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COVID-19が小売業界に与えた影響とは?
Instagramなどのメッセージングアプリで顧客にサポートを提供すれば、他の小売業者に対して差別化を図ることができます。
更新日: 2023年9月9日
小売業界を揺るがしたパンデミックの収束後、今年の全米小売業協会コンバージイベントでは、変化への対応に焦点が当てられました。世界最大の小売業協会は、このニューノーマル時代に顧客の要求にどう対応するかについて、業界の専門家を集め、彼らの話や意見を紹介しました。
eコマースの役割を有効利用したり、買い物客と人間的につながることができる新しい方法を開拓したり、小売業のリーダーは優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することに注力しています。
顧客とつながるフリクションレスで便利な方法に関するあらゆる話題をもってしても、1つの大きな要素が欠けていました。それはFacebook Messenger、Instagram、WhatsAppのようなデジタルメッセージングチャネルです。
ロックダウンにより突然店頭での買い物ができなくなった結果、この1年で消費者の買い物の仕方は一変しました。 eコマースや店頭での非接触型受け取りなどのデジタルチャネルの利用が拡大し、 これらの変化は瞬く間に広がりました。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、たった90日の間にeコマースは10年分以上の成長を記録しました。 またフォレスターの調査では、この1年の米国小売業界における売上の50%以上はデジタルチャネルによるものであったとのデータが得られています。
わずか90日の間にeコマースは10年分以上の飛躍を遂げたのです。
国連貿易開発会議が発表した「COVID-19 and Ecommerce: A Global Review」によると、新たな市場の人々がオンラインショッピングへと大きく移行したことによりeコマースも世界的に急増しました。南米のオンラインマーケットプレイス、Mercado Libreは、2020年の第2四半期に、前年比2倍の商品数を毎日売り上げました。eコマースのこの急速な成長は回復期にも続くであろうとレポートは述べています。
「eコマースの可能性を活かす国々は、経済がデジタル化する中、グローバル市場で自国の商品とサービスに利益をもたらしやすい立場にいますが、一方出遅れてしまった国々は、さらに遅れをとる可能性があります。」と、国連貿易開発会議のテクノロジー・ロジスティクス部局長であるShamika N. Sirimanneは、レポートについて発言しています。
パンデミックの苦境の中、先見の明のあるショップはオペレーション形態をいち早く見直し、店頭販売オンリーからマルチチャンネル販売への転換を図りました。そして多くのケースでは、そうした転換に成功したショップはパンデミックを乗り切ることができました。
しかし、消費者の購買スタイルがほぼ全面的にオンラインに移行する中、多くの小売業者は未だにスマートフォンからアクセス可能なカスタマーサービスチャネルの導入に出遅れています。 従来から小売業者は対面販売のように買い物客の感覚に訴える顧客体験をデジタルプラットフォームで再現するのが得意ではなく、そのためeコマースの展開にも消極的になりがちです。
香水の華やかな香りをどのように消費者に伝えられるか?あるいはフリースのふんわりした優しい手触りを実際に触れることなくどうやって伝えられるか?消費者が期待する良質な体験をオンラインで提供する方法を見つけるのは容易ではありません。
Zendeskの調査によると、消費者の約3分の1のが2020年に初めて販売業者とメッセージングでやり取りしたと回答しており、そしてそのうち74%は今後もこうしたメッセージングを利用すると述べています。
メッセージングで小売業者のカスタマーサービスはどのように変わるか
モバイルおよびデジタル環境においては、消費者が期待するものとこれまでショップが提供してきたものの間には大きなギャップがあります。成功を収めているショップはいずれもオンラインで単なる商品の販売以上のものを提供しており、また顧客が簡単かつ便利にデジタルデバイスで連絡をとることのできる手段を提供しています。
Zendeskのカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポートによると、「消費者の64%が2020年に初めてメッセージングやボットなどの新しい手段でカスタマーサービスにコンタクトをとった」とのことです。
オンラインで買い物をする人が増えるほど、変品や交換、サイズに関する質問や配達状況などの確認などでカスタマーサービスに問い合わせをする機会が増えます。 メッセージングは顧客とカスタマーサポートスタッフの両方にとって便利なチャネルであり、オンラインショッピングをする消費者は自分の使い慣れたデジタルチャネルでサポートを受けたいと思うのが普通でしょう。
Instagramなどのメッセージングチャネルがアプリを離れずに買い物を続ける手段を提供する中、消費者とっては今いるカンバセーション(会話)スレッド内でそのままサービスを受けられるのが当たり前のことになりつつあります。
消費者がサービスにメッセージングを求める理由
メッセージングは、迅速かつパーソナライズされた、便利で安全なサポートを提供します。 消費者は友人や家族とやり取りするのと同じメッセージングチャネルで企業とやり取りすることを好みます。顧客にとってメッセージングチャネルによるやり取りは、便利なだけでなく問題をより早く解決できることが多いです。
一方、小売業者にとっては、Eメールや他の従来型のチャネルでは実現しにくいリッチでインタラクティブかつ顧客のニーズに合わせた会話をリアルタイムで提供できます。 メッセージングは基本的に非同期サービスであるため顧客は必ずしも即座のレスポンスを期待しません。これはサポートスタッフにとって顧客にすぐに返信しなければならないというプレッシャーを和らげてくれるでしょう。
こうした全ての特性はMessenger、Instagram、WhatsAppなどのチャネルに投資する企業に利益をもたらします。Zendeskの調査によると、メッセージングを利用した顧客サポートはあらゆるチャネルの中で最も高いCSAT(顧客満足度)を実現しています。
メッセージングは今や単なるトレンドではなく、 消費者がサービスに期待するものを大きく変革させる潮流
2020年にソーシャルメッセージングアプリの人気は他のあらゆるチャネルを超えて急激に拡大しました。特に若い世代の消費者の間でこの傾向は顕著であり、今後も成長は持続するでしょう。 嬉しいことに、メッセージングチャネルは設定も導入もごく簡単で、しかもサポートスタッフのエクスペリエンスを向上させます。
複数のチケットに併行して対応することができ、またチャット画面を閉じても会話履歴が維持されることから、サポートスタッフの50%はチャットよりもメッセージングで顧客とやり取りすることを好みます。
店頭での対面販売でもパジャマ姿のままでのスマートフォン上での買い物でも、優れたカスタマーエクスペリエンスの提供とは「いまお客様のいる場所」にサービスを提供することを意味します。 消費者の期待に応えるため、小売業者は対面販売でもデジタルでも最高のサービスを提供する必要があります。 他社が遅れを取る中、いち早く時代のニーズを捉えることのできる小売業者のみがCXの成功の波に乗ることができるでしょう。