コールセンターなどのカスタマーサポート業務は、顧客からの質問を受け身で待つ「インバウンド」タイプと、こちらから顧客にアプローチする「アウトバウンド」タイプの2種類があります。とはいえ、一般的には、カスタマーサポート業務はその大半が「インバウンド」タイプになるでしょう。
インバウンドのカスタマーサポートとは?
多くの企業は、コールセンターへの問い合わせ先(電話番号やメールアドレスなど)をWebや取扱説明書、出版物などで公開し、顧客からの問い合わせに対応しています。
こういった企業のコールセンターは、すべてインバウンド業務をしていることになります。問い合わせ先がアウトソースの場合も同じです。最近はコールセンター機能をアウトソースする企業も増えていますが、いずれの場合も「インバウンド」のカスタマーサポートであることに変わりはありません。
コールセンター機能をアウトソースする形態にはバリエーションがあり、完全にアウトソースする場合もあれば、一部をアウトソースする場合もあります。例えば、一般的な問い合わせはアウトソース先のカスタマーサポートで受け、専門的な問い合わせのみ社内のカスタマーサポートで対応する、といった複合的な運用形態を採用している企業もあります。
さらに、クラウドベースの統合的なシステムを利用して、顧客の声を集めるインバウンドのカスタマーサポート部門を中心に置き、専門的な対応は各部門でサポートしていく場合もあります。最近は、このように統合的なサポート体制を採る企業が増えてきているようです。
顧客とオペレーターの各種データ化
インバウンドのカスタマーサポート業務、特にコールセンター業務において重要なことは、「顧客が何を問い合わせているのか」をなるべく早く把握し「顧客の課題を速やかに解決すること」といえます。理想をいえば、可能な限り顧客の問い合わせ内容を予測できる仕組みが必要となります。
とはいえ、コールセンターのオペレーターが会話の情報だけで「顧客の望む内容」を100%把握しきることは可能でしょうか。顧客が問い合わせてきた真意をつかむには、それだけでは情報が足りないはずです。そこで「過去の問い合わせ」や「現在の商品・サービスの利用状況」などの様々なデータをシステムで管理できる体制の構築が望ましいといえます。
「前回の問い合わせ内容」や「商品の購入履歴」をもとに、今回アクセスしてきた顧客は「どういった問い合わせの可能性があるのか」を推測できる仕組みが整っていれば、オペレーターにとって非常に大きな支援となります。その結果、問題を早期に解決できるようになれば、顧客は多大なストレスを感じることなく、コールセンターのサポートの内容に満足してくれるでしょう。
また、顧客に対して「各オペレーターがどういうリアクションを行ったか」という情報も重要です。コールセンターのオペレーターは「顧客との接点」となる最前線に立っています。顧客サービスにおいて、非常に重要な役割を果たしています。一方、オペレーターの立場からすると、顧客の問い合わせに回答するだけのルーティン業務に陥ってしまいがちです。ただ漫然と対応してしまったり、顧客の真意をつかむことができず、適切な回答ができなかったりするケースもあり得ます。
こういったオペレーターの対応情報は数値化し、各種指標の分析結果をもとに、改善を施していく必要があります。
代表的な指標と改善方法
カスタマーサポートの運営状況を把握できる指標は数多くあります。ここでは、代表的な指標と改善方法について列記していきます。
生産性指標(コスト管理を行うための指標)
- CPH(Call Per Hour:1時間当たり対応件数)
ある一定期間の「対応件数」を「稼働時間」で割った数値。全体の平均値と比較することで、一人ひとりのオペレーターの課題を割り出します。コールセンター全体でCPHが低い場合、マニュアル自体の完成度が低いなど、体制自体の課題が出ることもあります。 - ATT(Average Talk Time:平均通話時間)
1コールにかかった平均通話時間。通話記録を分析し、対応時間が短く顧客満足度の高い返答をマニュアル化、データベース化して共有します。ただし、ATTの削減を考えるあまり、やみくもに対応を短くすることがないか注意が必要でしょう。 - ACW(After Call Work:平均後処理時間)
通話終了後に、応答記録の入力作業や処理に要した時間の平均値。オペレーターの業務フローを評価するための指標となり、業務フローを改善するために用いられます。 - AHT(Average Handling Time:平均処理時間)
ATTとACWの両方を合計した数字。ATTとACWの「どちらがボトルネックになっているのか?」を分析し、優先順位をつけてATTやACWを改善します。 - 稼働率
オペレーターが「顧客との通話」や「後処理」に要した時間を「稼働時間」で割った数値。適正な回線数や人員数が確保できているかを確認し、集中時にオペレーターが回るようシフトを検討します。
収益性指標(利益への貢献度を計測する指標)
- CES(Customer Effort Score:顧客努力指標)
顧客が「問題を解決するためにどの程度の労力を要したか」を数値化した指標。数値が低い顧客の意見を集約し、課題を洗い出します。 - Net Promoter Score℠(ネットプロモータースコア、NPS)(正味推奨者比率)
顧客のロイヤルティを数値化する指標。数値が低い顧客の意見を集約し、課題を洗い出します。
品質指標(応答品質を担保するための指標)
- 放棄呼率
オペレーターに電話がつながる前に切れてしまった割合。IVR(自動音声対応システム)を導入し、そのうえで人手を増やします。ただし、ガイダンスが長すぎる場合や煩雑な場合など、かえって放棄呼率を上げてしまう結果になりかねないことには注意が必要です。 - 設定時間内応答率
オペレーターが規定時間内に応答できた割合。コール数に対して適切な人員・タスクを分散させることができているかどうかの指標となります。
まとめ:統合化されたクラウドシステムの活用
インバウンドのカスタマーサポートは、ただルーティン業務をこなすのではなく、顧客に満足してもらえるように、日々改善を重ねていく必要があります。指標をもとに改善を行うためのシステムは「スプレッドシートを使った部署内での管理」などでは追いつかないはずです。
とはいえ、ゼロからシステム開発を行うのは大変です。そこで、各種指標を自動的に抽出でき、アンケートなどから得たデータを簡単に指標化できる、統合型のクラウドベースシステムを活用し、カスタマーサポート体制を全社的に構築することをお勧めします。