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NPS®とは?意味・計算方法・調査の仕方を解説
NPS®(Net Promoter Score®、ネットプロモータースコア)は企業が良好な顧客体験を提供しているかどうかを判断するのに役立ちます。NPS®のデータを活用して、CX(顧客体験、カスタマーエクスペリエンス)を強化し、収益を向上させましょう。
著者: Peter Alig, 寄稿
更新日: 2024年1月30日
NPS®は、企業が良好なCXを提供しているか、サポートチームが顧客の期待に応えているかを判断するのに役立ちます。ZendeskのCXトレンドレポート2023年版によると、顧客の60%はサービスへの期待をもとにブランドを選択し購入しています。そのためNPS®を戦略に組み込むことがこれまで以上に重要になっています。
この記事では、NPS®の定義や計算方法、評価の解釈方法、NPS®アンケートを作成するための手順とベストプラクティスについて解説します。
NPS®とは?
NPS®は顧客ロイヤルティを測定するもので、企業は通常、CXの質を評価するために使用します。1993年にフレッド・ライクヘルド氏によって初めて開発されたNPS®は、シンプルなアンケートで顧客に 「当社を友人に薦める可能性はどのくらいありますか?」などの質問をします。これがNPS®を算出する最初のステップです。
なぜNPS®が重要なのか?
NPS®は良好なCXを提供できているかどうかを判断する明確な指標です。また、顧客が製品やサービスを推奨する可能性に関するデータを得ることで、ロイヤルティを評価するのにも役立ちます。
NPS®アンケートとは何か?
NPS®アンケートは、自社を他の人に薦める可能性を尋ねることによって、顧客からのフィードバックを収集します。NPS®の尺度は通常0から10まであります。NPS®アンケートの回答者は、その尺度内の数字を選択し、その回答によって以下の3つのカテゴリーのいずれかに分類されます。
- 批判者(0~6で回答した人):貴社を推薦する可能性が低い不満のある顧客
- 中立者(7または8と回答した人):良い経験が続けば、貴社を推奨するかもしれない顧客
- 推奨者(9または10と回答した人):最もロイヤルティが高い顧客で、口コミで貴社を推奨してくれる可能性が高い顧客
顧客満足度(CSAT)スコアやカスタマーエフォートスコア(CES)とは異なり、NPS®は多くの場合、1回のやり取りや購入に対する印象ではなく、ブランドに対する購入者の総合的な印象を測定します。NPS®を単一のやり取りに適応させるには、対象を限定させるようなフレーズを質問に追加します。
例:「お客様が2023年2月3日に受けた電話でのカスタマーサポートの経験から、[友人また同僚mに[当社]を薦める可能性はどのくらいありますか?」
メールによるNPS®アンケートの例
メールで顧客にNPS®アンケートを送ることができます。以下の例を参考にしてください。
{{お客様の企業名}}
{{お客様の名字}} {{お客様の名前}}様
最近{{製品名}}をご購入いただき、ありがとうございます。
何かお気づきの点がありましたらお知らせください。
{{自社の製品名・サービス名}}を友人に勧める可能性はどのくらいですか?
{{NPS®調査}}
ポイント: メッセージは簡潔にし、NPS®アンケートは外部のページにアクセスしてもらうのではなく、必ずメール本文に埋め込みましょう。
WebサイトのNPS®アンケート例
NPS®アンケートは、ポップアップやアンケートページとしてWebサイトに掲載することもできます。顧客は自分の都合に合わせてアンケートに回答することができます。ポイント: NPS®アンケートを主要なコンバージョンページ(購入後に顧客が誘導されるサンキューページなど)に設置します。
NPS®の計算方法
すべての顧客調査の回答を収集したら、NPS®を計算します。
NPS®の算出には、さまざまな方法を使用できます。NPS®アンケートを行うシステムによっては自動で計算してくれますが、ここでは手動での計算方法をご紹介します。
NPS®を手動で計算する
NPS®を手動で計算するには、以下のステップとNPS®計算方法を使用します。
結果を批判者(スコア0~6)と推奨者(スコア9~10)に分ける
推奨者の割合から批判者の割合を引いて、総合スコアを決定する
注意事項: 中立者の持つ印象は強くないため、通常はNPS®の計算からは除外します。しかし、ターゲットを絞ったマーケティング活動を行うために、中立者を特定するようにはしましょう。
高いNPS®とは?
良いNPS®とは何でしょうか? この問いに対する明確な答えはありません。
Statistaによると、NPS®ベンチマークは業界によって異なり、スコアを評価するために選択した方法によっても異なります。
- 絶対NPS®法はあらゆる業界において、貴社のスコアをゆるやかに定義された良いスコアの基準と比較します。つまり、スコアが0を下回ると、顧客が貴社を推薦する可能性は低いということになります。
- 相対的NPS®法は、類似企業が獲得したスコアと貴社のスコアを比較します。例えば業種にもよりますが、ほとんどの企業のスコアは31から50の間です。
重要なのは、NPS®を継続的に改善する方法を見つけ出すことです。CXを強化できる点を見極めるには、NPS®アンケートの最後に次のような自由形式の質問を含めるとよいでしょう。
「今後、お客様の体験を改善するために何かお気づきの点がありましたらお知らせください」
低いNPS®とは?
NPS®が低いかどうかは、NPS®を解釈するのに絶対法を使うか、相対法を使うかによって決まります。
絶対評価方式であれば、0点以下はすべて悪いとみなされます。
- 相対評価方式を使う場合、その業界の基準点を下回るスコアは悪いとみなされます。
例えば、小売業界で良いスコアが30点以上だとすると、30点以下は悪いスコアということになります。
NPS®結果の解釈の仕方
NPS®は、企業のパフォーマンスについての貴重なインサイトを提供し、衰退や成長を予測するのに役立ちます。また、将来の大きな問題を予測し、回避するための優れた手法でもあります。
NPS®の結果を活用して、企業全体の戦略に活かす方法をいくつかご紹介します。
データセグメントの見直し
まず、NPS®回答に関連するすべてのデータセグメントを確認してください。
スコアは、以下のように異なるセグメントで異なる場合があります。
年齢層
性別
長期顧客
高額消費顧客
CRMに顧客の属性情報が含まれていれば理想的です。
例えば、NPS®は特定の性別で高くなったり、特定の年齢層で低くなったりします。これにより、さまざまなタイプの顧客に対するアプローチをどのように変更すればよいかがわかります。
長期的なパフォーマンスの追跡
NPS®はリアルタイムで発生する指標のため、継続的にモニタリングして回答結果を収集することが重要です。
パフォーマンスを追跡することで、顧客の傾向、テーマ、変動を認識できます。スコアがばらついていれば、ばらつきを引き起こす要因を調べることもできます。
関連チーム全体でフィードバックを共有する
マーケティング、プロダクト、セールス、エンジニアリングなど、すべての関連チームがNPS®の結果と顧客のフィードバックにアクセスできるようにしましょう。全員が同じ認識を持っていれば、NPS®を向上させるための努力は合理化され、各部門間で一貫したものとなります。
より広い範囲のチームに情報を伝えるために、以下の簡単なアプローチを試してください。
Slackなど、チームのメッセージングチャネルでアンケート結果を送信する
チームミーティングでNPS®の調査結果を報告し、問題点を明らかにする
NPS®の調査結果を分析して、最優先の顧客に対する対応方法を構築する
顧客とのコミュニケーションを完結させる
最も重要なことは、フォローアップを行い顧客とのやり取りを終了することです。NPS®調査戦略の一環として、フォローアップの質問をすることを検討しましょう。回答の理由や背景をよりよく理解するのに役立ちます。
NPS®の活用方法
企業はNPS®という指標を、 いかに顧客を満足させ、維持するかに役立てています。
しかし、実際にはどうなのでしょうか? データを解釈した後、NPS®の結果に対処する方法をいくつかご紹介します。
改善すべき点とうまくいっている点を調べる
NPS®を活用する最大の方法は、改善ポイントと成功ポイントを見極めることです。そうすれば、必要に応じて優先順位や戦略を貴社の別の分野にシフトすることができます。
例えば、製品チームのNPS®がカスタマーサービス部門よりもはるかに高いことがわかりました。この場合、カスタマーサービスチームのパフォーマンスを向上させるために戦略を転換する必要があります。紹介プログラムの導入
NPS®指標は、顧客に貴社の製品やサービスを紹介してもらうための基準でもあります。
例えば、あなたのビジネスに高得点をつけた顧客をフォローアップし、友人や家族に紹介してもらうことができます。次回の購入時に景品や割引を提供することで、紹介に対するインセンティブを付与できます。潜在的な解約を特定し、未然に防ぐ
NPS®の結果は解約を予測するためにも活用できます。顧客維持は新規顧客獲得よりもコストが低いため、解約を防ぐことが不可欠です。NPS®は、顧客がアンケートを通じて提供した否定的なフィードバックから、潜在的な解約のサインを教えてくれます。
アンケートがCRMにリンクされれば、ネガティブなNPS®回答があった場合に通知され、解約が発生する前に問題の深刻化を即座に避けることができます。
最新のCXトレンドレポートでは、73%の顧客は何度も悪い経験をすると競合他社に乗り換えることがわかっています。悪いスコアにはできるだけ早く対処することが重要であることがこの調査結果からもわかります。
NPS®が測定できること
カスタマーサポートチームは、通常NPS®アンケートを利用して、顧客対応の質を評価します。サポートだけではなく、企業はNPS®アンケートを利用して、顧客が自社の製品、サービス、またはビジネス全体についてどのように感じているかを測定することもできます。NPS®アンケートで何を測定できるかは、以下をご覧ください。
NPS®アンケートの作成手順(+ベストプラクティス)
NPS®アンケートの作成プロセスはシンプルです。以下は、NPS®アンケートの構築手順とベストプラクティスです。
1. 調査方法の決定
NPS®アンケートを作成する最初のステップは、アンケートの配布方法を決めることです。この記事で前述したように、NPS®アンケートはWebサイト上でs施することも、メールで実施することもできます。
ポイント: 適切なタイミングでNPS®アンケートを送ることも重要です。購入前ではなく、購入の最後にアンケートを送るなど、カスタマージャーニーにスムーズにフィットするようにしましょう。
2. NPS®に関する質問を追加する
次に、NPS®の質問を追加する必要があります。標準的なNPS®の質問は顧客満足度調査と似ており、通常は以下のような質問になります。
- 友人や同僚に{{自社の製品名・サービス名}}を薦める可能性はどのくらいですか?
- 0~10の尺度で、当社を推奨する可能性はどのくらいですか?
ポイント: 長いアンケートで顧客が飽きてしまわないよう、質問は簡潔にしましょう。
3. 顧客にスコアの理由を述べてもらう
NPS®アンケートにフォローアップの質問を加えましょう。この質問は顧客にスコアについての説明を求める機会となります。質問例は以下の通りです。
- この評価を選んだ最も重要な理由をお聞かせください。
顧客からの回答はチームがフィードバックを業務に取り入れるために必要な背景情報を教えてくれます。
ポイント: 推奨者もフォローアップが必要です。推奨者はすでに貴社を良いスコアで評価していますが、他の顧客を紹介してくれるかどうかを確認するためにフォローアップの連絡を取ることを検討しましょう。
4. フィードバックのリクエスト
次のような自由形式の質問を含むことで、追加のフィードバックを聞くことができます。
- {{自社の製品名・サービス名}}の改善のために、お気づきの点をお聞かせください。
- {{自社の製品名・サービス名}}のどの機能が最も印象的だったか、教えてください。
- さらにお客様にご満足いただくために、お気づきの点がありましたらお知らせください。
顧客に追加的なフィードバックを求めることで、チームがこれまで思いつかなかった、あるいは見落としていた改善点を知ることができます。
ポイント: 批判者の声に耳を傾けましょう。顧客が貴社に期待しているものの、かなえられていないものが何かを理解する絶好の機会です。
5. フォローアップの承諾を求める
また、アンケートを送った後にフォローアップを行い、再度連絡を取るために顧客から承諾を得ることも重要です。この承諾はチェックボックスでも可能です。顧客はチェックボックスをクリックすることで、今後のフォローアップを許可します。
ポイント: NPS®の回答を受け取ったら、速やかにフォローアップを行います。その経験がまだ顧客の記憶に新しいうちに行うことが望ましいので、1週間以内にフォローアップすることを検討しましょう。
6. 感謝のメッセージを送る
NPS®アンケートの回答および追加フィードバックの提供について、顧客に感謝を伝えましょう。顧客に感謝のメッセージを送ることは、顧客ロイヤルティを高める素晴らしい方法です。以下は感謝メッセージの例です。
- 貴重なフィードバックをありがとうございます。お客様に{{自社の製品名・サービス名}}を気に入っていただき、大変嬉しく思います。お客様からいただいたフィードバックは弊社の今後の改善に役立て、お客様によりご満足いただけるような製品/サービスをお届けできるよう尽力してまいります。
- ご意見をお寄せいただきありがとうございます。私たちの目標は、お客様にご満足いただけるようなカスタマーサービスを提供することです。今後どのように改善できるかについてのご提案をお聞かせいただければ幸いです。
ポイント: 顧客に感謝の気持ちを伝えるために、フィードバックを残してくれた人へのギフトを添えることを検討しましょう。例えば、次回の購入時に利用できる割引コードをプレゼントしたり、ワンランク上の製品やサービスの無料トライアルを提供したりすることも効果的です。
NPS®を活用してCXを改善
NPS®アンケートは、データの意味を理解し、それにもとづいて行動を起こすことによってその効果を発揮します。適切な分析により、NPS®の回答を活用して、CXの問題が解約につながることを阻止できます。
Zendeskのようなカスタマーサービスソフトウェアを活用して、NPS®を調査し、分析しましょう。ZendeskのソリューションとNPS®を調査するアドオンを組み合わせれば、顧客が希望するチャネルを通じて自動的にアンケートを送信し、回答を収集し、レポートを作成することができます。
貴社の次のステップを特定し、製品、カスタマーサポート、および全体的なCXを向上させましょう。
Net Promoter、Net Promoter Score、NPS®はNICE Satmetrix, Inc.、Bain & Company, Inc.、Fred Reichheldの登録商標です。