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社内FAQサイトの制作と活用法|問い合わせ業務の効率化を実現するポイントとは?

更新日: 2024年5月4日

多くの企業が社内FAQサイトを導入し、これを活用して生産性を向上させています。社内FAQサイトは、従業員が必要とする情報をまとめ、FAQ形式で提供するものです。しかし、社内FAQサイトを設置してもうまく活用されず、問い合わせ件数が思ったように減少しないという課題が発生することがあります。機能しないFAQサイトでは、構築する意味がありません。

本記事では、社内FAQサイト構築のメリット、必要な機能、ツールの選び方、および運用のポイントについて詳しく解説します。

社内FAQサイトとは何か

社内FAQサイトとは、業務マニュアルや社員のナレッジなどをFAQ(よくある質問と回答)としてまとめた、社内向けのWebサイトです。例えば、社内ITに寄せられる「システムの使い方が分からない」「パソコンの調子が悪い」「新しいアプリを入れたい」といったパソコン周りに関する問い合わせや、総務・人事などへの「経費申請について分からないことがある」「休暇について知りたい」といった質問とその回答が掲載されています。

社員が迅速に問題や疑問を解決できることから、社員の利便性向上や問い合わせ数の削減を目的として作成されます。提出書類のフォーマットをダウンロードできるようにしている企業も多くあります。

社内FAQサイトを構築するメリット

問い合わせを受ける側のメリット

  • 社内ITや総務・人事の生産性向上を図れる


    社内ITや総務・人事では、社員からの質問の電話やメールによって自分の仕事が中断されてしまうことが往々にしてありますが、社内FAQサイトを作成すれば社員が自分で調べることができるため、質問の電話やメールは削減されるでしょう。仕事が中断されることがなくなればより優先度の高い仕事にリソースを使うことができるので、結果、社内ITや総務・人事の生産性が向上するというメリットがあります。
  • 回答を標準化できる


    社内FAQサイトは、回答の標準化にも役立ちます。例えば、このような経験はありませんか?
    <例>
    社内ITに質問したところ、AさんとBさんの回答が異なっていた。
    社内FAQサイトは、社員の自己解決促進だけでなく、社内ITや総務・人事などが回答する際のマニュアルとしても活用できます。問い合わせに回答する際に社内FAQサイトを参照することで、回答の標準化(誰もが同じ内容、クオリティで答えられること)が可能になるでしょう。
  • 新人教育の効率化


    新人社員が常に参照できる資料として、社内FAQはオンボーディングやトレーニングプロセスを効率化します。業務内で疑問が生じた際にすぐに確認することができるため、効率的な学習が可能となります。
  • 集中的な業務への注力が可能となる


    社内FAQサイトが活用されることにより、基本的な情報や手続きに関する問い合わせの減少が期待できるでしょう。社内IT部門や総務・人事は専門的な業務に集中でき、より重要性の高い業務に時間とリソースを集中させられるようになります。
  • 業務の適切な優先順位付け


    社内FAQサイトによって基本的な問い合わせが減少すると、業務の優先順位付けが容易になります。優先すべき課題や作業の順位付けにより、業務全体への対応を円滑化できます。

問い合わせをする側のメリット

  • 社員の業務効率が上がる


    社内FAQサイトは、質問を受ける側だけでなく質問する側の社員にもメリットをもたらします。例えば、次のような例を考えてみましょう。
    <例>
    業務のために新しいソフトウェアをインストールする必要があったが、社内IT部門担当者の退社後だったため質問できず、続きは翌日に持ち越すことになってしまった。
    このような場合、インストールのプロセスに関する情報が社内FAQサイトに載っていれば、その場ですぐに解決できます。そして、社員が売り上げに直結する本来の業務に注力できるようになるというのも、社内FAQサイト導入のメリットと言えるでしょう。
  • 情報の迅速な取得が可能となる


    担当者の勤務時間にかかわらず、社内FAQサイトにアクセスすることで、必要な情報を迅速に取得できるようになります。待ち時間がなくなると、いつでもその場で疑問が解決でき、集中して業務に取り組めます。
  • 自己解決の機会が増加する


    社内FAQサイトを活用することで、問題や疑問を自ら解決できる機会が増えます。情報を自分で見い出し、課題の解決を行うことで自律性が養われます。
  • 柔軟性と利便性が拡大する


    社内FAQサイトはいつでもどこでもアクセス可能であり、柔軟性と利便性に富むツールです。必要な情報がオンラインで参照できるため、作業の妨げにならず、業務上のストレスが緩和されます。
  • 提供手段が多様化する


    社内FAQサイトはテキスト形式だけでなく、画像や動画などさまざまな形式で情報が提供される場合もあります。利用者は視覚効果を用いることで、より具体的で分かりやすい情報を得ることができます。
  • 回答する担当者によって回答が異なることがなくなる


    属人化の防止は、問い合わせをする側とされる側の双方にメリットがあります。問い合わせた際に担当者によって回答が違うと、「同じ問い合わせをした同僚と異なる回答をもらった」「前回は問題がなかった申請で今回は不備が指摘された」などの事態が起きてしまい、問い合わせた側は大きなストレスを感じます。社内FAQサイトに回答が用意されていれば、常に統一された質の高い回答を得ることができ、スムーズに業務に集中することができます。
  • 部門内の新入社員や転籍者に教える手間が省ける


    新入社員や転籍者は疑問や知りたいことが生じたとき、バックオフィス部門に問い合わせする前にまず自部門内の社員から回答が得られないかを確認します。そのため、新入社員や転籍者が多い部門では問い合わせを受ける部門と同じ状況になってしまい、業務の効率が低下しがちですが、FAQの利用を促すことで業務を効率化できます。
    また、教育する手間が省けると同時に教える内容の標準化もでき、指導者によって教える内容が異なることなく、均一で質の高い教育が可能です。

社内FAQサイトの活用が進まない課題と理由

「作って終わり」の考え方

FAQサイトを常に更新・追加して利用価値を高める姿勢がないと、利用者側では「まずFAQサイトを見る」という文化が根付きません。構築すること自体に満足してしまい、活用するまでのビジョンが不足すると、存在意義のないものとなりかねません。

社内FAQサイトの目的や存在が社員に浸透していない

社内FAQサイトの目的や存在が浸透していなければ利用されません。社内FAQサイトは利用者の意見や要望、利用頻度などのフィードバックが多いほど、それを反映していくことで利用価値の高いFAQサイトになっていきます。そのため、目的や意義を社員に伝え、利用を促進させることが必要です。

自分で調べるより質問する方が楽で早いと思い込んでいる

社内FAQサイトの目的や意義を浸透させないと、自ら調べるより「聞く方が簡単」という意識が芽生えて利用が進みません。また、「聞く方が簡単」という意識のままでは、聞かれる方の負荷が考慮されないため、企業全体としての業務効率化、生産性の向上がいつまでもできません。
その意識を改善するには、バックオフィス部門の問い合わせ対応業務の負荷が重くなれば全社的な損失につながるということを、社内全体に浸透させなければなりません。

必要な情報を見つけにくい、見つけられない

FAQサイトで必要な情報が見つからなければ、いくら社員の意識を高めてもFAQサイトの利用は進みません。必要な情報を見つけにくい場合の主な課題は、「情報はあるが見つけられない」と「そもそも必要な情報がない」の2つです。

「情報はあるが見つけられない」という課題は、以下に挙げるような検索性や操作性の悪さのせいで利用するモチベーションが高まらないことです。

  • キーワード検索のヒット率が低いうえ、関連する適切な情報のサジェストもない

  • カテゴリー分けができていない、または適切ではないので情報が見つけにくい

  • 直感的に操作できないが、操作するためにマニュアルをわざわざ読む気が起きない

「そもそも必要な情報がない」という課題は、必要なFAQの追加、更新が進まないためで、その主な理由は以下です。

  • 追加、更新する作業者が誰なのかが曖昧になっている

  • 作業者が配置されていても、追加、更新するプロセスやルールが定められていない

  • その結果、FAQサイト利用状況の分析や顧客のフィードバックによる効果的な情報の追加、更新ができていない

  • タイミングや頻度のルールが曖昧なために、追加、更新が遅れる

  • 作業が面倒なために追加、更新が遅れる

「必要な情報を見つけにくい、見つけられない」という問題では、上記の2つの課題を解決しなければなりません。

情報に抜けや漏れが多く役に立たない

必要な情報を見つけられても、その内容の品質が低いとFAQだけでは解決できないので、問い合わせは減少しません。検索されてもなぜ問題が解決しないのかを分析、把握して、必要な情報を加えて充実させなければなりません。また、検索しても適切な情報がヒットしないようであれば、情報の追加が必要です。

新しい情報がなく、古い情報が残り続けている

時間の経過とともに情報が追加、更新されないと役に立たないだけでなく、問い合わせ者が間違った情報に基づく判断、行動をしてしまうリスクが高まります。また、古くて使えなくなった情報が残り続け、それが増えると検索しづらくなります。

システムの機能が不足している

FAQサイトの構築、運用にはシステムの導入が必要ですが、機能が不足していると構築、運用の両方に課題が生じます。課題の残るFAQサイトは利用が進まず、FAQの充実を妨げます。FAQの追加、更新による充実が進まなければ、それが利用の低下につながるという悪循環が生まれて、いつまでもFAQは利用されないままになってしまいます。

社内FAQの効果的な構築方法


社内FAQサイトを構築する方法は、自社でシステムを開発する方法と専用FAQシステムを利用する方法の2つがあり、それぞれにメリット、デメリットがあります。

自社開発のメリット

  • カスタマイズ性
    企業の特定の要件に完全に適合する形でFAQシステムを設計できます。
  • 統合性
    既存のシステムやプロセスにシームレスに統合できます。
  • コントロールとプライバシー
    データの管理とプライバシーを自社で完全にコントロールできます。

自社開発のデメリット

  • 開発の手間
    開発には専門知識と時間が必要となり、企業の業務やリソースを圧迫します。
  • 管理とメンテナンス
    システムのメンテナンスやアップデートを自社で行う必要があり、手間がかかります。
  • 開発コスト
    開発および円滑運用のための維持には、かなりのコストが予測されます。

専用FAQシステムのメリット

  • 簡易性と速度
    短時間でFAQサイトを作成し、即時の利用開始が可能です。
  • ユーザーフレンドリーな画面
    インターフェースが直感的で、開発時の操作、運用における管理が容易です。
  • サポートとアップデート
    FAQシステムのプロバイダーが、サポートや定期的な機能のアップデートを提供します。

専用FAQシステムのデメリット

  • カスタマイズの制限
    プラットフォームによっては、一部のカスタマイズが制限される可能性があります。
  • 継続的な費用
    多くの専用FAQシステムはサブスクリプションベースの料金設定となっており、継続的に費用が発生します。
  • データのプライバシー
    データはプロバイダーのサーバーに保存されるため、データのプライバシーとセキュリティに関する考慮が必要です。

どちらが自社に合っているか分からない場合は、まずは専用FAQシステムの無料トライアルを利用して実際に使ってみるのがおすすめです。専用FAQシステムがどのようなものなのかが分かれば、自社開発と比較検討しやすくなるでしょう。

社内FAQシステムに求められる機能

  • テンプレートが充実している


    テンプレートが豊富であれば記事を書くだけでいいので、すぐにFAQサイトを立ち上げられます。多彩なテンプレートがあれば、異なる種類のコンテンツを簡単に作成し、統一性を保ちながら情報を提供できます。
  • 使いやすいインターフェースが備わっている


    ユーザーフレンドリーで、構築や運用に手間がかからない使いやすいインターフェースであれば、導入・運用がスムーズに行えます。
    使えるツールであるためには、社員を簡単にナビゲートでき、必要な情報に素早くアクセスできるようなデザインが求められます。モバイルデバイスから利用しやすいデザインであることも必要です。柔軟な働き方に対応するためには、社員が外部からアクセスしやすいという点も重要と言えます。
  • サイト内をカテゴリー(セクション)で分けられる


    例えば、経理、情報システムなどの部門や、事業分野別、製品別など、問い合わせに応じてカテゴリー(セクション)分けができると、検索しやすくなって使いやすくなります。
    この機能が充実していれば、異なるテーマや部門ごとに情報を整理し、ユーザー側の探しやすさを向上させられます。
  • 記事ごとにフィードバックを受けられる


    作って終わりにせず、利用者に役立つより良いFAQサイトにするには、記事ごとにフィードバックを受けることができ、それをもとに修正・更新ができることが重要です。
    ユーザーの意見や改善点を把握し、FAQサイトやFAQ記事の質を向上させることが可能となります。
  • 記事の承認者を設定できる


    記事の品質を確保するには、できた記事をチェックして承認してもらうプロセスが必要です。これにより記事の信頼性を高められます。
    情報の正確性を確保し、誤った情報が掲載されるのを防ぐことでFAQサイトの信頼性が高められます。
  • 問い合わせの分析ができる


    よく検索されるキーワード、よく見られている記事、満足度が高い・低い記事などを分析することで、より使いやすくて活用されるFAQサイトにするためのPDCAを回せます。利用状況や効果を定量的に把握できる統計レポートの生成機能があると、運用の効果的な改善が可能です。
  • 検索機能が高度である


    正しい回答を導くためには、強力な検索機能が必要です。キーワード検索や関連記事の提案など、素早く正確な情報にアクセスできるようにすることが、利用する側にとっては大きなポイントとなります。
  • マルチメディアコンテンツの統合が可能である


    テキストだけでなく、画像や動画などのマルチメディアコンテンツを統合できる機能があると、情報の理解が深まりやすくなります。
  • アクセス制御とセキュリティ機能


    機密性がある情報に対してアクセス制御が可能で、セキュリティ機能が充実していることが重要です。特定の情報に対するアクセスを制限できるようにすることが求められます。

社内FAQサイト立ち上げとFAQシステム選定のポイント

社内FAQサイト立ち上げのポイント

これから新たにFAQサイトを立ち上げる際のポイントは以下のとおりです。

  • FAQサイトの導入目的の明確化


    単純な問い合わせ件数の削減、幅広いナレッジ管理を意識した情報共有、社員の育成や指導の負担軽減など、主な目的を明確にします。これにより、推進体制や運用ルールの策定、システムの選定がしやすくなります。
  • 主な利用者の範囲を想定


    FAQサイトの導入目的によって、主な利用者、FAQの内容、問い合わせ件数や難易度、効率的な運用方法が変わる可能性があります。問い合わせ件数が多くなることが想定されるのであれば、問い合わせ管理やチャットボットとの連携をすることで、効果的に問い合わせ業務を効率化できます。
    あらかじめ利用者のニーズを十分に理解しておくことで、問い合わせに対する満足度の高いFAQサイトを実現します。
  • 導入目的や自社の規模に合ったシステムを導入


    機能やコスト、運用・管理のしやすさ、チャットボットとの連携、情報の一元管理など、自社の導入目的や規模に合ったシステムを導入します。
    FAQシステムを導入する目的には、問い合わせ件数の削減、業務の効率化などが挙げられますが、どこに重点を置くかによってもシステムの選び方が変わります。また、企業規模によっても、必要な機能やシステムは異なります。
    例えば、大規模な企業では、情報の一元管理やアクセス権限の管理などが重要です。あるいは、グローバル展開している企業では、多言語対応の機能が求められる場合もあります。
  • システム導入による成果指標を設定


    問い合わせ件数の削減、自己解決率などの指標を設定し、現状把握のための調査の継続・分析で目標に対する評価を行い、PDCAサイクルを回してFAQサイトを改善していきます。
    現状把握のための調査の継続・分析で、目標に対する評価を行います。具体的な調査方法としては、社内アンケート、ヒアリング、アクセス解析などがあります。定性・定量分析により、客観的な評価を実施することが大切です。
    「作って終わり」にしないためには、変化する業務ニーズに対応するFAQシステムであることが重要です。そのためにも、常に改善を重ねる姿勢が求められます。

社内FAQシステム選定のポイント

  • 自社の目的やニーズに合った機能を備えていること


    コスト、規模、拡張性、必要な機能など、目的やニーズを満たせるかを確認します。問い合わせ管理機能やチャットボットとの連携機能があると、よりいっそう業務効率化を実現できます。例えば、多様な問い合わせチャネルに対応した一元管理や、FAQで解決できなかった問い合わせに対するチャットボットの自動回答を実現できます。
  • アクセスできるデバイスを選ばないこと


    パソコン以外からもアクセスできると、出張中や離席中でも場所を気にせずに利用できます。
  • セキュリティ機能に優れていること


    FAQには機密性の高い情報や社外秘の情報も含まれるため、セキュリティ機能が弱いと情報が漏えいするリスクがあります。また、社内の特定の部門、あるいは一定以上の職位者にしか公開しない情報も含まれるため、アクセス制限機能が必要です。
  • FAQを充実させられる分析機能に優れていること


    FAQサイトは作って終わりではなく作ってからがスタートのため、より良いFAQサイトにしていくためにPDCAサイクルを回せる分析機能が必要です。
  • 操作性に優れ、誰でも使えること


    FAQサイトは、ITリテラシーが高くない人でも容易に操作できなければなりません。ツールの無料お試しがあれば、導入前に操作性を確認できます。
    Zendeskの社内FAQの記事作成画面
  • 拡張性に優れていること


    組織の成長や変化に合わせて、システムを拡張できるかどうかも重要な考慮事項です。専用のFAQシステムを活用して必要最小限な状態から始める場合には、料金や拡張性を事前に確認し、必要となる機能を追加できる柔軟性があるかを検討します。
  • 最適なコストバランスであること


    価格は開発、運用段階それぞれに関わる重要な要素です。自社でFAQシステムを開発する場合は、開発コストやサーバー代、セキュリティの確保にかかるコストを、現実的に見積もる必要があります。
    専用のFAQシステムを利用する場合は、トータルでの料金プランを入念にチェックします。初期費用は必要か、課金形態はどうなっているのか、必要な機能を使う場合は費用が追加されるかを調べ、予算内に収まっているかを確認しましょう。
  • 適切なサポート体制がある


    専用FAQシステムを利用する場合は、ベンダーのサポート体制も確認する必要があります。FAQサイトはあるか、チャットやメール、電話のサポートはあるか、24時間サポートはしてくれるのかといった点について、適切な支援が提供されるかどうかをチェックします。

社内FAQの活用を推進するために必要なポイント

すでに社内FAQサイトを導入済みの場合。活用を推進するポイントは以下のとおりです。

  1. FAQ利用状況の把握

    前述の「社内FAQの活用が進まない課題・理由」に基づいて現状を把握します。
    まずは、社内FAQの利用状況を把握することが重要です。利用率や閲覧数、検索ワードなどを分析することで、社員がどのような質問を持ち、どのようなコンテンツを求めているのかを把握することができます。データ収集以外に、従業員に話を聞きに行くことも有効です。外部の顧客に話を聞きに行くよりも手軽で、本音のフィードバックが得やすくなります。

  2. 調査・分析の実施

    現状把握のために、アクセス解析をしてアクセス数、滞在時間、離脱率、問い合わせ全体に対するFAQサイトの利用率や自己解決率、利用者の満足度などについて調査・分析を実施します。調査・分析は定期的に実施し、継続的に改善を続けます。

    利用状況の把握に加えて、社員への調査や分析を行うことも有効です。社員のFAQサイトに対する意識や利用における課題などを把握することで、より効果的な改善策を検討することができるようになります。

    ZendeskのFAQ分析レポートのサンプル

  3. FAQの利用を推進する体制づくり

    現状把握のための調査・分析によって明らかになった課題を、解決するための体制を整備します。また、運用のためのプロセス、ルールがない場合には、策定が必要です。

    FAQサイトの運用を円滑に進めるためには、運用担当者を設置し、ルールを設定する必要があります。運用担当者には、FAQサイトの更新や管理を行う責任者であることへの意識が求められます。FAQサイトの目的や目標を理解し、社員のニーズを把握したうえで、FAQサイトの円滑な運用を目指します。

    FAQサイトの文体や表記方法、カテゴリー分けなどについて、あらかじめルール設定することで、情報の品質を一定に保つことができ、ユーザーが使いやすいシステムとなります。
    ルールの設定・変更について、運用担当者に周知、徹底します。

  4. 情報のアップデートや追加でコンテンツを充実

    FAQサイトの利用促進には、まず情報の充実が必要です。テンプレートの活用で誰でも情報の追加、更新ができる仕組みを作って、情報のアップデートやコンテンツの充実を目指します。同時に、情報の内容についての改善も行います。

    FAQサイトに掲載する情報は、常に最新の状態に保つ必要があります。変更される可能性のある制度や手続き上のルールなどは、定期的にアップデートすることが大切です。社員からの質問や意見を参考にして、FAQを充実させていきます。

    古い情報は、社内の認識のずれや業務への支障を引き起こす恐れがあります。FAQシステムの信頼性を担保するためにも、最新の正確な情報維持が不可欠です。

    調査の分析結果や社員の意見を広く集め、内容を分かりやすい表現に変えて、自己解決率の高いコンテンツになるように修正します。分析の結果に基づいて、利用頻度の高い情報から優先的に実施すると効果的です。

  5. FAQシステムの見直し

    FAQサイトは記事の量と品質に比例して活用価値が向上するため、定期的なアップデートとともに重要なことは、FAQサイトを使いやすく改善していくことです。

    現行のFAQシステムで効果的な機能が不足している場合、具体的にどの機能が必要であるかを明確にし、不足している機能を補うための見直しを行います。ユーザーからのフィードバックを集約し、FAQシステムの使い勝手の悪さや問題点を特定しながら、システムの改善点を導き出します。

    改善を重ねることで頻繁に利用されるようになり、問い合わせ件数が減少し、業務をより効率化できます。利用状況の分析、社員からの意見の収集、FAQサイトで解決できなかった質問に対する記事の見直しや新規記事の作成・追加などで、FAQサイトの価値を継続して高めていかねばなりません。

社内FAQの活用で問い合わせ業務を効率化した企業の事例

株式会社ディー・エヌ・エー「社内ヘルプデスクにZendeskを導入。DeNAを躍進させるEX向上とナレッジ活用の巨大なインパクト」

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は、ゲーム事業やEC事業を中心に事業を拡大している企業です。同社にはIT戦略部、人事部、総務部の3つの部門が連携して立ち上げた社内ヘルプデスクが存在していました。2018年に社内3部署のヘルプデスクを統合し、2021年にはZendeskを導入。Slackとの連携により、問い合わせの一元管理、自己解決率の向上、業務の大幅な効率化などに成功しています。

2018年に統合していたころは、他社のカスタマーサポートシステムを使っていたこともあり、ヘルプデスクを統合したあとも、誰がどこまで対応しているのかが把握しにくい状況が続いていました。そこで採用したのがZendeskでした。社内向けのシステムに導入するのは初めての試みでしたが、複数の部署をまたぐ案件でも、誰がどこまで処理したのかを明確に可視化でき、まさに最適なシステムでした。

Zendesk導入は、同社の業務に数々のメリットをもたらしました。ナレッジ活用や問い合わせ対応の効率化が進んだことにより、エクスペリエンスが大幅に向上。Zendeskの採用を機にFAQサイトが導入された結果、月単位のチケット起票数は当初の4か月間でピーク時から約3割減少しています。とりわけ初歩的な内容の問い合わせは、事実上皆無になりました。

初回回答時間も、Zendeskの導入当時は平均70分ほどを要していたところ(3部署総計)、利用が進んだ結果、40分程度に短縮。当月解決率は91%に上昇しています。このようなエクスペリエンスの向上は、ヘルプデスクそのものの認知度や信頼、期待値も高めました。同社ではチケットが解決されるたびに回答の速さと内容、対応の丁寧さなど5項目からなるアンケートを実施し、今後の運用改善に役立てています。

株式会社エイチーム「グループ会社全体における社員からの問い合わせ対応の品質向上とスピードアップを推進」

株式会社エイチームは、インターネット・スマートデバイスをベースとしたサイトを企画・開発・運営する総合IT企業です。同社は、3つの柱の事業を展開しており、グループ全体の社員数が増えるとともに、社内での問い合わせ件数・種類が増加しています。

専任ヘルプデスクがない同社では、さまざまな問い合わせ先と問い合わせ手段(メール・チャット・口頭・電話など)があることによって、社員がどこにどの手段で問い合わせるべきか迷うということが発生していました。また、問い合わせの一元管理、進捗管理ができておらず、問い合わせ対応の抜け・漏れの発生や、増加する問い合わせ件数の削減ができない状況になっていました。

この状況を改善するため、「FAQサイトによる自己解決の促進」「問い合わせ窓口の一本化」および「問い合わせ状況の可視化・分析」を目標にZendeskを導入します。本格稼働が開始されたばかりで具体的な数値による効果は出ていませんが、同社は「問い合わせの自動振り分け」「問い合わせの件名の入力だけで関連するFAQ記事の提示」などの機能による効果を期待しています。

株式会社佐賀銀行「FAQサイトをキーソリューションに行内業務の効率化と顧客接点の刷新を推進」

佐賀銀行では、問い合わせの多くはコールセンターや営業店に電話で寄せられていました。問い合わせには、ホームページで検索すれば自己解決できる質問も少なくありません。しかし、こうした質問であっても回答するには幅広い金融知識が必要で、問い合わせを専門部署へ回すエスカレーションが頻繁に発生していました。

これでは手間がかかるだけでなく解決時間も長引きます。なかには間違った回答をしたり、専門部署からも回答が得られずに問題解決が遅延したりするケースも生じていました。また、全体の65%程度を占める営業店への問い合わせは、口頭で対応していたために記録がされず、データとして活用されていないという課題も抱えていました。

そこで、Zendeskを導入し、ホームページ上に散在していた既存のFAQを集約。FAQで解決しない場合にはチャットで行員が対応する仕組みを確立します。その結果、コールセンターへの電話件数が去年比で毎月平均15%程度減少するという効果が出ています。

Classi株式会社「ヘルプページの再構築で自己解決を促進 顧客を理解し改善を回すきっかけに」

Classi株式会社は、高校を中心とした学校教育機関向け学習支援プラットフォームを提供する企業です。同社のサービスは利用者が先生・生徒・保護者の三者で、必要な機能も分かれているため、サポートが一様にできない特徴があります。さらに、契約主体は学校ですが、利用者数が多いのは先生より生徒や保護者です。そのため、操作に不慣れな生徒や保護者は必要な情報にたどり着けないことが多く、先生に問い合わせが集中し、負荷が高まることがあるという課題を抱えていました。また、ヘルプページも内製であったため、画像や動画の挿入、文字の装飾ができず、メンテナンスや分析にも手が回っていませんでした。

そこで、最も利用している生徒や保護者が自己解決できるようになることを重視して、ヘルプページを再構築するためにZendeskを導入しました。同時に、副次的効果として先生の負荷の軽減を図ります。導入の決め手は、カテゴリー別、セクション別に階層を細かく設定できる点でした。導入後、問い合わせの傾向に応じた記事の追加や、検索にヒットするようなキーワードの調整を実施。また、Webフォーム経由の問い合わせには、問題解決に役立つ記事へのリンク紹介を活用し効率よくサポート業務が行えるようになりました。

社内FAQサイトの有効活用によって業務効率・生産性向上を実現

社内FAQサイトによって、よくある質問や疑問を社員がいつでも簡単に自己解決できるようになれば、社内業務全体の効率が向上します。問い合わせ件数の削減や情報の属人化の防止、コミュニケーションの円滑化など、もたらされるメリットは数多くあります。しかし、社員が本当に求めるFAQを提供できないと利用数が伸びず、せっかく構築しても労力が報われない結果となりかねません。

使われるFAQサイトにするためには、導入目的や自社の規模に合ったシステムであること、ルールを設定して定期的にアップデートしながら、鮮度の高い情報提供をしていくことが求められます。ポイントを押さえたFAQサイト構築および運用が実施できれば、業務の力強いサポート役となることが期待できます。

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