顧客の労力を軽減しようという意識が高まるにつれ、製品やプロセスの設計方法、カスタマーサービスの提供方法も見直されるようになりました。皆さんもきっと、大切な測定指標であるCES(顧客努力目標)と共に、顧客の労力軽減を個人の業務目標の1つに掲げていることでしょう。もしそうでないなら、四半期ごとの目標などに加えることをお勧めします。
今こそ、他のカスタマーサービスの関連指標と併せて、顧客の労力軽減にも注力すべき時です。そうすれば、顧客のリピート率が高まり、長期的なロイヤルティが確立され、新規顧客の獲得につながるでしょう。
顧客の労力軽減には、さまざまな方法が考えられます。もちろん、わかりやすくて使いやすいエクスペリエンスを設計するのも1つですが、労力軽減やCES改善においては、顧客とのやり取りを改善して関係を深めることが、もっと大きな部分を占めています。
まずは問題点の特定から
まず、どこで問題が発生しているのかを把握することから始めましょう。そのために、カスタマーエクスペリエンスの現状を調査し、顧客のフィードバックを収集し、サポートデータを掘り起こして、集中的に取り組むべき箇所を特定します。
カスタマーエクスペリエンスを調査する
カスタマーエクスペリエンスの実態を完全に理解するには、顧客が企業と接点を持つときの流れを追跡する必要があります。最初にカスタマージャーニーのマップを作成して、CESに直接影響する部分を割り出し、基本的な状況を把握します。また、ユーザビリティテストを行うと、顧客ファーストで製品を設計するためのヒントが得られます。
フィードバックを集める
カスタマーエクスペリエンスの調査が済んだら、さらに積極的に分析を進めましょう。顧客満足度(CSAT)調査、前述の顧客努力目標(CES)やNet Promoter Score℠(ネットプロモータースコア、NPS)などに関するアンケートを実施して、顧客のフィードバックを直に聞き出します。
サポートデータを掘り起こす
これまでに受け取ったサポートリクエストも活用すべきです。サポートリクエストを振り返れば、特に労力がかかっている箇所を効率的に特定できるでしょう。
まず、チケットフォームの問い合わせ内容を踏まえて、トピック別(アカウント作成、ショッピングカートなど)にサポートリクエストを分類します。次に、トピックごとにチケット発行件数、平均解決時間、CSATの平均スコアなどを掘り下げて調査します。こうすることで、主にどの部分がCESに影響しているのかを分析できます。
顧客フィードバックを収集し、改善点を特定したら、その情報を社内の各チームと共有して、対応に取り掛かります。ほとんどのフィードバックは製品チーム、設計チーム、開発チームに伝えられ、製品の改良に活用されますが、顧客の労力を軽減することに関しては、カスタマーサービスチームに一任されます。
簡単な問題の自己解決を促進する
顧客にとって一番手っ取り早い方法はセルフサービスでの問題解決です。サポート担当者に問い合わせたり、サポートリクエストへの返信を待ったりする必要がないため、セルフサービスを好む顧客は少なくありません。顧客にとっては手間がかからず、満足度も高くなります。
セルフサービスのナレッジベースは、簡単な問題に対処するときに特に有効です。ちょっとした問題を顧客が自己解決できるようになれば、サポート担当者は複雑性の高い問題への対応に専念でき、最終的には顧客ロイヤリティの向上やCESの改善にもつながります。
気軽に問い合わせられる仕組みを整える
あらゆるチャネルを通じて顧客とやり取りできるようになった今、顧客が手間なく簡単にサポートを依頼できるようにすべきです。そこで、顧客に適したコミュニケーションチャネルを用意し、満足度向上を図ることが重要となります。
たとえば、企業のサイトにアクセスしているユーザーにとっては、サポートチームにその場で話しかけられるチャット機能が便利でしょう。チャットは、利便性とリアルタイム性の点で人気が高く、Zendeskによる最新の調査では顧客満足度第1位に躍り出ました。
もし電話サポートを提供しているなら、効率的なIVR(自動音声応答)システムを構築することをお勧めします。
初回の問い合わせでの解決を目指す
初回の問い合わせで問題が解決すれば、顧客の手間が減ることは間違いありません。だからこそ、顧客の労力をどれだけ軽減できているかを示す優れた測定指標「初回解決率(FCR)」を注意深く追跡する必要があります。
ただし、FCRが高い場合、セルフサービスで顧客が簡単に自己解決できるはずの問題に、サポート担当者が時間を割いている可能性が考えられます。また、チケットが再オープンされた件数も併せてチェックすることが重要です。最初に提示した方法では解決に至らずにチケットが再オープンされたとしたら、顧客の労力を効果的に軽減できていないということになります。
コミュニケーションを複雑にしない
解決時間と労力に関する指標を追跡することで、カスタマーサービスのエクスペリエンスをきちんと把握できます。すばやく返事が届き、初回の問い合わせで問題が解決すれば、顧客の満足度は向上します。しかし、それは簡単なことではありません。カスタマーサービスへの問い合わせのほとんどが複雑な問題に関するもので、解決までの手間がかかり、顧客とサポート担当者の間で何往復ものやり取りが必要になります。
こうしたやり取りが長引いたり、顧客やサポート担当者の手間が増えたりしないように、解決までの時間、チケットの更新状況、依頼者の待機時間などに気を配りましょう。
今後の問題発生を未然に防ぐ
顧客の問い合わせに対応したら、他に何かサポートできることはないか確認しておきましょう。顧客が製品をどう利用しているかによっては、先々で発生しそうな問題を予測できる場合もあります。サポートリクエストでも、チャットでも、電話でも、そうした事前対応型のサポートを同時に提供できれば、顧客の労力をさらに軽減できます。
そこで有効なのが、将来の問題をどれだけ回避できたかを示す指標です。この指標では、同じ製品やトピックで複数回サポートをリクエストした顧客がどれくらいいたかを見ます。それらのサポートリクエストの内容を詳しく確認すれば、別の顧客に対して先回りで対応し、問題を未然に防ぐことができます。この指標を継続的に追跡することで、関連する問題まで効果的に解決できているかどうかを判断できます。
サポート担当者の労力を減らせば顧客の労力も減らせる
サポート担当者の負担を減らすことも同じく重要です。担当者が楽にサポートを提供できたなら、顧客にとっても快適でしょう。十分なトレーニングを積んだ担当者は、高品質のサポートを提供できます。また、優れたツールを活用することも、顧客の労力軽減に役立ちます。
たとえば、Zendeskのアプリ「Pathfinder」では、顧客が問い合わせの前にアクセスしていたヘルプ記事やコミュニティーフォーラムを把握できるため、サポート担当者は状況を理解したうえで、迅速に問題を解決できます。顧客が既に読んだ記事を参照するように勧めてイライラさせることもありません。
最新のテクノロジーを取り入れる
ここまでは、データを収集して指標を追跡することで、顧客のエクスペリエンスと満足度の向上を図る方法を紹介してきましたが、さらなる労力軽減を目指すなら、満足度予測やAnswer Botなどの最新テクノロジーを活用することがカギになります。
満足度予測では、顧客とのやり取りが発生する多数のタッチポイントをモニタリングし、待機時間や返答回数などを追跡して、CSATスコアが低下する可能性や、顧客が不満を抱いている可能性を予測します。そうすることで、サポート担当者は悪影響を生まないように配慮しながら、適切に対応できます。
Answer Botは人工知能を活用したツールで、ヘルプセンターのナレッジベースから顧客の質問に関連するコンテンツを探し出し、自動的に回答します。このツールによって、解決時間が短縮され、セルフサービスが効率化されます。そうすれば、サポート担当者は、トラブルシューティングや複雑な問題に対処したり、顧客に共感を示したりと、人間にしか対応できないタスクに専念して、顧客との関係強化に努めることができます。
この記事は、著作家であり写真家でもあるAnton de Young氏が執筆したものです。長年Zendeskに勤務し、カスタマーエデュケーションやカスタマートレーニングのチーム立ち上げに携わったほか、マーケティングディレクターとしてZendeskのカスタマーサービスに関するリーダー育成プログラムやイベントを次々と企画しました。こうしたイベントがZendeskカンファレンス「Relate」の源流となっています。同氏は現在、ポルトガルのリスボンを拠点に、フリーランサーとして世界を飛び回っています。