創業当初は、立ち上げたばかりのカスタマーサービスチームが顧客に共感を示し、1人ひとりに合わせたカスタマーサービスを提供できるかどうかが、将来の成長の基礎を築くうえで重要なカギとなります。では、実際に成長を遂げられたころには何が起こるのでしょうか。顧客基盤が急激に拡大した場合でも、長年計画してきた事業のグローバル展開を実行に移す場合でも、多くの企業はある問題に頭を悩ませることになります。それは「企業規模が拡大してもなお、カスタマーサービスチームが顧客に寄り添った対応を続けていくにはどうすればよいか」という問題です。
この問題に直面できるのは喜ばしいことです。そして、企業文化やプロセス、ツールを見直せば、最も重要な資産である顧客を中心に据えたまま、ビジネスを展開していくことができます。
企業文化とプロセス
採用選考時に重要なスキルとして共感力を持ち合わせた人材を見つけることも不可欠ですが、共感力は習得・強化できるということも十分に証明されています。共感力やパーソナライゼーションのトレーニングを1回限りではなく綿密に確立すれば、優れたサービス提供を推進する企業文化が醸成されます。さらに、AIの活用によって、サポート担当者は時間を有効に活用できるため、共感力とパーソナライゼーションを発揮して高水準のサービスを提供できるようになります。
それでも、共感力の強化はスタート地点にすぎません。カスタマーサービスチームが拡大するにつれて、新人研修からトレーニング、QAに至るフィードバックループを形成し、どの対応に効果があったのかを見極めて、プロセスを調整することが必要になります。これにより、チームリーダーはサポート担当者の業績を正確に測定できると共に、従業員が顧客の話に積極的に耳を傾けてサポートするにはどうしたらよいか、的確なコーチングを提供できるようになります。このプロセスでは、実際の業務からのデータも蓄積されるため、新人研修と定期トレーニングの改善に活用できます。
これと並行して、品質フレームワークを作成することも重要です。優れたサービスの条件を詳しく定義するだけでなく、顧客1人ひとりに合わせて真摯に対応する自由を担当者に与えることができます。担当者は自らの判断に従って行動する権限を手にする一方で、チームリーダーは顧客対応を監視し、ソフトスキルを指導し、ブランドボイスの一貫性を確保することができます。
業務に適したツール
顧客対応において共感を示すことの重要性を理解したなら、現在の顧客像を正確に把握する必要が出てきます。そのためには、顧客プロフィールの一元管理が必要です。サポート担当者は、社内外のプロフィール情報からサポート以外に関する属性を確認することで、自社と顧客との関係性を完全に把握することができます。
特に、顧客が複数のブランド、アプリ、チャネルを通じて企業と接点を持っている場合には、プラットフォームごとに異なるプロフィールを登録していることがあるため、一元管理の重要性が高まります。こういった重要な詳細情報を1つに統合すると、姿の見えない顧客について多角的に理解を深められるようになります。
また、Webアプリやモバイルアプリのカスタムイベントを定義して取得することも重要です。そうすれば、担当者は顧客の過去の行動を把握して、事前対応型のサポートを促進し、店舗での購入、ショッピングカートのアクティビティー、メールの開封、注文ライフサイクルのアクティビティー、プランやソフトウェアのアップグレード、販売サイクルなど、あらゆる顧客エクスペリエンスに注意を払っている姿勢を顧客に示すことができます。加えて、サブスクリプション、製品、注文などのカスタムオブジェクトをサポートシステムに作成すれば、顧客による製品やサービスの利用状況についてさらに詳細に把握できます。
成長に伴う課題に直面したときには、これらのツールを整備すると共に、集中的かつ入念なトレーニングを実施し、質の高いカスタマーサービスを明確に定義しましょう。そうすれば、顧客の期待に応えるだけでなく、顧客の期待を上回るようなサービスを引き続き実現できます。