各チームが顧客からどのようなフィードバックを受け取っているかを把握しているでしょうか。四半期ごとの定期レポートを作成するなどしてフィードバックを共有すれば、顧客満足度の向上につながる要素について社内の認識を統一できます。さらに、製品開発における機能の優先順位を判断するときや、サポート担当者の顧客対応を準備するときにも参考になります。
レポートによる定期的な共有プロセスを確立したら、フィードバックを整理しましょう。まず機能の要望や問題点などの概要を確認してから、フィードバックの収集元(営業、アカウント管理、サポートチケット、マーケティング調査など)へと掘り下げます。こうして整理すると、関係者がフィードバックをすばやく包括的に確認できるようになるだけでなく、フィードバックのデータを細かく分析して、サポートの改善に向けた話し合うことができます。たとえば、ある機能への要望が届いたにもかかわらず、解約時のアンケートに書かれた意見だったからという理由で、製品チームが開発の優先順位を上げることに難色を示しているなら、別の収集元でも同じ要望を受け取っているという情報が製品チームを説得する材料になります(最終的に開発ロードマップの改善につながるでしょう)。
各チームとの橋渡し役を設置する
顧客フィードバックを社内で広く共有するには、カスタマーサクセスチームの中で各製品チームとの連携を図る担当者を1人ずつ指名すると効果的です。この担当者には、バグの優先順位付け、新機能についての検証や調査、ヘルプ記事の作成や社内ナレッジベースの更新などに関するフィードバックを伝える橋渡し役となることが求められます。企業によっては、開発計画会議への参加も含まれるかもしれません。少なくとも、定期的に(たとえば一定の開発期間が完了するごとに)製品の開発担当者とミーティングを開き、フィードバックについて議論する必要があります。
「橋渡し役」とは実にぴったりな表現です。この担当者は、いつ機能に改善を施すべきかなどの顧客から届いた意見やインサイトを集約し、整理して、製品チームに報告します。そして製品チームに情報を提供するだけではなく、カスタマーサービスチームに対して新機能の開発状況を知らせる役割も担っています。
顧客の満足度を維持するカギは、サポートチケットを解決済みにすることだけではありません。顧客の声に注意深く耳を傾け、社内の全員に確実に知らせることも大切なのです。