カスタマーエクスペリエンス(顧客経験価値)やカスタマーエンゲージメントといった顧客満足度を引き上げる施策が重視されるなか、顧客対応の最前線となるコールセンター/コンタクトセンターの重要度はますます増しています。今回は、コールセンターが抱える課題を見つめ、これからの在り方を考えていきます。
コールセンターの課題は人材採用
リックテレコム社の「コールセンター白書2017」によると、コールセンター運営上の課題は、「オペレーターの採用・育成」が第1位で、次いで「スーパーバイザーの採用・育成」になり、人材関連がツートップを占める形になりました。少子高齢化が進み、日本のあらゆる産業で人手不足感が募るなか、コールセンター業界も例外ではなく、人材面の課題を抱えている企業が多いことがうかがえます。
コールセンター業界の人手不足には、クレーム対応によるストレスのほか、従業員のほとんどを非正規雇用が占める雇用形態にも原因があるとされています。契約切れによりスタッフが入れ替わる、非正規採用で賃金を低く抑えているため採用してもなかなか定着しない、などの課題が見受けられます。定着率が低いとスキルが育たず、業務内容はマニュアル化された単純なものが増えてしまうでしょう。これでは、オペレーターのモチベーションも上がらず、結果として「スキルも賃金も上昇しない」という負のスパイラルを繰り返すことになります。
ちなみに、課題の第3位となったのは「品質向上」。前年(2016年)は「品質向上」が課題のトップで、2位以降の「オペレーターの採用・育成」や「スーパーバイザーの採用・育成」に10%以上の差をつけていましたが、17年版では順位が逆転しています。懸案である人手不足を解消するため、オペレーターやスーパーバイザーの採用基準を下げてしまうとサービス品質の低下につながることになり、結局は前年と同じ結果に逆戻りしてしまうかもしれません。
AIがコールセンターを救う?
2013年、英国オックスフォード大学の研究で明らかにされた「人工知能に仕事を奪われる職業」には、「コールセンターのオペレーター」や「電話営業員」も含まれています。電話対応を完全マニュアル化することで、AIでも対応可能になるという考え方もあり、実際に音声認識AIをコールセンターに活用する事例も出ています。
既にAIやITをコールセンターの効率化やオペレーターの負担軽減につなげている事例もあります。
例えば、最近では、チャットボットによる問い合わせシステムを導入する企業が増えてきています。Webサイトに設置されたチャット機能を使って問い合わせる仕組みは、「電話をかける」というひと手間を省けるため、ユーザーの心理的ハードルを下げることができるでしょう。企業側から見ると、同時に複数の問い合わせ案件に対応できるチャットボットは、コールセンター・コンタクトセンターの効率化につながり、見込み客とコンタクトしやすくなる、というメリットがあります。
また、別のベクトルでコールセンターの機能向上にAIを活用している企業もあります。米国のスタートアップ企業Afinitiは、AIを使って「オペレーター」と「顧客」をマッチングさせるプログラムを提供しています。通常のコールセンターは着電した順に空いているオペレーターにつなぐ仕組みになっていますが、Afinitiは対人的な「相性」に着目し、相性が良いオペレーターにつなぐことでコールセンターの生産性向上を図っています。相性の良いペアが会話すれば、それだけ顧客の満足度も高くなり、コンバージョン率(成約率)の上昇、ひいては売り上げの上昇へとつながっていきます。さらには、オペレーターのモチベーション向上にも貢献すると考えられるでしょう。
まとめ:コールセンターの課題解決に向けて
人手不足感が強まるなか、コールセンターの課題解決には、顧客と従業員の双方が満足する施策が必要となります。ITやAIはコールセンターの業務の助けとなりますが、人間と完全に取って代われるものではなく、あくまでも一助を担うもの。ITやAIを便利に活用しながら、品質の向上を目指しましょう。