アメリカの心理学者Albert Mehrabian氏が1967年にコミュニケーションは以下の3つの要素から成るという「7%-38%-55%」の法則を提唱しました。
実際に話している言葉(7%)
声のトーン(38%)
言葉や声に付随するボディランゲージ(55%)
会話の中で「ありがとう」などのポジティブな言葉を使っても、顧客に与える印象はわずか7%に過ぎません。顧客との真のつながりを構築するためには、ポジティブな声のトーンやボディランゲージも取り入れる必要があります。これは、電話や対面での会話、そしてメールなどの文章においても当てはまることです。
声のトーンの定義
「声のトーン」にはいくつかありますが、一般的には、発する言葉をどのような声の質や感情で表現するかといった、態度や姿勢によって決まります。
例えば、アメリカのメール配信プラットフォームであるMailChimpは、「トーン」と「声(ボイス)」との違いを以下のような例を挙げて説明しています。
「声(ボイス)とトーンには違いがあります。次のような例を考えてみてください。あなたの声(ボイス)は常に同じですが、声のトーンは変化しています。親しい友人や家族に対してと、上司に対してでは、異なるトーンで話しているかもしれません。」
カスタマーサービスシステムの評価を行うSoftware AdviceのアナリストJay Ivey氏によると、カスタマーサービスのメールやチャット、または、その他のテキストコンテンツにおけるトーンは、言語(つまり、言い回し、構文、言葉、句読点)のみで伝えられ、話し手の声のトーンやボディランゲージによるものではありません。
顧客は、口頭でのコミュニケーションと同様に、言葉やテキストによるコミュニケーション・チャネルにおいて伝わってくる態度にも敏感です。カスタマーサポートスタッフは、言葉や句読点の微妙な違いがコンテンツのトーンをどう変化させるのか、そして、聞き手の感情や期待に対してどのトーンが最適かをいかに判断するかを知っておくことが重要です。
カスタマーサポートが使用すべき声のトーンとは
カスタマーサポートスタッフは、適切なトーンを選んだら、それを続ければ良いというものではありません。トーンは、顧客の様々なニーズを満たすために、絶えず変化させていく必要があります。幸いなことに、書くときに使われる特定のトーンについては、全サポートスタッフが取り入れ、状況に応じて変えていくことができています。それは、多くの場合、企業のライティング・ガイドラインに盛り込まれています。
カスタマーサービススタッフは、顧客のニーズに共感することを学ぶ必要があります。もし顧客が何かに困って問題を解決したいと思っているときに、電話やメールで「災難ですね」「最悪ですね」などといった軽率な冗談を言うのは適切ではありません。顧客は、あなたの会社に対して既に苛立っているので、火に油を注ぐようなことは避けるべきです。
一方で、もし顧客が遊び心を感じさせる返答をしてきた場合には、コンテンツに多少のユーモアを含ませることは間違いではありません(節度を保つ必要がありますが)。そうすることで雰囲気が良くなり、良い評判がインターネット上で拡散される可能性もあるでしょう。
残念ながら、顧客がどのようなトーンを好むかを常に予測することは不可能です。Software Adviceでは、様々なサポートの状況において人々がどのようなトーンを好むのかについて、さらに踏み込んだ調査を実施しました。以下にその概要を紹介しましょう。
注:
Software Adviceの調査はメールでのサポートに焦点を当てたものですが、他のチャネルにも適用可能な調査結果です。
顧客は堅苦しくない会話を好む
サポートスタッフがニュートラルなトーンを取り入れることは、顧客とのやり取りにおいて最も安全な方法かもしれません。しかし、それが常に絶対的に正しいとは限りません。
Software Adviceが実施した最初の調査では、調査対象顧客の65%が、サポートスタッフが「カジュアルな」トーンでやり取りしてくれることを好むことが明らかになりました。
そして大変興味深いことに、その分布は、全ての年齢層、性別の統計に現れていました。若年層でも年配層でも、顧客はメールにおいては総じてカジュアルな口調とスタイルを好むということが、ここからわかります。
プロによるアドバイス:
ロボットではなく人間でなければならない。顧客とコミュニケーションをとる際は、常にほんの少しだけフランクに、そして、自然な言葉を使いましょう。対話において、あなたが作り上げたいストーリーやムード、フィーリング、そして雰囲気について考えてみるのです。短縮形や感嘆符を使っても問題ないので、自分らしさを出すことを恐れないでください!
状況を重視する
顧客は一般的には、より人間らしくフレンドリーなトーンを好みますが、サポートするにあたっての対話の状況は、その時により異なります。サービススタッフはその時の状況を判断し、アプローチの方法を考え、適切に対応する必要があります。
Jay Ivey氏によれば、たとえば顧客は、デリケートな状況下でのくだけた態度に対して、無神経や横柄、もしくは不適切であると感じる可能性があるといいます。そのような対応では、顧客を良い気分にさせることはできないでしょう。
圧倒的多数の顧客(78%)が、もし自分の要求がカジュアルなトーンで否定されたら不満を感じると回答しています。一方、要求がフォーマルなトーンで受け入れられた場合、それが満足度に影響を与えたと回答した人はわずか35%でした。
プロによるアドバイス:
サポートスタッフは、怒っている人や動揺している人に対して注意深く対応するべきです。その場合は、あえて苦労して感情の大きさを知ろうとする必要はありません。当然のことですが、こうした状況の顧客は、対応する相手のトーンに対して敏感になる可能性が非常に高くなります。最良な対応は、カジュアルすぎず、また、フォーマルすぎることもない自然なトーンを保ち、他のテクニックを活用してその状況の緊張を和らげて良い雰囲気にすることです。もしもそのサポートの内容がTwitterに上げられたら、それが良い内容であれば良いのです。
話し言葉は時として不適切
カジュアルな冗談は、時として度を越してしまうことがあります。しかしもちろんそれはよくあるスタイルで、特にあなたの会社を代表している話し手や書き手に自然なユーモアがあれば、人の心をなごませることができるでしょう。
過去10年間で、顔文字や絵文字、そして口語表現( “lol”)は、デジタルコミュニケーションの中で一般的に使用されるようになりました。これらの文字は文章やストーリーに特別なアクセント加えますが、しかし果たして全ての人に受け入れられるものなのでしょうか?
上のグラフのように、顧客の49%は「顔文字」「くだけた口語表現」「感嘆符」について、どれもカジュアルすぎるとは考えていません。しかし35%の顧客は、サーポートサービスにおける顔文字の使用について、くだけすぎていると感じています。口語的な言葉についても、26%は同様の回答をしています。
Jay Ivey氏は、次のように注意を促しています。ライブチャットは、メールサポートとは異なり、そもそもカジュアルなものです。チャットでやり取りをしていると、画面の向こう側にいる相手がリアルな人間だということを認識しやすくなります。サポートスタッフが読み手のニーズに誠実に対応してさえいれば、チャット中の絵文字や口語表現の使用が適している場合もあるでしょう。
プロによるアドバイス:
空気を読みましょう。顧客が顔文字や口語文を使用していたら、同じように気軽に対応してください。ただし、行き過ぎて質の低いTwitter投稿のようにならないよう注意しましょう。
顧客がどのように感じているかを常に意識することは、サポートスタッフが正しい言い回しや言葉を選ぶ上で助けになります。対話をするうえでの心のこもったアプローチは、サポートスタッフが発信するメッセージを確実に好意的に受け取られるための手助けになるでしょう。