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【セミナーレポート】ニューノーマル時代の顧客エンゲージメントとは?
– CX Trends 2021 –

更新日: 2023年1月5日

コンタクトセンターを取り巻く環境が激変した2020年。「ニューノーマル」と呼ばれる新たな時代に、これからのカスタマーサービスはどうあるべきなのか。昨今のカスタマーエクスエクスペリエンス(以下、CX)のトレンドを知り、顧客接点の創り方や、顧客との向き合い方を考えるきっかけとして、Zendeskは2021年2月18日にセミナーを開催。市場をリードするCX戦略を実現するためのコミュニケーション設計のあり方に迫ると共に、Zendeskをフル活用して顧客接点のオムニチャネル化を推し進める東京電力エナジ―パートナー株式会社(以下、TEPCO)にも登壇いただきました。各セッションの内容をご紹介します。

9万社のデータに基づく、CXに関する5つのトレンドとは?

「2020年は前例のない一年でした。もちろん、CXの分野も例外ではなく、外出自粛が呼びかけられた結果、顧客はオンラインに殺到し、サポート業務も急速なリモート移行が求められました。市場が混乱を極め不確実性が増す中、企業は生き残りをかけて必死にもがき、かつてないほど柔軟な対応が求められました」と切り出したZendesk CXストラテジストのマルコム・コーは、「もう以前の世界に戻ることはないでしょう。ただ前進するのみです」とした上で、これまで以上にCXの品質がビジネスの成功を左右することになるだろうと強調。

Zendeskが詳細なリサーチに基づいて導き出したCXトレンドも、この予測をしっかりと裏付ける結果になっています。今年で3回目の発行となる「CXトレンド分析レポート」は、175か国9万社を超える企業のデータを収集・分析したもので、CXに優れた企業とそうでない企業との違いに着目したところ、5つのCXトレンドが特定できました。マルコム・コーは、それぞれのトレンドを象徴する事例と共に次のように紹介しました。

  • 第1のトレンド「CXへの注力」

外出制限を受けてオンラインショッピングの利用が増加すると同時に、顧客ニーズもかつてないほど高まりました。Zendesk導入企業への調査では、問い合わせ件数が史上最高を記録。顧客とのやり取りは前年度比で20%も増加しています。



  • 第2のトレンド「会話型エクスペリエンスへの対応」

CX重視の傾向が強まる中、対面でのやりとりが難しい今は、メッセージングアプリなどデジタルでのコミュニケーションが中心です。事実、顧客の64%が新しい手段で企業とやり取りするようになっています。

<事例:Kamal Osman Jamjoom Group(KOJ)>

大規模にメッセージングを導入し、会話型エクスペリエンスを効果的に取り入れています。問い合わせの50%以上はWhatsApp経由で、メッセージングは顧客からだけでなく人事、購買、経理、IT部門など従業員からの問い合わせ手段としても利用され、Zendesk上で解決までの状況が一元管理されています。

  • 第3のトレンド「従業員の働き方や連携体制の見直し」

企業は新しいやり方を取り入れてチームの健全性と顧客満足度を維持していく必要があります。

  • 第4のトレンド「アジリティの強化」

突如デジタルファーストとなった世界に企業は速やかに適応することが求められています。



  • 第5のトレンド「デジタル化」

デジタル化のスピードが加速する中、これまで力を入れてこなかった企業も技術投資の強化に乗り出しています。

マルコム・コーは以上を総括し、「2020年は厳しい一年でしたが、運用方法を見直す好機だったとも言えます。うまくトレンドに適応できた企業の成功事例を参考に、今年のCX戦略では新たな取り組みにチャレンジしてください」と締めくくりました。

トレンドからコンタクトセンターのCX設計を考える

続いて、Zendeskのカスタマーサクセス部 シニアマネージャー 佐藤祐子が登壇。はじめに2020年を振り返り、次の3つの視点からその変化に言及しました。

<顧客を取り巻く環境>

SNSなどで簡単に情報を手に入れられる時代。顧客体験やサポートへの関心も高まっており、悪い体験をしたことを理由に簡単に競合他社に乗り換えてしまう可能性がある。

<問い合わせ担当者を取り巻く環境>

2020年は変化にすばやく対応できた組織がもっとも成功した一年だった。2021年は顧客の高い期待に応えるために、チームをより良くサポートするためのシステムや環境づくりが求められる。

<ビジネスを取り巻く環境>

顧客はこれまで以上に企業がCXに真剣に取り組むことを求めており、企業は事業戦略上のトピックとしてCXへの投資が極めて重要であることを認識すべきである。



こうした環境の変化に対し、日本のCXリーダーはどう変革を進めていくべきなのでしょうか。佐藤は、「優れた顧客体験を提供するための重要なコンポーネントを備えたZendesk Suiteなら、みなさんのお客様にスムーズな顧客体験を提供すると共に、カスタマーサポート業務を効率化し、的確なマネージメントが行えるようになります」と説明。さらに、前出の3つの視点からその特徴に迫りました。

<顧客の視点>

電話やメール、ライブチャットに加え、AIが組み込まれたメッセージング機能Zendesk Messagingを新たにリリース。AIによるセルフサービスや必要なデータの取得、FAQによる回答、ディシジョンツリーによる的確なナビゲーションが可能になっている。これによりAI、顧客情報、会話履歴を組み合わせたパーソナライズされたサポートを提供。顧客を迅速かつ簡単に正しい回答へ導くのはもちろん、顧客はどこにいても会話を続けることができる。

<問い合わせ担当者の視点>

顧客に満足度の高いサポートを提供するためには、エージェントにとっても満足度の高い環境を提供する必要がある。Zendeskは、より少ない労力でより多くのことを行えるように、顧客とのコミュニケーションを1つに統合した管理画面、顧客の好みに合わせたチャネルの自在な選択、ワークフローやビジネスルールを活用した効率化、社内の知識や経験の共有、自己解決のためのコンテンツ整備など、時間と労力を節約するための機能を提供している。

<ビジネスの視点>

Zendesk Exploreという分析プラットフォームにより、CXの最適化に向けて、データに基づいた意思決定をサポートするほか、トリガや自動化の機能による一貫性のあるタスク処理、SLAの設定によるポリシーや優先順位に従った問い合わせ対応を実現する。



さらに全体に共通することとして、佐藤はZendeskの高い拡張性をアピール。「顧客とのより良いコミュニケーションを実現するためにAWS上でサービスを提供し、さまざまな外部システムやサードパーティ製アプリとの連携、自社の活用に合わせたアプリケーションの開発やプラットフォームの組み込みなど、スケーラブルかつフレキシブルなサービスを提供しています」と語りました。

TEPCOのDXにおけるZendesk

3つの目のセッションには、東京電力エナジーパートナー株式会社(以下、TEPCO)DX推進室 飯塚孝高氏をお招きし、TEPCOのDXにおけるZendeskについてご紹介いただきました。2019年7月にオペレーション部門の業務変革を推進する専門組織を発足し、「既存を見直す」ではなく「ゼロベースから創造する」をポリシーとしたDXを推進。従来のスクラッチ開発ではなく、先進的なソリューションを柔軟に組み合わせて新たな環境をスピーチ―に構築し、あるべきオペレーション像をアジャイルに実現していくことを目指しています。その一環として2019年10月にZendeskを導入。まず、オペレーション部門の業務変革を進めるにあたり、オペレーションコストの大部分を占めていたコールセンターの課題に着目したと言います

<お客様から見た課題>

  • 電話チャネルのみでいつも混んでつながらない

  • 長時間お待たせしてしまう

  • セルフサービスでサクッと解決できない

<オペレーターから見た課題>

  • 受付業務がどんどん複雑化していく

  • オペレーターの効率化に必要なサービスと連携できない

課題解決に向け、Zendeskを中心に一年をかけて実現したのがこちら(図参照)。Zendeskの優れたAPI連携機能を最大限に活用した構成です。



ポイントは、今やオムニチャネル統合は当たり前との前提に立ち、電話以外にもチャットやFAQなどを含めてオムニチャネル化したこと。電話チャネルには、柔軟な連携ができるAmazon Connectを採用し、IBM WatsonやGoogleの音声認識など、先進的なAIサービスとも連携。これらをZendesk中心に統合管理している点が特徴的です。



ここから飯塚氏は、チャネルごとに具体的な活用例を解説していきました。

1)FAQ活用の高度化

AIを活用したFAQ検索

目的のFAQを見つけられないという課題感から、検索機能に特化したAIであるWatson DiscoveryとZendeskの連携を実現。
「月間100万回程度閲覧されている当社のFAQページは、導入以降、検索結果の0件ヒット率が50%から10%に改善しました。」(飯塚氏)

お客様からのFAQに対するフィードバック

回答精度への満足度を高めるため、FAQへのフィードバックコメントをもらうためのフォームをZendeskで作成。さらにフィードバックの内容はリアルタイムにSlackに通知して、迅速な改善対応につなげている。



FAQからのコメントをリアルタイムにslack上に共有

社内のナレッジを統合管理

顧客向けFAQと社内向けナレッジをまとめて運用。分散したナレッジを統合することで運用を効率化している。オペレーターはAIによる検索結果を確認でき、検索結果に対するフィードバック機能をZendesk上に作成することで、検索精度の継続的な改善の仕組みも実現している。

2)オムニチャネルとしてのチャット

初めてのチャット

ウィジェット形式のチャットを導入。また、顧客との対話を行うAIとしてWatson Assistantと連携。顧客の契約情報に基づいて対応を行うため社内システムとも連携している。新型コロナ対応で緊急的にチャットを100ブース追加した際は、Zendeskのマクロ機能やトリガ機能が実力を発揮。複雑なビジネスロジックを開発作業なしに実装でき、運用をスムーズにスケールできた。
「Zendeskの直感的でわかりやすいUIのおかげでスムーズに運用を開始できました。オペレーション効率は電話の2倍、顧客満足度は1.3倍と、顧客満足度の向上とオペレーションの効率化を両立できています。チャットではフランクな会話が好まれるので、電話のスクリプトを流用しないのもポイントです。」(飯塚氏)

サイドカンバーセーション機能の活用

各エージェントは、Zendeskのチケット画面から対応中に直接Slackチャンネルに質問できるようにしている。将来的にはSlack上に蓄積されたQAを分析、ナレッジ化して、回答を自動化していくことを検討中。



ZendeskとSlackを連携させ、オペレーターと管理者のスムーズなやりとりを実現

3)電話受付の効率化

Amazon Connectや音声自動応答システムとの連携

Aiga音声認識による自動応答を通して事前に確認した情報をZendesk上でシームレスにエージェントに引き継ぐことで、電話受付を効率化。

また、こうした新しいシステム環境へのスムーズな業務移行のために実施したこととして、飯塚氏は要点を次の3つにまとめました。

ポイント1:既存環境と切り離して新しい環境を構築
実現したいことをゼロベースから構築し、スピード感をもってアジャイルを実践。
ポイント2:業務を切り出して段階的に移行
早期に実証可能なシンプルな業務から、本丸となる業務へ。
ポイント3:リリース後も柔軟に変更
継続的なモニタリング&分析を行い、仮説を立ててオペレーションの変更をスモールに実施し、結果が良かったら水平展開。

もちろん、ここで終わりではありません。TEPCOの取り組みは始まったばかり。飯塚氏は、「これからもお客様にとことん寄り添うことにこだわり、Zendeskをいろいろサービスと柔軟に連携しながら新たな価値を提供していきます」と力強く語りました。

本セミナーを通して、変化を乗り越え、不確実な未来に適応していくために、着々と準備を進める企業の取り組みを垣間見ることができました。これまで以上にCXの品質が問われる2021年。今回ご紹介したセミナーはオンデマンド版を公開しています。未来への基盤を築くにあたって、新しいトレンドからはじめませんか?

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