「行動は言葉よりも雄弁である」と言われますが、ふるまいとはその人の発言内容や見え方だけを指しているわけではありません。これは人に限ったことではなく、営業、マーケティング、SNSなどにも当てはまります。もちろんカスタマーサービスの管理も例外ではありません。自社のカスタマーサービスについて考えるとき、外部からの見え方や声だけにとらわれていると、他社とカスタマーサービスのパフォーマンスを比較するための適切な基準を設定することができません。
まずは、自社のカスタマーサービス部門がどんなタイプに分類されるかを理解することから始めましょう。自社のカスタマーサービスのタイプを理解することが、カスタマーエクスペリエンス向上のための方向転換を考えるきっかけになります。Zendeskでは長年にわたり詳細な調査を行い、カスタマーサービスに秀でた企業を基準にした運用面のベンチマークだけでなく、カスタマーサービスの分類に関するデータを蓄積してきました。自社がどんなタイプのサポート部門を運用しているかや、優れたカスタマーサービスとはどのようなものなのかを理解することは、今日の企業にとって不可欠です。
運用面におけるカスタマーサービス、4タイプ
関係構築型
高度発展型
大器晩成型
全体最適型
Zendeskでは、クラスター分析を用いて、カスタマーサービス部門の運用・管理面での類似性に基づき企業をグループ化しています。この4つの主要なタイプは、表面的なレベルにとどまっている業界ベンチマークの代替指標としても活用できるものです。
1.関係構築型
このタイプの企業のカスタマーサービス部門は小規模ながら顧客との関係構築に優れており、顧客に満足してもらえるパーソナライズされた顧客体験を提供しています。カスタマーサービス部門はマーケティング部門の延長であるという見方もできるような組織文化を持っています。
2.高度発展型
このタイプの企業は柔軟な社内体制と洗練されたカスタマーサービスの運用体制を持ち、顧客からの問い合わせにきめ細やかに対応しています。
3.大器晩成型
このタイプの企業は、事業の拡大スピードに比べて、カスタマーサポート管理にバランスを欠いたアプローチをとっており、カスタマーサポートを最大限に活用できていません。このタイプはスタートアップの企業で見られることが多く、既存顧客のサポートよりも、営業部門やマーケティング部門に経営資源を集中的に投下しています。
4.全体最適型
このタイプの企業は、営業やマーケティングと同じくらいカスタマーサービスを重視しています。カスタマーサービスの運用で模範となる企業です。
分析方法
分析にあたっては、作業量、サポート戦略、カスタマーサービスの運用に利用できるリソースといった点での類似性を確認できる指標に基づいて、企業を12のグループに分類しました。そのうえで、12のグループをさらに運用上の特徴や経営成熟度の類似性に基づき4つのグループに細分化しました。
運用面でのベンチマークに焦点を当ててデータ分析を実施し、結果をレポートにまとめました。レポートでは、4つのタイプとそこに含まれる12のグループのそれぞれを詳細に見ることで得られる洞察やヒントに加え、従来よりもはるかに有意義で実用的な視点から、各企業を比較できるベンチマークを紹介しています。全体像での比較を求める企業にとって、業界ベンチマークや、企業の規模・顧客の種類が大きな意味を持つことに変わりはありません。ですが、業界に関係なく運用や経営体制が似ている企業に、より密接な関連性を感じる企業が多いのも事実です。
ここまでに紹介したカスタマーサービスの運用における4つのタイプを念頭に置いて、カスタマーサポートにおけるZendeskの最新の調査結果を見てみましょう。Zendeskが2020年に公表したカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポートは、多岐にわたる業界に属する45,000社の企業のデータに基づいて作成されています。優れたカスタマーサポートを提供する企業はどのようにしてサポートを改善してきたのか、企業が参考にすべき新しいベンチマークについて学ぶことができます。
ますます高まる顧客の期待に簡単に応えることができるか、あるいは応えるために多大な努力を要するかは、あなたの企業のカスタマーサービスがどのタイプに当てはまるかによって変わってきます。ここからはレポートの要点をご紹介します。
1.顧客の期待は膨らみ続け、顧客満足度(CSAT)は下がり続ける
調査対象のほぼ半分が「過去1年だけで顧客のサービスへの期待が高まった」と答えたのは偶然ではありません。これは、2013年には94.6%だった顧客満足度が2018年に92.5%へと下がっている傾向とも一致しています。つまり、顧客の要求を満たすことがますます難しくなってきているといえます。この傾向に合わせてカスタマーサポート部門を拡大している企業や、顧客関係の構築に重点を置いてロイヤルティを構築している企業であれば、膨らみ続ける顧客の要求にも応えられるかもしれません。ですが、「大器晩成型」の企業は、顧客が望むような体験を提供するのに苦戦を強いられる可能性が高いでしょう。営業やマーケティングに割り当てているリソースをカスタマーサポートにも費やす時期がきているのかもしれません。
2.顧客はセルフサービスを求めているが、企業が追いついていない
顧客の40%は、検索エンジンやヘルプセンターで調べてから、カスタマーサービス担当者に問い合わせています。ですが、顧客が望むようなセルフサービスを提供できている企業は5分の1に過ぎません。「関係構築型」タイプの企業では、チームの規模が大きいと、最新で網羅的なセルフサービスコンテンツを作るのが難しいかもしれません。また「大器晩成型」の企業にとっては、セルフサービスが求められているという事実自体を見過ごしてしまっている可能性があります。しかし、今のうちにセルフサービスに投資しておかなければ、後になって非常に大きな代償を払うことになります。
3.オムニチャネルが大きな差を生み出す
顧客の69%は企業に対して、自分たちの時間を尊重してほしいと考えており、企業に何度も同じ苦情を繰り返し説明したくないと思っています。企業とコミュニケーションを取るチャネルを変えさせられるたびに、顧客の苛立ちは高まっていきます。「全体最適型」と「高度発展型」はこの点を明確に理解しており、時間とリソースを割いてサポート部門が顧客にオムニチャネルのシームレスな体験を提供できるようにしている場合が多く、この努力が実際に功を奏しています。今はまだオムニチャネル対応を強く望んでいない顧客もいるかもしれませんが、オムニチャネルな顧客体験を提供する企業が増えれば増えるほど、こうした顧客の好みが変化していくことは押さえておく必要があります。