目の前の相手の話を聞くことよりも、セールストークにばかり気を取られることは、多くの営業担当者が陥る間違いです。営業担当者といえば早口でまくしたてるイメージが定着していますが、これは必ずしもよいことではありません。
顧客との会話でついつい自分ばかり話してしまう。そのような心当たりがある方は、そろそろ口を開くのをほどほどにして、先方の発言に耳を傾ける時かもしれません。
見込み顧客のことを理解したければ、「はい」または「いいえ」では答えられない質問の仕方を心がけるとよいでしょう。この形式で会話を進めると、次のような情報が得られることもあります。
予算
時間的な制約
苦労している事柄
目標
すぐにセールストークを始めるのではなく、中身のある会話を心がけると、先方からより信頼してもらえるようになります。
まずは次の9つの質問から始めてみましょう。質問を重ねるうちに、心を割って話してもらえるようになり、信頼関係をより深めることにつながるはずです。
1.御社のことをもう少し詳しく教えていただけませんか?
非常に広範囲にわたる質問なので、様々な情報が得られるはずです。ここで得た情報は、その後に質問をする際にも役立ちます。
先方が回答するために必要とする時間を十分にとるようにして、より詳しく説明してもらいたい点がない限り、途中で口を挟むのは差し控えましょう。
話を聞きながら、自社に関連する事柄があったら、それを心に留めておくようにします。
その後に、共有してもらった情報に基づき、その見込み顧客に最大価値を提供できる自社の製品やサービスはどれかを検討します。
考えられるその後の質問:
御社の主な競合先はどこですか?どのような点で差別化を図っておられますか?
2. 平均的な1日の業務の流れを教えてください
この質問をすると、見込み顧客自身のことを話してもらえるため、関係性を築きやすくなります。
業務やプロセスについて話を聞くうちに、どんなことに苦労しているか分かってくることもあります。話の中で耳にした課題も覚えておくようにしましょう。後でその課題の解決策として、製品やサービスを提案できるかもしれません。
考えられるその後の質問:
時間がかかっているのは業務のどの部分ですか?
3. 来月/次の四半期/来年のうちに、どのようなことを達成したいと思われていますか?
この質問をすることで、自社の製品やサービスが役立つ側面があるか、あるいは先方の目標達成に貢献できるかを判断できます。
自社に直接関係しない内容であっても、先方が語る目標に耳を傾けるようにしましょう。
自社の製品やサービスが貢献できる目標があれば、そのトピックについて詳しく聞かせてもらうようにしましょう。
考えられるその後の質問:
どのような方法でその目標を達成しようと考えておられるのですか?今のところどのような状況で進んでいますか?
4. 目標を達成するために解決しなければならない課題は、どのようなことがありますか?
この質問を通じて顧客の立場から考えられれば、自社の製品やサービスにどの程度関心を持ってもらえるかが判断しやすくなります。
すぐに解決策を提示することは避けて、課題について詳しく説明してもらい、解決が必要な問題について十分に理解できるようにする必要があります。
先方がどのような点で苦労しているかを理解できれば、提案する製品やサービスについてどんな反論が出てくるかを予測しやすくなるはずです。
考えられるその後の質問:
最も苦労しておられるのはどの課題ですか?何が原因ですか?いつごろからその問題が起こっているのですか?その問題は悪化しつつあるのですか?
5. その課題への対応を試みたことはありますか?
営業担当者として、競合状況を見極めておくことも必要です。このような質問をぶつけることで、現在どこのベンダーを使っているのか、またどのような解決策を検討しているのかを、それとなく聞き出せるはずです。さらに、次の点が分かることもあります。
過去または近々に講じた解決策が失敗してしまった理由
会話の後半で、自社の製品やサービスが解決策の代替案になりえることを説明
まだ課題の対応に着手していない場合は、なぜこのタイミングでその課題に取り組むことを検討しているのかを尋ねましょう。
考えられるその後の質問:
その解決策がうまくいかなかった理由は何だとお考えですか?なぜこのタイミングで、この課題解決に力を入れることにされたのですか?
6. これまでにも予算の制約が問題になったことはありますか?
見込み顧客が主に苦労している点を理解できたら、解決策のためにどれくらいの支出を考えているのかも確認しましょう。
単刀直入に予算を聞くのではなく、慎重な方法で質問することをお勧めします。予算の制約が課題になっていると回答があった場合は、その企業の財務状況についてもう少し詳しく聞き取って話しをするようにしましょう。
考えられるその後の質問:
今後、予算額が変更される可能性はあると思われますか?
7. 新たな製品やサービスを導入する際に、御社ではどのような評価プロセスを実施されていますか?
このような質問をすると、お互いにぎこちなくならずに、提案する製品やサービスを購入してもらうためには、どのようなプロセスを経る必要があるのかを教えてもらうことができます。
中小企業では特にプロセスを設けていない場合もあるかもしれませんが、規模が大きい企業ほど、新規ツールの導入に承認プロセスを設けている傾向があります。
その後に製品やサービスに対して強い関心が得られた場合に、どのような提案をすべきかを判断するうえでも、この情報が役立つはずです。
考えられるその後の質問:
無料のトライアル期間があれば、新しい製品やサービスを試してもいいと思っておられますか?
8. 他に弊社からの説明を必要とされる方はいらっしゃいますか?
意思決定に関わる人が他にもいることがわかった場合は、失礼のないようにしながら、仲介役をお願いするようにしましょう。
先方の企業が製品やサービスに関心を持った場合は、下記の関係者が参加するミーティングの設定を検討しましょう。
営業担当者(自分自身)
見込み顧客
購入の意思決定に関わる全ての利害関係者
考えられるその後の質問:
こちらからその関係者の方にご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか?
9. 御社は現在もXXにお困りですか?
長期間やりとりが途絶えた場合は、状況を把握するために営業担当者から連絡するようにしましょう。前回の話に出た課題をひとつ選んで、それについてどんな状況かを質問します。
例えば、次のようなメールを送ってみましょう。「以前、早急に新しいサービスプロバイダーを見つけなければならないとおっしゃっていましたが、今もこの件はお急ぎですか?」
この質問をきっかけにして、見込み顧客とのやりとりを再開できるかもしれません。やりとりの再開につながらなくても、少なくとも、製品に関心がなくなってしまったことくらいは知らせてくれるはずです。
どちらの場合でも、再度働きかけることで、営業プロセスを先に進められます。
質問の回答に基づいた営業プレゼンを作成
営業活動では、すぐにプレゼンを始めるのではなく、一言では答えられないこのような自由形式の質問で先方と会話の時間を持つことを検討してください。見込み顧客がどのような目標を持っていて、何が障害になっているのか、またどんな条件を満たす必要があるのかについて、理解を深められるはずです。
このような情報を把握しておけば、実際に製品を紹介する段階に来た時に、先方の現状にマッチしたプレゼンをおこなうための周到な準備が整っているはずです。