これまでの「当たり前」に変化の波が押し寄せた2020年。成功している企業は、世界的なパンデミックを前にしても怯むことなく、従業員の働き方から顧客対応の方法に至るまで、デジタルを駆使して着々とビジネス変革を進めています。
このような状況下でも優れたカスタマーエクスペリエンスを提供していくためには、何を優先し、どんなアプローチで、どこに向かえばいいのか。Zendeskが2021年4月21日に開催したウェビナーでは、デジタル化の行方やトレンドを踏まえ、成功事例に多くのヒントをもらいつつ、これからのカスタマーサービスのあり方を考えました。
パンデミック後の未来に向けたデジタル化の進め方
リサーチ企業Forrester社のミッシェル・バーンズ氏は、はじめにコロナ禍でのビジネス変化として次の3つを挙げました。
あらゆる面でのデジタル化と部門間連携が進展
企業経営の焦点が「全社規模のデジタル化推進」に
不確実なニューノーマルへシフト
Forrester ミッシェル・バーンズ氏
このような状況下では従来の考え方の見直しが求められます。では、アフターコロナを見据えて現在のデジタル化の勢いを保ち続けるには、どうしたらよいのでしょうか?バーンズ氏ミッシェルによれば、重要なポイントは次の3つだと言います。
ポイント1:業務管理に使用しているツールを充実させること
単に最新の高性能なテクノロジーを活用するのではなく、ビジネス上の課題やニーズにマッチしたテクノロジーを整備する。
ポイント2:アジャイル型のアプローチを全社的に導入すること
企業競争力を効果的に高めるには、顧客の課題を特定し、それを克服しCXを改善するまでの時間を短縮する必要がある。
ポイント3:業務のデジタル化の透明性を高めること
この1年でデジタル化チームが獲得してきた信頼を維持し、引き続き業務価値の向上につなげていくためには、社内に向けてデジタル化の取り組みをオープンに報告していく必要がある。
バーンズ氏は「元に戻ることはもうありません」と強調した上で、デジタル化の勢いを保ち続けるためのカギは、「単にデジタル化を進めるのではなく、顧客にとって最も都合のよい方法で満足度の高いエクスペリエンスを提供すること。企業の経営モデルの中心に顧客を据えることです」と語りました。
コロナ禍でも世界中に楽しみや活力をもたらしたVimeo
デジタルの転換期において大切なのは、適切なテクノロジーを適切なタイミングに適切な方法で導入すること。Vimeo社はこの点において成功した企業と言えるでしょう。コロナ禍でライブストリーミングの需要が高まり、自宅での楽しみ方を求めて多くのユーザーがVimeoを活用した動画配信を開始した結果、利用率が急速に伸びています。
「当社が提供するOTTプラットフォームを使えば、世界中のあらゆる場所にいる視聴者にコンテンツを届けることができます」と語るVimeo社のキャサリン・バレット氏は、OTTプラットフォームの活用事例として、実践的教育を目的としたダンス動画のプロジェクトと楽しいフィットネス動画を紹介。
コロナ禍でたくさんの家庭に楽しみや活力をもたらしたVimeoでは、ユーザーやサブスクリプション登録者の増大に伴い、カスタマーサポートへの問い合わせも激増しています。そこで、同社が頼みの綱としているのがZendeskです。「Zendeskは強力なツールの提供に加えて、無料ユーザーから大企業ユーザーまで、お客様サポートの面でもアドバイザーとして力を貸してくれます」とキャサリン。「テクノロジーは進化する一方です。私たちもあと戻りすることはありません。テクノロジーと共に前へ進んでいきます」と語りました。
CXテクノロジー投資のヒントに!今こそ試したい8つのベストプラクティス
3つ目のセッションでは、Zendesk カスタマーサクセス シニアマネージャーの佐藤 祐子と一緒に、デジタル時代におけるカスタマーサービスについて考えていきました。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年は世界中でカスタマーサポートのへの問い合わせ数が20%以上も増加し、現在もなお上昇傾向にあります。また、Zendeskが毎年実施しているCXに関する調査によると、新型コロナ感染拡大を機に顕著に加速したトレンドの一つが、デジタルテクノロジーの導入です。アジアパシフィックでは企業の81%がDXを加速させたと回答しています。さらに2021年にCXテクノロジーへの投資を増やすとしている企業は半数以上に上ります。
では、どこに投資すれば最大の効果を得られるのかというと、「重要なことは、顧客が好むチャネルでカスタマーサービスを提供すること。また、顧客が抱える問題を自己解決できるようにセルフサービスの手段を提供すること。そしてAIを活用したコミュニケーションを採用すること。この3つでしょう」と佐藤。中でも特に2021年の重要な投資分野となるのがメッセージング機能です。現に、2020年に新型コロナウイルスが急速に世界中に拡大した際、カスタマーサポートチャネルにWhatsAppを採用する企業が増え、利用率は実に219%も増加。問い合わせ全体の5%を占めるほどだったと言います。
佐藤は、「Zendeskのメッセージング機能を活用すれば、LINEやFacebook Messengerなどのソーシャルメディアをカスタマーサポートのチャネルに簡単に追加することができます。お客様がチャネルを横断してもスムーズに会話を継続できるだけでなく、好きな時に会話を中断、再開できるため、スムーズなやりとりが可能になります。エージェントも一度に複数のお客様をサポートできて効率的です」と説明。
こうしたメッセージング機能への投資をはじめ、デジタル時代の転換期を迎えるにあたって企業が取り組むべきこととして、佐藤はここから「8つのベストプラクティス」を紹介。Zendesk製品担当プレジデントのエイドリアン・マクダーモットによるCRM戦略を考える際に考慮すべきポイントの解説や、ベストプラクティスを実践する国内企業の事例にもぜひご注目ください。
顧客の視点から考える
Best Practice 1:顧客が好む手段でコミュニケーションする
多くの顧客は友人や家族とのコミュニケーションに使っている手段で問い合わせをしたり、コミュニケーションしたりしたいと考えています。また、アジアパシフィックの顧客の58%がセルフサービスによる自己解決を希望しているように、いつでも必要なときに必要な答えをセルフサービスで得たいと考えています。
「FAQサイトを構築、コンテンツを充実させたら、問い合わせ内容に適した回答をナレッジベースから探してくれるAIボットの活用を検討しましょう。」(佐藤)
顧客がセルフサービスの選択肢を自由に選べるようにすれば、一部の問い合わせに人間が対応する必要はなくなります。さらにAIを使えば、世界中の顧客に向けて年中無休のサポートを提供できます。AIは決して万能ではありませんが、カスタマーサービスにおいてその力をうまく活用できれば、スタッフの数を倍増させなくても問い合わせに対応できます。(エイドリアン)
Best Practice 2:充実した自己解決手段を提供する
直感的で操作がしやすいセルフサービス環境の提供や、AIボットを活用した自己解決の促進が成功の秘訣です。
テーブルチェック様の場合
問い合わせ対応の一元管理および可視化による効率化、ヘルプセンターによる自己解決の促進、AIの活用による問い合わせ件数の削減を実現。
カスタマーサポートチームの視点から考える
Best Practice 3:すべての情報を1つの管理画面に統合する
顧客のエクスペリエンス(以下、CX)をよりスムーズなものに改善できたら、次はカスタマーサポートチームの効率化に注力しましょう。従業員のエクスペリエンスをより良いものにすることは、CX向上にもつながります。優れたCXを提供している企業では、問い合わせ担当者(エージェント)の操作画面を見直しています。
顧客の背景情報を失うことなく、複数チャネルをまたいでシームレスなコミュニケーションを実現するためには、すべての情報を一目で確認することができる管理画面が必要です。Zendeskのエージェントワークスペースなら、顧客に関係するすべての情報を1つの画面に集約、管理できます。
リモートワークに移行し、チーム間での共同作業をデジタルの世界でもスムーズに行えるツールが必要不可欠です。CXプラットフォームに優れたナレッジツールが組み込まれていれば、各メンバーの知識習得がスムーズになり、チームの共同作業を活性化することができます。(エイドリアン)
ゴディバジャパン様の場合
エスカレーションを含む対応履歴をZendeskで一元管理し、複数の顧客接点に集まる顧客の声を集約し、商品開発やサービス改善に活用。
Best Practice 4:担当者(エージェント)が働きやすい環境を提供する
パフォーマンスの高いチームは低いチームに比べて2倍以上のツールや機能を組み合わせてワークフローの改善に取り組んでいます。チームで円滑に対応できるようなプロセスを確立することも重要です。たとえば、Zendeskのサイドカンバセーション機能を使うと、顧客とのやりとりに加え、すべての社内外とのコミュニケーションをZendeskの管理画面から一目で確認でき、効率的な対応が可能になります。ZendeskとSlackとの連携も社内外とのコラボレーションに有効です。
東京電力エナジーパートナー様の場合
Slack連携により、顧客対応における困りごとを管理者が即座に解決。Slack連携を通じて蓄積されたナレッジは、将来のFAQコンテンツの候補となる貴重な情報源として管理。
Best Practice 5:チームのコラボレーションを促進する
セルフサービス向けのコンテンツ管理、FAQを常にフレッシュな状態に維持するためには、エージェント同士のコラボレーションが必要です。エージェントがセルフサービスソリューションの一部となり、ナレッジマネジメントに貢献できるようにします。優れたナレッジマネジメントは顧客にメリットがあるだけでなく、エージェントが顧客対応に必要な情報を見つける手段としても有効です。
ビジネスの視点から考える
Best Practice 6:パーソナライズされた対応を提供する
75%の顧客が、企業に対してパーソナライズされた対応を期待していると回答しています。これを実現できれば、競合他社に差をつける大きなチャンスとなります。パーソナライズされたCXの提供には、Zendesk Sunshineなどを活用して、顧客に関する情報を一つの管理画面から確認できるようにすることをお勧めします。
Best Practice 7:既存システムと連携する
CXを改善してデジタル時代の転換期を乗り越えるために、既存システムやプロセスとの連携を積極的に進めていきましょう。他社システムとの連携には1000以上のアプリを提供しているZendeskマーケットプレイスをご利用いただけますください。
Best Practice 8:データの分析と改善をサイクル化する
CX改善の道に終わりはありません。重要なのことは分析をし、改善をし、また分析をすることです。「Zendeskの分析・レポート機能を使用すれば、ビジネスを成長させるためのインサイトを得ることができます。その結果はチケットにも反映できます」と佐藤。
カスタマーサービス業務は常にデータをよりどころとしています。具体的な目標を設定し、顧客満足度を重視し、KPIなどの各指標に基づき行動を起こします。顧客の行動パターンが次々と変わっていくなかで、リアルタイムでデータを分析し、それに基づいて行動することがカスタマーサービス部門のリーダーに強く求められています。(エイドリアン)
ご紹介してきたベストプラクティスを実践していくにあたり、カスタマーサポートに必要な機能を1つのパッケージにした「Zendesk Suite」を紹介。「世の中には多くのテクノロジーがあふれており、顧客、チームメンバー、パートナー、ステークホルダーなど、それぞれの立場で異なるニーズが生み出されています。それらのニーズに対応するためにゴールはありません。CXを追求し続けるみなさんのパートナーとしてZendesk Suiteをご利用ください」と語り、最後に改めてこう提案しました。
「デジタルファーストの時代にあって、私たちは大きな転換期を迎えています。テクノロジーが最も効果を発揮するのは、人財やプロセスとの組み合わせが調和したときです。デジタルシフトが加速している今こそ、最良のCXの提供に向けて努力すべきときなのです。この機会に本日ご紹介したベストプラクティスを試してみてはいかがでしょうか。」
デジタル時代の転換期を迎えるにあたって企業が取り組むことを解説した本オンラインセミナーは、オンデマンド版でもご覧いただけます。是非、ご覧ください