データによると、グローバルビジネスでは、複数言語によるサポートの提供は、労力に見合う価値が十分にあります。オンライン検索利用者のほぼ4分の3が、母国語で検索しています。つまり、コミュニケーションを英語のみで行っている場合、顧客を失っている可能性があり、エージェントには何重もの非効率を強いているかもしれません。
「言うは易く行なうは難し」といいます。サポートする言語が1つの場合も、顧客に直接伝える情報や問題解決の正しい方法を見つけるために、平均して20%の時間をエージェントは情報の検索に費しています。複数のチャネルにわたって複数の言語でサポートを提供することで、混在環境に別の変数セットが追加されます。多言語サポートの提供に際し、ライブチャネルを使用する場合は特に、多言語対応のグローバルなスタッフを採用する、リアルタイムの翻訳ソリューションを実装する、あるいはその両方を行う必要があるため、コストがかかり効率が悪くなる可能性があります。
世界中の顧客がセルフサービスを選ぶ傾向にある中、ナレッジベースを国際化に対応するリソースに変えることは、顧客やエージェントに大きな影響を与える可能性があります。ナレッジを一元管理することは、スケーラブルで時間の節約となるソリューションです。これにより、多言語の顧客は、より正確で一貫したエクスペリエンスを育むことが可能になります。
多言語ヘルプセンターは、グローバルに事業を展開する企業にとって成功に欠かせない要素です。例えば、OLX社は戦略的に多言語ヘルプセンターの構築に取り組んでいます。同社は40カ国を超える国でクラシファイド広告事業を展開し、世界中で1,200人以上の従業員を擁しています。同社のグローバルなビジネス展開を念頭に、サポートチームは、ナレッジベース内に市場ごとにセルフサービスの記事を作成することによって、送信されるチケットの数を減らすことができました。その結果、世界全体でチケット量が40パーセント減少しました。
考慮すべきもう1つのことは、翻訳とローカリゼーションの違いです。ローカライズされたコンテンツは、単なる翻訳ではなく、話し方や意図、概念、またはフレーズのパターンでニュアンスを理解します。ローカライズされたコンテンツでは、英国ではスパナと呼ばれる工具を、米国ではレンチと表現します。また、ある地域では「サッカー」と呼ぶスポーツを、別の地域では「フットボール」と表記します。また、「bank」が、銀行と川岸のどちらの意味で使用されているかも区別できます。
これがAIの出番です。言葉のニュアンスの多くは、大規模に集約およびローカライズすることが難しいため、言語学習モデルはこれらの問題のいくつかを吸収するように設計されています。言葉を学習するAIモデルは、時間が経つにつれて賢くなり、失敗するたびに学習して再調整します。このアイデアは、エージェントにナレッジベースなどのグローバルなリソースを提供するだけでなく、時間をかけてサポート業務をさらに向上させるテクノロジーを活用するための基盤として使用することです。
言語学習モデルは、まず質問の背後にある単語、文脈、および意図の理解から始め、次にこれらの変数をその問題に関連する最も関連のある記事と照合しようとします。たとえば、ZendeskのAnswer Botは、英語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、フランス語、オランダ語で利用できます。言語ごとにその機能を支えるモデルがそれぞれ用意されているため、毎回コンテンツを翻訳する必要がありません。サッカーとフットボールの違いをAIが理解するのは、その単語が顧客とエージェントの文脈でそれぞれどのような意味で使用されているかを詳しく分析するためです。Answer Botは質問を分析後、ヘルプセンターで関連する記事を検索して提案します。
価値を発揮するまでの時間は、新しいソフトウェアソリューションを実装する上で、特に成長して時間に追われている部門にとって、大きな課題の1つです。言語ベースのAIモデルの利点の1つは、設定不要で直ちに使い始めることができることです。導入後すぐに、顧客のリクエストの目的を理解し、それらのリクエストをヘルプセンターのコンテンツと照合します。
国際的なビジネスに従事しているなら、多言語によるサポートの提供は不可欠です。地域ごとにエージェントを雇うことが、常に実際的またはスケーラブルなソリューションとは限りません。なぜなら、多言語のナレッジベースを活用すれば、顧客をサポートする場所に関係なくエージェントを支援できるからです。