サービスサポートという言葉を耳にしたことはないでしょうか。企業におけるIT機器やシステムの利用が日常となった現代において、サービスサポートは重要な役割を担います。本記事では、サービスサポートの概要や重要性、管理方法、役割などについて解説をします。
サービスサポートとは?
ITサービス管理におけるサービスサポートとは、ユーザーが快適かつ問題なくITシステムを利用できるよう行う日々のサポート業務を指します。
ITサービスマネジメントのひとつであり、ITシステムに生じた問題の解決や原因の特定、予防措置、構成の変更などさまざまな業務を担います。同じような意味で「サービスデリバリ」という概念がありますが、こちらはサービスサポートよりも長期的な視点でサポート業務の管理工程を組み上げたものです。
現代では事業の規模に拘わらず、多くの企業がIT機器やシステムを業務に活用しています。組織のIT化やデジタル化が進み、従来に比べてさまざまな業務が簡便化されました。その一方で、ハードウェアやシステムにトラブルが発生すると、業務が立ち行かなくなるケースもあります。
IT機器やシステムに発生したトラブルは、自社の業務の遂行を阻害するだけでなく、顧客への迷惑にもなりかねません。ECサイトを立ち上げている企業なら、商品の購入や問い合わせができなくなったり、そもそもWebサイト自体が閲覧できなくなったりするなど、顧客の不利益に直結するおそれもあります。さらにはクレームの発生や満足度の低下を招くおそれもあります。
昨今、このような事態を回避するため、サービスサポートの重要性が指摘されています。適切なサービスサポートを行える環境や体制が整っていなければ、トラブルが発生したときスムーズな対応ができません。また、いったんは問題を解決できても、再度同じようなトラブルに見舞われるリスクもあります。
このように、ITシステムを活用している企業にとって、サービスサポートはとても重要な役割を担います。しかし、サービスデスクとの違いがよくわからない、といった担当者の方もいるのではないでしょうか。
簡単に説明すると、サービスサポートはサポート業務を指し、サービスデスクは従業員をはじめとしたシステムユーザーの窓口となる部署です。システムに不具合などが発生した折には、従業員などから入る連絡をサービスデスクが受けて、問題を解決するためにサービスサポート業務を行います。
ITサービスマネジメントの概要とプロセス
ITサービスマネジメントとは、組織におけるITサービスの管理を行うことです。優れたITシステムを構築していても、従業員が快適に問題なく利用できなければ意味がありません。安定した利用環境を提供するため、サービスマネジメントが必要です。
ITサービスマネジメントを成功させるには、ITILというITサービスマネジメントのガイドラインの導入が先決です。ITILは、イギリスで誕生し、現在では日本を含む世界各国の企業が導入しています。ITILでは、ストラテジー、デザイン、トランジション、オペレーション、サービス改善といった5つのプロセスでサービスマネジメントをわけています。
ストラテジーとは、組織内で活用するシステムの方針を決め、何を実現するかを検討する、システム全体の方向性やゴールを決めるためのプロセスです。システムの利用者が求めることを正確に把握し、そのうえでITサービスの戦略も立案しなくてはなりません。
デザインは、立案したサービスを実現するための、具体的な設計を行うプロセスです。サービスの品質や機能を考慮するのはもちろん、人件費や機器の導入費用などのコスト、実現に向けてのスケジュールについても考えなくてはなりません。
具体的なデザインが完了したら、トランジションへ移行します。先ほどのプロセスで具体的に設計したサービスを、どのように運用していくのかを検討するプロセスです。また、移行がスムーズに進められるようプランニングを行うプロセスでもあります。
オペレーションでは、実際にサービスの運用を開始し、安定した稼働を目指します。運用中に問題が発生していないか、トラブルの予兆はないかといった監視も同時に行います。問題管理やアプリケーション管理、イベント管理、アクセス管理、技術管理などが、オペレーションを構成する要素です。
システムの運用を本格的に開始したあとは、継続的なサービス改善が求められます。PDCAサイクルを回しつつ、分析や効果測定を行い、必要に応じて改善施策を実行します。
サービスサポートにおける5つの要素
サービスサポートは、構成管理とインシデント管理、変更管理、リソース管理、問題管理の5要素で構成されています。それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。
構成管理
構成管理とは、システムやサービスを構成する要素を適切に管理することです。管理の対象となるリソースはいくつかあり、ハードウェアやソフトウェア、ベンダー、契約などが該当します。
ハードウェアの管理では、メーカー名やシリアルナンバーなど、ハードを特定できる情報のほか、スペックも併せて管理します。ソフトウェアは、ソフト名やバージョン、パッチの適用状況などの管理がメインです。
システムの構築に関わっているベンダーも管理項目に含まれます。特に、いくつものベンダーがシステムの構成に関わっているようなケースでは、適切なベンダー管理が必要です。ベンダー名はもちろん、担当者の名称や問い合わせをすべき部門などを管理しましょう。
契約管理は、利用しているサービスの契約情報を管理します。契約番号や契約を締結した日時、期限などが該当します。
適切に構成管理ができていないと、さまざまなアクシデントに見舞われるおそれがあるため、注意が必要です。たとえば、契約情報を管理できていなかったばかりに、サービスの有効期限がすぎていた、アップデートを忘れてしまい、ソフトウェアが使えなくなってしまう、といったトラブルが考えられます。
構成管理が疎かでは、業務システムそのものが停止してしまうおそれもあります。業務が停滞することで、顧客が自社のサービスにアクセスできず、機会損失につながる可能性もあります。
インシデント管理
インシデント管理とは、ITシステムに生じた突発的なトラブル(インシデント)などに対し、適切な対応を行うことです。インシデントの発生を防ぐのがもっとも重要ですが、予期せぬトラブルが発生してしまうケースは多々あります。このようなとき、素早く状況を把握し、もとの状態へ復旧させるための対処を行います。
ITシステムに関連するインシデントは多々挙げられます。たとえば、ITシステムにアクセスできない、サイバー攻撃のターゲットとなりダメージを受けた、システムがフリーズした、ソフトウェアのライセンスが切れていたなどです。
インシデントの発生により、企業が受けるダメージは計り知れません。対応が後手に回るほど、クレームの発生や満足度の低下、機会損失などにつながります。このような事態を避けるべく、インシデント発生時にはスピーディーに対応し、収束を図る必要があります。
また、インシデント管理では、再発防止に向けた対策も行います。無事に問題を解決できても、再度同じようなトラブルが発生しないとは限りません。原因を特定し、同じインシデントが発生しないよう適切な対処を行う必要があります。
スムーズなシステム運用のためにも、インシデント管理は重要です。適切なインシデント管理を実行できていれば、いざトラブルが発生したときでも、過去の対応データに基づき素早い対処が可能です。システムがダウンした際にも、スピーディーに復旧できダメージを最小限に留められるでしょう。
インシデント管理においては、情報の共有も重要です。何度も同じようなインシデントが発生し、対応が遅れてしまうといったケースでは、情報共有がきちんとできていない可能性があります。チームや組織全体で情報を共有することで、効率的なインシデント管理が実現できるでしょう。
変更管理
変更管理とは、構築されたシステムに関する、さまざまな変更を管理することを指します。企業がシステムを運用しているあいだにさまざまな変更が加わるケースは珍しくありません。
管理する変更の項目には、ハードウェアやソフトウェア、担当者などが該当します。ネットワーク機器や端末といったハードウェアの交換や追加、廃止といった情報の管理をはじめ、新たに導入したソフトウェアや、担当者が代わった事実なども情報として管理します。
このような変更情報を適切に管理できていないと、ハードウェアやソフトウェア、人員などの変更によるビジネスリスクに発展するおそれがあります。また、管理ミスによる変更後のダウンタイムも長くなると考えられ、機会損失やクレームの発生などさまざまなトラブルの原因となるでしょう。
変更管理では、変更作業中に生じたトラブルへの対応方法についても考えなくてはなりません。ハードウェアやソフトウェアなどの変更においては、突発的なトラブルが発生する可能性もあり、業務の混乱を招いてしまうおそれもあります。
トラブルが長引いてしまうと、結果的にシステムそのものが停止してしまい、ビジネスが停滞しかねません。現場にも余計な混乱を招いてしまうため、いざというときの対処方法を明確にしておく必要があります。
リソース管理
リソース管理では、変更作業の品質を保つために、どのように変更を行っていくのか、どうやって継続的な改善を行うのかといったことを管理します。
システムの変更を行うにあたっては、従来よりもサービスの品質を低下させてしまうリスクがあります。せっかく新たな機器やソフトウェアを導入し、システムを一新したとしても、それにより品質が低下しては本末転倒です。
このような事態に陥らないよう、リソース管理によって品質を担保します。変更作業において、万が一トラブルが発生したときに、どのような対応をとるのかといったことも立案します。
また、変更作業は安全かつ確実に行われなくてはなりません。技術的な問題などで、作業にトラブルが生じてしまうと、システムの品質を低下させてしまうおそれがあります。安全かつ確実なシステムの構築をサポートするのも、リソース管理の役割といえるでしょう。
問題管理
問題管理とは、発生したインシデントの原因を究明し、再発防止策を講じることです。インシデント管理と混同されがちですが、インシデント管理は発生したトラブルをスピーディーに解決するのが目的です。一方の問題管理は、インシデントの発生原因を突き止め、二度と起きないよう対処することを目的としています。
インシデント管理においても、再発防止策の立案を行うケースは少なくありません。ただ、先述した通り、インシデント管理は発生したインシデントへの対策がメインなので、再発防止策にまで手が回らないといったこともよくあります。
日常的に運用を行うシステムにおいて、どれほど細心の注意を払っていても、インシデントを一度も起こさないのはほぼ不可能です。ただ、問題管理を適切に行うことで、インシデントの発生率を下げることは可能です。
なお、問題管理を行うときは、以下のようなプロセスで実行するのが一般的です。
問題識別
問題記録
優先度付け
調査と診断
ワークアラウンドの実施
情報の既知化(ナレッジ共有)
変更要求の管理
問題解決
システムの運用においては、今までに経験のないインシデントが発生するケースも少なくありません。このようなとき、きちんと根本となる原因を突き止めておけば、再び発生するリスクを下げられるでしょう。
サービスサポートに重要な「サービスデスク」とは?
サービスデスクとは、サービスサポートを担当する部署を指します。システムエラーや技術サポート、問い合わせなどに対応する窓口です。
サービスデスクに連絡してくるのは、自社の従業員だけではありません。システムにアクセスできない、商品を購入できない、サービスの利用方法がわからないなど、顧客から寄せられるさまざまな問い合わせにも対応します。
サービスデスクの対応は、顧客満足度に大きく影響を与えるため、とても重要な部署といえるでしょう。誤った対応をしてしまうと、商品やサービス、組織そのものに悪い印象を抱かれてしまい、イメージダウンを招くおそれがあります。
顧客からの問い合わせに対し、適切な対応を行うにはサービス品質の向上に努めなくてはなりません。たとえば、FAQやチャットボットの実装などが挙げられます。FAQの情報を充実させれば、顧客はいつでも求める情報を取得でき、満足度の向上につながります。
社内Wikiを導入するのもよいでしょう。社内Wikiとは、社内の人間が利用できるWikipediaのよ
うなサイトです。業務に関するさまざまな情報を集約でき、いつでも閲覧できるため、問い合わせ時にもスムーズかつ適切な回答が可能です。
また、組織内の連携強化も大切です。サービスデスクと各部署がきちんと連携できれば、いざインシデントが発生したときもスムーズな対応ができ、迅速な復旧が実現できます。
サービスデスクの運用で重要なポイントのひとつとして、問い合わせを集約させることが挙げられます。電話やメール、SNS、チャットなど、ユーザーはさまざまなチャネルを用いて問い合わせをします。サービスデスクに問い合わせを集約できていないと、それぞれの部署や担当者が対応することになってしまい、非効率です。対応品質にばらつきも生じてしまうでしょう。
サービスサポートに対応したカスタマーサービスソフトウェア「Zendesk」とは
Zendeskは、満足度の高い顧客体験を創出できるカスタマーサービスソフトウェアです。Zendeskを活用すれば、問題が発生した際に迅速に共有し、解決できるサービスデスクを設置できます。
例えば、Zendeskならインシデントが発生し、顧客や社員から問い合わせがあった際に、問い合わせを「チケット」という単位で扱い、スムーズに担当者への割り当てや、回答・情報共有を行うことができます。
また、インシデント対応に便利な「事象チケット」と「問題チケット」という機能があります。例えば、自社で運営するECサイトのサーバーがダウンしたら、多くの顧客様から「サイトにつながらない」「商品を購入できない」などの問い合わせが届きます。
問い合わせごとにチケットが作成されるため、チケット一つひとつに返信して対応することになれば、サポート担当者に大変な労力が掛かります。
Zendeskならサポート担当者やエンジニアがインシデントの原因を特定した際に、「問題チケット」を作成して自分に割り当てることができます。個々の問い合わせは「事象チケット」として、「問題チケット」とリンクさせることができます。
こうすることにより、対応が完了し正常な状態に復帰した際に、「問題チケット」さえ解決すれば、リンクしている事象チケットに一括で回答を返すことができます。
その結果、顧客から寄せられた苦情や問い合わせに対し、スピーディーな対応を実現できるため、満足度の向上につながります。
また、Zendeskを利用すれば、簡単にFAQサイトの構築も可能です。簡単な操作とプロセスで、高品質なFAQを構築でき、顧客は24時間いつでも情報にアクセスできます。わざわざ問い合わせをする必要がなくなり、エフォートレスな顧客体験を実現できます。
すでに、多くの企業がZendeskのツールを導入して事業に活かしています。たとえばNTTデータ先端技術株式会社もそのひとつです。同社は顧客に金融、公共系分野を多く持ち、寄せられるインシデントの緊急性も高いうえ件数も多く、インシデント管理の方法に悩みを抱えていました。
サポートデスクに届く顧客からの問い合わせはフォーマット化されていないため、自社ツールに取り込み管理したとしても、対応に必要な情報を収集するために顧客との間にやりとりが何往復も発生していました。実際の対応はそこから始まるため、解決までに時間が掛かっていました。
Zendeskなら、Webフォーム上に問題を切り分けられる条件分岐を設定したり、項目をカスタマイズしたりできます。これにより、何に対する問い合わせなのかを明確にし、問題解決に必要な最低限の情報を一回で取得できるようになりました。
またクラウド型でどこからでもアクセスできるZendeskなら、インシデント情報のスピーディーな共有や委託先との連携もできます。
まとめ
サービスサポートを適切に行える環境と体制が整っていないと、企業はあらゆる場面でリスクを負います。突発的なトラブルへの対応が後手に回り、業務が停滞してしまう、顧客満足度を低下させてしまうなど、さまざまなリスクが考えられるため、サービスサポートについて真剣に考えなくてはなりません。
適切なサービスサポート環境を整えるには、ツールの利用が近道です。もちろん、ツールを利用せずとも環境の構築は可能ですが、莫大な時間と手間、コストが発生しかねません。本記事で紹介した、Zendeskのツールを利用すれば、最高の顧客体験を実現できるサービスデスクの構築が可能です。ぜひこの機会に検討してみてはいかがでしょうか。