活発なユーザーコミュニティでは、製品の使い勝手を知り尽くしたユーザーどうしが集って交流することができます。こうしたコミュニティの存在は、企業が顧客へのサポートを拡大していく中で、ますます重要性を増してきています。それは、InVisionでも例外ではありませんでした。同社の手掛けるデジタルプロダクトデザインプラットフォーム「InVision」は、製品開発の共同作業を効率化するツールで、Adobe、Uber、Evernoteなどの名だたる企業でも使用されています。
活発なコミュニティがあれば、顧客は自身が抱える課題の最大の理解者とつながることができます。その理解者とは、言うまでもなく、他の顧客です。InVisionが運営するコミュニティサイト「InVision Community」は、他のサポートチャネルと相互に補完しながら、顧客をセルフサービス用コンテンツへと誘導することで、エージェントをよくある質問への対応から開放し、本当に人手が必要な問い合わせへの注力を可能にしています。また、顧客から製品フィードバックを吸い上げる場所として機能しているほか、顧客が互いにつながる交流の場としても利用されています。
従来の枠にとらわれないサポートのかたちを見いだす
InVision Communityは、サポート担当シニアディレクターのSean Kinney氏が率いる、カスタマーサービスチームによって運営されています。このコミュニティは、デザイナーどうしがInVisionに関する疑問を解決し合い、ベストプラクティスを引き出せる場を作ることを目的とし、2017年に開設されました。開設以来、ユーザーの数は増え続け、エンゲージメントも向上の一途をたどり、今では投稿数が月平均40件、閲覧数は32,000回にまで達しています。これにより、InVisionのチームは、従来の枠にとらわれない新しいカスタマーサービスのかたちを見いだすことができました。
Kinney氏は次のように話します。「どれだけ製品ドキュメントを充実させても、こちらがカバーできる質問には限界があります。我々がまったく想定していない見方でコンテンツを捉え、思いも寄らない表現を使って質問してくるユーザーがいるからです。そんなときに、別のユーザーが助け舟を出して、ユーザーどうしで疑問を解消できるような場があればという思いから、コミュニティを開設したのです」
活発なコミュニティを通じて、幅広いサポートを提供する
公式の製品ドキュメントがカバーできる範囲はごく限られています。対してコミュニティでは、幅広いユーザー層の意見に触れられると共に、さまざまなユースケースを利用できるという点が大きな魅力です。
ヘルプセンターでセルフサービス型のサポートを利用できるのと同様に、コミュニティでは「多対多」型のサポートチャネルという形態を通して、顧客は他のユーザーに問題解決の糸口を求めることができます。Kinney氏によると、InVisionでは継続的にコミュニティを拡大してエンゲージメントを高められるよう、また、そこでコミュニケーションや共同作業を行うメリットをユーザーに理解してもらえるように尽力し続けていると言います。なぜなら、効率的にサポートを拡大していくうえで、コミュニティこそが重要な役割を担っていると見なしているからです。開設以来、セルフサービスの利用率やヘルプセンターの閲覧数が伸び続けているという事実からも、InVision Communityが今や安定した基盤を築いていることは明らかです。また、コミュニティを開設したことで、フリーミアムプランの顧客にも高品質のカスタマーサービスを提供できるようになった一方で、サポートチームにも時間の余裕が生まれ、より複雑な問題の対応に専念できるようになりました。
「私たちの目標は、InVision Communityをできるだけ自給自足型のコミュニティに近づけることです。社内の人間がすべての投稿に逐一回答するのではなく、顧客間で知恵を出し合えるようなコミュニティとして成り立たせたいのです」
InVisionのチームは、最近自社サイトをリニューアルして、コミュニティを前面に押し出し、宣伝も増やすようにしたところ、コミュニティへの投稿が50%増加しました。チームは今もそうした取り組みを続けており、コミュニティへのトラフィックをさらに増やしたいと考えています。
「コミュニティを導入したおかげで、より高度な専門知識が必要なチケットに対し、チームのリソースを重点的に割けるようになりました。当社の活気あふれるコミュニティでは、デザイナーたちが集って疑問を解決し合っています。つまり、我々にとっては、顧客の間で交わされるリアルで興味深いやり取りを目にできる場でもあるのです」
サポートを提供する場から、製品へのフィードバックやアイデアを入手する場へ
InVision Communityがもたらすさまざまなメリットの中でも、特に興味深いのが、サポートの提供とはまた別の面で、ユーザーグループと社内チームの間で相互にプラスの効果が生まれるという点です。
コミュニティフォーラムでは、賛辞にせよ、批判にせよ、製品を実際に使用するユーザーの率直な声を聞くことができます。たとえば、どんな問題を抱えているか、今後の製品にはどんな機能を期待するか、現場でツールをどのように使用、カスタマイズしているかなどといった点を直に知ることができます。製品マネージャーはこの仕組みを活かして、コミュニティでユーザーとやり取りし、そこで得たインサイトを製品ロードマップ、ナレッジベース内のドキュメント、あるいはコミュニティ専用のコンテンツやイベントの改善に活かすことができます。
「コミュニティのおかげで、製品に関する有意義なフィードバックを得ることができるようになりました。また、ユーザーどうしの問題解決のやり取りが全体に公開されているため、チームに届くチケット数も減りつつあります」
コミュニティのメリットを考える際、どうしても問題の解決方法や製品に関するヒント・コツといった面に注目してしまいがちですが、InVisionでは、長期的な目標として、ユーザーにさまざまなトピックへの関心を持ち続けてもらうという点も意識しています。実際に、コミュニティマネージャーは、マーケティングチームと協力しながら、業界情報やブログ記事などのサイト内で発行したコンテンツについて、議論できる場をフォーラムに仕掛けるといった取り組みを行っています。
「これにより、さらに多くのユーザーを呼び込んで、コンテンツを求める場として、ユーザーが主体となってコミュニティを盛り上げてくれることを期待しています。既にそのための取り組みを進めているところではありますが、他にも実現したいアイデアは山ほど残っています」