顧客に満足感を与え、常連客になってもらうこと。これは目新しい概念ではありません。ショップのオーナーなら、満足のいく買い物をした顧客が浮かべる微笑みや「ありがとう」の言葉を常に期待していますし、レストランの支配人は、食の進み具合や帰り際に置いていくチップから、料理やサービスに対する満足感を推し量っていることでしょう。
また、顧客の満足感が何よりも明らかになるのは、同じ顧客が再びショップやレストランのドアを開けて姿を見せる瞬間と言えるでしょう。
顧客の満足具合を把握する方法がシンプルだったように、顧客満足度を測る方法も、ほとんどの取引が対面で行われていた何十年も前の時代ならシンプルでした。
しかし、オンラインでの接客が増えている現在は少々事情が異なります。顧客満足度を知るためには、アンケート調査などを用いて、こちらから積極的にフィードバックを求める必要があります。
時代の先端をいく企業は、短期的および長期的に顧客満足度に注目することがどんなに重要かを理解しています。顧客満足度を測る方法には2つのタイプがあります。
短期的な満足度の測定
顧客満足度調査の1つとして、カスタマーサポートへの問い合わせなど、企業とのやりとりが終わった直後に簡単なアンケートを送信する方法がよく使われています。このタイプの調査は、顧客の期待に応えることができたかどうかを確認する目的においてお勧めです。
特に、季節によって顧客満足度が変動しやすい小売業で多くみかけます。ブランドとの各接点におけるフィードバックをもらうことで、直近の顧客対応への満足度を定性的に分析することが可能となります。
しかし、最近のやりとりが満足のいくものだったかどうかを知るだけでは、長期的な満足度やロイヤルティを把握するには不十分です。1回のやりとりに満足したとしても、その顧客がさらに同じブランドで買い物をしたり、他の人にも勧めたりする可能性があるかどうかはわかりません。
長期的な満足度の測定
初回購入からの期間が長いお客様ほど、満足度が高いことが望ましいのは言うまでもありません。そこで、長期にわたる顧客満足度を把握するためには、顧客関係が続く限り継続的に満足度を調査する方法がとられています。
しかし、ここには1つ問題が残っています。時間の経過に伴う満足度の推移は把握できても、実はこれだけでは十分ではありません。なぜなら、この方法で得られるのは、最も声の大きい顧客、つまり極端に良かったり悪かったりする体験だったためにアンケートに回答する可能性が高い人や、すでに常連になっている人、満足度がかなり高いと思われる人たちを中心とした結果だからです。
それほど頻繁な関わり合いがなく、声高に語ることがない人たちは、潜在的に多いと考えられますが、彼らのの満足度までは拾えないのです。
満足度調査の偏りを補正するには?
顧客がリピーターになる可能性を知るための優れた手段としてNet Promoter Score℠(ネットプロモータースコア、NPS)調査があります。「あなたはこの商品を親しい友人や家族にどの程度勧めたいと思いますか?」という質問を通じて満足度を測るNPS調査では、もう二度と買わないと思っている顧客や、再び買ってくれる可能性が低い顧客を特定するのに役立ちます。
NPS調査では、0~10点のスコアで、友人や家族に勧める度合いを評価するように求めます(図4)。単一回答のアンケート調査となるNPS調査は、顧客ロイヤルティの指標として考えることができます。
回答によって、顧客は次の3つのグループに分類されます。
- 批判者(Detractors):
- 0~6点のスコアを付けた顧客で、友人や同僚に製品やサービスを利用しないように伝える可能性があり、明らかに不満を感じていることがわかります。
- 中立者(Passives):
- 7点または8点のスコアを付けた顧客で、周りの人に積極的に勧めるほどではないことを表しています。
- 推奨者(Promoters):
- 9点または10点のスコアを付けた顧客で、周りの人に積極的に勧めてくれる可能性が高いことがわかります。
推奨者はロイヤルティの高い顧客であり、良い評判を広めてくれると予測されます。中立者はそこそこ満足しているものの、他人に勧めてくれるほど高くは評価していません。批判者は、別のブランドを選び、周りの人にもそうするように勧める可能性があります。NPS(ネットプロモータースコア)とは、この推奨者のパーセンテージから批判者のパーセンテージを引いた値です。
NPSは、最近の取引についての満足度ではなく、長期にわたる全体的な満足度を示す指標です。そのため、四半期に一度、あるいは半年に一度といった定期的なペースでNPSを行うのが一般的です。また、直近でやりとりした顧客だけでなく、全体的な顧客ベースから無作為に選んだ集団を対象に調査を行います。
望ましいのは、時間の経過とともにNPSトレンドが上向きになることです。そのためには、NPS調査の最も重要な構成要素となる「顧客がスコアを付けた理由」に注目する必要があります。批判者にとって不愉快な体験だった理由、中立者が推奨者になるのを妨げている原因、推奨者が気に入ってくれた正確な理由を、調査時に記入されたコメントを定性分析することで理解できます。
顧客満足度調査とNPSは、互いに足りない部分を補完し合う関係にあります。顧客満足度は、ブランドとのやり取りが発生した発生ベースで満足度を測る指標であるのに対し、NPSは長期的な満足度やロイヤルティを測る指標です。この2つの組み合わせは、貴社が提供している全体的なエクスペリエンスを数値化し、改善を進めるための有効なツールとなるでしょう。
Net Promoter、NPS、およびNPS関連のエモーティコンは、Bain & Company, Inc.、Satmetrix Systems, Inc.およびFred Reichheldの登録商標、Net Promoter ScoreとNet Promoter Systemはサービスマークです。