「ナレッジベース」という言葉は新しい経営概念のようですが、実は昔から使われてきた手法のアレンジです。ここでは、ナレッジベースの意味やメリット、さらにその使い方について紹介します。
ナレッジベースとは何か?
ナレッジベース(知識ベース)とは、「業務に関する知見」を一箇所にまとめたデータベースのこと。インターネットには接続せずに、社内だけで共有される、社外秘のノウハウの塊といえます。「業務に関する知見」とは、企業や従業員が業務を通じて蓄積してきた、さまざまな知識や経験、熟練したスキルなどを指しており、企業の知的な資産とも言えます。
ナレッジベースに蓄積されたナレッジ(知識)は社員全員に共有されます。新しい知見があれば、社員が簡単にナレッジベースを編集して追加できます。これまでの知見だけでなく、これからの知見も蓄積できることが重要なのです。
ナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメントとは、業務を通じて得たナレッジを業務に生かせるように管理すること、およびそれを生かして企業の競争力を上げる経営手法です。ナレッジベースは、ナレッジマネジメントを行うためのデータベースです。ナレッジマネジメントにより、ナレッジベースをいろいろな形で活用することができます。
ナレッジベースが生まれた背景
これまでもナレッジベースという考え方そのものはありましたが、体系化されていませんでした。これまでのやり方は「先輩の仕事を見て盗む」と言われるように、経験によってナレッジを引き継いでおり、非常に属人性が高いものです。
現在は終身雇用制度が崩れ、リストラや転職が盛んになり、人材の流動化が始まっています。今後は「働き方改革」への対応も求められるでしょう。そのため、業務に関する知見がうまく伝わらなくなり、知識の断絶が起こり始めました。そこで、ベテランの持つ知見を形にして残し、共有する手段が必要になったのです。また、IT技術の発達により、「知見」を「データベース」という形で共有できるようになったことも、ナレッジベースが生まれた理由のひとつです。
ナレッジベースはどのように活用されているのか
ナレッジベースは、多くのデータが集まるところほど活用されています。
自動音声応答装置
問い合わせ窓口に電話したときに流れる自動応答音声は、ユーザーがダイヤル操作や音声認識で必要な情報を伝えることで、適切にサービスを進めていきます。ユーザーを自動音声応答装置で目的別に振り分けることで、オペレーターにつなぐ回数を減らし、業務の効率化を実現しています。最近は、LINEやWebサイトのチャット向け自動メッセージ応答装置も普及しつつあります。
FAQ
FAQは、「よくある質問」のことです。自社の製品やサービスについて質問と回答をまとめ、誰でも見られるようにしたもので、企業Webサイトでもよく見られるコンテンツにもなっています。ユーザーからの質問はよく似たものが多いため、ナレッジベースにFAQとして蓄積しておくと便利です。
ナレッジベースのメリット
ナレッジベースを利用すると、次のようなメリットが享受できます。
スピーディーな知見の伝達
ナレッジベースを利用することで、社員が素早く情報にアクセスでき、専門的なナレッジを得ることができます。企業全体の競争力を上げることも可能です。ほかの部門の知見に触れることで、新しいアイデアが生まれる場合もあるでしょう。
業務の効率化、共通化
ナレッジベースを導入すると、これまでの事例をもとに書類作成や営業活動を行ったり、業務フローを共通化したりできるようになり、業務の効率化を実現できます。ナレッジベースを利用した自動音声応答装置を利用すれば、業務の効率化だけでなく人員削減も可能となります。
データベースによる顧客対応のレベルアップ
ナレッジベースを活用すれば、過去の事例をもとに、顧客のリクエストに素早く応えることができます。その結果、顧客対応のレベルが向上し、顧客満足度を高めることができます。
ナレッジベースを構築するツール
ナレッジベースをどのような形で利用するかは、各企業によってさまざまです。そのため、ナレッジベースとして万能なツールはありません。目的に合わせてツールを使い分けたり、組み合わせたりしています。
以下に、ナレッジベースとして利用されることが多いツールを紹介しておきます。
データベース
蓄積した情報を、必要に応じて検索して取り出すシステムです。応用性が高く、応用次第でさまざまな目的に利用できます。
グループウェア
メッセージやチャットを使ったコミュニケーション、ファイル共有、スケジュール管理などができるツールです。社内用SNSのようにも使わることがあります。
ヘルプデスク
社員のヘルプデスクとして使えるツール。ナレッジや文書をデータベースとして管理したり、データベースから自動的にFAQを作成したりすることができます。顧客のクレームや問い合わせを自動的にデータ化するといったように、カスタマーサポート機能に特化したものもあります。
データマイニングツール
データマイニングにより、蓄積したデータから経営分析や営業戦略などの分析を行えるツールです。これまでの事例や他社の事例もデータとして蓄積されており、経営支援や営業支援に使われます。
そのほか、これらの機能を併せ持つ、複合型のナレッジマネジメントシステムもあります。
まとめ:業種を問わず、これからの経営に欠かせない
ナレッジベース
ナレッジベースを導入すると、これまで社内でバラバラに蓄積されていたナレッジをまとめ、全員が使いやすい形にすることができます。これが業務効率化や競争力アップにつながります。ナレッジベースはこれからの経営には欠かせない概念といえるでしょう。