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カスタマーサポートにおける自己解決率の重要性と測定・改善するための効果的な方法

更新日: 2024年10月14日

カスタマーサポートの品質向上を考えるときには、サポート担当者がいかに顧客に迅速かつ正確に対応して問題を解決するかに焦点を当てがちですが、企業に問い合わせる前に、すでに顧客が手間と時間をかけていることを認識する必要があります。

顧客の多くは製品やサービスについて疑問や知りたいことがあると、まずWebサイトで情報を調べます。そして、Web上に知りたい情報が見つからなければ、企業に電話やメールで問い合わせます。そのため、そもそも問い合わせをする時点で、Webサイトが使いづらく情報がなかなか見つからなかったり、Webサイトに情報が載っていなかったりしていて、顧客の多くはすでにフラストレーションを感じているのです。

対して、そのような顧客から問い合わせを受ける企業側は、限られた人数で対応しています。問い合わせ数が多いと担当者の負荷が大きくなり、回答までに時間がかかったり回答の質が低下したりして、顧客のフラストレーションを増幅させる可能性があります。そのため、企業は顧客が自ら問題を解決できるようにすることを、カスタマーサポートの大きなテーマとして捉えなければなりません。「自己解決率」はその重要な指標のひとつです。

この記事では、カスタマーサポートにおける自己解決率の定義やその重要性、自己解決率を測定・改善するための効果的な方法について紹介します。

自己解決率とは?

カスタマーサポートにおける自己解決率とは、サポートに問い合わせることなく顧客が自分自身で問題を解決できた割合を示す指標です。自己解決率が高いということは、顧客が問題を自ら調べて迅速に解決できている状況を表します。カスタマーサポートにおいて自己解決率は、顧客の満足度だけでなくサポート業務の負荷や効率化とも関連する指標のひとつです。

次に、自己解決率がなぜ重要なのかを見ていきましょう。

顧客の自己解決率を高めるべき4つの理由

  1. 顧客の問い合わせ方法に対するニーズの変化への対応

    近年、顧客は早くて正確な問題解決の手段として、電話やメールで問い合わせるよりも、セルフサービスで解決をしたいと考えるようになってきています。Zendeskが日本を含む世界中の消費者やビジネスリーダーを対象にしたCXに関する年次調査であるCXトレンドレポート2022年版によると、次のように、顧客は自己解決のできる質の高いサービスを期待しています。

    設問に「はい」と答えた顧客の割合
    「オンラインで問題を自己解決できるサービスを提供する企業を優先的に利用する」:89%
    「企業にセルフサービスのポータルやコンテンツを期待する」:70%
    「単純な問題はボットで解決したい」:69%
    「カスタマーサービスの質で購入を決めたことがある」:70%
    「企業に問い合わせたらすぐに対応してほしい」:76%

    この回答結果が示すとおり、顧客は不明点を自身で調べたり、あるいはチャットボットなどを活用して自己解決したりしたいというケースが多く、そのうえで解決できないことはカスタマーサポートに問い合わせ、そのときには迅速に対応してほしいと考えている人が多いです。

    企業は、このような顧客のニーズに応えて自己解決率の向上とカスタマーサポートの品質向上に同時に取り組まなければ、長期的には顧客の支持を得られなくなる恐れがあります。

  2. 業務の効率化・対応品質の向上・コスト削減


    カスタマーサポートの最大のミッションは、顧客の問い合わせに対して迅速かつ正確に回答することです。また、経営的な視点では、業務の効率化を図り経費を抑えるとともに、プロフィットセンターとしてのミッションも果たさなければなりません。

    これらのミッションを達成するためには、できるだけ顧客の自己解決率を高め、無人対応(自動応答)を推進することが必要です。自己解決率を高めることで問い合わせ対応にかかる総業務量を削減でき、コスト削減が可能です。

    さらに、余裕ができた人員や時間を、有人対応が必要なサポートやプロフィットセンターとしての業務に回せます。また、電話やメールによる有人対応で起こり得るミスや、知識不足による誤回答の防止にもつなげられます。

    その結果、顧客満足度向上を実現し、問い合わせデータの分析などから開発部門や営業・マーケティング部門などへ有益な情報の提供もできます。

  3. 担当者の負担軽減・離職防止

    自己解決率の向上は業務の効率化につながり、担当者の負荷を軽減します。負荷を軽減できないと、担当者が業務に嫌気がさし、離職する割合が高まる恐れがあります。カスタマーサポートには幅広い内容の問い合わせが寄せられるため、経験を積むほどに能力が向上し、処理時間の短縮や問題の処理ができる能力が高くなることから、離職の防止は重要です。

    また、属人化が進みやすい業務では、優秀な人材が離職すると、貴重なノウハウが社内に残らずに流出してしまうリスクが生じます。さらに、離職の頻度が高ければ、新人教育が何度も必要になり、そこにも時間とコストがかかります。担当者の負荷を軽減し、離職を防止するためにも、顧客の自己解決率を高めることが重要です。

  4. 顧客体験・顧客満足度の向上

    顧客は、自己解決できないうえにカスタマーサポートの営業時間内にしか問い合わせできなかったり、問い合わせができてもすぐに解決できなかったりすると、ストレスを感じます。こうした経験を繰り返すと、製品やサービスに満足していたとしても、顧客体験や顧客満足度は大きく低下します。

    場合によっては、顧客が購入意欲を失う、解約したくなる、今後の購入をためらうといったリスクが生じます。また、電話・メールでの問い合わせをあまり好まない顧客もいます。これらのようなケースに備え、自己解決できる手段を用意しておかないと、顧客を失うリスクが高まります。

自己解決率の測定方法

自己解決率を測定(算出)するには、カスタマーサポート部門における一定期間内の顧客対応のデータが必要です。しかし、顧客は自己解決できたかどうかを企業に申告する必要はないため、自己解決できた件数を正確に測定することは困難です。そのため、自己解決率を完全に測定することは難しく、それに変わる自己解決率の定義も現時点で確立されていません。
しかし、自己解決率を高めるには何らかの指標が必要ですので、以下に示す「セルフサービススコア」の数値を活用するというのは、手法の一つです。

セルフサービススコアは以下の式を使用して算出します。
セルフサービススコア =ヘルプセンターのユーザー数 ÷ チケットを作成したユーザー数

上記の式で得られた数値は、カスタマーサポートのユーザー数に対して、担当者が顧客の問い合わせに対応しなければならない「サポートリクエスト」がどのくらい作成されたかという値です。

セルフサービススコアは比率で表します。例えば「4:1」なら、セルフサービスチャネルを利用して問題の自己解決を試みた顧客の4人に1人がサポートリクエストを送信した(自己解決できなかった)ことを意味します。

自己解決率の測定については以下の記事も参考にしてください。

自己解決率を向上するための施策

  • FAQの導入


    「FAQ」とは、「よくある質問(Frequently Asked Questions)」の略語です。よくある疑問や問題をまとめて掲載し、顧客に公開します。FAQを整備しておけば、顧客は疑問が生じたときに自分で調べて解決できるため、自己解決率が向上します。
    Zendeskで作成したFAQのサンプル

    FAQの導入方法

    (1)サポート窓口によく寄せられる問い合わせを洗い出す

    顧客からよく寄せられる問い合わせを洗い出し、FAQに掲載する内容を決定します。
    (2)分かりやすい文章で作成する

    誰もが理解できる文章で作成し、必要に応じて動画、画像、イラスト、図表などを用います。
    (3)構成を明確にしてカテゴリに分け、検索機能を実装して公開する

    FAQの作成にあたっては、機能ごと、製品ごと、問題の種類ごとなどに分類し、顧客が目的の情報にアクセスしやすくなるように構成を考えます。構成に従ってFAQをカテゴリに分け、必要な情報に素早くアクセスできるようにすることが重要です。必要に応じてカテゴリには階層構造を持たせます。
    また、カテゴリ内では問い合わせの多い順にFAQを並べる、問い合わせに対して関連する回答や解説記事を紹介するなどの工夫をすることで自己解決率を高められます。検索機能を実装すれば、顧客はさらに効率的に情報にアクセスできます。また、Webサイト上にFAQへの導線を整備し、アクセスしやすいようにしましょう。
    FAQシステムを利用すれば、短期間でFAQサイトを作成することができ、デザインのカスタマイズや記事管理、レポーティングなど、FAQサイトの運用管理に役立つ機能を利用することができます。FAQシステムを利用したFAQの導入・公開から活用までの詳しい内容については下記「FAQサイト活用ガイド:問い合わせ対応効率化と対応品質向上を両立」をぜひご覧ください。
    (4)定期的な更新の継続と顧客からのフィードバックの収集・分析により改善する

    顧客が最新かつ正確な情報にアクセスできるようにするため、定期的な更新を継続して行います。また、顧客からのフィードバックを収集・分析し、FAQの内容や顧客のニーズに合わせて、構成や内容が最善・最適になるように改善を継続していくことが必要です。
  • チャットボットの導入


    カスタマーサポートにおいて人を介さずに顧客の自己解決率を向上させる有力な手段として、チャットボットの導入が広く認識されています。チャットボットとは、顧客からの質問に自然な会話で自動回答できるコンピュータープログラムのことで、Webブラウザやアプリ、SNSなどに組み込んで使われます。
    ボットが顧客からの質問に自動でFAQ記事を提示する例(ZendeskのAIソリューション
    チャットボットは、顧客がFAQで効率よく記事を検索できない場合、FAQの充実だけでは自己解決率が上がらないため、FAQをさらに使いやすくする手法の一つとしても効果的です。
    CXトレンドレポート2023年版によると「企業とのやり取りは、より自然な対話型のコミュニケーションであってほしい」と回答した消費者の割合が65%に上り、企業がチャットボットなどの対話型のチャネルを用意することを期待しています。
    チャットボットには大きく分けてシナリオ型、FAQ型、AI型の3つのタイプがあり、それぞれが異なる状況と問題解決のニーズに対応します。
    シナリオ型は、あらかじめ定められたシナリオに基づいて選択肢が顧客に案内され、それを選択することで回答が提示されます。
    FAQ型は、顧客からの特定のキーワードを含む問い合わせに対して、キーワードに基づいて準備された回答を提示します。
    AI型は、AIが搭載されていないシナリオ型やFAQ型から発展したものです。AI(人工知能)を活用し、顧客の入力に応じて解決につながるFAQ記事を提案やシナリオの提示も含めて適切な対話を進めていくことで、より柔軟に顧客の求める回答を導き出して提示します。
    チャットボットの3つのタイプを目的に応じて活用することで、ユーザー体験を向上させ、自己解決率を最大化することが可能となります。

    チャットボットの導入の方法

    (1)課題と目標の設定

    まずは、チャットボットを導入してどういう課題を解決したいのか目的を明確にしましょう。例えば、問い合わせ数を削減するために自己解決を促進したい、あるいはチャットボットをWebサイトの案内役として活用してリードを増やしたいなど、さまざまな目的が考えられます。
    (2)適切なチャットボットのタイプの選択

    シナリオ型、FAQ型、AI型のチャットボットのなかから目的やニーズに最も適したタイプを選択します。ある企業ではシナリオ型が最適であるかもしれませんが、別の企業ではAI型が最適であるかもしれません。選択は企業の目的とニーズによって左右されます。
    例えば、顧客の自己解決を促進したい場合は、AIを搭載したFAQ型のチャットボットがおすすめです。Webサイトからのリードを増やしたい場合は、AIを搭載していないシナリオ型を選択するのもよいでしょう。
    (3)チャットボットの設計と開発

    選択したチャットボットのタイプに基づいて、その設計と開発を進めます。シナリオ型のチャットボットでは、過去の問い合わせ内容や顧客の意見・要望などを考慮して、顧客の問い合わせに対して質問と応答の具体的なシナリオを設計します。
    Zendeskのチャットボットの設定画面: ドラッグ&ドロップで回答フローの作成が可能
    FAQ型のチャットボットでも同様に、よくある質問に含まれるキーワードに対して適切な答えを提示できるように準備します。AI型のチャットボットを利用する場合でも、自然言語処理技術などを利用してAIはユーザーが入力した内容に応じた適切な回答を提供する仕組みのため、FAQを充実させる必要があります。
    シナリオ型もFAQ型もAIを活用することで、より適切な回答を顧客に提示できるようになるでしょう。
    (4)テストと評価

    チャットボットが開発されたら、テストと評価のフェーズに移ります。チャットボットが正確に機能しているか、そして目標を達成できるかを確認するために、実際の顧客の問い合わせやシミュレーションによるテストを行います。
    (5)導入とフィードバックデータの収集

    問題がなければ、チャットボットを公式に導入します。導入後は、チャットボットのパフォーマンスを定期的に評価し、顧客のフィードバックデータを収集し続けます。
    (6)継続的な改善とアップデート

    収集したフィードバックデータに基づいて、必要に応じてチャットボットの改善やアップデートを継続して行います。顧客のニーズや行動は変化するものであり、その変化に合わせてチャットボットも進化させることが重要です。AI型チャットボットでは、改善とアップデートには新たな学習データの提供や学習アルゴリズムの微調整が必要になる場合があります。

顧客が自己解決できる仕組みづくりを推進している企業の事例

Zendeskは世界10万社以上が利用するカスタマーサービスプラットフォームです。豊富な機能を装備し、顧客の自己解決率の向上を強力に支援します。顧客の自己解決率を重要なKPIのひとつに設定している企業が、Zendeskを導入して活用している事例について紹介します。

株式会社TableCheck「AI搭載チャットボットで顧客の自己解決率を高め、質の高いサポートを提供」

株式会社TableCheckは飲食店の予約・顧客管理システムの開発・提供を行う企業です。世界中のレストランとカスタマーをシームレスにつなぐプラットフォームの創造を目指して、テクノロジーやデータ活用により飲食店業務の自動化・最適化を図っています。

同社のサポートチームには、予約のプロセスで発生する消費者からの問い合わせと、主にシステムの使い方に関連する飲食店からの問い合わせが寄せられます。Zendesk Supportの導入前は、メール経由の問い合わせをメーラーで管理していたため、抜け漏れや二重返信が日常的に発生。サポート担当者が情報連携や情報共有に十分な時間を割けず、対応の属人化が課題となっていました。

そこでZendesk Supportを導入し、チケットへの対応の効率化を実現します。チケット回答時にヘルプセンターの記事を検索できたり、回答をテンプレート化できたりと、作業効率の大幅な改善効果が期待されていましたが、実際に導入してみると15~30分かかっていた対応が5分ほどに短縮され、1人当たりの対応件数が飛躍的に増加しました。

また、AIを搭載したZendeskのStandardボットをメールの返信に活用して、顧客の自己解決率を高めています。同社の回答メールには、Standardボットが問題解決に役立つと判断したヘルプセンターの記事が含まれます。

そして、Standardボットがどの記事を提案しているのか、顧客が提案された記事で解決に至らなかった理由はどこにあるのかを定期的に振り返り、改善しながら自己解決率を向上させ、質の高いサポートの提供につなげています。

自己解決率の改善で業務効率化と顧客体験の向上を実現

顧客の自己解決率を上げられれば、顧客体験や顧客満足度を向上できるほか、カスタマーサポート業務の効率化や業務負担の軽減ができます。自己解決率の向上は、ナレッジの蓄積を通じてFAQを充実させ、チャットボットを導入することで可能です。

また、顧客自身も自己解決したいと考えていることから、最優先課題として取り組む必要があります。Zendeskを導入することで、自己解決率を効果的に向上できます。

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