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セルフサービスの改善に役立つ!
ナレッジベース記事のテンプレートづくりのポイント5つ
最大のポイントは、自社の顧客ベースに合わせて、
さまざまな種類のナレッジベース記事テンプレートを用意することです。
更新日: 2024年2月22日
今日の顧客が問題を自力で解決する傾向にあることは、皆さんもよくご存じのところでしょう。この傾向は今に始まったことではなく、サポート担当者とやり取りするよりもセルフサービス型のサポートを利用したいと考える顧客の割合は、2013年の時点で67%に達しています。今やセルフサービスの選択肢があるのは当然のことで、顧客はさらに、ナレッジベースに直接アクセスするときや、サポート担当者またはチャットボットとのやり取りでナレッジベース記事を提示されるときなど、セルフサービスを利用するあらゆる場面で、それぞれのニーズに沿ったサポートが受けられることを望んでいます。
セルフサービスのオムニチャネル化が進んだ現在、顧客は(そして企業の従業員も)、自分が使うチャネルに合った形式でコンテンツを利用したいと考えています。ナレッジが生み出される経緯はさまざまに異なりますが、サポートチームは、その使われ方を意識したうえでコンテンツを最適化する必要があります。必要な情報を見つけて自力で問題を解決できるか、あるいは、いくら探しても欲しい情報が見つからず不満だけが残ってしまうのか――。ユーザーのエクスペリエンスはすべてナレッジベース記事のできにかかっています。そこでこの記事では、ナレッジベース記事テンプレートの例を挙げたうえで、セルフサービスの改善につながるベストプラクティスをご紹介します。
ナレッジベース記事テンプレートの例
優れたナレッジベース記事は、2つのレベルで必要な条件を満たしています。まずは何よりも、コンテンツの質が高く、問題の解決策が確実に含まれていること。もう1つは、欲しい情報に簡単にたどり着けるような作りになっていることです。次に紹介するテンプレートの例を参考に、顧客からの多様なニーズに対応できるヘルプセンターコンテンツを作り上げましょう。
- FAQ
FAQ(よくある質問)は、ナレッジベースでも特に重要なコンテンツです。顧客からよく寄せられる一般的な質問に回答し、カスタマージャーニーのあらゆる段階で利用されます。一問一答形式で、まずは質問があり、それに対する簡潔な回答が続きます。
ナレッジベースと組み合わせると、「パスワードはどのように設定すればよいですか?」のような単独のFAQ記事を作成しつつ、「アカウントの作成方法」のような大きなトピックの中にFAQを組み込むことが可能になります。ヘルプセンター以外では、Answer BotなどのAI基盤のツールを使ったサポートでもFAQを活用できます。
ナレッジベースを構築する際は、最初にいくつかFAQ記事を作成し、それらを基にコンテンツを拡充していくのがお勧めです。まずは、ワンタッチチケット(簡単な回答で解決できる問い合わせ)を特定しましょう。ワンタッチチケットの質問は、今後も多数寄せられることが予測されると同時に、製品チームやドキュメントチームが既に適切な回答を用意している可能性が高いものです。こうした質問と回答の組み合わせをFAQとして次々に公開すれば、ナレッジベースをどんどん拡充していくことができます。 - 製品やサービスの説明
製品やサービスについての説明は、一般的に、自社について詳しく知りたいと考えている見込み客を意識した内容になっており、サービスの仕組みや製品に関する一般的な質問など、「What」タイプの疑問を解消します。たとえば、食事宅配サービスを提供するFreshlyでは、注文にあたっての注意事項、定期注文に関するルール、1人前の量といった情報をナレッジベース記事にまとめています。
製品やサービスの説明に関する記事は、検索からアクセスされることが多いため、検索エンジンに合わせて記事を最適化する必要があります。こういった事情もあり、製品やサービスに関する説明は、FAQ記事よりも長く詳細になる傾向にあります。 - 導入フロー
しっかりした導入プログラムを提供し、顧客に最初の段階で良い印象を持ってもらうことは、顧客維持率を高めるうえで欠かせないステップの1つです。導入フローとは、新規顧客が製品やサービスをいち早く使いこなせるようになることを目的に、関連する記事、ガイド、リソースをまとめたもので、主にハウツー、作業手順、長めのチュートリアルなどが含まれます(参考:カスタマーレビュープラットフォーム「Trustpilot」のレビュアー向け入門ガイド)。多くのマーケティングチームは、顧客が最初に製品やサービスを利用し始めたときに送るメールや、製品内の手順解説に、導入フローを記載しています。また、アカウントマネージャーが顧客にリソースとして導入フローを提示するケースもあります。 - トラブルシューティングガイド
アカウントがロックされたなどの技術的な問題が発生したときにサポートが受けられないことほど、フラストレーションが溜まる状況はありません。トラブルシューティングガイドがあれば、顧客が問題にぶつかったときに、いつでも迅速にサポートを提供することができます。
トラブルシューティングガイドの記事は、一般的に、ステップバイステップの手順、スクリーンショット、動画などで構成されています。こうした記事があると、営業時間外でもサポートを提供できるだけでなく、顧客と直にやりとりする際も、記事のリンクを直接送れば、複雑な作業手順を一から説明する必要がなくなります。
トラブルシューティングガイドの記事は、サポートチームが作成することが望ましく、そのためにはまず製品やサービスの弱点を理解する必要があります。その際、ZendeskのコンテンツキューなどのAI搭載ツールを使うと、よく寄せられる質問が自動的に抽出されるため、多くの顧客が困っているポイントを簡単に把握できます。
こうした記事の例として参考になるのが、オンライン学習サービスを提供するカーンアカデミーのヘルプセンターです。「バグとトラブルシューティング」カテゴリでは、よくある技術的な問題と解決策についてさまざまな記事が掲載されています。
適切なテンプレートの種類を理解するには
適切なナレッジベース記事テンプレートの種類を理解するには、自社の主な顧客ベースを把握したうえで、それぞれの顧客層が求めているナレッジに合わせてコンテンツを調整する必要があります。たとえば、新規顧客から一般的な質問が大量に寄せられている場合、FAQを設けた方がよいのは明らかです。一方、知識豊富な顧客でさえ自力で使いこなせないほど製品が複雑な場合は、高度なトラブルシューティングガイドが必要になるでしょう。
理想的なナレッジベースとは、詳細な情報が記載された長めの記事がある一方で、単体で完結するシンプルなハウツー記事も用意されているといった具合に、顧客ベースのニーズに合わせて、さまざまな種類の記事がバランス良く混在しているものです。今日では特に、こうしたナレッジベースを構築することが重要となっています。と言うのも、サードパーティーを使った検索、製品内に含まれるリンク、サポート担当者やバーチャルアシスタントから提供されるナレッジなど、セルフサービスにアクセスできるチャネルが多様化しているからです。こうした中、Trustpilotは、顧客が現在到達しているカスタマージャーニーの段階やコンテンツ検索に利用したチャネルに応じて、提供する記事のフォーマットを調整するといった取り組みを行っています。
Zendeskのコンテンツブロックなどのツールを使うと、1つのナレッジをさまざまな種類の記事で活用することができます。複数の記事、セクションにわたってコンテンツを適用できるため、FAQページを単体で設けたうえで、同じFAQを長いチュートリアル記事の一部として組み込むといったことも可能になります。
優れたナレッジベース記事テンプレートに必要な5つの条件
あらゆる企業にフィットするナレッジベース記事テンプレートというものはありません。どんなテンプレートが適切かは、それぞれの顧客ベースのニーズに応じて変わります。ただし、テンプレートが効果的なものになるか否かを決定づける条件はいくつかあります。自社のナレッジベース記事テンプレートが次の条件を満たしているかどうか、確認してみましょう。
1. ユーザーエクスペリエンスを簡素化できる
難しい知識でもわかりやすく伝えられるのが、優れたナレッジベース記事テンプレートの特長です。また、ユーザーが欲しい情報を見つけ出すのに手間取ってしまうようではいけません。以下に挙げる記事設計のベストプラクティスを実践すれば、どこにどんな情報があるのかひと目で把握できるようになります。
- 簡潔かつキャッチーなタイトルを付ける。手っ取り早い方法としては、
記事の中で回答している質問をそのままタイトルに持ってくるのがお勧めです。 - ステップバイステップの手順、箇条書き、太字テキストなどを活用する。
ざっと読んでも内容が頭に入りやすくなります。 長文の記事の場合、目次を追加する。全体の内容を冒頭で把握できるようになります。
- 見出しタグを組み込む。ユーザーは自分が必要なセクションにだけ目を通せるようになり、
サポート担当者も関連するセクションのみユーザーに共有できるようになります。
ナレッジベース記事をシンプルにするためのヒントについては、
記事設計のベストプラクティスに関するブログ記事でさらに詳しく解説しています。
2. 1つのトピックに特化している
ナレッジベース記事は内容を膨らませすぎず、1つの記事で解決する質問は1つまでというルールを維持しましょう。関連する記事のリンクを記載するようにすれば、本筋に関係ない情報をあれこれ詰め込むことなく、似たトピックについて知りたいという顧客のニーズに応えることができます。また、関連記事を提示しておけば、顧客がこれからぶつかるであろう疑問に先回りで答えることも可能になります。別の記事に誘導するには、本文中にリンクを設定するか、ページナビゲーションを使用します。
3. データを活用してフィードバックを継続的に収集している
効果的なナレッジベース記事テンプレートを作り上げるには、ユーザーからのフィードバックが不可欠です。コンテンツに高評価または低評価を付けられる仕組みを設ければ、顧客目線で記事の有効性を追跡できるようになります。その他、サブスクリプション数、コメント数、閲覧数も重要な指標で、テンプレートを改善するためのヒントを教えてくれます。
4. アジャイル型の開発プロセスを採用している
ナレッジベース記事テンプレートは一度作って終わりではありません。ある程度時間が経ったら内容を見直し、改善を図って、そのプロセスを反復的に行っていく必要があります。ここでの成功のカギを握っているのはアジャイル型のアプローチです。ユーザーにとって役に立つコンテンツとは、ずばり最新の内容が反映されているものにほかなりません。たとえばZendeskでは、次のようなツールを活用してヘルプセンターコンテンツの正確性を保っています。
- ナレッジキャプチャーアプリ : 顧客とやり取りしている中で更新が必要な記事に気づいたときに、フラグを立てたり、フィードバックを本文中に埋め込んでおいたりすることができます。
- コンテンツキュー : AIを使って、最新の内容が反映されたパフォーマンスの高い記事を特定できます。逆に、パフォーマンスが低く、改善やアーカイブが推奨されるコンテンツを把握することも可能です。
- コンテンツブロック : 複数の記事やヘルプセンターを横断して公開されているコンテンツを、シームレスに更新できるようになります。1つのコンテンツブロックを変更するだけで、すべての記事に変更内容が反映されます。
- 公開予定/非公開予定 : 休日限定コンテンツなどの時間の制約があるコンテンツを、必要なときにだけ公開できるようになります。
- チームパブリッシング : 各分野のエキスパートが、コンテンツの作成、管理に参加できるようになります。これにより、コンテンツの正確性に関して、サポートチーム以外のメンバーからも有意義な意見をもらえるようになります。
5. 検索性を最適化できる
コンテンツの分類や設計という面以外に、優れたナレッジベース記事テンプレートには、検索性も高いという特長があります。これは、SEOやサードパーティーから間接的に、ナレッジベースから直接、あるいはチャットボットを通してなど、あらゆるチャネルで検索した場合に当てはまることです。セルフサービスでは、この検索性が非常に重要となります。たとえすばらしいナレッジベースの記事を作成できたとしても、その記事をどう見つけてもらうか、どう使ってもらうかを考えなければ、ユーザーの役には立ちません。記事の検索性を高めるには、次のようなポイントを押さえる必要があります。
ユーザーが検索に使いそうなキーワードをタイトルに含める。
- 1つの記事で解決する質問は1つまでにする。ナレッジベースとSEOの検索性が向上します。
- ラベルを効果的に使用し、検索結果が偏らないようにする。どのようなラベルを設定するかで、ユーザーがナレッジベースを直接検索したときの検索結果も変わってきます。こうしたラベルの効果は、自社サイトのトップページなどでチャットボットから記事を検索した場合も引き継がれます。
- 検索バーを使って、必要な情報を1か所で簡単に入手できるようにする。
ヘルプセンターの検索対象に外部ナレッジベースを含めることを検討してもよいでしょう。 - 各分野のエキスパートの意見を取り入れる。
どんなタグを付ければよいか、どのような構成にすればよいかなどをヒアリングし、カスタマージャーニーに合わせて記事を最適化しましょう。
ナレッジベース記事が充実するほど、セルフサービスでのカスタマーエクスペリエンスは改善され、自社が得られるメリットも大きくなります。そのためには、自社の顧客が迷わず簡単に答えにたどり着けるように、さまざまなナレッジベース記事テンプレートの種類を用意することが重要です。