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応対品質の評価シートとは?作成方法と実例を解説
応対品質の評価シートは、カスタマーサポートの品質管理(QA)を支える重要なツールで、高品質で一貫性のある応対を実現するために重要な役割を担います。本記事では、応対品質の評価シートの必要性や作成方法、実例を解説します。
著者: Hannah Wren, スタッフ執筆
更新日: 2024年12月20日
評価シートとは?
評価シートとは、品質管理(QA)の評価を効率化し、具体的な指標で測定できる評価システムです。製品開発からカスタマーサービスまで、幅広い業種で活用されており、特に品質管理(QA)プロセスの標準化に役立ちます。応対品質の評価に評価シートを導入すれば、従業員のパフォーマンスを客観的に評価できるようになり、品質向上に向けた改善点が明確になります。さらに、評価基準が標準化されることで、評価者間での一貫性が保たれ、フィードバックがより効果的に伝わります。
企業が市場での競争力を維持し、顧客との長期的な関係を築くためには、優れたCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)の提供が不可欠です。一貫したCXを実現するには、サポート担当者と顧客とのやり取りを包括的にレビューする必要があります。Customer Service Quality Benchmark Report 2023(顧客サービス品質ベンチマークレポート2023年版)によれば、76%の組織が、応対品質のレビューは顧客満足度向上に直接的な効果があると回答しています。
応対の品質管理に評価シートを導入することで、レビュープロセスを体系的な評価システムとして確立できます。本記事では、効果的な評価シートの種類と実例を解説し、カスタマーサービスの品質向上に役立つ具体的な方法をご紹介します。
目次
応対品質の評価シートが必要な理由
応対品質の評価シートは、カスタマーサービスの効率を最適化し、チームが一貫性のある優れたCXを提供するうえで役立つため、企業にとって重要です。
ビジネスには、カスタマーサービスの品質を測定できる信頼できる方法が必要です。しかし、カスタマーサービスの重要業績評価指標(KPI)をモニタリングするだけでは十分でない場合があります。Customer Service Quality Benchmark Report 2023によると、顧客満足度スコア(CSAT)の平均回答率は、チャットサポートが19%、メールと電話のサポートでは5%という結果が出ています。この数字からも分かるように、チームの応対品質を理解するには顧客からのフィードバックだけでは十分ではありません。
応対品質の評価シートは、サポート担当者のパフォーマンスを測定するためにビジネスが使用する内部の評価フォームです。評価シートを導入することで、以下のような数々のメリットを得られます。
- 改善の余地のある領域の特定: ビジネスは応対品質の評価シートを活用し、チームの傾向を表面化して、非効率なエリアの根本的な原因を特定できます。
- CSの向上: パーソナライズされたやり取りを提供するために品質管理(QA)を行い、応対品質を測定することでカスタマーサービスの問題点を特定できます。
- サポート担当者のパフォーマンス向上: チームのパフォーマンスを能動的に測定することで、マネージャーはトレーニングが必要な担当者を特定し、必要であればコーチングの機会を設けることができます。
効果的な応対品質の評価シートは、サポートチームのパフォーマンスが好ましくない時に改善策を導入するための足掛かりとなります。さらに、顧客にとって何が大切なのか考える機会をチームに与えてくれます。
応対品質の評価シートのタイプ
カスタマーサービスの品質管理(QA)をすることは、あらゆるビジネスにメリットをもたらします。メール、チャット、電話、それぞれに使える応対品質の評価シートのベストプラクティスをいくつか以下にご紹介します。
メールサポート向け応対品質の評価シート
メールでの対応は長期に及ぶ継続的なサポートが必要となることがあるため、メール用の応対品質の評価シートでは、綿密性や文法などのカスタマーサービスの質に十分に焦点を当てる必要があります。また、マネージャーは、これらの評価シートを顧客のニーズを予測するためにも活用できるため、質問が発生しそうな問題に先回りの対応をすることで、全体的なCXを向上することができます。
チャット向け応対品質の評価シート
チャットサポートは、速いペースでやり取りが進み、メールや電話での対応と比べてカジュアルな傾向があります。サポート担当者は、一度に3つから4つのチャット対応をすることもよくあるため、担当者にはマルチタスクの能力が求められます。
そのため、チャットの応対品質の評価シートは、長い待機時間や不自然な間を解消するために、解決時間などの指標を評価できる必要があります。さらに、コンタクトセンターの担当者が顧客のトーンに合わせているか、またはブランドが定めたトーンや声を取り入れているかなどをスコアの基準に含むことも大切です。
音声向け応対品質の評価シート
音声向け応対品質の評価シートは、ペースや声量、アクティブリスニング、さらにはチームが重要視するその他のカスタマーサービススキルなどのコールセンタースキルを評価します。電話での対応は、チャットやメールと比べて、通常より感情面や精神面での負担が大きいため、そういった困難な環境のなかコールセンターの担当者には特別な注意を払う必要があります。
応対品質の評価シートの作成方法
応対品質の評価シートを構築するために特別な資格は必要ありません。いくつかの簡単なステップを踏むだけで作成することができます。顧客層やニーズによって企業ごとに異なる品質管理基準があるかもしれませんが、あらゆる組織が以下の項目に従うことができます。
- テンプレートの採用を検討する: 応対品質の評価シートのテンプレートを採用することで、下準備がスムーズに整います。
- 目標を定義する: まずは、カスタマーサービスの目標を定義してから応対品質の評価シートのプロセスを開始しましょう。ここで、現在と将来において、どのようなカスタマーサポートを構築したいか考えることが重要です。
- 評価カテゴリを設定する: 次に、定めた目標を使って、やり取りをレビューする評価カテゴリを選択します。このカテゴリは解決の効率性、カスタマーサービスの声のトーン、共感性などの企業それぞれが重視する項目に従った基準となります。
- 評価スケールを選択する: どのように各カテゴリをスコア付けしたいか決めます。1〜3点、1〜10点などの間に定めることができます。さらに、特定のカテゴリに重みを付けることも可能です。例えば、共感力を最重視したい場合は、その特定のカテゴリの採点配分を増やして全体の評価スコアの中で重みを付けることができます。
- 定期的に改善する: 最後のステップは、経過を監視してシステム自体を評価することです。サポート担当者のパフォーマンスと主要指標を追跡して、応対品質の評価シートが機能しているか、修正が必要な箇所があるのか判断します。
このガイドラインに沿うことで、再利用できる評価方法をシステム化することができます。
応対品質の評価シートの例
ここまでで、応対品質の評価シートのいくつかのタイプと作成方法をご紹介しました。ここからは、評価シートの例を詳細にご紹介します。SaaS、フィンテック、eコマース向けの評価シートの例をご確認ください。
SaaSのチャットとメール用応対品質の評価シート
初めにご紹介するのは、Shopifyに特化したサービスを提供するSaaS企業のReploの評価シートです。ReploはZendeskを活用しチャットとメールのサポートを提供しているため、同社の応対品質の評価シートは、この2つのチャネルにおける担当者のパフォーマンスを評価するためにカスタマイズされています。
ReploのQAは、顧客への対応で重視する5つの主要な項目を反映したものです。テーマ別のカテゴリにはそれぞれ重きが定められ、チームの総合的パフォーマンススコアに関わる各項目を微調整できるようになっています。
各テーマ名の下に、カテゴリを包括的に説明する一連の要素が記載してあります。「必須」要素を列挙する代わりに、優れたカスタマーサービスの一般的な構成要素が示されています。
- 声のトーン: フレンドリーな声のトーン、正式な製品機能名の使用、技術的コンセプトの効果的な説明
- 正確性: クリティカルシンキングの適用、正確な回答の提供、製品知識の提供、挨拶時の顧客名の使用
- 共感力と有効性: 顧客のニーズへの理解、質問の明確性、否定的な表現の回避
- 文章構成: 顧客一人ひとりに合わせた対応、効果的な文面・書式の使用、適切な場面での画像や動画の挿入
- プロセスとベストプラクティス: 適切なタグの選択、適切なグループへの割り当て、内部ポリシーの準拠、定められた問題解決テクニックの採用
各テーマの採点は、1〜3点となり、 1が「改善する必要がある」、3が「優秀である」です。そして、各やり取りのレビューにはフィードバック用の欄があり、スコアの説明、改善された点への労い、改善すべき点へのアドバイスなどを記すことができます。
フィンテックのメール用評価シート
次は、フィンテック業界で、メールのみのサポートを提供するチームの評価シートです。金融企業向けのこの応対品質の評価シートには、法令とプロセスの遵守に関する特定の要素が含まれています。
特に、適切な質問をすることと顧客に重要な情報を提供することに重きを置いています。メール応答に時間差が生まれることで、顧客は何日も解決の糸口がない中途半端な状況に陥ることがあり、これが質の低いカスタマーサービスに直結します。この評価シートでは、チームが尋ねる質問の意図を説明することを強調し、サポートプロセスの迅速化を図れるようにしています。
この評価シートでは、各カテゴリに、チェックマークの有無で判断できる二値評価(1か0)を採用しています。総スコアの平均を、カテゴリ別と全カテゴリに分けて確認することができます。
eコマースのチャット用評価シート
最後にご紹介する例は、内部チームとカスタマーサービス業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用してカスタマーサポートを提供するeコマース企業の応対品質の評価シートです。
この企業は、莫大な量のやり取りを素早く評価するために簡素化した評価シートを使用しています。この戦略を採用することで、大規模な応対の品質評価が可能となり、サポート担当者は毎週フィードバックを受け取り業務の改善に努めることができます。
チケットは主要な4つのカテゴリにもとづき評価されます。それは、コミュニケーション、対応力、プロセス、正確性または明確性です。各カテゴリは、さらに特定の属性に分けられ、レビュー担当者は「良い」「悪い」の二値評価を付けることができます。「良い」は1ポイントとして採点され、合計12ポイント獲得することができます。スコアはパーセントで表示され、サポート担当者は毎月70%以上を目標としています。
よくある質問
Zendesk QAでカスタマーサービスのQAプロセスを強化
応対品質の評価シートを導入することで、あらゆる対応において優れたカスタマーサービスを提供することができます。とはいえ、どんなに優れた応対品質の評価シートでも貴重なインサイトを逃す可能性があります。品質管理(QA)を包括的に行うためには、AIを活用したカスタマーサービスQAを導入する必要があります。
ZendeskのAIによる品質管理(QA)機能を活用すると、評価プロセスを強化することができます。Zendeskなら、サポート担当者のやり取りのすべてをレビューすることが可能となり、顧客の印象や解約のリスクを自動で特定したり、包括的なパフォーマンスの傾向を閲覧したりすることができます。
Zendesk QAでビジネスを強化する方法について、詳しくご確認ください。